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上層 「ごめん、恋次。ボクまた 」 「気にしてません。だから市丸さんも、気にしないでください」 そんなこと言われても、そういう顔で俺を見た。そんなこと言おうが言わなかろうがまたアレは繰り返される。 それがわかっているから俺は市丸さんに気にしていない、と言って罪悪感を着せる。 普段俺が傷ついている分、市丸さんが『正気』のときに彼自身を傷つけなくてはいけない。精神からじわじわと。 この人は内面に自分自身をたくさん飼っているのではないかと思うくらい、機嫌によって 言動も行動もすべてが違う。俺はそれについていけていない。ついていける人間がいるかはわからないけど。 彼は狂っているのだ。だから俺は彼を見守ると言う仕事を任された。丈夫そうに見えたのだろう、精神がきっと。 俺は決して丈夫じゃないし、この人が好きだった。だから彼を見守ることなんてしたくなかった。 体が一緒にいた事はあっても、精神が一緒にいたことなんてなかったし、彼の精神はいつもどこかへ散歩していた留守だった。 彼は自分の内面がたくさんあることを気づいている。気づかないフリはしているけど俺はわかっている。 彼は俺にすべてを見せてしまっているから。そのこと自身に腹を立て俺を傷つけているらしく、傷つけて自分の内面を見せたことをまた腹立てる。物事は永遠に続いているのだ。 そして終わることはない 彼が狂っていることも終わることはない。 「恋次、ボクはもうみんなに見放されてるのかな」 「知りません」 普通は違いますよって言うよな、困ったように眉を少したらしながら言った。違いますよって言ったら俺を傷つけるくせに。 俺は彼に俺を傷つけさせないようにしている。俺を傷つけると彼はまた傷つく。それを少しでも食い止めようと、俺は地に足つけてがんばっている。 物事に終わりなんかない、それはつまり、俺たちの関係も、彼が俺を傷つけることも、終わりなんかない。 なのに上は、終わりがあると信じて、俺に彼を見守っていろと言い続ける。自分たちが正しいと言うように、言い続ける。 上は、そんなことを言うと市丸さんが傷つくと知りはしないのだ 彼は狂っているけど、上ほどじゃないんだ next ... |