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私は有頂天だった。 

私の配属は希望したとおり特別諜報部隊に決まった。

ADDアカデミーは毎期4人から10人の合格者を作戦本部におくりこむ。もちろんトレーニーとしてだ。このうち、さらに選別され、あるものは保安部隊へ、あるものは攻撃部隊へ、そしてあるものは特別諜報・工作部隊に送られえる。特諜におくられるのは毎年最も好成績を残した卒業生1人か2人だ。物騒な銀河系とその周辺宇宙においてもそう頻繁に戦闘があるわけではない。ADDの中でもっとも活躍の場が多く、高い能力を必要とされるのは特諜なのだ。

ただ、私が有頂天になったのは特諜へ配属されただけでなく、自分の実地訓練官がドゥイエ大佐に決まったからだ。

ドゥイエ大佐。その名前はもはや伝説であった。外宇宙との更新が始まり、我々が銀河系における自然原理では理解できない世界の住人と接触するようになってからの最大の英雄。銀河を数多くの、いや、数え切れないほどの外敵からの脅威から救った男。その実像は常にもやに包まれてきたといっていいだろう。実際に彼にあったというものはADDの中でも少数だった。そして、その年齢も定かでなかった。どう考えても(彼の功績を並べてみると)地球年で70は超えているはず。でも最近の任務では若い肉体無しには実行できないような過酷な任務につき成功を収めているとのレポートもあった。『実は二人いる』、『クローンだ』、といったうわさや、『身体にアンララ星エイリアンの遺伝子を組み込んでいる』といった噂が絶えない。そのドゥイエ大佐に会える、いや、そのドゥイエ大佐と5ヶ月の間同じ船上で寝食をともにするのだ。

前夜、実地訓練の準備を入念に行いつつ(「どんな下着を持っていこうか・・・?」)憧れと、期待に胸をときめかせていたわたしは、本部で次のような会話が交わされているとは、夢にも思わなかった。

「本当に、本当にあの男を?! どうしてです?!!」

「ヒトミは一番優秀なエージェントなのよ。彼の経験と技を受け継げるのは他にいない!!」

「一番優秀だからこそ、私は心配、いや、反対しているのです。ドゥイエ大佐は一番いい教官とは限りません。特に女性隊員については・・・現に、これまで彼に預けた子達も・・・」

「・・・言うな。よくわかっているわ。」

「ブラク司令官・・・」

「彼女が試練を乗り越えられることを祈りましょう。」

 

次の日、滑走路ですれ違う先輩たちの視線が冷ややかなのを、わたしは嫉妬と勘違いし、無知な優越感に浸りながらドゥイエ大佐が待つ訓練艇に向かっていった。

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影の薄さ。それがはじめてこの伝説的な英雄に会ってえた印象だった。ドゥイエ大佐は小柄な私と比べてもそれほど背が高いわけども無く、体つきも普通だった。そして顔や表情も普通・・・というか、極めて貧相な感じだった。ほほはそげ、そして乱杭歯が剥き出しになっており、「これで英雄?」と思わせる。「白馬の王子」を期待していた私はがっかりした。しかし、その印象は実際のトレーニングが始まると一変した。ホロデッキでおこなわれる格闘術やサバイバル実習での大佐の指示はこれまで出会ったどのADD教官のものより適切でわかりやすくかつ、詳しかった。これまでみたことの無いような実践的なテクニック、知識、そして彼しか知り得ないような外宇宙からの敵に対する対処法なども教わった。アカデミーでの組み手でいつも教官を倒してきた私もドゥイエ大佐の前にはまるで太刀打ちできなかった。何度もフォールされた。最初はこの平凡な男に倒されて呆気にとられていた私も、やがて彼の力と技の前に圧倒され、組しかれるごとに徐々に憧憬の念にあつく身を炙られるようになっていた。しかし、その針金のような手で喉笛を押さえられ、マットに押しつけられ、組み手で負けたことでは説明できないほどに顔を上気させ熱く息を弾ませているわたしをみながらも、ドゥイエ大佐はクールにその日のトレーニングの終わりを告げるのだった。

(あああ、好きになっちゃいそうなのに・・・・)

私は悶々としていた。20代前半の健康な娘。それが宇宙船に男と二人で閉じ込められて。そしてその男は生命力旺盛で優秀なドゥイエ大佐。当時誰かがわたしの寝室にカメラを仕掛けていたらきっと濃厚なピープショーが楽しめただろう。

