ヴァルターはすぐさま私の唇を塞ぐ。突然の行為に抗う事もできず、彼の舌が私の口内を蹂躙する。
「んんんっ!……んんっ―――ッ!!」
 咄嗟に顔を背けようとするも、ヴァルターは私の上に圧し掛かったまましっかりと私を押さえつけているので、
まったく身動きができない。
そしてそんな私の慌て振りを尻目に、彼の唇は何度も私の唇を吸い上げ、その舌がこちらの舌に複雑に絡ませられる。
――――こんなっ……いや……だ……やめてくれっ!!
 口に出せず心で叫ぶ声など、当然聞いてもらえるはずもない。そしてそれを見越したかのように彼は乱暴に舌を絡めてきた。
そんな成すがままの一方的な接吻が続くにつれ、何故か少しづつ抵抗の力が入らなくなってくる。
そんな自分を必死に奮い立たせようとするが、今度は肝心の思考が曖昧なものになっていく。
――――な、なぜ、こんな…………
 そんな意思が少しずつ削がれていく感覚に私の心が恐怖を覚えた頃に、それはようやく終わった。
「い、いきなり何をする!!」
 口が自由になり、薄れた思考が戻ってきた途端、私は思わずヴァルターに怒鳴り散らした。
しかし彼はそんな私を見て苦笑する。
「たかがこの程度で抗議か? それで中身が無い人形たぁ笑わせる」
「あっ!…………う、うるさい!」
 明かに予想の範疇で用意してあったであろう彼の言葉に、私は思わず再抗議しかけ、そこで言葉を止める。
反論すれば彼の思うツボだからだ。無言になった私を見て、彼が笑う。
「“期待できない中身”は黙っていてもらおうか。残念だがお前がそう言った以上、とりあえず何を言おうと止めてやらん。
当然それで良いんだろう?」
「あ、当たり前だ……」
 私の返答にヴァルターはにやっと笑うと、今度は首筋に顔を埋める。
そしてその舌先を静かに肩から胸元に向けて走らせ始めた。
 途端に体がぞくっっと疼く。ただ肌を舐められているだけなのに、信じられないくらいそれが敏感に伝わってくるのだ。
かすかに荒くなる息を吐きながら、私は全身が少し熱を帯びている事にようやく気が付いた。
――――さっきの……キスで……?
 咄嗟に浮かんだ考えを、私は目をつぶって否定する。
これではまるで、先ほどの彼の行為に何かの感情を覚えたと認めているようなものだ。
だが、目をつぶってしまった事が、さらに深みへの落とし穴となった。
「んっ…………ふ……あぁっ!」
 突然脇から胸のあたりにぞわぞわっとした感覚を覚え、不覚にも恥かしい声を上げてしまう。
それは彼が私を撫でまわしている感覚。目を閉じてしまった事で、より敏感にその刺激を感じてしまったのだ。
 舌が、首筋からふくよかな胸のラインをなぞるように描く。
 左の手が、脇から腰にかけてのくびれたラインを優しく刺激する。
 右の手が、腹からなで上げるように胸下までのラインをなぞり、胸の双球をせり上げるように押す。
 それは女しか持ち得ない、流れるような体の輪郭を強調するような動き。
そして何より、それを自分が持っている事を否応なく意識させられる動きだった。
 あの日から、もはや自分のものではないと思っていたこの体。心がこんな体になった事を認めてはいなかった。
だが、今むりやり与えられているこの感覚は、そんな彼をあざ笑うかのように女を私の心に擦り付ける。
“この体は、お前の体なのだ”と。
 女の体に心が犯されるような恐怖を覚え、目を開き私を弄ぶヴァルターを見る。
すると鎖骨のあたりに舌を這わせていた彼は、私の視線に気が付くと悪戯じみた笑みを返した。
――――くッ! わかっててこんな事を。
 まるでこちらの心を見透かしたかのような彼の態度に怒りを覚えつつも、こちらからは何も言い返す事ができない。
無論それも彼の計算の内なのだろう。
そしてそんなこちらの狼狽をよそに、彼はそれまで手をつけなかった胸の頂の頂点に舌を這わせた。
 「んあっ!……んんんんっ!!」
 ヴァルターの両手が胸の双球をせり上げるように撫で上げ、その舌が頂を舐め上げる。
途端に漏れた声を、私は両手で口を塞いで押えた。だが、執拗に動く彼の手や舌は止まらない。
次第に強くなる刺激を、私は口を押えたまま首を振って無理矢理押し止めた。
――――こ、こんなもの、ただ体を触られているだけだ!
 心で自身を叱咤し、何事もないように振る舞おうとする。
