夕暮れの教室。一人の男子生徒が、ただ黙って、窓から外を眺めている。
しかし、彼にとっての本質はその眼に映る風景には無い。
飽くまでも、そこにたたずんでいる自分自身だった。
「…フッ。やはり、僕にはこの瞬間がよく似合うな」
彼の名はセリオス。一見無口っぽいが実はそうでもないというナルシストだ。
放課後になってまだ30分しか経ってないのだが、教室にはもう誰も残っていなかった。
セリオスにとってはそれだけがやや残念だったのだが、あまり気にはしない。
美しい空間の中に、美しい自分がいる。彼にはそれだけで、良かったのだ。
しかし、そんな至福とも言える時間の中、ささやかな反乱分子が、そこに現れた。
「…あんた、何やってんの?」
「…え」
セリオスは視線を教室へと向ける。
そこには、じとーっと眼を細めて彼を見ているルキアがいた。
「もしかして、またナルシスタイム?セルフフィーバー?」
「なんだ、それは…。それよりそっちこそ、どうしたんだ」
「わたし? えへっ、わっすれっもの〜」
そう言いながらも、ルキアはセリオスへと近づいていく。
そして、お互いの息があたるくらい側まで来ると、彼の顔をじ〜っと見つめた。
「……なんだよ」
そんな状況に耐えられず、セリオスは口を開く。
「んー、あんたの髪ってさ、きれーだよねー」
「…フッ、当然。毎日しっかり手入れしてるからな」
「なんてゆーかさ、男にはもったいないよね。それ、交換してくんない?」
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