『 人形姫 』

1 キャロル
あの人は私に手を差し伸べてくれた。一緒においでと。
あの人は私をあそこから連れだしてくれた。ここにいては辛いだけだろうと。
あの人は私に言った。私がそなたを望むのだよと。

どうして私に拒めたの?熱すぎる太陽の照らすあの国はキライだった。
メンフィスもアイシスも・・・怖かった。ただ怖かった。考えるのも嫌。思い出すと身が震えるほど。

あの人は言った。
そなたを引き取るのは私の一存だ。でも心配することはない。何も不自由せぬよう取りはからってやる。嫌なことは何もせぬ。少なくとも今よりは幸せにしてやれるぞ?

差し伸べられた大きな手。選ぶことのできない未来が差し出された。
イズミル王子。はしばみ色の髪、琥珀色の瞳。整った顔立ち。いろんな事を知っている。兄さんに雰囲気が似ていると思った。
好きだ・・・と思った。好きになって欲しい・・・と思った。

だから・・・私はあの人の手を取った。

長い長い旅。
あの人は私にいろんなことを教えてくれた。星の見方。水脈の辿り方。道がどこに続いているのか。道の向こうにどんな国があって、人々はどんな生活をしているのか。これから行くヒッタイトはどんな国か。
旅路の果てのヒッタイト。城壁に囲まれた都市。
あの人は言った。これが堅固な城塞都市ヒッタイト。何人たりとも勝手に出ることは叶わぬ。決して!
思わず身震いした私。これから先、私は決して一人きりにはなれないだろう。私は囚われて決して逃れることはできないだろう。そんな予感がした。

城壁に囲まれた宮殿の中の豪華な一室。
あの人は当然のように私を抱いた。怖くなかったといえば嘘になる。嫌でなかったといえば嘘になる。迷いが無かったいえば嘘になる。
でも。
あの時、この人とならばいいと思ったのも本当。イズミル王子と呼ばれる年の離れた男性がとても好きだったのも本当。
先に何の保証もない結びつき。一時の気まぐれかも知れないと思った。醒めた覚悟が私の躰の芯を冷たくした。
でも。
誇りも慎みも何もかも忘れ果て、私は自分から堕ちていこうと思った。あの人の数ある愛人の一人でもいいとまで思い詰めて、泣きながら・・・。

2 イズミル
娘は泣きながら眠ってしまった。
細い躰。頼りない躰。幼い心。愛しい、愛しい、愛しい・・・。

私を頼ってきてくれた娘。初めて見たときの衝撃は未だ忘れられぬ。
金色の髪、青い瞳、白い肌。幼く頼りなげな様子ながら・・・私は一目見ただけでその娘に男の欲望を覚えた。
そのような欲望を抱く自分に嫌悪を覚えさせるほどの様子であるのに、その娘の中には確実に男を狂わせる女の部分も隠れていた。
その女が私を捉えたのだ。

私は娘に手を差し伸べた。娘が私を拒めぬのは分かり切ったこと。
私が彼女を望んだのだ。何故、この無力な存在に私を拒めよう?
私は彼女を胸に抱き、大切に慈しみ導きながらヒッタイトに帰城した。娘は私を兄のようだと言って笑った。
その時、確かに私はこの無垢な存在を愛していると確信した。いや、私はもう絡め取られてしまっていたのだ。金色の髪の魔性に・・・。

無垢な娘。世間知らずの娘。醜いことも、さもしい駆け引きも何も知らぬ。神の英知と子供の心を併せ持つ優しい娘。手折ってはならぬ永遠の蕾。
謀略と血、裏切りと別離、冷徹な政略の中で生きてきた私。
私は汚れている。手には血がこびりつき、高い身分と引き替えに孤独を得た。
だから。

愛しい娘を私だけのものにしたかった。ただ眺め、憧れるだけの女神ではなくて、私と同じ存在にしたかった。
純粋なものを汚す喜び・・・・・・。
私は娘を抱いた。真実愛しているから。手放したくなかったから。
自分の身に何が起こっているのか理解し切れぬような娘を。
私は悪魔だ。愛しい娘を二度と母女神の許に帰れぬような躰にした。

そして。
娘は私のものになった。私はひとりではなくなった・・・・・・。

3 ムーラ
王子が初めてご自分のご寝所に女人をお入れになったのはエジプトより帰国なされたその日の晩。
これまで王子はそのようなことはなさらなかったのに。
これまであまたの女人方があの方のお側に召された。でもご寝所にお入りになった方はなかった。
いつもいつも王子のほうから女人方のお部屋においでになられた。そして暫しの快楽に日常の憂さを忘れられる・・・。
それが私のお育てした王子のなさりようだった。

でも。
あの金髪の小さな姫君に対するなさりようなこれまでとは正反対。
ご自身のお部屋の一角を形ばかり仕切って姫君のご座所となさり、旅装を解かれた姫君がおくつろぎになるのもろくろくお許しにならず、私にご入浴の介添えを命じられた。
あの女になどお心をかけられることのなかった冷たい方が!この私にじきじきに姫君のお世話を命じられた!