だが「ただそれだけの事」が体に火がついたかのように熱く火照らせ、
なによりその刺激が私自身の体から発せられているという事実は押え込みようがない。
 揉まれ舐められるたびに、それが“自分の胸”として心に焼き込まれていくような感覚を、私は必死に否定する。
だが、すでに記憶にしか根拠のない古き感覚は、容赦なく新たな感覚の前に蹂躙されていくしかない。
だから声を上げず、その感覚を受け入れないという事が、この体が本当の自分ではないという意思の最後の砦だった。
――――いや……だ。声だけは…………上げるものか!
 容赦なく襲いかかるその“感覚”を、意思の強さで押え付ける。
しかし余計な事を考えると、そこからすぐに崩れそうになってしまう。
だから私は声を押える事だけを考え、そのヴァルターの行為が終わるのを、ただひたすら待ち続けた。
 それかどれほどの時が過ぎたか、根負けした彼はようやく私の胸から顔を上げた。
「お前さんも、随分と強情だな」
「うる……さい……そんなことは…………」
「もう息絶えだえじゃねぇか。体だって、ほらな?」
 そう言うと彼は、私の腹から足までを撫で上げる。
「きゃうっ、んんっ!!」
 途端に襲いかかる“ぬめり”とした感覚に私は思わず声を上げ、そしてあわてて口を押えた。
「こんなに体中汗まみれになるまでがんばらなくても、なぁ? 声出さなくても、どうなってたんだがバレバレだぜ?」
 彼に言われ、私はようやく自分の状態に気が付く。いつのまにか私は体中を汗で濡らせていたのだ。
だが息が苦しくまともに反論する元気もない。私は天井を見上げ荒い呼吸を繰り返した。
 その時、不意に両手首を捕まれる。次いで内股に何かが当たるような感じ。
さすがにこれには私も顔を上げ、視線を向けざる得なかった。
だが、その無意識に向けた視線の先で行われていた事にパニックを起こしかける。
 ヴァルターが私の両手を掴んで、さらには抱えるようにした両腿の間に頭を挟んでいたのだ。
「いつまで強情張ってられるか、まあがんばれ」
「ま、待てヴァルター!!」
 咄嗟に体を動かして逃れようとするが、両腕を押えられたこの姿勢ではどうにもならない。
そして次の瞬間、秘部にざらりとした感覚が襲いかかった。
「ひゃううぅっ!! やっ……ああああっ!!」
 彼の舌が肉芽を撫でたのだ。
咄嗟に手で口を押えようとしたが、今度は両手首を捕まれているためそれができず、虚しく手をびくんと跳ねさせただけ。
その刺激に無理矢理引き出された驚きの声と嬌声の混じった喘ぎを止める事ができなかった。
そして両足は肩で押え付けられるようにされた上、股に顔を埋められているため、いくら暴れても彼を押しのける事はできない。
 もはや一切の反抗の手段がない状況。顎に力を入れて、なんとか口だけでも開けぬように努力する。
歯をガチガチと鳴らしながら必死に耐えるが、それも僅か3、4度目の舌の感覚の前に、至極あっけなく陥落してしまう。
「あんっ、ふあっ……ああぅ、いやああああぁっ!」
 あとはもう、されるがままだった。そして体が熱くなるごとに理性が薄れていく。いや、理性の言う事を体が聞かないのだ。
いつのまにか手は拒否するどころか彼の頭を秘部に押し付けるような形になり、
腰はまるで彼を求めるかのように大きくグラインドする。
そして私の両手を押え付ける必要のなくなった彼の両手は、
まるで私にそれを意識させるかのように腰、尻から太腿を撫でまわす。
 そう、彼は明かにそれを意識している。私の体のあらゆるところを刺激し、この体の「女」を目覚めさせようとしているのだ。
彼に撫でられた部分がより熱く火照り、その感覚がより正確な体のかたちを思い浮かばせる。
そしてその感覚が増幅するたび、心に私が女である事が焼き付いてしまうのだ。このままでは、心すら体に飲み込まれる。
 それに気付いた途端、私はすぐさま彼を払いのけようとした。だが、それはとうに手遅れだったのである。
その手段である自身の肉体はすでに“感覚”に溺れ、心の言う事を聞こうとはしない。
それどころか自身の肉体は、これまでその存在自体を否定してきた心に対しての反撃だとばかりに、
ヴァルターの手先になったかのごとくその“感覚”を心に流し込んでくる。

