…* The Cause of Santa Claus 3 *…
夜の帳がすっかり降りて、
星と月とが冴え冴え輝く。
冷たい空気がピンと張り詰め、
冬の夜長はゆっくり過ぎる。
暫し後、
身を切る寒さに研ぎ澄まされた、月が真上に昇る頃。
萎らしげな様子のタガーが小さな声でポツリと漏らした。
「……なぁ。オレと一緒にやるのはそんなにイヤか?」
寂しげなタガーの声に、思わず胸がチクリとする。
下手に出られれば、否と言えないおれの性質を、こいつは把握しきっている。
…おれがこいつの性格を把握しきっているのと同じように。
そこまで分かっていて尚、答えずにはいられない。
「…イヤってわけじゃ…。でも」
「マンカスは見たくねーの?サンタクロース」
見たいだろ?という付加疑問をその言外に含ませて。
「…。」
「見た事ないんだろ?」
「……。」
「どんなツラしてるか、気にならねー?」
「…………。」
「なー?」
「………………なる。」
おれの、負けだった。
「よし決定な♪」
そして最後に笑うのはいつも、このひねくれ猫。
巻き添え食って、お説教をもらうのはいつも、
おれとこいつ。
「で、具体的にはどうするんだ」
「んー?そんなの決まってんじゃん。
イブの晩に、サンタクロースとっ捕まえんの☆」
輝く笑顔は純真そのもの、瞳の奥には曇一つ無し。
「……は?」
…彼は、本気だ。
「ちょ、お前、捕…!」
ばふっ。
「しーっ」
「みゅー!みゅー!(…ジタバタジタバタジタバタ…)」
「声がでけーって」
毛布の下で暴れるおれを歯牙にも掛けず、どころか、馬乗りになって抑えつけ。
辺りを見渡し、耳をそばだて、誰か来ないか気配を探る。
瞳は真剣、野生そのもの。
……まぁ、こいつにとってのいたずらは、
ある意味で、常に命懸けの真剣さを伴うと
言えなくもないけれど。
「…よし。誰も来てねぇな。」
「ぷはぁっ!」
安心して力が一瞬緩んだその隙に、
おれはやっとのことで毛布の檻を抜け出した。
「何すんだよ!」
「っせーな。誰かにバレたら元も子もねーだろ」
「それより何だよ、サンタクロース捕まえるって。
見るだけじゃなかったのか!?」
「見るだけじゃつまんねーじゃん?」
「つまらなくない!全然つまらなくない!」
「オレはつまらない」
「お前、サンタクロースを見ようってだけで
十分恐れ多いことじゃないか!?それを…」
「堅い事言うんじゃねーって。それよりホラ。
あんまでけー声出すと、また来るぜ」
「……。」
屋敷の時計が十二を打った。