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制作者:シャープネスさん この物語は、エックスが遺跡の調査を引き受けたすぐ後の事である。 (※ダークネス・オブ・ジ・カオス<前編>を参照の事) ゼロはDr.ケインに個人的に会いたいと言われ、Dr.ケインの私室へとむかった。 「そういえばDr.ケインに会うのも随分久しぶりだな……」 懐かしい顔に出会える事に無意識に期待をしながら、ゼロはDr.ケインの私室のドアをノックした。 トン、トン、トン。 ………シーン。 反応が無かったので再度ノックをした。 しかし、一切、反応が返ってこない。 「? 留守か? いや、そんな事は無い筈だ……」 ワザワザ時間まで指定されていたのだから。 あの『ワガママ』ぶりを考えると、恐らく、こっちを無理矢理優先するだろう。 こっちの約束をすっぽかす様な事は、まず無い筈だが…。 しかし、居ないのは事実だ。 呼び付けておいて、約束をすっぽかすとは…。 ゼロは、なんだか無性に腹が立ってきた。 「まぁいい…。勝手に入るとするか…」 仕返しの意味を加えて、ゼロは勝手に上がりこむ事にした。 しゅんっ! 小さい音を立てて、ドアが開かれた。 中は非常に汚れていた。まるでおもちゃ箱をひっくり返した様な部屋だった。 「うわぁ!? ったく…整理位しろよ……ん?」 何か、柔らかい物を踏んづけた様な感じがしたので、急いで足元を見た。 そこにはDr.ケインが横たわっていた。 何処か生気が無く、ぐったりとしている。 「!? うっわあぁ!!? どっ、Dr.ケイン!!? おっ、おい! しっかりしろ!!」 自分が踏んでしまった事と、見た目的にかなりヤバイかった為、何時に無く取り乱してしまうゼロ。 ゼロは容態を詳しく確認しようとメットを脱いで屈み込んだ。 その時ゼロは気が付くべきだった。 Dr.ケインのそれは、人間ではなく、作り物で出来のいいダミーだと言う事。 そして、背後から忍び寄るある種の『殺気』に……。 取り乱した一瞬が、正に命取りだった。 「くらしゃりゃせぇ!!! (※恐らく『食らってください』という意味であろう叫び)」 大地を揺るがさん限りの咆哮と共に衝撃が走る。 凄まじい勢いで飛翔する『何か』が、一瞬の隙を突いて、体当たり、いや、クロスチョップを叩き込んで来たのだ。 屈んだ状態で、尚且つ、柄にも無くパニックに陥っていたゼロによける暇は無く、見事に『きまって』しまった。 凄まじい勢いで吹っ飛ばされ、壁と、近くに配置してあったデスクの角に頭をしこたま打ちつけ、ゼロは動かなくなった。 勢いのわりに静かに着地したその『何か』……。 それは、ごてごてした『何かを身につけた』オリジナルのDr.ケインだった。 「がはは!! よく来たなぁ! ゼロ! どうじゃ!? 驚いただじゃろう!!」 豪快に笑い飛ばしながら、悪びれた様子も無く、Dr.ケインはゼロに歩み寄った。 しかし、ゼロからの返事も、突っ込みも帰っては来なかった。 その事に疑問も持たず、Dr.ケインは続けた。 「ふふふふふ…。どうじゃ? 『対レプリロイド用ちょっかいマシーン、クロスチョップ君2号』の効き目は!」 すぽすぽと小気味のいい音を立てながら、装着していた物を脱ぎ去るDr.ケイン。 その足元で、ダクダクと血(オイル)を流して昏倒しているゼロ。 今度は、ようやく事態が深刻な事を感じ取ったDr.ケインが取り乱す番だった。 「…あれ? ……わし…もしかして…やっちゃった!?」 すぐさま容態を確認し、応急処置に入るDr.ケイン。 しかし、慌てている為、上手くいかない。 「頭蓋骨の陥没に…大きな裂傷……って人間じゃ無いじゃろがぁ!!!?」 Dr.ケインは、まるで悪戯で大事な花瓶をわってしまった子供の様な心境だった。 何より、申し訳なさと、何よりエックスに殺される! と言う脅迫観念で一杯だった。 「ドッ、Dr.ケイン……」 息も絶え絶えに、ゼロはDr.ケインに話しかけた。 「なっ、なんじゃい!?」 半ベソでDr.ケインは答えた。 すがるようにしがみつきながら必死に声を絞り出すゼロ。 「2号って…何?」 ガクッ…。 力なくうなだれるゼロ。 何も瀕死の時に、そんな事に対してツッコミしなくても…。 ゼロは今、正にツッコミの鏡となったのであった……。 