はじまりの合図のキス

 ランガは那覇に住むようになって一年と少しになるのだが、那覇から出たことはほとんどないと言った。旅行らしきことはスケート仲間と宮古島に行ったくらいだという。その宮古島のビーチに感動したことを嬉しそうに話してくれた。

 それならば、ということで一泊二日の小旅行に彼を誘った。

 時間的に離島は無理だが、本島でも綺麗なビーチはそこここにある。

 さて、旅行はいいが政治家としての自分の立ち位置を考えればどう監視の目を向けられているのかわかったものではない。最悪ランガをスキャンダルの渦中に巻き込むことになる。やはりリスクは最小限に抑えるべきだろう。

 変に勘ぐられるのは面倒だ。かといってこそこそするのは性に合わない。外堀を埋めておけばいいと、まずは彼の母親から攻略することのにした。

 ランガはあっさりと「この人が、話していたスケート友達で、たまにアルバイトさせてもらっている人」と紹介してくれた。前もって彼が一泊二日の近場観光のプランを説明してくれたこともあってスムーズに話はまとまった。

 息子さんは責任を持ってお預かりし無事に家までお送りします。彼には給料以上に働いてもらっていますからご褒美ですよと。

「この子をどこにも連れて行っていなかったから助かります。お忙しいでしょうに、本当にいいのですか?」と恐縮し「よろしくお願いします」と何度も頭を下げられた。それと政治家としての自分の正体も変に隠せばそのことを知ったときに、かえって混乱させるだろうと判断し、さらっと名刺を手渡した。彼女は驚いたように目を見開き、名刺と愛之介の顔を交互に見た。そこは爽やかな神道愛之介スマイルで押し切った。胡散臭さなんて微塵も感じさせるものか。

 よし、母親の信頼は勝ち取れた。第一関門突破と考えていいだろう。多少の後ろめたさは見て見ぬ振りをしておこう。


 そして当日。忠に借りさせたレンタカーを使うことにした。神道家の車では少々仰々しい。

 多忙を極める愛之介にしてみれば、無理やりスケジュールを調整して捻出した貴重な休日だった。那覇からだとどう考えても日帰り旅行の移動距離なのだが、そんなところにすら行ったことないという彼だ。問題ないだろう。移動に時間を取られるのはもったいない。


 美ら海水族館でしばし遊んで今帰仁城 (なきじんぐすく)跡に立ち寄り琉球王朝の歴史に触れてもらった。

 それから宿泊予定のホテルがある北谷 (ちゃたん (サンセットビーチへ向かった。そこは夕日が美しい有名なデートスポットという俗っぽさはあるが、雪山育ちのランガなら十分楽しめるだろう。

 ホテルにチェックインしてビーチへと向かう途中、白いチャペルが見えた。ウエディングドレスの新婦とタキシード姿の新郎が階段をゆっくりと降りて行くところだった。そしてブーケトス。拍手と歓声が沸き起こる。

「教会で結婚式?」

「ああ、あくまでも結婚式専用の教会。リゾートウエディングだ」

「何、それ?」

「県外から新婚旅行を兼ねて、こっちで結婚式を挙げるカップル結構多いんだよ。沖縄にしてみれば貴重な観光資源だし、カップルにしてみれば安上がりに式、披露宴が開催できる上に新婚旅行も兼ねられる。あと、内地は梅雨で雨ばかりだけど、沖縄ならタイミングよければ梅雨明けていているからね。濡れずに憧れのジューンブライド結婚式をあげられる」

「梅雨って日本で初めて知ったけど、雨季のことだよね?」

「まあ、そうだね。内地の梅雨明けは七月中旬過ぎだけど、こっちは梅雨入りも梅雨明けも一ヶ月ほど早いからね。運が悪いと七月に明けるなんてことあるけど」

「ふーん」

「憧れる?」

「雨が多いとスケートできなくなるから、憧れない」

 なぜそうなる。

「梅雨じゃない。ジューンブライドに、だ」

 ランガは顔をしかめ口を尖らせた。

「それ、憧れるのは女の人でしょ? なんで男の俺が憧れるの」

 そこまで露骨に嫌そうな顔をしないで欲しい。少しくらい可愛らしく頬を染めてくれてもバチは当たらないと思うのだが。まあ、この子にそんな反応を期待しても無駄なことは分かっている。

