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 永い夢を見ていたようだ……。
 一の宮は久方ぶりに目覚め、身を起こす。
 夢の内容は、ひどく生々しかった。彼が愛して止まない左大臣の二の姫・美子に忍んでいき、想いを遂げたのだ。最初、姫は嫌がっていたが、応えてくれるようになった。どう思い出しても、淫らで、幸せな夢だった。自分の手により姫を女として目覚めさせ、悦楽をともに味わう……叶うことのない、せつない夢だった。
 自嘲の笑みを浮かべると、一の宮は下肢をまさぐった。さいわい、夢精の跡はない。が、それが不自然であった。あれほどの夢を見ながら、なにもないとは……。一の宮は首を捻る。
 ふと、聞いたことのない香が薫りがあることに気づく。
「梅香……?」
 すぐに察しはついた。が、自分が持っている香ではない。梅香は、どちらかというと女が好むものだ。不可思議に思い、一の宮は立ち上がる。
「伊清、伊清ー」
 呼ぶが、反応がない。
「居ないのか……? どこにいったのだ」
 仕方なく、御帳台から出ると、水指しを取りにいった。そのとき、やっと伊清が顔を見せた。
「伊清、どこにいっていたのだ?」  
 咎めて、一の宮は目を見張る。
 
 これは、夢の続きか。
 居るはずがない、こんなところに、美子姫が……。そう思い、一の宮は目を擦る。が、まさしく、姫は目の前に居た。
 姫は、必死でなにかを言おうとしているが、声にならないようだ。
「よ、美子姫……? どうして、こちらに?」
 一の宮がそう言うと、姫ははらはらと涙を零した。どうしたものかと彼が立ちすくんでいると、姫が頭を振りながら抱きついてきた。咄嗟に、彼は姫の肩を掴む。
 はっと、姫のうしろを見ると、伊清が頭を垂れていた。
「伊清、これは、どういうことだ? どうして、姫がここにおられる。姫は入内前の大事な御身ではないか」
 一の宮は姫を離す。姫は蒼白になり、両の手で面を覆った。
(どうしたというのだ……。これでは、わたしが姫を泣かせたようではないか)
 彼は居心地が悪く、姫から目を反らす。そこに、伊清が声を上げた。
「あの、殿が夢だと思われている姫ぎみとの契り、あれは夢ではないのです」
「なんだと!?」
 唐突なことに、一の宮は声を荒げる。びくり、と姫は肩を峙たせた。  

