「無茶を言うな」
「無茶が過ぎれば道理で引越し。これ、わたしのモットーだから」
「訳が分からないな…」
「まね、今思いついただけだし」
そう言うと、ルキアはあっけらかんと笑う。
相変わらず意味は不明だが、いい笑顔だな。と、不覚にも思ってしまうセリオスだった。
「ん、そうだ。あだ名考えよう、あんたの」
笑い終わると、唐突にルキアは提案する。
「は?」
「そうだな〜、セリオスだから…セリリン…だと、いい加減ワンパターンすぎだし…」
「おい、ちょっと待て…」
「それだっ」
「え?」
「『マテウス』。決まりっ! 今日からマテウスって呼んだげるからねっ」
「だから…ちょっと、待て…全然関係無いだろう、それ」
「ダメダメ! そーゆー時は『ちょっとマテウス』って言わなきゃ〜。さん、はいっ」
「………ちょっと、マテウス」
「あははははははははははははは」
「笑うな…」
「あ〜、マジ面白かった! じゃね、マテちゃん。また明日〜」
ルキアは、自分の席の横にあった小さなサブバックを持つと、軽快に教室を去っていく。
「…一体、なんだったんだ…」
セリオスの呟きは、しかし誰にも届かず、教室の中に消えた。
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