しかし、わたしが身体をもてあましていたのもつかの間だった。基地を飛び立って2週間後、訓練は次のステージに入った。訓練艇の疑似過重力装置がフル稼働され、わたしは常に2.5Gがかかる環境の中で基礎体力と敏捷性のトレーニングを課せられることとなった。これは応えた。まるで自分の体重を背負って走り回るみたいのものである。障害物のあるコースをた1ラップするだけでわたしは汗だくになり、2ラップ目は何度も何度も倒れながらそしてドゥイエ大佐の一転して厳しい叱咤の声に泣いて応え、ときとして休憩を哀願しながら14時間の訓練を終えた。

「このステージの終わりには一日10ラップをこなせるように。そうしないと終わらないよ。」

あっけらかんとしたドゥイエ大佐の言葉にわたしは気を失いそうになった。毎日、セットが終わってから泥のように眠りこけた。この時期、わたしは彼を憎んだ。(無茶よ!わたしをつぶそうとしている!!)本気でそう思った。しかし、その気持ちとは裏腹にわたしは徐々に、徐々に一日10ラップの目標に近づいていた。そして、このステージが始まってから15日経過したとき・・・わたしはついにその日の10ラップ終了を目前にしていた!

「あと5メーター、頑張れ!ヒトミ!

(はじめて・・・はじめて応援してくれてる!

意外なドゥイエ大佐の言葉にわたしは涙さえ浮かべながらラップの最後、急角度の坂をのぼっていた。前方にこちらを見ているドゥイエ大佐の姿が見える。愛しい!厳しくて、そしてこの上なくやさしい人・・・(人は極限状態になると判断力を失う。そのことを習うための訓練だったのかもしれない)

わたしはゴールを過ぎると同時に両手をひろげて身を彼の方に投げ出し大きく叫んだ「好きです!

しかし、その声はしわがれて殆ど聞き取れなかったに違いない。そして、両手でむなしく空をかきむしり、何の受身を取ることも無く、わたしは無様に樹脂のフロアに身を打ちつけ転倒した。

私は慌てて膝立ちになった。恥ずかしい・・・耳まで真っ赤になっているに違いない

「今ので最後だ。よくやったな。これまで見てきた訓練生と比べてももっとも早い達成だ。それにまだまだタイム改善の可能性がある。」

大佐が笑みを浮かべて私を見下ろしている。なんて神々しいんだろう。あ、手を差し出している。

ドゥイエ大佐はわたしを抱きしめた。小柄な大佐がこれほどにも大きく感じられたことは無かった、わたしはADDで最も頼りにされているこのエージェントの腕の中にすっぽり包まれていた。疲れもあっとろうけれども、それとは別の動機からわたしは顔を彼の胸にうずめ、身体を密着させていた。(あっ!”)それに気がついた私はびっくりした。わたしの腹部にあたるところで、あついふくらみがビクンと動いたのだ。ドゥイエ大佐の男性は熱せられた鋼鉄となってわたしのおなかを焼いたように感じられた。わたしは思わず後ろに下がっていた。

「今日は此処までだ、少し休みなさい」

わたしは名残惜しそうに部屋に戻り、そして泥のような眠りに… 眠れなかった。身体はつかれきっているのに・・・興奮がわたしを包んでいた。(大佐も、同じ気持ち???

***

そのよる、わたしは大佐に抱かれる夢を見ていた。長い、甘いキス、その唇は耳元へ移り、甘い言葉をささやき、そして耳の中へ舌を、軽く息を吹きかけわたしの心を激しくざわつかせ、狂うほどの悩乱に身を焦がせたあと、首筋にそって、そして肩口、体の脇を通って・・・

気の遠くなる様な甘い愛撫。 いつしか、私は大きく足を開いて彼を受け入れていた、そして身体を反らせ、身を打ち震わせて、ほとばしる愉悦につつまれた。圧倒的な至福感、目の前が真っ白になって、その白い光がカぁーっと、あまりのまぶしさ、明るさは目を刺して痛いほどだった・・・まぶしい、ああ、どうしてこんなに・・・ 目をぼんやりと開ける。 部屋中の明かりが煌煌とついていた。スマートアラームが作動し、「古代キリスト教教会の鐘」の音が鳴り響いていた。

「あっ、遅刻?!」わたしは毛布を跳ね除け、ユニットに駆け込んだ。ちょっと考えてからダイアルを回し、いつもとは違う設定でトレーニング用のタイツを蒸着し、あわててジムにかけていった。

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