「・・・うぅ」
 輝の額に汗が浮かび、どこか落ち着かないといった感じで微かに身体が揺れている。
教師が黒板に書き込んでいく数式を書き写しているシャーペンを握る手にクッと力が込もり、押し殺すように息を吐く。
そんな輝の様子を京介は黒板を見るついでといった感じで見ると、口の端を歪め机の中に隠してある手を動かした。
「くぅぅ・・・」
 その途端、輝の顔が苦しそうに、しかし小さく呻き身体を強張らせる。
「ふっ・・・くぅん」
 輝の足が震え口から漏れる声に熱がこもる。耐えるようにきつく握られたシャーペンが押し付けられ机をカリッと削る。
時間にして10秒、そんな輝の様子に満足したのか、京介は再び左手を机の中に入れ動かすと輝の身体の緊張が解ける。
「はっ・・・はっ・・・ん」
 その瞳は熱に浮かされたように潤み、焦点が定まっていない。輝は小さく肩で息をしながらちらりと左を向く。
そこには実に楽しそうに自分を見ている京介の顔があった。

 屋上で京介が輝を犯してから1週間。京介は『いじめ』行為自体こそ止めなかったが、輝を無理やり抱くという事をしなかった。
そして、日に日に京介の機嫌は悪くなり輝に辛く当たるようになっていった。
 逆に、輝はますます目立たぬよう大人しくなり、そして従順に京介に従うようになっていった。京介はそんな輝の態度が気にくわなかった。
 一週間前輝を犯した時に感じた正体不明の感覚。
その正体がわからず彼はイラつき輝に以前にも増して辛く当たるようになったが、それでもそのイラつきは無くならず逆にイライラが増していく。
だが優等生の仮面を崩すわけにもいかず、京介は自分でもどうしたらいいか分からなくなっていた。
そんな時、昔彼がお遊びで購入したある道具。一回使ったきりで机の奥深くで埃を被っているその道具の存在を思い出した。
 これを使ってあいつで遊んでやればこのイライラも少しは無くなるかもしれない。そんな思いつきに京介の顔は暗く歪んでいた。

「ふぁ・・・ひん・・・んん」
 昼休み。『清掃中』の札の立てられた男子トイレの一番奥の個室。そこから微かに聞こえてくる少女の嬌声。
その狭く区切られた中で、窮屈そうに身を捩じらせ学生服をはだけさせている輝を、後ろから抱きすくめるように愛撫する京介がいた。
「ふん、なんだよ。一週間おあずけ食らったくらいでこんなによがりやがって。どうせオナニーしまくってたんだろうが。あ?」
「ひぅ・・・んん・・・は、はい」
「ちっ」
 自分が言った言葉に素直に応える輝に京介は不愉快そうに舌を鳴らすと、輝の愛液でぐしょぐしょに濡れそぼった指をその秘唇から抜きとる。
「こんなに汚しやがって。てめぇで綺麗にしろや、おら」
「はい・・・あむ、ちゅる・・・」
 目の前にかかげられた自分の蜜でテラテラと光る京介の指を輝は丹念に舐めて綺麗にしていく。
そして輝が舐め終わるのを確認すると京介はポケットに入ったある物を取り出した。
「輝、今日はお前に良い物をくれてやるよ」
「え?・・・ひゃぅっ!?」
 つぷっと輝の膣内に硬い物が埋め込まれ、その異物感に輝は戸惑う。
そして京介は再び指を抜き取るとポケットに入っているもう一つの物、四角い小さな箱のような物を取り出すと、
それに付いている小さな摘みをカチッと音を立て倒した。
「ひやっ・・・んぁ・・・あぅんんん!」
 ヴンッと低い振動音が響き輝の身体から力が抜ける。
京介はそんな輝の身体を支えようともせず、へたり込み自分の股間を押さえる輝を冷ややかに見つめると、小さな箱の摘みを元に戻す。
「んあ・・・はぁ、はぁ」
「バイブだ。お前今日一日それ入れたまま授業受けろ。いいな」
「そ、そんな・・・」
「口答えしてんじゃねーぞ!」
 京介は輝の背中を蹴りつけるとトイレの個室のドアを開け出て行く。
そして手に持つ箱を輝に見せ付け楽しそうに口の端を吊り上げる。
「あとこれ、そのバイブのリモコンだ。いつスイッチ入れるかわかんねーぞ? 気抜くなよ。くくくく」
「う・・・くぅ・・・はい」
「・・・くそがっ」
 泣いて謝ってくるかと思っていた輝の、そんな輝の態度に少し湧き上がっていた暗い喜びが消え去り、
京介はドカドカとイラつきを隠しもせずトイレから出ていった。
「京介君・・・」
 輝はそんな京介の後姿をどこか悲しそうに見ていた。

