偽典・女神転生 東京黙示録

第五話「崩壊」

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「大方、ゾンビも駆除できたようだな。」
「まだ調べていない部屋があります。」
扉はロックされている。
「ふむ、この程度なら銃で壊せるだろう。」
西野の発射した弾丸が命中し、扉のロックは吹っ飛んだ。
「中に入るぞ。生存者がいるかも知れない。」
中に入ると学者らしき男がいた。
「・・・・・・・・・デビルバスターか!?」
「もう大丈夫ですよ。」
西野さんが安心させるように言った。
「た・・・・助かった!!もう駄目かと思ったよ!!
突然ゾンビが出現して、私はずっとここで隠れていたんだ。
通信は使えないし・・・・・・・・・・ああ、これで助かった。」
「よし、一旦7Fに戻るぞ!」
「ふう、やっとまともな場所で一息つける。」
「ですが、その前に血液検査をしてもらいます。」
「ZMVの検査だな。
私はゾンビに怪我を負わされてはいないが、まあ、それが君達の仕事だ。
言う通りにしよう。」
「御協力ありがとうございます。
では、戻ろう。」
「了解!」

B7Fへと続く扉の前に来た。
「扉の溶接を解きます・・・・・・・
OKです!」

B7Fに着いた時、明らかに異変が生じていた。
グレムリンや餓鬼などの実体化した悪魔の姿が目に入った。
「これは・・・・一体どうしたことだ?」
「こんな階まで悪魔が・・・・しかも肉体を持つ悪魔じゃないか!」
「結界が破られたの?でもどうして?」
「避難している住民の安否が心配だ。山瀬と連絡を!」
「了解!」
「大変な事になったな。
これもまたあの時取り逃した、ムールムールという悪魔の仕業か!」
「隊長、いくら呼び出しても、山瀬隊員からの応答がありません!!」
「クッ・・・・・!B6Fのファームまで急ぐぞ!!
この階の悪魔は構わん。無視して突っ切れ!」
「了解!!」