「君は容赦ないね」愛之介はため息混じりに言った。

 陽が傾きつつある浜辺をそぞろ歩く。

 彼はキョロキョロとあたりを見回した。

「なんか、カップルだらけだね」

「ロマンチックな夕日が売りのデートスポットだからね。気にしない」

 本当は他のカップルと同じように、彼の肩や腰を抱いてエスコートしたいのだが、ここはSではない。この美貌の少年相手にそれをやれば流石に怪しまれそうだ。どこで誰が見ているかわからない。我慢我慢と政治家新道愛之介として自制心を働かせた。

 小さな波の音を聞きながら夕暮れの海を眺める。徐々に落ちていく太陽が水平線に触れ海面と西空をオレンジ色に染めていた。

「海に沈む夕日、初めてゆっくり見たような気がする」

「那覇でだって普通に見られるのに?」

「見ていたはずなんだけど、スケートやっていたから記憶に残っていいないんだろうと思う」

「君も大概スケートバカだな」

「人のこと言えないでしょ」不満そうな物言いに「そうだったかな」と返す。

「山で見る夕日と全然違うね。海面でキラキラ反射してすごく綺麗だ」

「気に入ってくれた?」

「もちろん。今日は連れてきてくれてありがとう。暦たちは海なんて珍しくもなんともないって言うんだ。どうせ旅行するのならハラジュク行きたいとかUSJ行きたいとか雪の中でスキーやスノーボードしてみたいとか言っていた」

 まあ無理もない。もっともスキー場で雪と大格闘した挙句、二度と行くかと後悔する沖縄県民は多い。

「いつでも行けるとなると敢えて行こうとしないというのはどこでも一緒だよ。東京の人でスカイツリーに行ったことない人なんて普通にゴロゴロいる」

「いつか暦にカナダの雪を見せてあげたいな。もちろんあなたもね」

「いいね。君の故郷でスノーボードを体験したい。僕は君とスペインにも行きたいかな」

「なぜ、スペイン? Sでのコスチュームもマタドールだよね」

「旅行で周ったヨーロッパで一番しっくりきた。空気感……フラメンコの本場、情熱の国だからかな」

 そんな取り留めも無い会話をしているうちに、太陽は水平線の下に沈み、空は本格的な闇に覆われようとしていた。それとともに星々の煌めきも強くなっていく。

 暗がりの中、少しならいいだろうと少年の肩を抱いた。彼は特に戸惑う様子もなく自然に体を寄せてきた。そのまま目を閉じ耳を澄ます。寄せては返す波音が星闇の中でさらに静かだ。

