「英美が・・・英美が負傷した。
重傷なんだ。早く医療施設に運ばなくては・・・・・・・・・
英美にもしもの事があったら・・・・・
ラボの奴ら・・・・・・・ぶっ殺してやる!!」
早坂は軽々と英美を抱き上げ、去って行った。
その後を、心配気にニュートンが追って行く・・・・・
「史人・・・・か。
残念ながら、桐島と山瀬は負傷し、重体だ。
悪魔情報が間違っていたのだよ。
だが・・・・データに頼り、判断を誤ったのは、この私だ・・・・・。
私の責任だよ。隊長失格だな・・・・・。」
西野はそう語ると、険しい表情のまま、握り締めた拳を凝視した。
しばしの間そうした後、再び、葛城に向け語り出した。
「史人、心配をかけて済まなかった。
山瀬は第一部隊の手によって、医療施設に運ばれる準備が行われている所だ。
桐島の方は、君も見た通り早坂が連れて行った。
二人とも命に別状はない・・・・・安心してくれ。
では、私は管理部に報告せねばならない。
これで失礼するよ。
お、そうだった・・・・
もし良かったら、早坂についていてやってくれないか?
かなり参っている様だったからな。力づけてやってくれ。
頼むよ。」
『オ帰リナサイマセ ドウゾオ通リ下サイ』
ガーディアン・ロボットの無機質な挨拶をされ、再び戻ってきた。
「葛城くん!!大丈夫?」
由宇香だ。
僕に優しい言葉をかけないでくれ。
僕は大切な仲間たちが傷ついて行ったのに、
ただ立ちすくんでいただけなんだ。
「よかった、無事だったみたいね。
・・・・・・・・西野隊長は、医療施設に行っているわ。
隊長から聞いたけど、ラボの悪魔データが不確かなんて、少しショックだわ。」
「・・・・・・・・ごめん。」
「え!?・・・・どうしたの?葛城くん・・・・・・」
そのまま、僕は走り去った。
自室に戻ろうとした時、陽子さんに会った。
「史人くん、うちの人から大体の話は聞いたわ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「史人くんも、よくやってくれたってうちの人も言っていたわ。
だから・・・・・・・史人くん。そんなに気にしちゃ駄目よ。
山瀬君も、英美ちゃんも大した事なかったんだから。
うちの人は医療施設で、山瀬君についてあげてるみたい。
よかったら、行ってあげてちょうだいね。」
「・・・・・うん。」
病院に向かった。
桐島と山瀬の病室を受付で教えてもらい、
そこに向かった。
山瀬の病室に入った。
西野さんも見舞いに来ていたようだ。
「山瀬の傷は、サイバネック治療のお陰で、完全に塞がったよ。
意識不明にすぐ陥ったのは、一種の神経毒のせいだった様だ。
今は、麻酔が効いていて眠っている。もう心配ない。
おっといけない。
葛城くん、悪いが、私は先に失礼する。
管理部に対し、この事故の報告をしなくてはならないんだ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
山瀬はまだ薬が効いている様だ。
ここにいても無駄なようだ。
桐島の見舞いに行くとした。
病室では早坂が心配そうに座っていた。
「葛城か、見舞いに来てくれたんだな。
英美は今、まだ麻酔が効いていて、眠ってるんだ。
英美の怪我は、思ったほど酷くなかったんだ。
本当に安心したよ。」
「・・・・よかった。」
「それに、サイバネック治療を受けたから、もう傷跡もほとんど分からないくらいになってる。
医学の進歩した、この時代に生まれて良かったよ。
これが前時代だったら、完全に英美は助からなかったろう。」
「・・・・そうか。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
他に何も言えなかった。
「・・・・そろそろ帰るよ。」
「今日一日は、俺もずっと付き添ってるし、心配はない。
見舞いありがとうな。」
桐島の病室を出て、また山瀬の病室を覗いてみた。
意識を取り戻していた。
「・・・・・葛城か・・・・・・土手っ腹に触手が貫通さ。
あの感触・・・・お前にも味あわせてやりたいぜ・・・ククク・・。
お・・・・傷はもう塞がってら。
医学の進歩は凄いね・・・・・・。
見舞いありがとな。」
西野さんに謝らないと・・・・・
病院を出て、すぐに西野さんの家に向かった。
「西野さん・・・その・・・・・」
「おお、史人か。時計を届けてくれてありがとうな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「ふむ、今、第二部隊は、負傷者多数で任務に支障をきたすかも知れないということで、
急遽非番になったんだ。
隔壁のことはそんなに、気にするな。
桐島も山瀬も、傷は大した事はない。明日には退院する。
お前も橘も、よくやってくれたよ。」
「・・・・・・・はい・・・・・・・」
「橘は、随分と気にしていたようだが・・・・・
どうやら、まだ部屋に帰っていないようなんだ。
ヴァーチャルトレーナーにでも行っているのか?」
「・・・・僕も行ってきます。」
家を出て、僕はヴァーチャルトレーナーに歩いて行った。
中に入ると、一トレーニングを終えた由宇香が立っていた。
「あ・・・・・葛城くん。
私、もっと皆の役に立ちたくて・・・・・・・
これから、トレーニングしようと思うんだけど・・・・
一緒に・・・・・・・やらない?」
「・・・・・・・ごめん。」
自分が由宇香と一緒の場所にいてはいけないと思った。
「そう・・・・・・
それじゃあ、今度一緒にトレーニングしましょうね。」
由宇香の声から逃れるように部屋に戻った。