「はっ・・・はっ」
 ローターを入れられてからすでに2時間。気を抜けば襲ってくる振動と下半身にある異物感。
そして教室で授業中という、自分の置かれた状況に輝の身体はまったく言うことを利かず、ふと手が股間に伸びてしまいそうになる。
そんな自分の手を両足の太ももで押さえつける。下着はすでにぐしょぐしょに濡れそぼり、学生服のズボンにまで蜜が染み出してき
ていた。
教室の時計を見るとまだ授業が始まってから半分も時間は経っていなかった。
 意識はかすれ、押し殺した肺と身体は酸素を求め、喉が勝手に動きそうになる。
「あぅ・・・くぅぅ」
 もう何度目か、自分の中にある異物が低く振動し暴れまわる。
限界まで抑えられた快感はすでに苦痛に変わり、真っ白なノートの上にぽたぽたと汗が染みを作っていく。
それでも輝は耐えている。しかしそれは、自分の為ではなく京介を守る為の行為だった。
(今・・・僕の事が・・・皆にバレたら・・・京介君の事もきっと・・・)
 いつからそう思い始めたかは輝自身もよくわかっていなかったが、しかし輝は自分ではなく京介の為に耐えていた。
憎い、という気持ちは無くなったわけではない。それでも今は京介の為にと思う気持ちが輝の心を占めていた。
「はっはっ・・・はぁっ・・・くぅん・・・」
 だがすでに輝の身体は限界だった。声を出さぬために押し殺された息は十分な酸素を肺に送れず、酸欠状態の身体に拷問のように駆け巡る快感の波。
「は・・・・・・ぁ・・・・・・・・・」
 それに2時間以上曝された輝の意識は、電源を落とされたように闇に落ちていった。

(・・・なっ)
 ガタッと音を立て崩れ落ちる輝を見て京介の心は平常を失った。手足は痺れ時間が止まってしまったような感覚に陥る。
 ここまでするつもりはなかった。輝の事がバレればそこから自分の事までバレてしまう可能性もある。そんな危険を冒すつもりはなかった。
だが、必死に耐え続ける輝に京介は自分でも気づかずほどイラつき。普段ならば自制できるはずの彼の心は暴走していた。
『お、おい』
 耳の機能が戻ってきたのか周りの生徒達のざわめきが聞こえてきた。
(くそっ!まずい!)
 京介の行動は誰よりも早かった。輝へ駆け寄ると抱き起こしその汗の浮く頬を叩く。
輝の頬をぺしぺしと叩きながら、京介は自分の中をえ得体の知れない不安が暴れ狂っているのを感じた。
「早乙女君、大丈夫かい?」
「・・・ぅ・・・・・・んん・・・あ、きょ・・・高橋君」
 輝は朦朧としながらも京介を確認すると申し訳なさそうに目を伏せる。
かろうじて、だが意識のある輝を確認すると京介はほっと息をつく。だが。
(・・・安心? 俺が輝の無事を確認して安心しただと?)
 京介の心を別の種類の不安がざわつき始めていた。
 自分の授業中に倒れられた、と顔をしかめ近づいてくる教師に京介は意思の力を総動員して優等生の顔を作ると先手を打つ。
「貧血かな。先生、早乙女君を保健室へ連れていきますね」
「あ、ああ。だが保険委員が・・・」
「僕も朝から少し体調が悪かったのでついでに薬を貰ってきます」
「わ、わかった」
 輝に肩を貸し、足早に出て行く自分の背中にささる何とも言えぬ空気を無視し、京介は保健室まで無言で輝を運んでいった。

「京介君・・・ごめん・・・なさい」
「・・・・・・」
 ベットに横になる輝が保健室に来てから無言の京介に声をかける。
保険医は輝をベットへ寝かし、嘘をついて保健室に来た京介に風邪薬を渡すと、職員室に用事があると保健室を出て行ってしまった。
 それから5分程、京介は無言で立ち尽くし空を睨みつけていた。
「・・・かえせ」
「え?」
「バイブ返せって言ってんだ。殺すぞバカが」
 いつもとまったく違う淡々とした口調に輝は驚いた。輝は頭をハッキリさせるように頭を振ると、ベットの中でもぞもぞと手を動かし、
『んっ・・・』
と小さく呻きローターを取り出すと、ベットの横にあるティッシュで拭き取る。京介はそれを確認すると輝の手からローターを奪い取り保健室を出て行った。
輝は京介の出て行った扉をまた、悲しそうな顔で見ていた。

「くそっ! くそっ! くそっ! くそっ!!」
 建設途中で会社が倒産し、不良債権として放置されたビル。そのビルの一角で京介は毒づく。
「くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! くそがぁっ!!!!」
 京介は足元に散らばる粉々に砕かれたローターを何度も踏み砕く。何度も何度も。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
「はぁ・・・はぁ・・・ぐうぅ・・・くそがああぁぁぁあ!!」
 それでも怒りが収まらず京介はコンクリートのむき出しの壁を力任せに殴りつける。何度も何度も。何度も何度も何度も何度も何度も何度も。


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