「……んふッツ!!」
秘部にペニスが当たる感覚に令は息をつまらせる。
これから訪れるのは、もう何度となく経験してきた”抱かれる”という感覚。
男の自我が一番恐れるのがこの感覚だとすれば、逆に令の男を一番崩壊させたのもこの感覚だ。
どんなに理性を保とうとも決して抗えない圧倒的な快楽、それがこの”抱かれる悦び”だった。
そして……いよいよ”それ”が令の中に侵入を始める。
さすがにもう何度も経験した感覚ゆえ、痛みや恐怖は感じない。
抱かれる感覚に慣れたという事自体、令の”男の意識”にとって不本意ではあったが、
それ故せめて最初の挿入が終わるまでは声を出すものかと、シーツを握って喘ぐのを耐える。
だが、そんな意識に反して突然、令の体がびくんと跳ねた。
−な……! なに……これ!!−
同時に信じられない感覚が令の体を襲い、その身が総毛立つ。
セネアが少しずつ令の中に入ってくるにつれ、体が信じられない勢いで発情していくのだ。
今までも奥まで挿入された瞬間に軽い絶頂とをともなうような快楽が襲う事はあった。
だがセネアは今、令をいたわるようにゆっくりと挿入をしている途中にすぎない。
いつもの感覚ではない……この交わりは何かが違っていた。
「あふっ、あ、ああぁ、やぁああ――ッ!! せ、セネアさんこれって……ひゃあああぁあッ!! 
や、やめ……お願い止めてえぇ!!!」
腰をびくびくと震わせ、狂ったように首を振って令は絶叫する。
だがセネアは令の懇願を無視し、腰をしっかりと押えてゆっくりと令の中に侵入を続けた。
−違う……か、感じすぎる! このままじゃ…………そ、そんな! 入れられただけで!!−
「ああぁ……ッ! あ、やめ……セネアさ、あ、あああああぁぁ――ッ!!」
あまりに急激すぎる高まりに、令は言葉を発する事すらままならない。
そしてセネアのペニスが歩を進めるごとに、それは確実に増幅されてゆく。
それは今まで令が経験した、どの快楽とも違っていた。
女の体は快楽の頂点こそ男よりも遥かに深いが、それが燃え上がるまでのスピードは男より遅い。
それでもセネアや静奈のような技巧を持ってすれば、ある程度勢いよく絶頂まで導く事は可能だ。
だがこれはあまりに異質……早漏の男でもかくやという次元の速度だ。
令は女の快楽をこのように急速に高まるなど、とても信じられなかった。
だが自身の体は紛れもなくそれを感じている。このままでは……
そんな令の心を見透かすかのように、セネアが令を見下ろしていた。
令がそれに気がついた途端、セネアはくすりと笑う。
そして一瞬間を置いた後、令の体にずんっ! という衝撃が走った。
「ふああぁっ! ああああああああああぁぁ――――ッ!!!!」
刹那、令は体を弓なりに仰け反らせて絶叫する。
それは紛れもなく達した雌の悦びの叫び。令の体は本当にたった一突きで絶頂まで導かれてしまった。
子宮がきゅうっと収縮する感覚にびくんびくんと体をふるわせ、その口から一筋の涎が落ちる。
あまりに急激に与えられた絶頂に、頭がその快楽を理解しきれていないようだった。
次々に与えられる未知の快楽、これこそが令を女の悦びに縛り付ける肉の記憶となる。
しかし……令は時が経つにつれ、それがまだ終わっていない事に気が付いた。
−あ、熱いのが……熱いのが収まらない!! こんな……こんなのって!!−
頂点まで達した快楽が、全然体の内から引こうとしないのだ。
体がイった時の熱を持ったままの状態で、令の悦楽は固定されてしまっていた。
「あぁ……セネアさん、これ……これは何……なの? 熱い……熱いいぃぃ!!
