B5Fではヘルハウンドが数匹居たが、何とか自動小銃で追い払った。
そして、ガードロボットが居るゲートまで辿り着いた。
『ココカラ先ハ 危険 危険 確認シマシタ
ココカラ先ハ 危険 危険 確認シマシタ
許可ナキ オ通リクダサイ IDノ確認ガ・・・・・・・・』
・・・・・・・・・・・・・・・???
『危険 確認シマシタ IDノ照合ヲ
許可ナキ オ通リクダサイ IDノ確認ガ・・・・・・・・・』
ガードロボットは破壊されているようだ。
あちこちから、スパークする火花の様なものが出ている。
『違法侵入者発見!違法侵入者発見!!
駆逐攻撃モードON 駆逐攻撃モードON!!』
「気を付けろ!!どうやら、ガードロボットは暴走しているぞ!!!」
早坂に言われるまでもなく、銃で狙った。
ふらつく四足歩行は、明らかに異常な動きだった。
桐島は自分のアームターミナルのキーボードを叩き、ロボットに停止命令を送ろうとしていた。
スパークを帯びた腕で早坂を殴り倒そうとしたが、早坂は身軽な動きで避けた。
そして、内蔵された銃で早坂を追い討ちをしようとロボットが向きを変えた途端、僕はウージーでロボットに連射した。
ロボットは今度は僕を目標にするかのように、その鉄の身体で突進してきたが、やすやすと避けた。
今度は早坂がモスバークM500で撃った。
しかし、その頑丈な防護はあまり効いていない様だ。
戦闘プログラムは狂って、照準が合っていないようだが、
それでもその攻撃は脅威であった。
早坂と一緒に善戦をしたけれども、だんだんと疲れが溜まってきた。
「英美!はやく、停止させろーーー!」
「・・・・もう少し待って。」
英美のキーボードの叩く音がより早くなった。
そして、
「終わったよ!これで止まるはずよ!!!」
その言葉とともにガードロボットの動きが鈍くなり、
漏れ出ていた火花も次第に少なくなって、機能は停止した。
「ふう、無事に命令受託できたみたいだね。」
「これ以上、何が起きるか分からない。早くシェルターを脱出した方がいいな。」
B4F、B3F、B2F、B1Fと次々と階段を上っていった。
途中、悪魔が実体化されていたが、
コボルトとボギーレイブン、管狐などを仲魔にし、
その他は何とか撃退した。
そして、いよいよ地上に続く扉に辿り着いた。
「いよいよ外に出るんだな・・・・・・・」
早坂は感慨深く言った。
「あたし達これから、どうなっちゃうんだろう・・・・・・」
少し震えが入った声だった。
「余計な心配をしてても仕方ない。もう、後戻りは出来ないんだ。」
早坂の何か決別した声が響く・・・・・。
「地上で生き抜く手段を考えないと・・・・・・・」
この現実を考えない様につぶやいた。
「そうね。」
「もう、化学戦スーツは脱いでもいいだろう。
悪魔相手に、いつまでもこんな物着て戦えないからな!」
「ちょっと待って、スーツの測定器を見るわ!
ここの毒ガスの濃度は、数値から見れば危険値以下ね。
大丈夫そうよ、脱いじゃいましょ!」
一行は化学戦スーツを脱ぎ捨てた。
新鮮な空気とは言い難いが、肺の中に湿っぽくない空気が広がる。
「さあ、行こう!!」
初めての地上・・・・・・・・
高層ビルだけが墓標のように立ちつくす下・・・・・・・
多くのビルが瓦礫と化し、道路はひび割れ、黒焦げの自動車で埋め尽くされている。
シェルターの上は、かつて国立劇場があったのだが、今は跡形も無い。
僕たちは行く宛はなかったため、東京をさ迷っていた。
悪魔が少ない昼間は歩き、夜は見張りを交代して過ごす日を数日続けた。
そして、
満月が輝いた夜、事件が起きた。
彼方から歩いてくる人影が見える・・・・・・・・・・・・・。
その人影は、足早にこちらへと近づいてきた・・・・・・・・・。
それは、何と山瀬であった。
「よぉ・・・・・・・・・・」
「や、山瀬!生きてたんだね!」
「あったりめぇよぉ!
バンピー共が、悪魔に憑依され出した時に、
こりゃやべぇって思ってさ。
そんで俺、一人でシェルターの外に出たんだよ。
ま、生きてて当たり前だな。」
「な・・・・・・何て事を・・・・・貴様ぁっ!」
早坂が山瀬に殴りかかろうとした、その時・・・・・・
山瀬の前に、一人の人間が、突然姿を現わした。
「皆さんを、御迎えに参りました・・・・・・・
どうです?
私についてくれば、貴方がたの命の保証は致しますよ。」
「この人・・・・・?何か変だわ・・・・・・・・・・・・・」
その時、その男は変身を解き、悪魔としての本性を出した。
一冊の本を持つ司祭の格好をした青年であった。
「ほう、お嬢さんはいい勘をしていらっしゃる。
私は・・・・ダンタリオンと申す者・・・・・・。
貴方がたのような、優秀な人材を我がキャンプに迎え入れる為、
わざわざ出向いた訳です。」
「降伏すれば命の保証。じゃなきゃ野垂れ死にだ。
お前達の事を思って、俺がダンタリオン様に、対化学戦スーツの存在を話したんだ。
お前達は、必ず生き残るってね!
降伏する方が、賢い生き方だと思うぜ。」
「冗談じゃねぇ!」
「誰が悪魔の手先なんかに!」
「へッ。馬鹿な奴。
俺は、もーちょっと、賢い奴らだと思ってたんだがな。
・・・・・・・・・なあ、葛城よぉ、お前はどうする?
お前が頷きさえすれば、あの二人も文句は言わねぇ。
命を助けてやろうって、言ってんだぜ?」
僕に、降伏を促す、ダンタリオンと山瀬。
ここで降伏すれば、おそらくは新宿にあるといわれる、強制労働キャンプに、連れて行かれるだろう。
降伏を拒否すれば、恐らくは戦闘になる。
仮に勝利をおさめたとしても、厳しいこの地上で、シェルター住民である、自分達を受け入れて貰える場所があるのかどうか・・・・・・・。
また、他のシェルターまでは、かなり歩かねばならない。
その途中には、悪魔やごろつき達が五万といるのだ・・・・・・。
選択に悩む僕の顔を、早坂と英美が、息を呑んで見つめている。
僕はある結論に達した。
今は生き抜く事が重要だ。
相手のやり方を観察して、復讐の機会を狙うのも悪くはない。
そして僕は口を開いた。
「・・・・・・・降伏する。」
「貴方は賢いお方だ・・・・・」
「じょ・・・・・冗談じゃねぇ!葛城!お前何考えてんだ!?
俺は一人でもやってやる!」
「あたしもやるわ!」
そう言うと、早坂達はダンタリオンに向かって突っ込んで行った。
「愚かな・・・・・・・
では、せめてもの慈悲です。
ここで皆一緒に、殺して差し上げましょう!」
どうやら僕も、始末するらしい。
急いで、召喚プログラムを走らせようとした・・・・・・・
「・・・・・そのプログラムをお持ちですか?くだらない援軍を召喚される前に貴方を始末してあげましょう!!」
その瞬間、体中に電気が走った。
痛みを感じるとともに、意識がなくなっていく・・・・・
「葛城ーーーーーーー!!」
「葛城くん・・・・」
二人の声が聞こえる。
「フフフ・・・・・・愚かな人間共よ・・・・・・」
侮蔑する悪魔の声を聞きながら、闇の中に沈んでいく・・・・・・