どのくらいの時間が経ったのだろう2人の唇が静かに離れた。背中に回された両手、そして胸から亮の体温が伝わる。
 ・・・トクン・・・・トクン・・・
 薄いシャツ越しに亮の鼓動が伝わってきて亮もドキドキしているのが判って喜んでいる女の自分が居た。
 (嬉しい・・・)
 再び唇が重なるのに言葉も時間も要らなかった。どちらからでもなくお互いの唇を求め合った。
 「ん・・・んはぁ・・・・んん・・・・・」
 男とこんなことするなんて・・・心の片隅でそう思う気持ちはすぐに女の自分に握りつぶされ、残るのは心地良く甘い絡み合う快感だけだった。
 腹部に何かが当たる、目線を下に移すと亮のモノが己の欲望を溜め込みズボンの上からでも判るぐらい大きく膨らんでいた。
 (ああ・・・亮・・・辛いのかな?)
 元男の自分にはその辛さが判っていた。・・・開放してあげたい。その気持ちは僕に一線を超える勇気をくれた。
 「あの・・・亮? その・・・・」
 「ん?」
 僕を見つめるその目は優しかった。もう自分が男だとか女だとか関係ないように思えた。
僕は目の前の男"西沢亮"が好きなんだと、今はっきりと気がついた。ならば今は女として亮の気持ちに答えてあげたい。
その女としての"真実"が次の言葉を紡いでいった。
 「その・・・我慢・・・しなくて・・いいよ」
 顔から火が出るくらい恥ずかしい。思わず下を向いてしまった。そんな僕に亮はそっとおでこにキスをした。
 「馬鹿・・・無理すんな」
 「ううん、無理なんかしてないよ。・・・その・・・僕も・・・して・・・欲しいから」
 まっすぐに亮の目を見つめ一度だけコクンと頷き。それを合図に亮の手が再び僕の身体を抱きしめた。
 既にボタンの引き千切られたシャツを脱がされ上半身がまだ涼しさが残る6月の空気にさらされた。
遠慮がちに亮が触れるたびに僕の口からは甘ったるい吐息が溢れた。
 「く・・・う・・ん・・・あふぅ・・あっ・・・ああ」
 亮の手がお世辞にも大きいとはいえない乳房を包み込むように揉みしだき指先が膨らみかけた先端を転がすように弄んだ。
 「ん?亮?・・・・あっ・・・ああ・・・くふぅ・・・はぁぁぁぁ」
 亮の舌がかわいらしく膨らんだ乳首にのびた。
 「やっ・・・亮・・・汚いよ・・・」
 「ん?何で・・・・」
 「だって・・・そこは・・・あいつが舐めて・・・・ひゃん!」
 「そんなの関係ない、俺がなめてきれいにしてやる」
 「ちょ・・・亮、ひゃ・・・・ん・・・んふぅ」
 ざらざらとした舌の感触が指よりも強い痺れるような感覚が体中に走る。
ピチャピチャと音を立てながら身体を貪る亮に僕の羞恥心は際限無く膨らんでいった。
 「あ・・・・」
 亮の右手が器用にスラックスのボタンを外すと、女になって緩くなった男物のスラックスはするりと落ちて、
白く綺麗な脚、白いコットンのショーツが露になる。
亮の顔を盗み見ると既にショーツに目を奪われていた。
 (もう・・・恥ずかしいな・・男って・・・・って・・僕も男だったけど)
 すこし苦笑いして亮の首筋にキスをした。
 亮が秘部に触れるたびに身体を突き抜けるような刺激が走る。そのたびに口からは艶を帯びた喘ぎ声がこぼれ落ちた。
 「あはぁ・・・・・ああ・・あっ・・ああ・・・あひぁ・・・ああああ」
 こぼれ落ちる声が大きくなるにつれ秘唇からはクチュクチュといやらしい水音が溢れ出し秘唇はより強い快楽を求めるように切なく震えた。
 「あの・・・え・・っと・・・亮・・・その・・・もう・・・・・欲しい」
 切ないのは僕自身も同じだった。初めて感じる"欲しい"という本能の感情は理性を駆逐し僕にそう言わせた。
 「本当に・・・良いのか?」
 「・・・・・うん・・・」
 優しげな亮の問いかけに小さく頷き軽くキスをした。