 時間の流れが止まったようなこのふたりだけの空間をもう少し堪能していたかったが、残念ながら時間だ。

「さてと、ホテルに戻って食事にしようか」

 声をかけたタイミングでグーと空腹を訴える音が聞こえた。

 彼は「ほんとうはすごくお腹空いていた」と少し恥ずかしそうにお腹に手を当てた。

 うん、知っていた。この子はまだ色気より食い気だってこと。

 振り向けばライトアップされた観覧車が目に飛び込んできた。

「あれは?」ランガが指さした。

「沖縄唯一の観覧車なんだ。乗りたかった?」

「少し」

「今日はもう無理だけど明日なら一周回るくらいの時間はある。どうする? 乗るかい?」

「乗りたい」

「了解だ」


 ホテル内のイタリアンレストランにコース料理を予約してある。本当は食べ放題ビュッフェのほうが彼は喜ぶだろうことはわかっているのだが、それは抵抗がある。

 ビュッフェを選べば、この人目を引く容貌の少年を明るい照明の下で多くの人の視線に晒してしまうことになる。用心するに越したことない。

 彼は黙々とよく食べていたが、発する言葉は相変わらず美味しいのみだった。それでも、その表情から満足してもらえていることは伝わってくる。


 ディナーを終え部屋に戻る。

 指定した部屋はオーシャンビュールーム。バルコニーに出れば海が一望できる。こだわったのはそれだけだ。他は大袈裟で無い、ほどほどの部屋がいいと判断した。

 シャワーで汗を流しバスローブを着てバルコニーにふたり並んで暗い海を眺めた。

「そういえば今日煙草吸っていないね」ぽつりとランガが言う。

「持ってきていないんだ。このホテル全室禁煙だし、君といるとあまり吸いたいと思わなくなるからね」

「そうなんだ」と言ったきり何かを考え込んでいる様子で押し黙っている。

 恐らく煙草の話題に意味はない。

「何か僕に言いたいことがあるんじゃない?」

「うん、訊いていい?」

「どうぞ」

「愛抱夢は、俺とセックスしたい?」

 また唐突かつストレートだな。

「そりゃもちろん。でも、いきなりどうしたの?」

「愛抱夢は俺の唇にキスをするようになった。それから結構経つよね。あなたは俺のことを性愛の対象として見ているって言っていた。なのに、それ以上のことしようとしないから、どうしてだろうとちょっと気になって。旅行に行こうって言われて、そのつもりなのかなって」

 確かにそのつもりだった。彼が嫌がらなければの話だが。

 もともとセックスで得られる肉体的快感を第一の目的にすることはない。だったらとっくに手を出している。その機会はいくらでもあった。そんなこと準備も含め一時間でさっさと終わらせることができる。セックスは目的ではなく手段だ。ふたりだけの世界。その共有のための。

 ならば限られた時間の中で刹那的な快楽のためだけにやるものではないと思えた。ゆっくりとふたりだけの時間を過ごしたかった。その流れの中でこの少年を抱けるのなら、それは僥倖というものだろう。

 今まで彼にキス以上を求めなかったのも、今回、泊まりがけの旅行に誘った理由もそれだ。

 それが今、奸計をめぐらす必要もなく彼は自分の手の中にあっさりと堕ちてこようとしている。それなのに怖気づき踏み出せない自分がいる。これはいったい何なのだ。

「君は未成年だからね」

 完全に思考停止した返答だ。

「性交同意年齢は過ぎているけど」

 淫行になるでは誤魔化せなくなっているか。要らん語彙と要らん知識が増えているのも厄介だ。

「それでも君は子供で僕は大人だ。法的に問題なくても道義的に問題ありなんだよ。特にね、僕は売り出し中の人気若手政治家ってことでメディアに見張られる立場にある。君をそんなトラブルの渦中に巻き込んでしまうわけにはいかない。親御さんにも心配や迷惑をかける」

「なんでバレると思っているの? 俺、誰にも言わないのに」

 その通りだ。部屋で一晩一緒に過ごしたとしても、密室で何が行われたかなんて、目ざといマスコミ連中だってわかりはしない。相手が女子高校生なら大騒ぎだろうが、男子高校生、まして母親の許可をもらっているという証言があれば、勘繰る方がどうかしている。

「一理あるね。けれど君は本当に僕とセックスしたいと思っているの? そうでなければやめたほうがいい」

 大きく波立ちはじめた心とは裏腹に、分別ある大人の対応を取る。淡々と子供に諭すような落ち着いた口調で、すらすらと紡がれる言葉が虚しく響く。

「やったことないから、わからない。やってみればわかるかもって」

 真っ直ぐ向けてくる眼差しは純粋すぎて、その眩しさに思わず目を逸らした。

 周囲の目、メディアの監視。那覇を発ってからずっとそればかり気にしていた。それは未来あるまだ未成年のランガを守るためと自分を納得させていた。でも、本音は政治家である自身の保身のためだ。それなのになんて空々しい。

