ほの暗い、よく整頓された部屋。あちこちに学術書が置かれているが、決して雑然とした感じではなかった。その部屋の主、カイルの几帳面さをよく表している部屋だ。
だが、パソコンの前にいる彼はいつものカイルではなかった。
彼の瞳は昼間、クララに見せたように邪悪な光が宿っていた。
どす黒いオーラが彼の周囲を包み込んでいた。
「ケッ、どいつもこいつもよぉ。せめてネット上だけでは別人格でいねぇとやってられねぇよ」
彼の唇から邪悪な言葉が漏れる。
「さぁてと、ネットウォッチ板でも巡回するか。お、どうやらあのバカ、昨日も暴れてたみたいだな。本人降臨か。バカなサイトを開いたてめぇが悪いんだろうが。で、おまけに自作自演か。ID見ろよ厨房が。(プゲラ)ふん、ちょっと煽ってやるか。待ってろよクソガキが」
邪悪な心が彼を支配する。昼間、クララに優しく触れたあの指が、今や人を傷つける道具と化している。
>321 名前: カイル◆Kayle.Prof[sage]投稿日: 05/02/01 00:05:56 ID:QMA2game
>叩かれてる喪前が可哀想になってきたよ。
>漏れは喪前の仲間だぞ。
>ここで喪前を叩いている香具師のIPを抜く方法を特別に教えてやるよ。
>いいか?メール欄にな、fushianasanと入れるんだ。(以下略)

「フフフフフ、このバカの書き込みが楽しみだぜ」
どす黒い笑い声が、彼の部屋にこだました。


「あ、なんやワシの作ったネタサイトが大漁みたいやのう」
ちょっと遅く帰宅したタイガがこの時間PCを立ち上げていた。
「まぁ昨日降臨したさかいな。どれどれアクセス解析アクセス解析、と。誰がひっかかっとるかいの。んん?なんやこのリモホ? *****.magicacademy.eduってこれうちの生徒やん?誰やホンマに。あらら、タイムスタンプからするとカイルやんか。アホやなぁホンマに。串も刺さんと。今時フシアナトラップなんか誰が引っかかるかいどアホ。ネットでも騙されてどないすんねやホンマにぃ…」

カイルはどこまでもいい人である。


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