<< top << text << novel |
(スプラッシュ・ウオフライ編) 制作者:mariさん 彼らは危険を承知の上でギャングがのさばるカジノへと足を踏み入れた。 「なんだてめぇら。ここが総長アギル様の神聖なカジノだってことを、まさか知らないとはいわないよなぁ? ケケケ・・・・」 「ああ、知ってるさ。だからここへ来たんだ」 「何?」 ギャングたちの挑発を軽く受け流すと、レッドはさっさと本題に入った。 「総長アギルはどこだ?」 「は?」 「俺達はそいつをぶっ飛ばしに来たんだ」 「プッ…ハーッハッハ!! なんだこいつら、頭イカれちまったんでねぇの?! アギル様をぶっ飛ばすだと!」 「そうだそうだ。だいたい知ってるとしてもお前らなんかに誰が教えるかよ!」 「教える気はない…か。なら力ずくで教えてもらうぞ!!」 ギャングたちは総勢(そこにいた人数だけでも)100人余。対するレッドアラートは10人だけ。人数で数えてもギャングたちが優勢―――のはずだった。 数分後。 「おい、アギルは何処にいる」 「ぐっ……、こ、このビルの……一番上……」 「情けねぇなぁアクセル。こんな奴ら相手に傷を負うとは……(イ)」 「ちぇっ、全部かわしたと思ったのになぁ(ア)」 100人 vs 10人。軍杯はレッドアラートにあがった。アクセルの言う『傷』と言っても、マシンガンの弾が一発当たっただけであって行動に影響はないのだが、彼はとても残念そうだった。 「おら、喋ってねぇで急ぐぞ」 「了解っ!」 彼らは階段をMAXスピードで駆け上がると、最上階の扉を蹴り倒して部屋へと進入した。 かなり広い部屋だ。部屋の端から端まで由に50Mはあるだろうと思われる。 刹那、待ち構えていたように声がかかった。 「―――お前がレッドか?」 「……誰だ」 「オレか? お前らが探してる張本人だよ」 「ならお前は………」 「そう、『サイチェンサー・ルーグ』総長のアギルだ」 残忍な笑顔を見せつけながらアギルはレッドたちを見た。その瞬間、その場にいた全員に殺気の剣が突き刺さった。 眉間にくっきりと刻まれた深いしわ、光を失った瞳、手に持つサーベル……その姿は「鬼」と呼ぶにふさわしかった。 「オレに何の用だ?」 「お前を処分しに来た」 「処分? 何故だ」 「とぼけるな。貴様が殺した罪もないレプリロイドたちの数は約1000体……そいつらの敵を取らせてもらう」 「やってみろよ。貴様らにこのオレが倒せるのならな!!」 戦闘は開始された。 「今日の戦略は『速攻』」 作戦通り、彼らはアギルに向かって集団攻撃を仕掛けた。 『ドガアアアン!!』 「うわあああ!!」 部屋全体に煙が充満する。 衝撃音とともに悲鳴はあがった。しかしそれはあの残忍な声ではなく、聞きなれた仲間の声であった。 「! ハイエナード!!」 「……ちょっと弱すぎないか、お前ら」 煙の向こうから、余裕があるとも感じられる声が上がった。視線を戻すと、アギルの体は深紅に輝く強力なバリアーのようなもので覆われている。 「!」 「これか? オレ専用に開発した防御用バリアーさ。便利なことに、こいつは攻撃を跳ね返す対象を自分で選ぶことが出来るんだぜ」 「なっ……」 「おいおい、もう降参するなんていわないでくれよな。久しぶりの客人なんだからよ……」 「……まっ、まだだ!!」 それから数十分間、彼らは激しい攻撃を仕掛けた。だが、彼らの攻撃は一度としてバリアーを破ることはなかった。それどころか、バリアーに届く以前にサーベルによる衝撃波で攻撃がかき消されてしまうのだ。 「ハァ、ハァ……」 「なかなか根性あるじゃねえか、その根性だけは認めてやるよ。でも残り3人でこの俺に勝つことなんて出来んのか?ククク……」 あのバリアーと衝撃波のせいで、残りはレッド、アクセル、ウオフライの三人に絞られてしまった。しかもこんな状態になってもバリアーを破る方法は見つからない……最悪の状態だ。 「そろそろくたばれよっ!」 そういうと、アギルはレッドに向かって衝撃波を繰り出した。 「ぐああっ!」 今までの疲労が重なり、避けることが出来なかった。レッドは壁にたたきつけられ、立ち上がれない。 「レッド!!」 「残りは2人……すぐ楽にしてやる」 「くっ……、楽になるのはお前のほうだ!」 「これで終わりにしてやるぜ!」 アクセルとウオフライは瞬時に飛び上がり、アクセルがアギルの足の部分を狙いバランスを崩させ、そこにウオフライが水鉄砲を叩き込む。 「ぬあっ……」 2人のコンビネーションはレッドアラートで最高レベル、さすがのアギルもシールド展開が間に合わず、攻撃をまともに食らってしまった。 「どう? 僕たちのコンビ」 ふらつきながらアギルは立ち上がった。 「ふっ、せいぜい20点……ってところだな」 「何だと?」 「だいたいコンビネーションだと? 笑わせるな。そんなセリフは一人じゃ何も出来ない奴が吐く言葉なんだよ」 「ふざけるのもいい加減にしろっ!!」 「だめだウオフライ!!」 『相手を挑発して感情的にさせ、判断を鈍らせる』 それはウオフライ自身がよく使う手だったが、まさか自分が引っかかるとは夢にも思わなかった。 「だからお前らは能無しなんだよ!」 アギルはここぞとばかりにバリアーを展開させ、攻撃を跳ね返した。 『パリイイイン』 「うあっ………」 跳ね返された水鉄砲がアクセルの胸水晶に炸裂、小気味よい音を立てて水晶は砕け散った。 「……アクセル!!」 『ドサッ』 レプリロイドにとっての「水晶」―――それは外部からの太陽光を吸収し、自らのエネルギーに変えるもの。そのエネルギー変換作業は寝るとき以外絶えず行われている―――。 それが失われたと言うことは、電源が切られたのと同じこと。運の悪いことに、ウオフライが放った水鉄砲の水が体の内部に入り込みショートを引き起こしている。 ――データが……記憶が消える――― ウオフライの恐怖を駆り立てたのはそれだけではなかった。 このまま放置しておけば間違いなくアクセルはガラクタになる。もう二度と動くことのない、ただのスクラップに……! 「消えうせろ、アギル!!」 我を忘れ、ウオフライはアギルに突進した。 | ||
管理人コメント |
<< top << text << novel | << back next >> |