太陽の光も入らぬシェルターの中、
目覚し時計代わりのPCの電子音が聞こえた。
どうやら通信が入っているようだ・・・・
教育管理部からの通知か。
『葛城史人殿。
先より申請されていた、デビルバスター入隊試験に必要な学位の所得見込みが、本日決定されました。
その旨、お伝え致します。
お問い合わせの際は、管理NO.32-999392を。
続けて、入隊試験資格申請を行いますか?』
朝食を摂った後に申請を行なおうと思ったが、
でもこういう事は早めに済ませた方がいいだろう。
再びコンピューターに向かった・・・・・
『デビルバスター入隊試験資格申請
葛城史人殿・・・・・・・・市民階級スペシャルB
確認致しました。
資格申請に必要な、学位所得見込み通知を確認。
健康状態チェック医療施設端末より、カルテを参照します。
・・・・・・・・健康状態良好、既往症なし。
これより適正検査を行なう。
これによって合格の成否は左右されないので
気楽に、そして素直に、考え込まず解答して欲しい。』
色々な質問を投げかけられた。
それらを一つ一つ答えて行った。
どうやらこの問題が最後のようだ。
『以上で適性検査の設問を終了する。
これより、解答の分析により、簡単な性格判断をする。
君の中には神秘的な力が眠っている。
恐れや、それとは反対の高慢と戦い、君はそうした
眠れる力をひとつひとつ解放してゆくことだろう。
そうした心を持つものにとって、悪魔の誘惑はもっとも警戒
しなくてはならない。
何故なら彼らは、最初君の友人のような顔をして
近づいてくるからだ。』
こんなテストで自分の性格を判断されるなんてこと出来るかと
内心馬鹿にした。
『市民階級スペシャルB信する。
:葛城史人のデビルバスター入隊試験申請を受理。ただちに管理部に送結果は後程、通信にて通達する。
問い合わせは、管理NO.32-999392を。』
ようやく申請の手続が終わった。
朝食を食べに食堂に向かった。
「よぉ、史人く〜ん。DB入隊試験の資格申請したんだって?」
この声は悪友の山瀬だ。早速からかいに来たのか?
「葛城、頑張ってくれよぉ!応援しているぜ!!
葛城なら、試験受かるに決まっているよ!!
・・・・って言われると、すんげぇプレッシャーだろ?
ま、せいぜい頑張れよ!」
「それを言う為に扉の前で待っていたのですか?」
「俺もそんな暇はねぇって、朝食食って偶然通りかかったわけ。
せっかくの非番だ。
これからアームターミナルを改造するわけ。
俺も忙しいんだぜ。」
「相変わらず、お た くですね。」
「ふん、この可愛いものを持っていない半人前には言われたかない。
せいぜい試験頑張れや。」
相変わらずワケの分からない感性を持っているな。
食堂に行く前に、由宇香の部屋に寄って行こうかな。
彼女の部屋の前に着いた。
ベルを鳴らそうとしたその時、
「葛城君!私、試験資格取れたの!」
廊下の曲がり角から由宇香の声が聞こえた。
「試験日は明日ですって・・・・今日は眠れそうに無いわ!
葛城君は、資格取れたの?」
「まだ、通知来ていないんだ。」
「まだなのね。
でも、絶対大丈夫よ。葛城くんなら・・・・・
そういえば葛城くんのお父様もデビルバスターだったんでしょう?