 “この体はあなたのものよ”

――――ちがう。こんなものは嘘だ!!

 “そしてこの体は紛れも無く女のからだ”

――――それは私のものじゃない! わたしは……!

 “受け入れなさい。あなたは女よ”

――――違う違う違うちが……!!

 「んあああっ! やめっ……これ、以上は……ふあぁぅ!」
 最後の抵抗も、自身の嬌声によって打ち消された。
最後に残ったのは、最初に私が抵抗したその“感覚”、それは女の体から発せられる“快楽”だった。
そしてその頂が近い事を本能的に意識する。
 「いやだ……やああぁっ! 来るな、やめっ……あああああッ! 来るなあぁっ!!」
 もはや理解を超えたその快楽に、心が悲鳴を上げた。
全身が燃えるように熱くなり、その感覚が体中で最後の爆発に向けて荒れ狂う。
そんな心の主導権すら奪われる未知の快楽に、私の中の男が恐怖を覚えたのだ。
だが、ヴァルターと、そしてなによりこの体が、容赦なく私の心を責めたてる。体にすら敵対された心に、もはや勝ち目はない。
 刹那、私はその頂に到達した。
「いやっ……ああああああぁぁ――――ッ!!!」
 びくんっ!っと体を振るわせ、私はからだをのけぞらせて大声で叫ぶ。
体の感覚に全てを奪われ、真っ白な光りで塗り潰された心の中で、私は例え様のない肉の悦びに打ちのめされる。
 この瞬間、私はこの肉体を受けれてしまった。いや、受け入れさせられてしまったのだ。
今までその存在を否定していた女の体での記憶は、この鮮烈な快楽によって抹消不可能な記憶として心に書き込まれてしまった。
だから、もうこの肉体を無視して心を形成する事はできない。
 私はあの禁呪を受けた日より、今初めて自分が女であるという事実を認めたのである。
 荒い息を吐きながら、とてつもない女の快楽の余韻に浸っていると、ヴァルターが私を覗き込んできた。
それもしてやったりという顔で。途端に私は、先ほどまでの状況を思い出した。
「どうだい、今の心境は?」
その言葉には、色々な意味があるのだと思う。だが私はそのこちらの心を見透かしたかのような笑みが気に食わなかった。
何より強がっていた手前、わずかでも状況を受け入れかけた自分を知られるのはとてつもなく恥かしかったのだ。
「こ、これがどうしたというのだ! そちらが一方的に私を弄っただけであろう!」
「それにしちゃあお前は、途中で俺の愛撫から逃げようとしなかったか? あれは立派な意思表示だと思うんだがね」
「そ、そんなことは……あ、あれはただ、驚いただけだ! そう、驚いただけで……」
「ふ〜ん、じゃあ、次だな。当然逆らわないんだよな?」
「つ、次…………?」
 突然の彼の要求に、私は疑問を挟む。見ると彼はいつのまにか裸になっていた。
私が達し放心していた最中に脱いだのだろうか。が、次の瞬間私は凍り付く。
私が男の頃に持っていたモノよりも二周りは大きいであろう股のそれを、私の秘部にぴたりと押し当てたからだ。
 じゅくり、と音がする。皮肉な事に私の体は、心とは裏腹に完全にそれを受け入れる準備を終えていた。
しかしヴァルターは、そこであえて動きを止める。
「さて、どうする? お前が“ごめんなさい、私は人形なんかじゃありません”って詫びるなら、
その後で拒絶の意思表示をするのもアリだぜ?」
 それはあきらかな兆発を含んだ言葉だった。その態度が、一瞬恐怖に震えた私の心を再び激高させる。
ようするに、私の決意をあざ笑い愚弄しようという魂胆か。そう結論付けた私の言葉は、一つしかなかった。
「勝手に……しろ! このような道具の肉体に欲情を向けたいのだろう?何を反対する必要がある!
モノはモノのように扱ったらどうなのだ?」
 怒りにまかせ乱暴に言葉を吐く。言ってしまってから、心の中で何かが悲鳴を上げたが、それを強引に黙殺した。
だが、それを聞いたヴァルターは怒る事もなく、ただ私の両足を手で抱え込んだ。
「じゃあ、好きにやらせてもらおう。だが、その前に一つだけ話しておくとしようか」
「……何だ?」
 どうせなら早くしろとばかりに私は彼のもったいつけた言葉に乱暴に答える。
そんな私を彼はいささか表情の読めない複雑な目で見下ろしていた。
「禁呪である性転の法は、本来我が魔族の内で生み出された法だ。
こいつは元々他人を欺くために生み出されたもので、それ故に禁呪になったワケなんだが……」
「それが……何だと言うんだ?」
