Bousou - Honey.
フユキ地方のトーサカシティでジムリーダーをしているトキオミさんと
その弟子キレイ、トキオミの持ちポケエネコロロさん、というポケモンパロ。
前のとおんなじ世界観です
弟子とにゃんこの密やかなる戦争
師のエネコロロが私を敵視している件について。
いや、ポケモンがトレーナーに対して忠誠を誓うことは良いことだと思う。気の合ったトレーナーとポケモンは時にポケモン自身が持つより高い能力を発揮することがあるし、通常の成長とは異なる進化を遂げる種もいると聞く。だから、あの猫が時臣師に懐いていることは良いことなのだ。
問題は、奴が私を敵視していることである。
師に信頼されているあの猫は、私が近寄るだけで威嚇してくるし、師のお体に触れようものならいつもは隠している鋭い爪で引っ掻いてくるのだ。まるで全力で挑むバトルの時のように。
私は時臣師の弟子であるから、必然的に彼との接触は多くなる。その度に牙をむき毛を逆立たせ、自分はお前を歓迎していないという態度を取られるのは、さすがに気が重くなることだった。師は笑みを浮かべたり、頬を染めたり、甘えた声で私を呼んで、私を歓迎してくださるというのに。
トーサカシティ、その外れに佇む大きな屋敷。ここがトーサカジムである。
ジムリーダーの時臣、その妻・葵、二人の娘・凛。そしてジムリーダー時臣の弟子である私――綺礼。基本的にこのジムを回しているのはこの四人だが、ジムの運営を手伝う者も何人かいるし、もう一人厄介なニートも居る。だが雇われトレーナーたちはジムへ「出勤」してくるのだし、あの金ピカニートは各地のコンテストに出るのだと、同じく金ぴかな色違いコイキングを小脇に、一年の殆どを家の外で過ごしていた。
そして凛はまだ幼い。学校へ通ったり学友と遊んだりと外出する機会は多いが保護者の同伴を必要とすることも多く、それは母である葵がいつも引き受けていた。つまり、葵と凛の二人も留守にすることが多く、何が言いたいのかといえば、大体このジムは私と師の二人きりだということである。
だから私としては師に様々な教えを請うため、もっと精神的にも物理的にも距離を近づけたいと思っているのだ。距離ゼロ、むしろ私が時臣師に食い込むくらいでいい。具体的な方法としては、私の黒鍵を時臣師の秘すべき魔法陣の中心にピーーーー、という感じである。
なのに、いつだって邪魔をしてくる猫がいるわけだ。
後ろからそっと忍び寄って首筋に息を吹きかけたり、混んでいる場所を先導するという名目で指を絡み合わせて手を握ったり、唇の横にクッキーの滓がついているから舌で舐めとることの何がいけないというのか。
そして今日も私と師の間には、あのエネコロロが立ち塞がる。
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