まだ股間に生々しく異物を挿入された感覚が残ってた。
腿をぴったりと閉じて内腿を摺り合わせるようにすると、そこにあるべき男性器官の喪失が確認できた。
トランクスの中にそっと手を忍ばせると、茂みの奥に秘裂を感じられた。
そこはグッショリと濡れそぼっていた。
夢……暗闇の悪夢の中でそこを押し広げて熱く張り詰めたモノが挿入されていた。
それを思い出すだけで躰の芯が甘く疼き、ジュンと熱い汁が染み出た。その躰の反応に、僕の意思は一切介在してなかった。
朝起きたら男に戻っているのでは、というわずかな希望はこんなにも手ひどく打ち砕かれてしまった。
夢の中で自分が出していた媚声を覚えている。
たとえ夢の中とはいえ、男に犯されてあんな声を出してしまったのが悔しかった。
それにしても……夢の最後に出てきたあの化け物。あれは恐ろしくリアルだった。
目が覚めたいまでも、あの化け物の存在が空想の産物とはとても思えないほどだった……。
ふと、隣で衣擦れの音がした。
振り向くと、隣で寝ていた智史が僕と同じように上半身を起こしていた。
智史もまた変わり果てた女の身体のままだ。
それに加えて智史はグッショリと汗に濡れていた。
「あれは……夢だったのか……」
智史がつぶやいた言葉を僕は聞き逃さなかった。
まさか、と思った。
「その夢って……羽のある黒い怪物が出てくるんじゃ?」
「なんで狩野君がそれを!?」
「やっぱり……」
僕は自分が見た夢のことを智史に話した。
もちろん、男に犯されながら快感に悶えていたなんてことは胸のうちにしまっておいたが。
話を聞いた智史は愕然としていた。ほぼ同じ内容の夢を智史も見ていたというのだ。
「どういうこと……?」
「わからない。だけど、偶然で一致したとは思えない」
「うん……」
あの夢は、僕らが巻き込まれている“異変”とどういう関係があるんだろう?
いくら考えても答えは見つからなかった。
「夢の中では……その……狩野君も誰かに……いや、なんでもない」
智史は言葉の途中で口をつぐんでしまった。その頬が上気している。
智史もまた夢の中で男に抱かれ快感に身をよじっていたに違いない。
智史の白いカッターシャツは汗で濡れそぼってぴったりと肌にはりついていた。
丸いふくらみが、シャツの布を思いきり持ち上げていた。濡れているせいで色白の肌が透けて見える。
アンダーバストの描くラインまで透けて見えて、扇情的な光景だった。
僕の男としての欲望が、智史の露わに浮かび上がったバストから目をそらせないでいた。
視覚だけでなく、空気の中に甘い女の体臭が混じっているような気がする。
透けて見える女の裸を目の前にして、精神は欲情しているのに、それを受けていきりたつ器官を僕は失っていた。
どんなに視覚的に興奮していても、股間に張り詰める固いペニスはないのだ。その事実が胸を刺した。
──つうっ。
「!?」
突然、胸に奇妙なくすぐったさを覚えた。
それは、胸のふくらみを撫でられた感覚だった。
智史が、手を伸ばして僕の胸を触ったのだった。
「な、なにを……!?」
「ご、ごめっ……我慢できなくて」
自分の上半身を見下ろして、ようやく気がついた。
僕自身も智史と同じように汗でシャツを肌に張り付かせていたのだ。
同じように、バストの形を浮かび上がらせて。
智史は、このヌードグラビアのワンショットのような姿を見て、たまらずに手を出してしまったのだ。
「やわらかいよ。狩野君のオッパイ……」
「ば、ばか! やめっ……ヒッ!」
濡れて冷たくなったシャツの布地ごと胸を撫で回されて、僕は息を呑んだ。
智史の身体に僕が欲情してしまったのと同じように、智史もまた僕を見て欲情していた……。
「やめろって……こんなの、間違ってるから……」
憑かれたように胸を触る智史の手を押し止めた。
放っておいたら、夢の中のように甘い喘ぎ声を出してしまいそうな自分が怖かったからだ。
意図せず腕の内側に胸が当たって、やわらかな弾力を感じた。
「どうしたらいいかわからないんだ」
泣き笑いのような表情を浮かべて智史はいった。同じ立場の僕にとっては鏡を見ているようだった。
男として心は昂奮しながら身体が女になっているせいで、情欲が行き場を失ってぐるぐると空回りしてしまう。
智史は股間に手を持って行き、中指をそっと秘所のあたりに押し当てた。
クチュ、と小さな音がした。
「ンアッ……!」
ブルッと智史が身震いする。僕は耐えられず、その光景から目を逸らした。


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