偽典・女神転生 東京黙示録

第九話「解放」

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通信機から声が流れる。
『定刻通り、弾薬庫の爆破を始める!』
その通信が、切れるか切れないかの内に、爆発音が連続して聞こえてきた。
「しまった!もう始まってしまったぞ!」
園田は焦った声で言った。
「急ごう!」
その早坂の声とうらはらに通路の先の開けた小部屋では今までと戦ったバール兵より修練を受けた兵士たちとネコ型の魔獣ケット・シー数匹がいる。
僕たちが銃で部屋を射撃し、
上河が手榴弾を投げた。
爆炎の中、僕たちはその部屋を走り抜けた。
そして、部屋の奥にあった階段を上った。
「後もう少しね!」
「悪魔人の娘が心配だ。無理矢理引き止めているだろうからな!」
「無事でいてくれよ!もう死人はたくさんだ!!」
早坂の言葉は僕に由宇香のことを思い出させた。
そして、ダンタリオンに殺されかかったことが頭の中でフラッシュバックした。
不思議の心地だ。
殺されかかって、そのときの恐怖で震えてもおかしくないのに、
今は早くあいつと戦いたがっている。
そして、あの時受けた苦しみをあいつに味わいさせたがっている。
身体が燃えるように熱い。
だんだんとあいつに近づいていることが身体が知らせているようだ。
階段を上り、短い通路の先にひとつの扉があった。
扉の向こうから、声が聞こえてくる・・・・・・・
「この私をはめようとは小賢しい!
せっかく目を掛けてやっていたものを・・・・・・・裏切りおって!!」
「はめるなんて、とんでもございません・・・・・私は・・・・・」
「白々しい嘘をお止め!薄汚い雌猫が!!
この私を欺けると思っているの?」
「キャアッ!!」
「クソッ!」
「行くぞ!!みんな!!」
早坂の掛け声で中に一斉に踊りこんだ。