ぼ、僕の体が……あくうッツ! あふううぅぅ……ッ!」
「頂点から降りられないんでしょう? 当然よ、なにしろこれは”令のモノ”なんだもの……」
「ぼ、僕……の……?」
今なお収まらない快楽に身悶えさせながら、令は意味ありげなセネアの言葉に問う。
「令、貴方は身体の相性がある事を知っていて?」
「あうッ、くうぅっ……身体のあい……しょう? はふぅんッ!!」
なんとか応対するも、頂点に近い快楽を体に抱えた状態では思考もままならない。
そんな令の状態を察してか、セネアはそのまま言葉を続けた。
「男と女の身体って相性があるのよ。
俗な人間は男なら大きさとか長さ、女なら名器がどうって言うけど、そんなものを超越した身体の相性がね。
これの前にはどんな技術や経験も霞んでしまう事があるわ。
ところがね、性を変えた相手には確実に最高の相性を与えられるものがあるのよ」
そこまで言われて令にもようやく話が見えてくる。
セネアがあえて令のペニスを使ったのは、ただのからかいや心理的な嬲りのためではなかったのだ。
セネアの言う相性……つまり今まさに令を貫いている自身のペニスがこの状態を作り上げているという事。
「人の身では決して味わう事のかなわない至上の相性が織り成す快楽よ。効果の程は……言うまでもないわね」
令を見つめ、セネアは淫靡に笑う。
奥まで挿入されて身体を震わせて快楽に耐えている今の令は、
肌に触れるだけで達してしまうのではないかというぐらいの雰囲気をただよわせていた。
「けどね令、貴方は多分勘違いをしているわ」
「……?」
セネアの言葉に令は息絶えだえになりながらも耳を傾ける。
「この快楽はあくまで肉の相性によって底上げされた底辺にすぎない……どういう事かわかる?」
その言葉に嫌な予感と期待が同時に背筋を走った。
こういう風にセネアが意味ありげな問いの後、令の身体に与えられるのは大抵決まっているからだ。
言葉だけで体がびくりと震え、思考がおぼつかなくなる。もう令の身体はすでに答えを知っているようだった。
そして思考の方でもようやくその意味を悟る。
−つまり……この状態からさらに”絶頂”に向って快楽を与えられる……?−
信じられなかった。いや、信じたくなかった。
今でも気が狂わんばかりの快楽に翻弄されているのに、
そのさらに上の快楽など与えられてはどうなってしまうのか……かすかな恐怖が令に走る。
だが……それと相反するように令の中で”期待”が生まれている。
そして令がそれを悟ったのを察したセネアは、静かに口を開いた。
「さあ令……悦びなさい!」
セネアの腰が動き抽挿が開始される。その途端、令の身体が再び発火した。
「ふあッ! あああああぁぁ――ッ!! ダメ、こんな……ひゃふッツ!! ああああああぁぁ――――ッ!!!」
抽挿のたびにとてつもない快楽が令の身体を蹂躙する。
これまで絶頂を迎える次元だと思っていた領域の快楽を底辺として、令の身体に襲いかかったのだ。
それは挿入のたび、子宮口を突かれるたびにイってしまうようなもの。
だがイきたいのにイけない。意識が絶頂を感じているのに身体がそれを絶頂だと思っていないのである。
そしてそれを証明するかのように、身体はさらなる領域に向って高まっていく。
それはオルガスムスが束になって上乗せされるような、そんな感覚。
−こんなっ!! こんな快楽……僕、壊れ……壊れちゃううぅ!! あくッ、ふあああぁッツ!!−
もはや心の中ですら喘ぎを上げる事しかできないぐらい、悦びが令の身体を侵食してゆく。
耐えず獣のような叫びを上げ続けさせられ、突かれるたびに身体がベットの上でバウンドする。
もう令の全てがセネアから与えられる快楽に支配されていた。
「ふふっ……どう令? 貴方の今まで感じてきたものなど所詮はお遊びだって事が理解できたでしょう?」
セネアの言う通り、すでにこの快楽は次元が違う。
白い光が何度も爆発するような感覚の中で、
令はこの信じられない快楽に過去のあらゆる肉の記憶が書き換えられてゆく錯覚を覚える。
女になってすぐ、令は自慰で女の悦びを知った。
それは男の絶頂など比較にならぬ快楽。その直後、令はセネアに処女を奪われた。
その後、様々な形で女の悦びを身に浴び、何度となくイき、そして果てた。
そして今、再びセネアに抱かれている。
これまで令に刻み込まれたありとあらゆる快楽を下地にして、その全てを上回る悦びを与えられて……。
二度と消す事の適わない絵の具を身体に染み込まされていくようなイメージが心に浮かぶが、
もう令の身体はそれを否定する事は出来なくなっていた。