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(ああ、やはり、一の宮さまにとって、わたくしとの契りは夢でしかなかったのか……)
 美子のなかで、希望が大きく崩れていく。
 伊清は一の宮にあの夢の仕組み、方士の秘薬のこと、そして、美子がいる理由を話した。一の宮は嘘だ、とまず呟き、申し訳なさそうに美子に目を充てた。
「あれが、わたしだけの夢ならばよかったのだが、姫に、あんな浅ましい思いをさせたなど……」
 一の宮は、罪悪感に目を臥せる。
「違いますっ!」
 美子はそう叫んだ。決して、浅ましい思いなどはしていない、と。が、声は届かない。なんども叫ぶが、一の宮に声は届かなかった。
(どうして……!?)
 愕然として、気がつく。生き霊の一の宮が、何かを告げようとして、声にならなかったことを……。
いまの美子も生き霊であり、同じ条件で声がでないらしい。
(そんな……)
 美子は両手で口を覆った。涙が、溢れて止まらない。
 一の宮も、思い出していた。夢の中の自分が、どんなに姫に想いを告げようと届かなかったことを。が、こころから、伝えたいと思ったことだけ、きっちりと伝わった。
「姫……なにを、言おうとなさっているのです?」
 ふるふると、美子は首を振る。涙が、空に散る。
 一の宮は溜め息を吐き、せつなく、傷ついた面持ちで告げた。
「本当は…わたしもどうしたらよいのか、解らないのです。
 わたしは、あれを夢だと思っていた。現実なら、きったあなたを抱かなかっただろう。だが、本心から、あなたを求めて抱いた。それは、本当です。
 いまでも、目の前のあなたを抱き締めたくてたまらない。でも、それはしてはいけない。あなたは東宮に入内するのだから……」
「……や」
 美子は、いや、と言おうとした。すると、語尾だけが途切れて、聞こえた。本当に、嫌だった。入内などしたくなかった。ずっと、この人と一緒に生きたい。
「姫……!?」
 思わず、一の宮は美子の腕を掴む。美子の身体から薫ってくる梅香が、段々と薄まってきているのに気がついた。
「ひ、姫さま! もう残された時間が……!」
 伊清が、必死の相で美子に伝える。
(いや、これだけのために、ここに来たわけじゃない。まだ、伝えられていない。伝え……たい!)
 震える口元で、美子は最後に、たったひとつの伝えたいことを、こころから口にする。
「あい…し、て、いま…す……。愛して、います……」
 やっとのことで、声が、届いた。本当に、この言葉だけは伝えたかったから。
「わたくし、あなたの声を、あなたを、知りたい……。あなたと、生きたい……」
 梅香が、みるみる薄れ、美子の姿も掠れてきた。
「姫っ!」
 一の宮が、名残りだけ残る美子の陰を抱き締める。本当の彼の暖かさを知り、美子はたまらなくなった。
「さよならなんて……いわないで……」
 身体が消えかける寸前、美子はそれだけを言って、消えた。梅香の残り香だけが狂おしく残る。一の宮は梅の香を閉じ込めようと、手の平を握りしめた。
「殿っ、きっと、美子姫は待っておられますっ!
 姫が、ここまでなされたのです! 男のあなたが、弱気になってどうなさるのですっ!
 ここで別れてしまえば、二度と姫を腕に抱くことが叶わなくなりますよっ!」
 伊清が激しく言い募る。一の宮は額に流れる汗を拭うことも出来なかった。
(姫……姫!)  
「もう…どうなっても、よい!」
 勢いよく立ち上がると、一の宮は伊清を蹴倒さんばかりの形相で寝所から飛び出した。
 
 美子の御帳台の香も、同じ頃切れた。不安げに佐穂が美子と香炉を見比べる。
「ああ、うまくいかれたのかしら……」
 手を組み合わせ、佐穂は呟く。そのとき、かすかに美子の指が動いた。
「姫さまっ!?」
 美子の目覚めが、近い。はらはらと佐穂は空を見上げる。
 すると、大きな足音が廊下を踏んで近づいてくる。はっと、佐穂は顔を上げた。  
 蘇芳の狩衣を翻し、一の宮が姿を現わしたのだ。一の宮は、はじめは佐穂に目を止めたが、部屋の奥にある御帳台を目に捕らえ、几帳を脇に避けて寝台の前まで進みでた。
「姫……」
 美子の遊魂はいまだ現し身に戻っていない。
 あどけない面ざしで眠っている美子の手をとると、一の宮は厳かにその手に口づけた。ぴくり、と美子の肩が揺れる。
 力のない美子の身体を抱き上げると、一の宮は部屋の入り口で座り込んでいる佐穂を見た。
「伊清がそなたの車も用意してきている。それに乗り込みなさい」 
 言いおいて、長居は無用と部屋をあとにする。佐穂がそれに続いた。
 まだ、誰も侵入者に気づいていない。護衛の者さえも。いまのうちに殿舎から出なければならない。
 美子を抱えた一の宮は、階から庭に下りた。連なった部屋の前を横切り、いま来た築地塀の隙間に向かう。と、ある部屋の前で声を掛けられた。弾かれたように振り返ると、なんの衝立てもなしに女人が立っていた。
「一の宮さま、でございますか?」
 若い女の声だ。面を扇で隠している。
「そう言うそなたは、たれか?」
 反対に問う。
「美子の妹でございます」
「すると、三の姫君で?」
 薔子が頷いた。
 あろうことか、三の姫に見つかった……一の宮は身構えた。が、薔子は騒ごうとはしない。怪訝な眼差しで一の宮は見る。
「どうか、姉が起きたら伝えて下さいませんか。
 あとのことは、わたくしに任せて、と。わたくしが、父上の娘として責務を果たします、と」
「姫君……」
 薔子の決意に、彼は足を止めた。が、薔子に促される。
「さ、早く。見つかってしまいます。お気をつけて」
 そう言い残し、薔子は殿舎の中に入った。未来の后に無言で頭を下げ、一の宮は屋敷から無事抜けおおせた。

