「動物達の休日」
※投稿前のメモ書きは一番下です。
「…相談がある」
「えっ、えっ……ぼ、僕に?」
「ああ、お前にしか頼めないことだ」
「僕にしか……?」
蛇ににらまれた蛙ならぬ、狼に睨まれたネズミ。
当惑しているのか怯えているのか、チェグナスはいつにも増して真剣な表情のウルグを見上げた。
あの冷静沈着なウルグが自分に相談とは何事だろう。
首をかしげたチェグナスを背中にのせると、ウルグは黙ってドアを開けて外へ出た。
カーティス邸・庭。
いつ見てものどかなこの場所だが、ウルグの表情は晴れない。
ニワトリを囲っている柵の前まで来ると、ウルグが立ち止まった。
「チェグナス。奴らの言葉は分かるな?」
「う、うん……多分…。」
できる限りのしかめ面をしながらウルグが振り向いた。
鋭い視線に思わず後ずさりをしながらチェグナスは答えた。
「…あのヒヨコが何を言っているか、聞こえるか?」
「え……?」
ウルグの指差した(指と言うのだろうか)先には一羽の小さなヒヨコ。
チェグナスが耳を傾けると、そのヒヨコはウルグの存在に気がついて嬉しそうに駆け寄ってきた。
「ママー」
「……え、え、ママって……ウルグのこと、だよね…?多分。」
これ以上どうにも動きようのない苦々しげな表情でウルグがうなずいた。
そして背中の上のチェグナスを見つめて言葉をこぼす。
「うむ…どうやら私を母親と勘違いしているようなのだ…。迷惑極まりない。」
「た、大変だね…」
「そこでお前に頼みがある。…このヒヨコをどうにか説得してくれないか。」
「説得って…僕が?」
「そうだ。動物の言葉が分かるのはお前くらいのものだろう…お前にしか頼めん。」
「……できるかなぁ…い、一応やってはみるけど…」
「頼んだぞ。」
本気の表情でチェグナスにそう依頼すると、ウルグはさっさと家の中に戻ってしまった。
振り落とされて取り残されたチェグナスが途方にくれる。
「…どうしよう……。」
「ママの友達ー」
かくして、チェグナスの奮闘は始まったのだった。
数日後。
「チェグナスー」
「う、うん。そうだよ」
「チェグナスー」
「わ、分かったってば……。」
「チェグナスー」
「……………」
毎晩の特訓の成果か、ヒヨコは確実に言葉を覚えているようだった。
そしてついに。
「ウルグ、さっき庭でチェグがウルグのこと探してたぜ?」
「…そうか」
アレクの言葉に、ウルグの表情が緩んだ。
珍しいほどの機嫌のよさにアレクも少し驚く。
「なんだなんだ?なんか面白い事でもあったのか〜?」
「……いや。少し出てくる。」
急ぎ足で家を出るウルグを、アレクが不思議そうに見送った。
…この時エストスの目つきが変わり、ニヤリと笑ったのを見た者はいなかった。
「う、ウルグ〜〜……」
「どうした?」
庭に出たウルグを待っていたのは、半分パニックを起こしたチェグナスの姿だった。
チェグナスはちょろちょろと困ったように小走りをしながら、ヒヨコのいるほうを指差した。
「奴がどうかしたのか?」
「そ、それが…僕、ちゃんと教えてたのに………。」
ピヨピヨ。
久々に庭に出てきたウルグの姿を見つけて、例のヒヨコが駆け寄ってきた。
そして、次に発したヒヨコの言葉は…ウルグを固まらせるに十分だった。
「だーりーーーん」
「なっ………」
「ダーリン、ダーリン」
「ど、どうしよう…僕そんな言葉、教えてないのに〜……。」
「ダーリン、チェグナスー、あそぼー!」
「一体どうしてこういう事が起こるのだ……理解に苦しむ……」
「ぼ、僕も分からないよ〜……あ、でもそういえばさっきまでエストスがここに……」
「エストス?…………くそっ、あの男か…」
「あそぼー、ダーリン!」
「………。」
小さなヒヨコにまとわりつかれて当惑する2匹を真犯人が窓から楽しそうにスケッチしていたのは…
また、別のお話。
公式サイト様の投稿板で書かせていただいたお話です。
何を考えていたのか動物達が暴走しています。いや…好きなんですよカーティス邸の庭にいるヒヨコさん。
…実はこの話、投稿する前に書いた時は全然ありえない設定がくっついていたのですよ。
メモ書きなんでかなりいい加減ですが…◆【見ますか?】(邪道カップルダメな方はご遠慮ください)
もちろん公式設定じゃありません。笑って流してやってくださいねー。
読んでくださってありがとうございました。