「きゃふううぅッ!! あっ、あ、あ、あああああぁ―――ッ!! ふひゃうっ! きゃうぅ!!」
もう身体が言う事を聞かない。爪がシーツに食い込み、足の指が突かれるたびに握られる。
腰と首がバネ仕掛けの人形のように跳ねるたびに汗が落ち、そのふくよかな胸がぷるんとふるえる。
口から悦びの叫びが漏れるたびに、その白い足が痙攣するようにびくんびくんと暴れ、ぴんと伸びる。
「可愛いわよ令……くッ……すごくいやらしい顔してるわ……あふッ……」
「そ、そん……きゃああぅッ! ひゃあっ、あ、ああ、ああああああぁぁぁ―ッ!!」
もう簡単な反論すらままならない。令のありとあらゆる感覚が、女の悦びに支配されていた。
そんな暴力的な悦楽の宴が延々と続くかに思われたが……
白濁した意識の中、令はいよいよ”それ”が近づいているのを悟った。
頭の中、幾重に爆発する小刻みな絶頂の光の中に、今までにないぐらい強く発光する小さな光が浮かんでいる。
それが少しずつ大きくなるにつれ、身体がいよいよ限界を訴え始めたのだ。
多分その光が、この積み重なる快楽の絶頂であると令は無意識のうちに理解する。
今ですらギリギリのところで意識を保っているのに、この快楽が爆発したら……
そう思った刹那、不意にセネアが令を呼びかける。いつのまにかセネアの息も随分と荒くなっていた。
「さあ、令……もう、すぐ……イクわ。んっ……あ、貴方にとって……」
セネアが息の続かない状態で必死に言葉をつむぐ。あまり見られないセネアの顔……
ほんの微かな沈黙の後、令はふとその事に気が付いた。
今、至高の相性を持って体を交じらわせているのは自分だけではない。
相手にそれを与えるという事は、自身もそれに晒されるという事。
交わりの悦びに身体を暴走させられていたのは、令だけではなかったのだ。
そんなセネアが必死になって言葉を発しているのを、令はなんとか意識を保って聞き入る。
「貴方にとって……これが……最後の、あくぅッ! ……選択肢よ。時間は……ない……わ」
朦朧とする意識の中、令はセネアの言葉の意味を必死に理解する。
最後の選択……この行為の最後に待っているのは、契約の施行。
令に女である事を求めるそれは、この契りの果てにセネアを受け入れる事で完了する。
そしてその選択権を、土壇場でなお令に委ねているのだ。
それを理解した途端、令の中にあった”男としての自分”が叫びを上げた。
−時間がない……今ならまだ間に合う……早く、早くその女を押しのけろ……!−
それはもう一人の”自分”からの命令だった。いや、その声の主こそ本来の令なのかもしれない。
令の手がぴくりと動き、握っていたシーツから離れる。
−早くしろ! 急げ、急げ!−
快楽に必死に抗いながら足を静かに折り曲げる。全ては無意識の行動だった。
それは抵抗できないと思われた女の悦びすら跳ね返しかねない力を持って、令の体を動かしにかかる。
−早く!早く!!!−
令の意識はすごい勢いで”男の自分”に引き戻されようとしていた。
それは当然の流れ、当然の感情だろう。元に戻りたいという心を否定する事などできない。
さらにこれは最後のチャンス、これを逃せば多分その機会は二度と訪れない。
ましてセネアも令にその選択を委ねたのだ。それはその選択を許すと言っているに等しい。
迷う必要なんて……ない。あるはずがない。
しかし…………それを決断したかに見えた令の動きが突然止まった。
「僕は……僕は……」
動くのを止めた事に、男の意識が悲鳴を上げるように令の心に突き刺さる。
何故止める、何故拒絶しようとしないのだと。心が葛藤で押し潰されそうになる。
しかし令の気持ちは、もう決まっていたのだ。
「セネア……さんっ!!」
引いた手足を、令は一気にセネアに絡めた。腕をセネアの背中に回し、足を腰の裏でクロスさせる。
それは最後の選択を……セネアを受け入れる事を了承したという証。
その”気持ち”は、男の令の意思すらはねのけた。そう、それはセネアが好きだという気持ちだ。
セネアが最後、自分にそれを委ねてくれたがこそ、令はその気持ちを踏みにじりたくなかった。
そしてセネアはそんな令に一瞬驚いたように、そして涙を浮かべて優しく笑う。
「そう……ありがとう令。じゃあ…………いくわよ!!」
そのまま一気にピストンが加速する。令の中に浮かんだ光が、いよいよ限界まで脹らんできた。
互いに荒い息を上げながら、いよいよ最後の瞬間にむけて互いを高めてゆく。
「あッ!あああぁッ!! もうダメっ!! イく……セネアさん僕もう!! ひゃふううぅッツ!!!」
「私もっ……もう限界よ……イくわ、令の中にいっぱい出してあげる!!」
二人の声とともに、激しく腰を打ち付ける音が部屋に響く。
