川べり
はやく、はやくこの状況から逃れたい。胃からせり上がってくるそれを吐き出しそうになる。吐いたら市丸さんにかかる。だから吐けない。この状況から逃れたい
「なに泣いとんの、ボクの前では怒った顔ひとつ見せひんくせに何で泣いとんの。なんも辛いことなんてあらひんやろ、 それともボクがここにいること自体が辛いことなんか、ならそう言ったらええやん。斬ったり殺したり、傷つけることなんてやらん。言ったらええやん、」
流れるように、冷静さを持った声で言った。顔を少しあげて市丸さんの表情を盗み見ると普段の笑いはなかった。右手に神鎗をぶら下げて川べりに座ったまま、俺に聞こえるようにわざとため息を大きく吐く。狂っている、なにがしたいんだかわからない。この人を理解することなど俺のちっぽけな脳みそでは出来ないことだ。機嫌が良いときと悪いときの差が大きすぎて俺はついていけなくなる。 胃からまたせりあがってきた、そろそろ限界らしい俺の胃とつっかえ棒をしていたのどの奥はほんの一瞬緩み、川へと胃液交じりのそれを吐き出した。
「きたない、死覇装 汚れたやん。信じられへんムカつくわ。」
ひとつひとつ小さく区切りながらぽそぽそ喋った。
狂っている。
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続きもの。熱帯夜の続きかその前か、その辺のハナシ
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