じゃあ、葛城くんの着てるそのブルゾンは、お父様の形見・・・・」
彼女の問いに無言で頷いた。
「・・・・・・ごめんなさい。悪いことを聞いてしまって・・・・・・・」
「・・・・・いや、いいんだ」
出来るだけ明るく答えた。
「・・・・ごめんなさい・・・・・そんなつもりじゃ無かったの・・・・」
由宇香は、心から謝っていた。
「本当に気にしないで」
あまり僕のことで困らせたくなかった。
「ありがとう・・・・・。
でも、そのブルゾン、着心地良さそう。
天然素材が使われているのね。
葛城くん、すごく似合ってるわ。」
このプルゾンが自分に似合っているといわれてつい照れ笑いをした。
「くすくすくす・・・・・・本当の事よ。
本当に葛城くん似合ってるわ。
最近はやっているから、レプリカ着てる人も多いけど、その中でも葛城くん、一番似合ってると思うわ。
そう言えば葛城くん、英美さんや西野さん達の所にも行った?」
「まだ、行っていないんだ。」
「そうなの。さっき資格が取れたって報告に行ったら、喜んで下さったの。
それで葛城くんはどうなったか気にしてたわ。
まだ行ってなかったら、行ってきた方がいいんじゃないかしら。
確か英美さんと早坂君は食堂にいたわ。」
「ちょうど、良かった。今から朝食摂りに行こうと思っていたんだ。」
「えっ!朝食!!もうお昼の時間よ。葛城くんって意外とお寝坊さんだったんだね。」
「昨日、寝るのが遅かったから。」
「勉強頑張っているのね。それじゃあ、葛城くん、資格取れたら、私にも教えてね!」
すれ違う瞬間いい香りがした。
なぜか由宇香と別れるのが名残惜しい。
食堂でお勧めのビーフミニッツステーキを注文した。
「あら、葛城君。今から遅い朝食。」
早坂の母道恵さんが話し掛けてきた。
道恵さんはこの食堂で働いている。
そうだ、達也と桐島さんの居場所を尋ねてみよう。
「達也と英美さんはどこにいる?」
「ほら、あそこで仲良く食べているよ。
まさか達也にあんなに可愛い彼女が出来るなんて思わなかったわ。
でも、達也は無鉄砲な所があるから、心配なのよ。
葛城くん、達也の事、宜しく頼むわね。」
「うん。でも頼まれても、達也の腕っ節の強さに逆に僕が頼りしたいよ。
それじゃ、仕事頑張ってください。」
「しっかり食べておくれよ。試験中倒れたら困るからね。」
「よぉ、達也。桐島とデートか?」
「何を言っているの?葛城くん。別にあたし達・・・・・・。」
桐島の顔がすごく紅くなっていた。
「やあ、葛城。お前こそ試験資格は取れたのか?」
「まだなんだ。」
「そっかまだなんだ。
でも、資格申請が通らないなんて事、ほとんどないから心配する事はないよ。」
「まあ、お前は犯罪歴がある訳でもなし。
必要な学位の習得見込みがあれば、下りるとは思うけどな。」
「そうね。資格申請が通らないなんて事、ほとんどないから心配する事はないよ。
由宇香ちゃんは、もう資格とったみたい。
さっきあったら、すっごく喜んでたよ。
でも、由宇香ちゃんって変わってるよね。
お父さんが管理部の人で、エリート階級なんだから、
エリート居住区で優雅に生活できるのにさ。
デビルバスターなんて、危険な職業になるために勉強してて、
おまけに家族から離れて、一般居住区に住んでるんだから。
でも、なんか普通のエリート階級の人と違って、親しみやすいよね。」
そうだ。シェルターの中では厳しい階級制がある。
この食堂にエリート用の食堂は別にあることから示すように
出来るだけ身分の異なる人を一緒の場所に居させようとしないようになっている。
しかし親友の達也は市民ランクが低いながらも、デビルバスター隊員となり、恋人も得た努力家だ。
達也と桐島は普通の食事の倍の量はあるDB食を食べ終わったようだ。
「俺達はこれからトレーニングするんだけど、
史人、隊長には・・・・いや、西野さんには報告したのか?
まだだったら行ってこいよ。家にいると思うぜ。」
「ああ、飯食ったら、報告しに行くよ。」
「それじゃあね、葛城くん。」
朝飯いや昼飯を食べ終わり、西野さんの家に向かった。
いつもデビルバスター隊長として忙しい身であるが、どうやら今日は妻の陽子さんと一緒に家に居た。
でもひとり息子の知多は遊びに出かけているらしい。
「こんにちは。」
「こんにちは史人君。」
「おお、史人じゃないのか。資格は取れたのか?」
「まだ、みたいです。」
「なに?まだ通知がない?