もう戻れない。全てを雌の本能に委ね、令はしがみつくようにセネアに抱き付いた。
息が一気に荒くなる。声のトーンがさらに上がり、身体が頂点が近いのを感じて奮えだす。
そして令を貫いているセネアのペニスが、いよいよ限界の鼓動を刻む。
「令っ! れいっッ!! ……くあぁっ、さ、さあ、イって……しまい…………なさいっ!!!!」
全てを見計らって、セネアがとどめの一突きを令の中に叩きこんだ。
刹那……令の”女”がついに爆発した。
「ふああっ、ああああああああああぁぁぁぁ―――――――ッッツ!!!!!」
子宮に熱いほとばしりを受けた瞬間、腰を弓なりに仰け反らせ獣のような叫びを上げる。
令はついに、この果てしない悦びの頂に連れてこられてしまった。
精が注ぎ込まれる感覚に、膣が喜ぶようにきゅうっと収縮してセネアのペニスを締め上げる。
これまで受けたあらゆる快楽を上回る悦びが、令の頭の中から足の先まで一気に駆け巡り、
全ての感覚が快楽に置き換えられ、支配された。
悦びで体が震える……身体が、そして心が雌の悦びに歓喜しているのだ。
令はその手でセネアを痛いほどに抱きしめる。
子宮が満たされる感覚に言い様のない満足感を感じながら、ようやく女の悦びを理解したような気がした。
そして絶頂の快楽が静かに引き始めると、糸が切れたようにどさりとベットに脱力する。
荒れた息を吐きながら視線を上げると、セネアが満足そうに令を見下ろしていた。
「これで……契約は成立よ。貴方はもう私のもの……」
「うん……そうだね……」
セネアの言葉に令は優しく頷く。そう、これは令が選んだ道なのだ。
男の人生に未練がないと言えば嘘になるかもしれない。しかし今、令にはそれ以上に大切なものがあった。
見下ろすセネアに、令は返すように微笑む。そう……後悔はしていない。
「セネアさん…………好きだよ」
自然と言葉が口から出た。セネアはそんな令に優しく笑う。
しばしの間、二人は静かに、そして優しく見詰め合っていた。
が……突然令は腰を掴まれるや否や、一気にうつ伏せにされるたかと思うと後ろから抱きおさえられる。
甘い雰囲気から一転して突然の行動に及ばれた令は、派手に慌てふためく。
「せ、セネアさん!? な、何!?…………!!!」
首を後ろに向けてセネアの顔を見た途端、令はそれに気が付いた。
あの顔、そしてあの瞳……そう、セネアの瞳はいつのまにかあの”獲物を狙う目”をしていたのだ。
「さて令、私言ったわよね……今夜は許さないって。時間の続く限り鳴かせてあげるって」
「あ……」
指摘され、令はようやくあの悪戯心がやってしまった愚行を思い出した。
絶頂の悦びの中ですっかり忘れてしまっていたが、なにしろ淫魔であるセネアに、性的な部分でプライドを傷つけたのだ。
セネアは覚えていて当然だろうし、許してくれる訳などあろうはずがない。
そんな青ざめた令を無視するように、セネアのペニスがピタリと令にあてられる。しかしそこは……
「そ、そこ違うっ! それに……ダメ! まだ、まだ身体が……すぐはダメえぇ!!」
ペニスがあてがわれたのは、なんと菊門だ。しかもまださっきの絶頂の余韻が冷めていない。
まだ敏感なままの身体にこれ以上の快楽を加えられるなど、絶対に耐えられそうになかった。
「駄目って言ったのに止めてくれなかったのは誰かしらね? 大切な人のお願いを無視する人には、罰が必要だと思わない?」
何故かセネアは嬉しそうに笑っていた……いや、見た目だけで多分怒っている。
自分の事を棚に上げて……などとは言えるはずがない。ギャクでも言える雰囲気ではない。
ある意味ストレートに怒られるのより100倍恐い状況だ。
「ご、ごめん! もう、もうしないから……セネアさん、だから……ね?」
「ふふふ……駄目!!」
「まっ……やあああああぁぁぁ―――ッ!!!」
セネアが(青筋浮かべた)笑顔のまま容赦なく令の後ろを貫いた。
途端に令はびくんと身体を仰け反らせ、軽くイってしまう。
「さあ、朝まで何回イけるか試してあげる! まずはお尻で……イっちゃいなさい!!」
「やああぁぁッ! いきなり激しくしな……あくううぅっ!! あああああぁぁ―――ッ!!」
セネアが腰を振り始めた途端、令はもう鳴かされイかされ続ける以外に何もできなくなった。
当然そのまま絶頂まで一直線。結局この晩、令はあらゆる体位で何度となくイかされ続ける事になる。
セネアに貫かれ、喘がされながら、令はちょっぴり自分の判断を後悔したくなった。


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