 卑怯だな。神道愛之介という男は。政治家という今の地位に固執している癖に、この少年を手放すこともできない。

 いや、それも違うか。政治家に固執しているのは神道家だ。自分はその神道家に支配されているだけだ。

 ある絶望的な結末が、暗く澱んだ淵からふっと浮かび上がりそうになった。きつく目を閉じ、それを識閾下に封じた。

 意識するな。考えるな。見るな。それをしたら最後、僕は君を……。

 そのときランガのバスローブのポケットでスマホの着信音が鳴った。ごめんと一言謝って彼はスマホを取り出し画面を操作する。

「あ、母さんからだ」

 ランガの頬が緩んだ。

「連絡し忘れていただろう。心配しているんじゃないのか?」

「全然。母さんの友達が結婚して写真が送られてきたからと転送してくれた。俺のことも可愛がってくれた人だから。本当は母さん式に行きたかったみたいだけど遠いからね。見る?」

「僕が見ていいの?」

「大丈夫」

 すっと手渡されたスマホ画面を見れば、二組のカップルが写っていた。ウエディングドレス姿の新婦ふたりとそれぞれの後ろにスーツを着た新郎。

「ジューンブライドだね。しかもダブルウエディングか」

「違うよ」とランガは画面に人差し指を置いた。

「え?」

「結婚したのは、前にいるふたり。後ろにいる男の人はふたりの元パートナーなんだ」

 なんでもないことのようにランガはさらっと言う。面食らった。

 そうだった。カナダでは同性婚が普通に認められていたのだ。

 決めつけていた。知識としてはある。理屈ではわかっている。それでも先入観に縛られ何の疑いも無く男女二組の組み合わせ以外の可能性なんて想像もできなかった。一般的日本人の、何よりも神道家の価値観にどっぷりと染まっている自分では。

「日本とは違うね」

「ここまで来るのは大変だったって母さんから聞いた。子供のこととか、解決しなくてはいけないことが山のようにあって何年もかかったって」

 他人には想像もできない苦悩を味わってきたのだろう。それでも多くの困難を乗り越えてきただろうふたりの笑顔は、こんなにも幸せそうだ。

 写真の笑顔に釣られて自然に口元が綻んだ。それと同時に心がふっと軽くなるのを感じた。

 自分を何重にも縛る神道家の鎖。それらから逃れる術をまだ見出せていない。いずれ伯母たちが選んだ相手と結婚することになる。そんな未来しか見えてこない。今はまだ。

 その現実を意識から遠ざけていた。考えないようにしていた。ただ逃げ続けていた。

 ——君と僕とではどこにも辿り着けない。

 気づいてしまったら全てが終わる。その結末を何よりも恐れていた。

 そんな自分が刹那的にこの子を抱くことは酷く残酷なことだ。それが迷いの正体なのだ。

 けれど、がんじがらめに巻きつく鎖が、一本だけ外れた音が確かに聞こえた。

 今の自分がイメージできる未来が全てではない。


 ランガはポケットにスマホを戻し「ごめん、話途切れさせちゃって。えっと、続き」と愛之介に視線を戻した。

「あなたは、いつも俺のこと愛しているって言ってくれるよね。俺はあなたのこと好きだけど、愛しているのかよくわからない。俺は父さんを愛していたし母さんを愛している。暦のことだって大切な友達で大好きだからラブって言っていいと思う。けれどあなたへの好きはそれとは違う。あなたとハグするのが好きだ。唇にするキスも好き」

 ランガはすっと愛之介の手を両手で持ち上げ包むように握った。

「この手に触られるのが好き。もっと触って欲しいと思っている。俺もあなたにもっと触りたい。あなたをもっと感じたい」

 するりと首に腕が回された。

「あなたは今日ずっと変だった。あまり俺と目を合わせようとしなかったし、何か悩んでいるように見えた。俺に飽きたの?」

 語尾が微かに震えていた。

 自分の中にある漠然とした不安をこの子は敏感に感じ取っていたのか。

「僕が君に飽きる? そんなことあるものか」

 絞り出すように言い、その体が折れるほど強く抱きしめ唇を重ねた。


 長い口づけのあと、愛之介はランガを抱き上げベッドへと運んだ。そのままシーツの上に横たえバスローブの胸をはだければ、オフホワイトのバスローブよりなお白い肌が晒された。