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 からから……と車輪が回る音がする。
 美子は優しい腕に抱かれたまま、朧にその音を聞いた。鼻孔に、一番聞きたかった薫り……沈香が忍び込んでくる。美子はゆっくり目を開けた。
「……一の宮さま……」
 一の宮に抱き締められ、美子は眠っていたのだ。狭くて薄暗い空間……車輪の音、身体に感じる揺れ……美子は屋敷の外にいることを悟った。
 美子と目が合い、一の宮は微笑んだ。
「そなたを、迎えにきた」
 身体を起こし、美子は一の宮と見つめ合う。
「本当に……? もう、離れなくてよいのですね?」
 みるみるうちに涙が浮かんでくる。哀しみの涙ではない、喜びの涙が。感極まって、美子は一の宮に抱きついた。
「嬉しい……! 本当に、本当に、ずっと、あなたと一緒にいられるのですね? あなたのお声を、聞けるのですね?」 
「ああ、いくらでも……! もう、わたしも何も怖れはしない。なにも、諦めはしない!」
「ええ……!」
 ふたりはい抱き合い、熱く接吻を交わした。夢でも何でもない、確かな感触、温もりがあった。堅く抱き合い、何度も口づけを交わす……誰も阻むものはなかった。たしかに、ふたりは幸せの絶頂にいた。
 一の宮の邸宅に到着すると、主人の突然の行動に驚き起きた仕人達がさまざまな表情をして出迎えた。一の宮が美子を横抱きにして入ってくると、みな、手をつき頭を垂れた。その面のなかで、この女人は誰だろう、という問いが一往に浮かんでいる。美子は吹き出したいのを堪えた。
 邸宅のなかは、ほのかに沈香が薫っていた。一の宮の寝殿はとくに濃く、まるで沈香に包み込まれているように感じられる。
「ああ…この薫りだわ。夜、訪れる人に抱かれるたび、聞いていた香は」
 恍惚として、美子は呟く。その言葉を一の宮の唇が吸い取った。ふたりに気兼ねしてか、召し使いたちはみな引き下がっている。ひっそりと音もなく、まさしくふたりきりだった。
 男のもどかしげな手が女の袿を脱がせ、袴の帯を解く。女も男の狩衣の紐を解く。互いの脱ぎ捨てられた衣から香の薫りが立ち上がり、混ざりあう。
 美子を褥に寝かせると、一の宮は女の剥き出しの肩に触れた。その手が、小刻みに震えている。美子が問いかけの目を投げると、一の宮は熱い吐息を吐いた。
「これも…夢ではないのだろうか。いま、この手が触れているそなたの肌も、香が見せる幻ではないのだろうか」 
 ふふ、と微笑み、美子は男の手を取り自分の乳房のうえに乗せた。はずみで一の宮の手が束の間離れ、もう一度恐る恐る触れる。
「この鼓動が、夢だと思われますか。こんなに弾んで、あなたの手にも伝わってきているはずでしょう」 言いながらも、美子の頬が、項が薄紅に染まっていく。一の宮の手の平のなかで、乳房も変化し始めていた。一の宮は堅くなった乳房の突起を、自分の指で確かめる。触れられたために、乳首はますます尖り、男に向かって突き出していた。
「ああ…っ、一の宮さま……っ」
 せつない溜め息が美子から漏れると、一の宮は女のほっそりとした身体を激しく抱き締め、食い付くように接吻した。貪るように舌を絡めながら、男は女の身体をまさぐる。始めて触れたはずなのに、その手は女の身体を確かに知っていた。どこを摘めば女をさえずらせ、どのように捏ねまわせば女を悶えさせられるかよく知っていた。
 鎖骨を辿っていた唇が乳房にくると、美子は一の宮の頭を抱き締めた。男は乳首をくわえ、舌先で舐め廻す。もう一方の乳房を男の手が柔らかく揉みしだく。女は啼き悶えた。
 一の宮の腕の中にいながら、美子は今頃、自分の家がどうなっているか考えていた。そろそろ、自分が攫われたことを父が知ったか、自分を逃がした妹・薔子がどういう目にあっているか……。頭のいい薔子のことだ、たぶんうまくやっているだろう。漠然とではなく、事実として美子は受け止めていた。
(でも……薔子には悪いことをしてしまったわ。わたくしの我が儘で、あの子の自由を奪ってしまった)