浴室で拝見した姫君のお躰。白く頼りなく、痛々しいほど。これまでのお相手とは全く違う。

―この幼い方はこれから王子がご自身に何をなさるか充分にごぞんじなのかしら?王子はずいぶんと酷いことをなさるのではないかしら?
思わず、心配してしまったほどの小さな異国の姫君。

それでも私の口から出たのは、私が全身全霊を込めて大切にお育てした王子を思う言葉。
―何事も王子のお心のままにお仕えなされますように。これからは王子ただお一人があなた様がお頼りになり、大切にお慕い申し上げるべき方です。

3 ムーラ
姫君は同性の私の口から出た冷たい言葉をどう思し召したやら。
毅然とただ無言で頷かれ、私が手をお引きするままに王子の御許に向かわれた。

翌朝、日もすっかり高くのぼり・・・。
王子と姫君は仲良くご寝所からお出ましになった。
王子のご機嫌は麗しく、どこでお覚えになったやら手ずから新床のお勤めを無事、お済ませになられた姫君のお世話をなさる。
これまでにない王子のなさりように目を丸くする侍女達を窘めつつ、私はご両人にお仕えする。
私だって驚いていたのだ。王子が・・・私のお育てした王子が・・・たかが女人にここまで優しく気遣いを示されるとは・・・!

王子が姫君に新婚の贈り物(!)をなさったとき、不覚にも私は息を呑んで取り乱した様を露わにしてしまった。
王子が姫君にお贈りになったのは・・・指輪。
金と宝石でできたそれは・・・母王妃様が王子に贈られた逸品。いつか正妃となる女人に贈るようにと・・・・。

4 ミラ
王子が新しい女人を召し出された。
そんな噂が耳に入っても私はいつものように余裕のある微笑を浮かべるだけの筈だった。
王子は素晴らしいお方。お身のまわりにあまたの女人があるのはご身分柄当然。お忙しい方なのだから憂さ晴らしの女人は必要でしょうし。
でもいつだって一番、愛されるのは私。
お部屋に王子をお迎えする回数が一番多いのは私。
王妃様お気に入りの私。王子は母妃のご意向を重んじる方。私を愛していつか正妃の位に昇らせてくださるのは当然。
私はあの方を誰よりも愛している。あの方は私のもの。
香をたき、紗を纏い、あの方の愛を受ける私。あの方は激しく私を愛し、私を夢中にさせて下さる。

新しい女人はいつ自分の房を賜るのかしら?いつ私に挨拶にくるかしら?どうあしらって身分柄と立場を教えてやろうかしら?
そんな思いはあっさりうち砕かれた。
新しい女人―エジプトのナイルの姫―は王宮にやって来たその日に、王子のご寵愛を受けた。
王子は女は誰も入ったことのないご自分の寝室にに姫を置き、信厚いムーラに世話をお任せになっているという。
あの王子が!あの王子が!他の女を・・・いいえ、私を差し置いてそんな真似を!

今まで見下していた他の女達の視線が私の誇りを踏みにじる。
一歩も王子のお部屋を出ず、王子のご寵愛を専らにしている憎いナイルの姫。

初めて憎い女を見ることが叶ったのは冬の大祭の宴で。
小さな姫は王子に手を引かれていた。その手には王妃様ゆかりの指輪。王子に並び立つ女人にのみ許される逸品が輝いていた。
・・・・私の目は屈辱に曇り、周囲の風景は真っ赤に染まった・・・・。

5 王宮侍女
ええ、そりゃ驚きましたとも!何がって、あなた冬の大祭の宴のことですわ!
あの日、初めてイズミル王子様がナイルの姫を公にお披露目なさいました。
兼ねてから噂になっていた姫君ですよ。エジプトだかどこだかの神の娘で、王子のご寵愛を専らにしてるって。
賢くて美しくて心映えも良くて。慎ましやかな蓮の花のような方。
何ですか、本当にそんな男に都合のいい娘なんているのって随分と私たちも意地悪く取りざたしたものですわ。