部屋の中に飛び込むと、ダンタリオンが猫娘を、今にも絞め殺さんとしているところだった。
ダンタリオンとモニターには表示されているが、以前と違う顔だった。
まるで女性のようだ。
「何だ貴様ら!?」
突如部屋に躍り込んだ一行を見て、ダンタリオンは一瞬狼狽の色を見せた。
しかし、それも一瞬の事で、すぐに状況を理解したようだ。
「そうか・・・・・・貴様らレジスタンスの仕業か・・・・やってくれたな・・・・・」
そう言うとダンタリオンは、掴んでいた猫娘を離した。
「今だわ!!猫娘さん!逃げて!!」
その声に反応し、猫娘は弱っていながらも持てる最大限の素早さで、部屋の出口に向かって駆けた。
「きっと、助けを呼んでくるわ!待ってて!!」
「そうはさせん!!」
そう言って、猫娘に攻撃を掛けようとする手を園田が阻んだ。
「お前の相手は、俺達だ!」
「こしゃくな・・・・・まあいい、あんな娼婦風情どうにでもなるわ。
まずは、お前達から血祭りに上げてくれるッ!!ザンマ!!」
手を一振りして、園田をふっ飛ばした。
「また、あんた達と出会ったわね。今度はどういう殺され方をしたい?」
DDSを走らせる。仲魔を三体召喚する。
「ディア!!」
桐島の回復魔法で、園田は何とか立ち上がる。
早坂が剣を振り落とそうとした。
「タルンダ!!」
ダンタリオンがその刹那に魔法を唱えた。
体重を乗せた早坂の一撃を軽々と受け止めた。
「人間ってなんて貧弱だこと。これが本当の力よ。」
悪魔の右手に炎の塊が出現しだした。
「イヒカ!!早坂に支援魔法を!」
「ほいほい分かりました。水の壁!!!」
僕たちの体に水の膜が纏わりつく。
「達也!!!早く避けて!!」
「力が入らない。」
「さっきの魔法のせいか!」
「アギラオ!!」
至近距離で早坂は炎に包まれた。しかし、火傷1つ負っていない。
「……傷1つ負っていないのか!……この使い魔ぶぜいが裏切りおって!ジオラ!!!」
「ぎゃああああああああああ!!」
イヒカが消し炭と化し、消滅した。
「タルカジャ!」
園田が強化魔法を唱える。
上河が剣を斬りつけようと間合いを狭めた。
「この虫けらが!!」
雷を上河に放り投げようとしたそのとき、
バン!!バン!!
続けざまに僕はダンタリオンの手と頭を撃ち抜いた。
悪魔の雷が霧散し、上河はその悪魔の顔に傷をつける。
不思議だ!!
なぜか正確に当てることができる。
かちゃ。
弾切れだ。
「この顔に傷つけるなんて許さない!…ディア!!」
ダンタリオンの傷口が修復されていく。
回復魔法を使ったか。
「防御魔法をみんなにかけてくれ、ブラウニー!!」
銃が効くことが分かったので、みんな銃を乱射し始めた。
ダンタリオンの回復魔法が間に合わなくなっているようだ。
このとき、ポケットの中のSS光子弾を取り出し、モスバークM500に装填する。
「ラクカジャじゃホー!」
ブラウニーの防御魔法でさらに攻勢を強める。
「この猿めが!!タルカジャ!!!」
強化魔法か。
ダンタリオンは後衛にいた桐島まで弾幕を通り、殴りつけた。
「キャア!」
ダン!!
壁まで吹き飛ばされたまま、動かない。
そんな桐島に止めを刺そうと長く伸びた爪で切り刻もうと踏み込む。
しかし、早坂の剣が彼の脇を突き刺さったために踏み込めず、爪が空振りした。
「生意気な!!ジオラ!」
まともに食らった早坂の体がピクンと動き、倒れこむ。
近くに早坂がいるために、園田と上河は射撃できない。
でも、僕には当てる自信がある。
僕は彼の頭を狙い、撃った。
命中した傷口が破裂する。
今度は心臓を…
そして、さらに撃つ。
胸部が次々と膨れていく。
今まで余裕の表情をしていたダンタリオンの顔に苦悶の色が滲めでている。
さらに撃った。
「この私が・・・・・!人間風情にこんな目に遭わされるなんて・・・・・・!
おぼえてらっしゃい!
今に、貴方達のしでかした事を後悔させてあげる!!」
ダンタリオンは、煙のようにかき消えてしまった・・・・・・・
最後の一発は命中しなかった。
壁で破裂し、強烈な光を目蓋に焼き付けた。
弾切れになった銃の引き金から手を離した。
「ふん!いつでも相手になってやるぜ!!」
瀕死の重傷を負った早坂は苦しみながら吐き捨てた。
上河が救急医療セットを持ち、桐島の元に駆け寄った。
「上河、英美は大丈夫か?」
「息はしています。…命には別状のある傷は負っていないようです。」
「よかった。……しかし、身体がいてぇよ。」
早坂は安心したのか、自分の体の痛みが出てきているようだ。
僕はジプシーローズに命令し、早坂に回復魔法をかけさせた。
早坂は傷も完治しないうちに、桐島に近づいた。
そして、「先に英美に回復魔法をかけてくれ」とぼくに頼んだ。
「ジプシーローズ、頼む。」
「はい、分かりました。マスター。」
樹霊の回復魔法によって、桐島の顔色はどんどんよくなった。
「うっうっ………達也?」
「よかった!!」
「達也こそ、こんなに傷を負って。今回復魔法をかけてあげるから。」
「無茶をするな。」
「ちょっと待てて……………ディア。」
早坂の完治していない火傷も次第に消えていく。
そこへ猫娘に先導された、他の部隊が飛び込んできた。
「ダンタリオンはどこだ!?」
「何だ、ここにも悪魔が!!」
ジプシーローズやブラウニーに対し、レジスタンスが銃を構える。
「そいつらは俺の仲魔なんだ。敵ではない。不安なら今戻す。」
DDSを走らせ、彼女らを魔界に戻した。
「ヒュー。これが悪魔使いってやつか?」
「それで、今の状況はどうなっている?」
「奴は、形勢が不利と見て、逃げてしまいました・・・・・」
園田はすぐに敬礼しながらこの作戦のリーダーに報告した。
「そうか・・・奴を取り逃がしてしまったか・・・・・
しかし、大したものだ。
あのダンタリオンを退けたのだからな!」
「アンタ達、見直したよ!」
「おかげで、このキャンプも無事解放したぜ!!」
「さあ、基地に戻ろう。
リーダーがお待ちかねだぜ!」
レジスタンスの肩を借りて僕たちは、どうにか帰りのジープに乗り込んだ。
疲れた。
ジープの中で不味いレーションを食いながら、夕闇の赤い空を見つめた。

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