「素晴らしい!レオン、1位だぞ。めでたく賢者昇格だな。おめでとう。」
ロマノフは大変に驚いた様子で成績を発表した。ざわめくクラスメート達。
無理もない。レオンといえばこのクラスでは落ちこぼれの部類に入り、つい数ヶ月前までは落第の筆頭候補といわれていたほどなのだ。
しかし真剣にやればその程度のことは不思議でもなんでもない。彼にはもともと才能があったのだ。
何しろ彼が6歳のときに亡くなった父親はその名を轟かす偉大な魔術士だったのだ。その遺伝子を受け継いだ彼の才能が開花したに過ぎない。
ロマノフが驚いたのはそればかりではなかった。
レオンと呼ばれた赤い髪の少年は淡々と賢者昇格の証を受け取った。いつもの彼ならば大げさにガッツポーズをするはずなのに…
「ど、どうしたのじゃレオン。賢者昇格が嬉しくはないのか?」
たまらずロマノフが尋ねる。
「いや、別に…嬉しいよ。」
レオンがぶっきらぼうに答える。
「(やっと…やっと目的を達成した…)」
レオンは心の中でつぶやいた。

「け…賢者になったんだってな…まずは…おめでとう」
担任のフランシスは職員室を訪ねたレオンにねぎらいの言葉をかけた。
「はて」
聞くともなしに彼の言葉を聞いていたロマノフが不思議そうに首を傾げた。
「何故賢者になったのにそんな戸惑っておるのだ。喜ばしくはないのか?」
ロマノフは仕事をしているふりをしながら彼らの発言を注意深く聴くことにした。
「フランシス…先生。先生確か俺が賢者になったら俺の親父を倒した仇を取る事を認めるって言ってくれたよな?いいだろ?」
レオンは鋭い眼光でフランシスを睨み付ける。
「いや…それはだな。あくまでも第一条件だ。いいか?君の仇は、いくら不意をついた攻撃だったとはいえ、君のお父さんを倒した人間だぞ?しかもそれくらいの奴だからその後更に経験を積んでいるだろう。
賢者になったばかりの君では太刀打ちできないぞ。な、レオン。考え直せ。復讐の機会はこの先だってある…」
「なんだよ先生!そいつ今ここのあたりをウロウロしているって俺言っただろ?それでみすみす見逃せっていうのかよ!」
フランシスの言葉をレオンは遮った。
レオンの全身から熱気ともオーラともつかぬものが発せられている。
「ともかく…今認めるわけには行かない!お前に万が一のことがあったら責任が取れない!」
いつも冷静なフランシスが珍しく語気を荒げてレオンをにらみつける。

「行かせてやれ」
そんな二人をクールダウンさせるかのようにロマノフが威厳のある声で会話に加わった。
「しかし先生!行くのを許すということはみすみすレオンを死なせに行くようなものですよ」
フランシスが声を震わせて反論した。
「うむ。確かに今のレオンでは力不足の感は否めぬ。しかし今後復讐の機会を待ったとしても、奴は奴で力をつけるじゃろうから、差が縮まることはあるかも知れぬが、互角になることはないだろう。
それならばレオンの若さに賭けようではないか。この落ちこぼれのダメ生徒がここまで成長したのじゃ。気持ちが熱いうちに行けばひょっとすれば変わるかも知れぬぞ」
「さすが大先生!話がわかるじゃん!」
レオンは目を輝かす。
「ふん!勝手にしろ。せいぜい後悔しながら倒されるがいいさ。僕も貴様の顔を二度と見なくても良いと思うと正直せいせいする!」
フランシスが捨て台詞を吐いて職員室から出て行った。


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