「痛そうだった」
「いい気味よ」
部屋に戻り、ベッドへ入る。
思い出されるのは、ベルグが斬られたあの瞬間。
「大丈夫かしら。死なないわよね?」
「死んじゃえば良いのに」
「死ぬなんて、嫌よ」
『死ぬ』
そんな言葉を口に出してしまい、とても不安になる。
とても、不安で、哀しくて。
涙が、浮かぶ。
「泣いてるの?」
躊躇いがちに目を擦る。
「あんな男の為に泣かないで」
涙で濡れた手を見つめる。
「私は、ベルグの為に、泣いているのね」
不思議な感じがする。
「私以外を想わないで」
誰かの為に泣けるとは思っていなかった。
「哀しいの」
ベルグがいなくなってしまいそうで。
「苦しいの。貴女を盗られそうで」
目を閉じる。
哀しくて、
苦しくて、
どうしようもないから、
眠ってしまおう。
ベルグの怪我が酷くないことを祈りながら。
あの男の怪我を酷いものであることを願いながら。