僕たちは実体化した悪魔を出来るだけ無視して急いで階段を駆け登った。
そして、ファームに向かった。
「た、助かった・・・・・・・!
他の住民は何処だ?」
そう言うなり、学者はフォームの奥へと駆け出した。
「危ない!!まだ何があるか・・・・・・・・・!!」
西野の制止も無視してさらに奥に行ってしまった。
「うわあぁーーーーーーーーーーーーーッ!!!」
学者の絶叫が響き渡り、それを追って用心深く歩を進めた一行の前に悪魔化し血に染まった人間や、ゾンビ化した人間が姿を現わした・・・・・・・
・・・・・・・・そこでは、まさに地獄絵が展開されていた。
人々の呻きと、けたたましい笑い声が交差する中・・・・・。
悪魔と化した人間が、まだ悪魔化していない者を襲い、その肉を裂き、頭から貪り食う。
「なん・・・・だ・・・・・何なんだこれはッ!!」
「悪魔憑依現象だ・・・・・・・・・・・
結界が破壊され、霊的清浄さが失われた今、憑依された人間は、次々と悪魔化して行く。」
「や・・・・・山瀬はッ!?」
「悪魔化してしまった人間は、大抵は思考をも乗っ取られる。
元は誰であったかなど、分かり様がない・・・・・・・・・
まして・・・・・・・例えそれが、人間であっても、悪魔化してしまったのであれば
それは、もはや人間ではない。」
「殺すしか・・・・・殺すしかないと、言うのですか!!」
桐島の絶叫はむなしく地獄の中で響いた・・・・・
「そうだ!!
我々はデビルバスターなのだからな・・・・・・。」
我々の存在に気付いたかのように悪魔達が近づいてきた。
僕たちが銃でその大群を撃った瞬間から、戦いの咆哮が始まった・・・・・・・・
死んでもまだ動いている男女、インプの下魔達、そして醜いブタ顔のオーク達・・・・・
僕たちが張った弾幕をかいくぐり近づいて来る悪魔達を一匹一匹接近戦で殺し、
悪魔達の数を減らしてきた。
僕は皆の弾を装填するまでの時間稼ぎの為に、長い詠唱に入った。
「アギヤード!!!!!」
最後の言葉を述べたその時、悪魔の大群に長い炎の壁が上がった。
炎で焼かれた悪魔の苦痛の声と肉が焼けこげる匂いが、辺り一面に広がった。
炎が存在している間、悪魔達はこちらに近づけない様だ。
この魔法で、もしかして悪魔化していない生き残った人も一緒に焼き払ったかもしれない。
魔法を発動した疲労感とともにそんな不安が生じた。
しかし、僕たちが生き残る為には、仕方がないことだ・・・・・
そう言って、何とか自分を納得させた。
その後、悪魔との死闘が続き、ようやく終わりが見えてきた。
その時、ファームの奥の扉が開き、中から何かが現れた。
ゆっくりとした足取りで、それは、一行に近づいて来た。
「・・・・・・陽子・・・・・知多・・・・・・・・・・・」
それは・・・・・・・・・・・・・・・
西野の妻、西野陽子と、その胸にすがりつく知多が、悪魔の憑依によって、無残にも融合した、哀しい姿であった。
「隊長おおおおおおおおぉぉぉ!!!」
早坂は目を見開き、目の前の悪魔を凝視しながら、悲痛な叫びを上げた。
僕は心配になり、西野の顔を見た。
しかし、予想に反し、西野の表情は穏やかだった。
「最後まで母さんと一緒にいられて・・・・・良かったな、知多。」
西野は小さくつぶやいた・・・・・・
その声に反応したのか、悪魔はくぐもった不気味な声で話し出した。
「・・・・史人君・・・・・何かあったら・・・・いつでも・・・・・・・」
「・・・・・葛城兄ちゃん・・・・・僕もねえ・・デビルバスター・・・・・」
「・・・・貴方・・いってらっしゃい・・・パパ・・・ロボット買ってよ・・・・」
僕は、彼らを見て何故だか、悪魔人に話しかけてみた・・・・・
「ググ・・・ガ・・・・・・・史人君・・・・・葛城にいちゃ・・・・」
「にい・・・・・・遊ん・・・・・・・連絡するわ・・・・ガガ・・・・・・」
過去の記憶の中から、言葉を引き出し喋る悪魔・・・・・
それは、もう、昔の陽子と知多ではないのだ・・・・・
「い・・・・・や・・・もう嫌!こんなの否よぉッ!!!」
「落ち着け!敵の心理攻撃に惑わされるな!
今目の前にいるのは、陽子でも、知多でもない!悪魔だ!!
敵から目を逸らすな!来るぞ!!」
「りょ・・・・了解ッ!!」
戦いは一瞬で終わった。
西野が素早く間合いを詰め、セラミックブレードの綺麗な軌跡が見えた。
「・・・ぐぉおおおお・・・・・・・・・」
その一撃で悪魔は一瞬ひるんだ。
そして、西野は止めを刺すように、剣を振り下ろした。
「・・・・パパ・・・・痛いよ・・・・・・・・・・・」
「・・貴方・・・・・ありが・・と・・・う・・・・・」
悪魔は次第に灰になって消えてしまった・・・・・・
灰に埋もれて、光るものがあった。
陽子さんの指輪のようだ。
西野さんはそれを握り締めた。
西野さんの目から涙が流れているように見えた・・・・・・
僕たちはそのまま沈黙の中を動けなかった。

ビービービー・・・・・・
通信が入っている!!
西野ははっとして、すぐに通信を繋げた。
『た・・・・・頼む・・・・た、助けてくれッ!!』
「橘上官!!」
『・・悪魔がいる・・・・・悪魔が外にいるのだ!!
凄まじい霊体反応・・・・・
た・・・・・ただの悪魔じゃないんだッ!!』
「何処にいらっしゃるんですか!!」
『・・・・か・・・・管制コンピュータールームだ!
・・・・・この階に、ゾンビは侵入していない。
・・・・・私がロックしたんだ。
・・・・・・網膜キーは通常に戻した。
た・・・た・・・頼むッ!
早く・・・・早く来てくれッ!!!!』
ブツッ!!
・・・・・・・通信は切れてしまった・・・・・
「隊長、危険です!」
「あ・・・・あんな人っ!
助ける必要なんて・・・・・ありません・・・・・!!」
由宇香の悲痛の声がとても哀しかった・・・・・・
「馬鹿な事を言うな!!
例えどのような人間であろうとも、
デビルバスターである身の我々が、見捨てる訳にはいかん!
行くぞ!」
正論だ・・・・・・
僕たちは西野さんの気迫に押され、従うことにした。
一同は、兼嗣を救出する為、B9Fへと向かった。

B9Fに向かう階段の扉に着いた。
桐島が溶接を解く準備をした。
「溶接を解きます・・・・・!
・・・・・・・・・・・
OKです!!」

問題のB9Fだ・・・・
やはりあのムールムールがいるのだろう・・・・・・
僕たちは勝てるのだろうか・・・・・・
待っているのが絶望か希望か、
そして管制室に入った・・・・・・

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