 「いくぞ・・・」
 エロ本で読んだとおり力を抜こうとするがいざとなると力んでしまう。
 そんな僕を気遣い亮はキスをしながら大丈夫だから・・・と優しく声を掛けてくれた。
 (亮のが・・・入って・・・くる・・・)
 初めて男のモノを迎える身体を裂かれるような痛みが襲う。だが心は満たされていた。
 初めての紅い証が股を伝い、目からは一筋の涙がこぼれた。
 「痛い?・・・大丈夫か?」
 「ばか・・・・痛いんじゃなくてうれしいんだよ。」
 小さく握った拳で亮の頭をコツンと小突きそのまま抱き寄せた。
 とめどなく涙が溢れ、それと共に痛みの代わりになんともいえない甘ったるい感情が心と身体を満たしていった。
 「あん・・・あっ・・・あああ・・・・あふぁ・あああああ」
 どちらからともなくお互いを求め合い、より貪欲に快楽を求めようと腰を動かしていた。
 もう頭の中は何も考えてはいなかった。あるのは目の前の男"西沢亮"を欲する1人の女"高橋真実"だけだ。
 「あぁ・・あっあっあっ・・・あああああ」
 「真実・・・・俺・・・・も・・う・・・」
 亮が限界が近いことを訴える。だけど・・・・離したくない・・・女の本能がそう訴えかけた。
 「いいよ・・・このまま・・・・ほしい・・・」
 「だめだ・・・もう・・・い・・・・・ああっ・・・」
 「はあああああ・・・・・ああああああああぁぁぁ・・・・・」
 熱い何かが身体の中で弾けそのまま僕の意識はフェイドアウトしていった。

 「ん・・・・亮?」
 目を覚ましたとき僕は亮の背中の上にいた。辺りは夕焼けのオレンジ色の光に照らされキラキラと輝いていた。
 「あ・・・ごめん・・・もう大丈夫だから」
 僕は亮の背中から降ろしてもらい川沿いの小道を2人並んで歩いた。
 「なあ真実・・・今まですまなかった。今考えると俺・・・いらついていたのかも知れない・・・
お前が女なら・・・って。まるで小学生のガキみたいだけど・・・ごめん」
 「謝るなって・・・今日助けてくれたじゃないか、それで十分だよ」
 「いや・・・俺なりのけじめだ。それで女になったお前を見て決心したんだ告ろうと、だけどいざとなると勇気が出なくて・・・そうだ・・・これを」
 亮はスラックスのポケットから小さな箱を取り出し僕に差し出した。
 「これを・・・物に頼るのは卑怯だけど・・・受け取ってくれ・・・俺の気持ちだ」
 それはハートをあしらったシルバーのリングだった。
 「亮・・・まさかこのために・・・」
 「はは・・・先生と一緒にお前が入ってきたときには心臓が止まりそうになったよ。せっかくだからはめてみてくれよ」
 その指輪は僕の指には大きすぎてはめることは出来なかった。
 「ばか・・・サイズも確認しないで買うなよ・・・・でも・・ありがとう」
 そう言いながらも僕の目にはまた涙が溢れてきていた。
 「ごめん、なんか謝ってばかりいるけど・・・・真実・・・改めて言うよ・・・俺と付き合ってれ」
 聞くまでも無く僕の気持ちは決まっていた。
 「・・・はい・・・」
 僕らは再び互いを抱きしめ合い、キスを交わした。

 あの事件から半年が経った。
 西沢・・・いえ亮が睨みを利かせているらしくあの2人・・・高尾と立川が何かすることは無かった。
 琴美ちゃんとは今でも仲良く付き合っている・・・もちろん同姓としてだけど・・・
 香坂先生は今でも"女暦"の浅い僕の良き相談相手になってくれている。時々病院の五島先生に僕のサンプルを催促されるってぼやいているけど。
 そして僕は・・・・。
 朝がやってくる、待ち遠しい。
 目覚し時計よりも早く目覚め身支度をする。
 顔を洗い、髪に櫛を通し、パジャマを脱ぎ捨てクローゼットから取り出したスカートと白いシャツ、制服指定のリボンを身につける。
 もうすぐ・・・もうすぐ・・・彼に会える。そう思うだけで無性にうれしくなる。
 やがて呼び鈴が鳴り急いで玄関へと走った。
 そこには愛しい人が笑顔で僕を出迎えてくれていた。

 「ねぇ亮」
 「ん?」
 「僕・・・弁護士になろうと思う。前は検事になりたかったけど僕の戸籍を変えるために頑張ってくれた弁護士さんを見て思ったんだ。
困っている人の味方に役に立つ弁護士になろうって」
 「うん」
 「ちょっと・・聞いてる?」
 「ちゃんと聞いてるよ」
 「なら良し、それとね・・・・もうひとつの夢は6月の花嫁だよ」
 「ば・・・朝っぱらから何言ってるんだよ。ほら・・・遅刻、遅刻」
 「あ・・・待ってよ」
 そう言って二人で走り出す。そしてその僕の胸にはシルバーのチェーンでペンダントにされたハートのリングが輝いていた。


   The END


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