 なだらかに隆起した胸が呼吸とともにゆっくりと上下している。

 これは毒だ。

 この肌に赤い印をいくつも刻んでいきたという衝動をねじ伏せ指で触れた。

 沈み込むような柔らかさを持った女の体とは違う。適度な硬さとしなやかな弾力を持った筋肉。それを覆うきめ細かな肌。

 脇腹から胸に向かって手のひらを滑らせていけば、ランガはくすぐったそうに身を捩る。親指の腹が薄紅色の突起に触れると彼は息を詰めピクリと震えた。指の動きを止め彼の顔を見れば、自分の反応に困惑の表情を浮かべている。

 少し意地悪したくなった。

「感じた? どんなふうに? 言ってみて」

 みるみるうちに、彼の顔から首筋まで朱に染まっていく。

「なんか変な感じがした」

「気持ちよかった?」

「わからない」

「じゃあ、やめようか」

「え?」

 きょとんと目を丸くした彼の表情のあどけなさに内心で頭を抱えた。とんでもない犯罪行為のような気がする。

「嘘、やめない。君のここは敏感だね」

 ランガの胸に顔を近づけ熱い息を吹きかけながら、突起を口に含み舌で潰すように弄んだ。

 彼は小さな悲鳴とともに覆い被さる頭を掴み胸から引き剥がそうとした。邪魔をする手を彼の頭上でまとめて押さえつけた。

 執拗に愛撫を続ければ逃れようと自由に動く脚をジタバタと動かした。ランガの身体能力でこんなふうに暴れられれば、支配下に置くことなど並大抵の男には難しいだろう。

 でも僕に、この程度の抵抗は無駄だ。

 ランガはやめてとは言わない。やめて欲しくないからだ。かといって苦痛と紙一重の快感は、受け流すには強すぎる。どうしていいのかわからず混乱しているのだろう。

 これ以上虐めても可哀想だ。

 頭を持ち上げ、拘束していた両手首をそっと外した。雪のような髪を撫でながら顔を覗き込めば涙目になっている。

「君の胸が感じやすいってことがわかったのは、収穫だな」

「そんなことない」むきになって無意味な反論をしてくる。

 バカにされたとでも思ったのだろうか。懸命な様子で睨みつけてくる、その強がりがいじらしい。

「褒めているんだよ。エアが誰よりも高いことと同じように君の優位性だってこと」

 我ながらしょうもない例えだ。

「優位?」

「胸が感じやすいってことは、後ろでいきやすいってことだから」

「うしろでいきやすいって?」

 ああダメだ。頭の上にクエスチョンマークが五つくらい並んでいる。

 少年の無垢すぎる反応を見れば、今日は最後までこの行為を持っていけそうにない。むしろそのことにホッと胸を撫で下ろす自分がいる。

「今はまだ気にしない。おいおいわかってくるから」

 言いながらバスローブを脱ぎ、彼の背中とシーツの間に手を滑り込ませ、裸の胸と胸を重ねた。首すじにキスをすれば彼は首を竦めた。そのまま頬まで唇を這わせていく。

「今日のところは抵抗しないで僕に任せてくれるかな。少なくても君を気持ちよくさせてみせるから」

「わかった」

「いい子だ」

「じゃあ、そのあと俺にも。俺にもやり方を教えて。あなたのこと気持ちよくさせたいから」

 吹き出しそうになるのをなんとかこらえた。

 断言できるが君にそんな余裕はない。

「了解した。では目を閉じて。キスからやり直すよ」

 ランガは素直に目を閉じた。

 愛之介は少年の柔らかい唇にそっと始まりの合図のキスをした。

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