 突然の、今までの行為と何の脈絡も感じられない話に私は口を挟む。だが彼はだまって聞けとばかりに話を続ける。
「つまり、一方通行じゃダメって事だな。悪巧みに使うんなら元に戻れなきゃ意味がない。
逆に戻せない魔法なら、それはそれで悪巧みに使えるから、やっぱり禁呪になるんだろうがな」
 何か話が微妙な方向に進んできた。それも妙に引っ掛かる方向で。私は咄嗟に彼の言葉からすぐに思った疑問を口にした。
「まさか……戻れるのか? エリシアは二度と戻れないと言っていたが、嘘なのか!?」
「結論から言ってしまえば戻れる。ま、条件があるんだがな」
「そ、その条件とは?」
 思わず高い声を出して彼に問うてしまう。そう、明かに私の心は期待していた。
なにしろすでに諦めていた事に、ひょんな事から可能性が出てきたからだ。
「条件は、性の交差。つまりヤって中に出したり出されたりすると、二度と戻れない」
「えっ……!?」
 その言葉を聞き、内容を理解しかけた途端、今現在の状況を見て恐怖する。
そしてそんな私を見下ろしていたヴァルターは、途端に意味ありげな笑みを浮かべた。
「これでさようならだ。“レスター王子”」
「ま、待って! やめてくれっ! お願いだか…………あうっ、きゃああああああぁッ!!!」
 懇願は最後まで語られる事はなかった。私が思わず腰を引こうとした刹那、彼のモノが勢いよく私を貫いたからだ。
破瓜の激しい痛みに、私は我を忘れて悲鳴を上げた。
「い、痛い! やめっ……ヴァルターお願いだからやめ……うああぁっ!」
 痛みのため声が声にならない。肩と腰をしっかりと押えられ、
決して逃れられぬ姿勢で彼は自身のモノを容赦なく打ち付けてくる。
破瓜の痛みと、望みを立たれる恐怖から私はプライドもなにもなく泣き叫ぶ。だが、彼の動きは決して止まらない。
「中は……お願いだから中は……きゃあっ! や、やめ……て……くぅっ!!」
「残念だが、モノのように扱えって言ったのはお前だからな。望み通りにしてやるよ!」
 私の言葉を逆手に取り、ヴァルターは行為を止めない。いや、はなから止める気など無かったのだろう。
私は悲鳴を上げながら、彼になすがままにされるしかなかった。
「痛い! 痛いっ! あ、あ、ああっ、ああああ――っ!!やああぁ――っ!!」
 わずかばかりに許された行為は、泣き叫ぶ事と、
わずかに自由になる範囲で腰をくねらせ痛みから少しでも逃れようとする事だけ。
しかしそれは逆にヴァルターの被虐欲に火をつけるだけだった。
まるで自ら蟻地獄に落ちていくかのごとく、彼の行為を助長してしまう。
「痛がってる割には、ずいぶん締めつけてくるじゃねぇか。 体は俺を受け入れたくてたまらないようだぜ?」
「そ……そんなことなっ……あうっ!! そんなっ、さらに激しっ……痛っ、いやだあぁっ!!」
 少しづつ抽挿速度を上げられ、そのたびに体の自由を奪われてゆく。だがそれは痛みだけのせいではない。
腹の奥底で僅かにくすぶっている痺れるような感覚を生み出す「何か」があり、それが私の自由を奪っているのだ。
 そしてしばらくの後、一定のリズムを刻んでいた彼の腰の動きが荒く激しくものに変化する。
途端に私は絶望を覚えた。元は男だったからこそ、その意味がわかる。
そう、この絶望の宴の終わりが近いという意味だ。
「さあイくぞ、たっぷり受けとってもらうぜ!」
 彼の太い腕にがっちりと腰を抱きとめられ、今の私の細腕では彼を押しのける事もできない。
それどころか手足は言う事を聞かず、まるでそれをを受け入れるかのように彼の首や腰にしっかりと絡まってしまう。
もはやいかに暴れようとしても逃れる術はないのだ。
 そしてなにより、処女を捨て「女」にされたばかりの私の体は、
この破瓜の痛みの中にかかわらず雄の全てを受けれようと、強く彼のモノを締め上げている有様。
 私にできることはもはや、首を振って髪を振り乱しながら、ただひたすら泣き叫ぶ事だけ。
 そして、自分の中で彼自身がびくんと震えた途端、私は最後の瞬間を意識した。
「やだ……いやだいやだぁ!…………ああぁっ! いやああああああぁぁっ!!!」
 思いきり突き上げられた途端、私の膣(なか)に熱いそれ注ぎ込まれる。
「それ」が腹の中を満たす感覚に、私は雌の悲鳴を上げてベットに崩折れた。


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