スケープゴート
スケープゴート(Scapegoat)は身代わりや生け贄という意味ですが、心理学的には「ある集団に属する人がその集団の正当性と力を維持するために、特定の人を悪者に仕立てあげて攻撃する現象」を指します。
スケープゴートの例
集中豪雨で大規模の土砂崩れがあったときに、その一帯の土盛りに関わった業者が責任を追及され、マスコミから集中砲火を浴びるというのも、一種のスケープゴートと言えるでしょう。
自然災害での被害は誰にも責任を追及することができませんが、人災となれば責任追及が可能です。
そのため、いわゆる犯人捜しをして責任の主体が不明確であっても個人や特定の団体が攻撃されてしまいます。
人はあいまいなシチュエーションに耐えられず、明確な責任対象を求め罰することで安心したがります。
これがスケープゴーティングでその対象がスケープゴートになります。
もっと身近な例では学校などでのイジメがあります。
いわゆるいじめられっ子がスケープゴートにされることで、クラス全体の平和が維持されます。
しかしその子が転校などでいなくなれば次の子供がスケープゴートとして選ばれることになります。
さらに自殺などでイジメが問題化すれば、次は教師や校長などがスケープゴートになりマスコミや世間から非難を浴びるのです。
スケープゴートが必要な理由
人がスケープゴートを必要とする第一の理由は煩悩だと言われています。
人は誰でも人には言えない邪悪な思考を持っています。
たとえば、「非合法な手段を取っても金持ちになりたい」「卑怯な方法を使ってもライバルを蹴落としたい」という考えです。
こうした考えや感情を人は普段抑圧していますが、これを他者に投影して解消しようとするのがスケープゴーティングです。
具体的にはユダヤ人は金銭欲が強いと思われ非難されていましたが、これはキリスト教徒が金銭欲を抑圧していたため、それを解消するためにユダヤ人をスケープゴートにしたためということができます。
もうひとつの理由は人生が思い通りに行かないことに対する欲求不満です。
人生では自分の思ったとおりにはいかない様々な不幸や不可抗力がたくさんあります。多くの場合はこの不幸の原因がハッキリしません。
そのため、人は欲求不満を解消するため、より具体的な原因や敵を見つけようとするのがスケープゴートを必要としている理由につながるのです。