橘はもう来たと言っていたな。
そろそろ、通知があってもいい頃だと思うがな・・・・」
「そういえば、英美ちゃんの時はどうだったかしらね?」
「ああ、桐島の時か。
彼女の時は、すぐ返事がきていたと思ったがな。」
「自分の部屋に戻って確かめてきます。」
「そうか、もし取れたなら教えてくれよ。」
「期待して待っているわ。」
「すぐに報告します。」
家を出ると、知多が戻ってきたようだ。
「あ、葛城お兄ちゃんだ!!」
「おう。」
「葛城お兄ちゃんも、早くデビルバスターになれるといいね!」
「なに、明日にはもうなっているさ。」
「頑張ってね、試験。」
「ああ、頑張るさ。」
急いで部屋に戻ると、管理部からの通信が入っているようだ・・・・
「市民階級スペシャルB 葛城史人殿。
デビルバスター入隊試験の受験を認める。
また、試験は明日行われる事に決定した。
その旨、ここに報告する。」
無事試験資格は取れた。
心配していた西野達に報告しておいた方が良いだろう。
すぐに部屋を出て西野さんの家に向かった。
「資格と取れました!」
と元気よく言う。
「史人、資格取れたのか。頑張れよ、期待しているぞ!」
「よかった。史人君、試験頑張ってね!
由宇香ちゃん、張り切ってたわよ。負けないようにね。」
二人が僕のことを応援してくれることが嬉しかった。
何とか期待に沿えて、デビルバスターになりたい。
「はい、頑張ります!」
「試験は明日なんだろう?
実技試験もある。疲れた身体では実力を発揮しきれんぞ。
そろそろ自分の部屋で休んでおけ。」
西野さんの言葉に反して、僕は部屋に戻らなかった。
由宇香にも資格が取れたことを言いたい。
早速彼女の部屋に向かい………
「葛城くん、資格取れたのね!
お互い、頑張りましょうね。」
彼女は明るく言う。でも、僕は
「でも、自信ないなぁ。」
「そんな!今まで頑張ってきたんでしょう?
それなら、きっと大丈夫よ。」
「そうだね」
「でも、試験に一回で合格する人って割と少ないんですって。」
「そうなの?」
「ええ。
第二部隊の山瀬さんだって、二回落ちたって言ってたわ。」
彼女の顔に憂いの表情が浮かんだ。
僕だけでなく彼女も不安なんだ。
そこで少しジョークを言おうとした。
「僕らは山瀬とは違う」
「ふふふ・・・・そんな事言っちゃ、山瀬さんに悪いわ。
でも、本当に一回で合格できたらいいわよね。」
「うまくいくかなぁ」
「そうよね。
みんな勉強してきてるんだろうし、何回目かの受験の人だっているでしょうしね・・・・・
でも、落ち着いて最善を尽くせば・・・・・・きっと大丈夫よ、きっと。
それに、仮に不合格だったとしても、二度とチャンスが無い訳じゃないし。
余計な心配するより、最善を尽くす事を考えましょうよ。」
「そうだね。」
「それじゃあ、明日はお互い頑張りましょうね!」
由宇香の部屋を出た時、どうやらデート帰りの早坂に会った。
「よぉ!また会ったな。 資格は取れたのか?」
「ああ、取れたよ。試験明日だって。」
「おめでとう!試験しっかり頑張れよ。
なあに、俺が入れたんだから、お前なら大丈夫さ。」
「励まし、ありがとうな。」
明日はデビルバスター入隊試験だ。
夕飯を食って、さっさと寝ようとした。
PCがメールを受信したとランプが点いている。
メールを開くと由宇香からだ。
橘由宇香:明日は頑張りましょうね
突然ですが、橘です。
さっきは、訪ねてくれてありがとう。つい、何だか嬉しくて、お手紙を書いてしまいました。
ひとりだと緊張して、なかなか眠れないところだったけど、お陰で何だか安心して眠れそうです。
明日はお互い精一杯頑張りましょうね。
一緒に合格できたらいいのにな・・・・。
では、おやすみなさい。
由宇香
さっそく返事を書いた。
すぐに眠ることが出来ず、明日の試験のことが気になる。
明日、何とか合格したい。
不安が自分を包囲しながら、深い眠りに落ちていく。