ルキアはなんとなくグラウンドに出た。
シャロンにああ言った手前、何もしないでまっすぐ帰るのもどうだろうと思ったのだろう。
普段はたくさんの男子生徒がいるグラウンドも、今日は人がいない。
寒いから皆帰ったのだろう。
彼女が諦めて帰ろう、と思ったときだった。
…空から雪が降ってきた。
「あ…」
ルキアは思わず手のひらで雪を受け止める。
そして、何かを思い出したような顔をすると…
雪が降るグラウンドで空を見つめて立っていた。
それから、2時間程経ってルキアがグラウンドから立ち去ろうとした時だった。
誰かが、グラウンドに駆けてきた。
彼女はなんとなく予想していた、彼が駆けて来ると。
約束はしていたけれど彼とは昨日喧嘩したばかり、でも…彼女はひっそりと信じていたのだ。
「ルキア……」
彼…レオンはルキアの姿を見て驚いた声を上げた。
ルキアは雪にまみれて…遠目から見ると雪だるまみたいになっていたのだ。
レオンはひっそりと思い出していた、あの日の約束を。
彼女が待っている気がしてここに来たのだ。
「…やっぱり…。覚えてる?」
雪にまみれたルキアは、レオンを見つめて呟いた。
レオンは思わず彼女の顔に付いた雪を拭う。
ルキアは微笑んで、レオンの頬に手を添える。
レオンは彼女の頬から手を離すと、力を込めて抱きしめた。
「ばかやろぅっ!…、俺が来なかったらどうしてたんだよ!」
グラウンドに響くような声で、彼は怒鳴る。
ルキアは微笑んだ顔のままレオンの肩に顔を埋める。
彼らが付き合い始めて約半年…。
ルキアは、今年の夏に話をしていたのだ。
『…初雪の日に、グラウンドで…』と
レオンは忘れかけていた。
最近、彼らは大喧嘩をしてしまったのだ。
が、初雪を見て、ふっと思い出した。
「…よかった…、間に合って…」
レオンは力を抜いて、彼女を抱きしめた。
ルキアも彼の背中に腕を回した。
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