 そう思いながらも、薔子はもともと東宮妃になることが理想と捕らえていたから苦痛ではないだろうと結論している美子がいる。掠めた思考も一の宮の手が下部に下りていき途絶えた。
 腹部と腰を撫で回していた男の手が、ゆっくりと女の紅色の花弁に届く。蠢く秘密の花園から蜜が滴り、男を待っていた。数度見られたことがあるが、美子はいまだ恥ずかしい。
「いや…そんなに見ないで……」
 甘い声が震える。
「恥ずかしい?」
 一の宮に問われ、頷く。
「どうして、こんなに美しいのに」
 そう言いながら、男は指で花核を軽く摘んだ。女は息を詰まらせる。やめて、と女は言い募るが男は聞かない。
「そなたはわたしを知りたいと言うが、わたしもそなたを知りたい。そなたのここは、どんな反応をするのか、そなたの味は、甘いのか……」
 芯を弄びながら、男の舌が蜜を舐める。責められれば責められるほど、雫は溢れ続け、媚肉が弛んでくる。舌が中に侵入すると、耐えられなくなり身体を魚のように跳ねさせた。男は口を離すと、指を泉のなかに沈めた。淫卑な音をさせて指を抜き差しさせる。男がどんな目で見ているのか気にしている余裕もないほど、女は朦朧として白い身体をのたうちまわらせていた。男が指を引き抜くと、女は思わず腰を突き出してしまう。美子は余計に恥ずかしくなり顔を反らすが、一の宮の両手に頬を挟まれ見つめあってしまう。肩で息をしている美子に、満足そうな目だ。
「み、見ないで……」
「見ないものか、これほど淫らで美しいのに」
 美子の顔がさらに紅潮する。
「そなたは、わたしのことを知りたいと言ったな」
 言いながら、一の宮は美子の手を取り、勃起したものを握らせた。女は放そうとするが、男は許さない。
「い、いやです、やめて」
「嘘だ。わたしのことを知りたいのだろう。それに、今宵が始めてではないはずだ」
 美子は何も言えなくなる。観念し、身体をずらすとそれをくわえこんだ。一たん行動に出ると、羞恥が消え、行為に専念した。男の呻きが聞こえ、愛しい。火を付けられたまま放っておかれ、飢えている女の泉が耐えられず、狂ったように男にしがみつき女陰を男根に擦り付けた。
「大丈夫…いま、教える」
 男は仰向けに横たわると、女の腰を捕らえ自分のうえに跨がらせた。待ち焦がれて蕩けている身体の中に、男が入っていく。と……
「あ……っ!」
 襲い来た痛みに、美子は一の宮の胸に突っ伏した。何が起こったか解らず、一の宮は美子を見て、はっと自分の下腹部に目を捕らえた。血が、腰から下に伝い落ちていた。
「そ…うか、そうだったのだ」
 納得し、一の宮は女の身体を浮かせると、自分の腰を引かせる。が、美子は頭を振った。
「やめて、止めないで」
 懇願し、美子は痛みを堪えながら自分で腰を納める。
「いいの…一の宮さまなら。わたくしに、教えてくれるとおっしゃったでしょう」
 熱く潤んだ瞳に迫られ、仕方なく一の宮は頷いた。
 下から乳房を手で包み込むと、男はゆっくりと腰を使いはじめる。倣って、女も腰を揺すった。痛みは初めだけだった。次第に早くなる動きと、胸を揉まれて身体の中の官能が沸き立ってくる。勝手に身体が動き出す。堪り兼ねた男は女の身体を下敷きに返し、激しく突き進む。女は鳴き声を上げていた。もはや忘我して猛り狂い、留まらない。締め付けてくる女の内壁が男を駆り立てる。燃え上がれば、互いに燃え尽きるのも早かった。声をあげると同時に爆発し、諸共に果てた。激しい熱が通り過ぎて、抜け殻になった身体を重ねたまま、ふたりは同じ波のなかを漂っていた。  
 一の宮が隣に横たわったのを見て、美子は笑った。
「……驚かれました?」
 素直に一の宮は頷く。
「ああ。あれだけ激しかったのに、まだ処女だったのだな」
「順番があべこべになってしまったのですね。ほんとうなら、乙女でなくなるのが先なのに」
「本当だ」
 冗談のように笑い交わし、互いに抱き合う。
「でも…本当に、よかった。相手が、あなたで……」
「後悔は、しないか。わたしは、不安定な立場にいる。これからそなたに苦労を背負わせるかもしれぬ。そなたの父上とも……」
 美子は頭を振る。
「いいのです。わたくしが自分で選んだのだから」
 微笑む美子に、一の宮は情熱的に口づけた。
 
