「(…レオン、レオン…)」
誰かが呼びかける。
「(ん?この声、この音楽…やべぇ、またフランシスの授業中に寝ちまった!)」
「うわぁ先生!ごめんなさい!!」
レオンは飛び起きて両手で頭を抱えた。
「おおレオン!気づいたか!よかった…」
フランシスは半ば涙声で叫んだ。
クララはハラハラと目から涙を流している。
「え?俺…そういえば…」
ようやくレオンは事態を飲み込んだようだ。
「フハハハハハハ!授業中に寝ていたと思い込んで叫んだのだろう。全くお前らしい起き方だ」
ロマノフが豪快に笑い飛ばしたのを受け、他の二人も思わず泣き笑いをする。
「レオンよ、話は全て聞いた。おめでとう。よくやったな。お前の父上の名誉回復もまもなくなされることであろう。
だがお前だけの力ではなく、みんなの協力の成果だということはゆめゆめ忘れるでないぞ。
そしてフランシスよ。こいつが起きるまで三日間の寝ずの番、ご苦労であった。
そしてクララもご苦労であった。あの場でお前が応急処置を施さねば危なかったかも知れぬ状況だったからな。
ともかくフランシスよ、今日の授業は良い。ゆっくりと部屋で休め」
「はい、ロマノフ先生、恐縮です」
フランシスが疲れた様子で起き上がり、部屋から出る。
「先生、俺のこと嫌いなんじゃないのか?」
憔悴しきったフランシスを見てレオンが問いかける。
「フッ、生徒のことが好きでない教師が、どこにいる?」
フランシスはいつものキザったらしい微笑を投げかけ、部屋から出た。
「ところで」
ロマノフは尋ねる。
「外を見てもわかるとおり、今は朝じゃ。今から出れば授業に間に合わないことはない。
だが目が覚めたばかりだし、まだ疲れも残っていることじゃろう。部屋に帰ってもう一日休むか?」
「冗談じゃねぇ、俺、学校好きだし、何よりも皆に挨拶しねぇとな!」
レオンは枕元にあった制服に着替えた。
「クララ、乗れよ。一緒に登校しようぜ!」
レオンがクララの手を握る。
「うん!」
クララはレオンの箒の後ろに乗ると、両手をレオンの胴体に回した。
「(ほほぅ、純情なレオンと奥手のクララが教師の前で手を握ったわい。今回のことで、色々と成長したかも知れぬのう)」
ロマノフはほほえましく二人を見つめた。
「行っくぜぇ!」
二人を乗せた箒は窓から勢いよく飛び出し、学校に向かってグングン加速していった。
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