「ゼッ、ゼロォォォォ!!!!?」 Dr.ケインの叫びは遥か彼方の別館まで届いたとか届かなかったとか…。 そして、ゼロは死の淵をさ迷い歩く事になるのだった。 天を衝く様な甲高く、見事なアニメ声が響いた。 ……初めて聞くはずなのに、ゼロはその声を聞いた事があるような気がした。 「ん、んん、はいはい! 今起きるよ…。そんなに叫ばなくたっていいだろう?」 ややあって起きるようなリアクションを取った。 何か違和感を感じる。 自分の声がいつもと違う。 高く、透き通った女性の声…。 今までにない気だるさが襲い来る。 一体何が起こっているというのか? ゼロは恐る恐る目を開けてみた。 ………。 流れるような『いつもの金髪』。 細くしなやかな指。 すらりと伸びた長い足。 うらやむような細い腰…ん? 肩の『こる』豊満な胸……んん!? 「…きっ、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!??!?!?」 ゼロは再び一瞬にしてパニックに陥った。 自分に起きた出来事が理解できない。 自分は男性型のレプリロイドだった筈…。 その筈なのに、今はまるで『人間の女性』の様だ。 何故!? 考えても、考えても答えは出ない。 そのもどかしさが一層、混乱を誘った。 「ひやぁ!? どうしたんですかぁ!? 『ロゼ』せんぱぁ〜い!!?」 『ふにぃ〜』となにやら変な効果音を出して『後輩』らしき女性…と言うには少々幼い女性が驚いている。 その姿は…ナースの格好をしていた。 薄い水色のナースの制服とナースキャップ。 幼いながらも、女性を主張する柔らかなボディーライン。 すらりと伸びた脚はベージュのストッキングが覆っていた。 髪の毛は黒く、全体的に短くまとめ上げられているが、ちょっとツンツンしている。 その顔はというと……。 「エッ、エックスゥ!??! お前、なんて格好をぉ!?」 いや、間違いなく『女性』なのだが、エックスに良く似ている。 あどけない表情や、少女的な所があるが…。 ゼロ…いや、ロゼにはどう見てもエックスにしか見えなかった。 「やだなぁ…せんぱぁ〜い、わたしは『クエス』ですよぉ!? エックスって誰です?」 そう言うと、クエスト名乗った女性はコロコロと鈴がなるような笑い声を上げた。 一体何が何やら……。 よくみると、ロゼ自身もナース姿だった。 クエスとは正反対に、薄いピンクの制服。 若干、ボタンの配置やボタンの形が違う他は、ほぼ同じだった。 前髪はまとめて後ろの髪ごと束ねてあり、オールバックに近い状態だ。 「それとも、ロゼせんぱぁ〜い…。それって『彼氏』ですかぁ!?」 くふふと含んだ笑い声を上げながら、クエスは目を細めた。 直感的に、下手な反応は危険だと感じた。 「…違う。従兄弟だ。あまりにも似ていたからな…つい寝ぼけて呼んでしまったんだ」 ロゼはもっともらしい事を言って誤魔化す。 エックスに良く似ているくせに、以外に侮れないような気がした。 「ふ〜ん……。そうなんですか?」 疑いのまなざしを向けるクエスに、ロゼは冷静を装って続けた。 「それで、何かあったのか?」 忘れてましたといわんばかりにオーバーなリアクションが炸裂した。 「あああぁぁ!! そうでした! そろそろ交代ですよぉ」 一抹の不安がよぎる。 看護等、一度もした事が無い。 それどころか、イレギュラーを狩る事以外には本当に疎い。 知識さえ持ち合わせていない。 そんな自分にそんな大層な事が出来るだろうか…。 否! そんな事不可能だ! 「さぁ! 行ってらっしゃい!! せんぱい!」 「ああ!? ちょっ、ちょっとぉ……!」 拒否しようとした所、見事に先手を打たれてしまった。 体よくナースステーションらしき所から追い出されてしまった。 呆然と立ち尽くすロゼ、いや、ゼロはこれからの事に考えを巡らした。 ここは一体何処なのか…。 いや、そもそも、俺は一体どうなってしまったのだろう…。 元の世界(?)に戻れるのだろうか…。 果たして、これは夢なのだろうか…。 そして何より、『人を殺さずにすむか(医療ミスで)』が当分の課題になる事をゼロは感じた。 ……続く | ||
制作者コメント 管理人コメント |
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