 後日、左大臣邸から大きな荷物の数々と、一通の文が届けられた。荷物の包みを開いてみると、真新しい調度類と、美子と一の宮の季節の衣装が入っていた。
 文は、妹・薔子からだった。
『ねえさまに嬉しいお文を差し上げます。
 まず、わたくしがねえさまの代わりに東宮さまに入内することになりました。主上と東宮さまのお怒りは少なく、わたくしが入内すればお咎めはなし、とのことです。
 それと、この調度類は、わたくしと父さまとで選んだものです。父さまは最初は怒っていましたが、最後には許す、と言って下さいました。ねえさまとの関係も、今までどおりです。ねえさまが一の宮さまに嫁入りしたという形を取るそうです。よかったですね。
 わたくしは、東宮さまに入内することになったねえさまが本当はうらやましかったのです。でも、いまは違う意味でねえさまをうらやましく思います。
 わたくしも東宮さまとうまくいったら、と願うばかりです』 
 文を受け取った数日後、晴れてふたりは露見(披露宴)をし、世間に公表した。同時に、一の宮は皇位継承権を捨て、臣籍に下ることになる。これで、左大臣とのしこりは軽減した。
 
 これは、さらに蛇足である。
 一の宮に嫁いだ美子は十月十日後、赤子を生んだ。が、不思議なことに婚姻した夜から数えると日数が少しだけずれた。ちょうど、一の宮が夢となって美子に忍んできた夜と重なったのだ。まわりは何も気付かなかったが、親となったふたりは訳知り顔に目を見合わせた。
 未知に満ちた唐土の秘薬は、様々な謎を残しながら年月の流れの中に消えた。後代、魂を呼ぶ香を知るものは、誰もいない。
 
<完>




<あとがき>

 まぁ、読んでもらえれば解りますが、歴史物十八禁小説です。
 十八禁だから、一応、エッチくを目指してはいますが、ただエッチでは終わらせたくなかったんです。
 だから、こういう風になりました。
 香を作るところとかは、考証ナシで書いていますので、結構あてになりません(爆)。ので、あしからず。

 では、お目汚しですが、読んでいただければ幸いです。


長谷川彰子


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