<緋色の猫>
…正直に言えば、驚いた。
あまりにも唐突過ぎたから。
それから一体何のつもりでこんな場所まで来たのか問いただそうとして、ふと思いだした。
この男は、【世界一の賞金首】だったのだ。
「久しぶりだ……私を、殺しに来たのか?」
結局私の口からこぼれた質問は単純で稚拙なものに過ぎなかった。
この男の前では、どうやって私の居所をつきとめたのかもどうやって鍵のかかった寝室に忍び込んだのかも
愚かな質問だろうと思ったら…、自然と、用件だけの質問になった。
突然私の小さい家に上がりこんできたこの賞金首は、首を横に振った。
「殺しだけが俺の仕事じゃない。」
「それなら何故ここに…」
世界一の賞金首は、おもむろにコートからとんでもない量の札束を取り出すと、ベッドサイドの机にそれを投げ出した。
そして、私の反応を無視して予想外の言葉を口にした。
「…ジェラ、だったな。
いい【依頼】があるんだ、引き受けないか…?」
「ニ、ニ、ニール神父様っ!!」
「これは…どうかしたのですか?そんなに慌てて」
目を閉じたまま気配を読めば、教会に飛び込んできたのは一人の兵士で。
記憶違いがなければ彼は、城内でもごく一部の人間にしか知らされていない通用口の警備をしている者だった。
取り乱した若い兵士は、何かの紙切れを神父に渡すと、息も絶え絶えに訴えた。
「せっ…世界一の、賞金首がっ………この紙を神父様に渡さなければ、お前の命はないと…」
「そうですか…分かりました。
(無闇に人を驚かせる癖は、直させなければいけませんね…それに、字の汚さも)」
<今夜0時、ベガスに来い。カーティス達も連れて来い>
突然の呼び出しをくらったには平然とした表情で、ヴァン城の神父は伝令を頼む準備を始めていた。
「えぇ!?ブラック・レインが神父さんに依頼〜?」
「こら、アレク。行儀が悪すぎるわよ。」
夕食を兼ねてヴァンのコリーズに集合したいつものメンバー。
青い髪のエルフ、アレクは大げさに驚いた拍子にコーヒーをこぼしてシャイアに怒られている。
たしなめられて舌を出したアレクを見やりながら、チェグナスが首を傾げた。
「で、でも…。珍しいね、ブラック・レインが僕達に依頼って…。」
「そうだね。私たちの【依頼】に一緒に来る事は多いけど…。」
チェグナスに倣って首をかしげたエストスがすぐに首の傾きを元に戻したかと思うと、
別人の形相で冷静に続けた。
「人数の必要な依頼と言う事だろう。俺達に頼むくらいだ、犯罪の片棒という可能性は薄いだろう。
最も…危険性の方は分からないがな」
「とにかく…ベガスでブラック・レインから説明を受けるより他なさそうだよな…。」
緊迫した面持ちの青年、クリスの言葉に居合わせたハンター達がうなずいた。
えーと、やってしまいました。不得意なのに少し長めのお話し。
しかも登場キャラの偏り…なんだこれは。
…というわけで、今回は趣味全開でいかせて頂きたいと思います。
ただし、めずらしく…神父様控えめで!(笑)