でも本当にいるんですねぇ。男の心を捉えて、私たち女までうっとりしてしまうような容姿の方って。
いえね、妖艶とかいう類の美貌じゃないですよ。まるで子供。固い蕾みたいな、もっと意地悪く言えば神殿にある像みたいにキレイすぎて嘘っぽい感じ。
でも如何にも、子供っぽいおぼこな感じがきっと王子のお気に召したのでしょうねぇ。ご寝所からお出しにならなかったのでしょう?
王子の父君様も女人にはちょっと変わったお好みがあるようですし。ふふふ。

姫君はお指に、王妃様譲りの指輪をしておいででしたよ。それを見たときのミラ様のお顔!
あの指輪はただの指輪じゃありませんよ。言ってみれば王子妃の印。

皆、驚きましたよ。その上、ミラ様ったら王子が席を外されたちょっとした隙に姫君におっしゃったのですよ。その指輪を私にお渡しなさいってね。
姫君は驚き、戸惑われたようです。王子のお許しがなければ指輪は外せないっておっしゃいましてね。ミラ様は傍目にも分かるくらい逆上なさいましたよ。
でもねぇ、皆はもっと驚いたんですよ。戻られた王子はおっしゃったんです。
冷たい冷たいお声でねぇ。

―姫、少し指輪を貸してやれ。ミラ、これで満足か?って・・・・。

6 キャロル
私は先に宴の席を退出した。
宴に出る前に王子が私に着けさせた指輪が今はない。金色と青色の綺麗な指輪。あの人が初めての夜が明けた朝に贈ってくれた指輪。私に填めさせてくれた指輪。

―大切にいたせよ。決して無くしてはならぬ。決して外してはならぬ。

私は黙って頷いただけだった。
でも嬉しかった。差し出した左手の薬指にあの人が填めてくれた指輪。
私はただの弄び者かもしれない。気まぐれに抱ける人形でしかないのかもしれない。あの人は私に心があると知っていてくれるかしら?そんな迷いと悲しみを抱いて、王子のものになった私。
王子の行為は私を乱れさせ、私は屈辱と喜悦にむせび泣きながらあの人に縋った。あの人の胸の中で永遠に失われた20世紀を忘れようと思ったのかも知れない。
―愛しい・・・。そなたはまこと乙女であったのだな。ああ・・・こんな想いは初めてだ・・・。そなたが何よりも愛しい・・・
そう言ってくれたと思ったのは夢だったの・・・?

指輪はあの人の心の証だと勝手に決めていたのは私の愚かさ?
窮屈なほど私を大切にしてくれたあの人に、いつの間にか私は心傲っていたのかしら?
指輪をくれたあの人が、私から指輪を取りあげた。あの人の数多い愛人の一人の気まぐれを叶えるために。

思い詰め、黙り込んだ私の許にあの人はしれっと秀麗な顔で戻ってきた。
私は古代に来て初めて心がいきいきと動き、波立つのを実感した。

―どうして私の指輪を取り上げたの?あれはあなたが私に贈ってくれた大切なものだったのに!あなたはどうでもいいのね、私の事なんて!あなたなんて大嫌いっ!

気がつけば私は泣き叫んでいた。昔、まだ兄さんの小さい妹だった頃のように。

7 イズミル
私は苛立っていたのかもしれぬ。宴の席で思わぬ騒ぎがあったゆえに。
私が姫に贈った指輪。姫が頬を染め、嬉しそうに私に微笑みかけた贈り物。
それをミラが見咎めて欲しがったのだ。私が姫にと贈った指輪を。
金の台に碧の宝石。母が私に贈った品。いつか我が正妃となる女人に贈れと。

私は姫を愛していた。
姫が私に是非もなく抱かれ、身も世もなく涙し、躰を撓らせても、心の深い場所は私に捧げることをよしとせず頑なで潔癖な乙女、いや子供のままであると分かっていたから・・・我が心の証として当然のように指輪を与えた。
私を信じよと。
私だけを信じ、愛し、縋り、忠誠と貞節を捧げるはそなたの義務。それに疑問を挟むことはそなたには許されておらぬ。そなたはただ私だけのもの。
指輪は私の心の証、姫への頸城(くびき)。

だが指輪は所詮、指輪にすぎぬ。ただのモノに不相応な深い意味合いを持たせるなどとは愚かしいこと。
折に触れ、抱いて戯れたミラが指輪を欲しがった時、私は呉れてやればいいと思った。たかが指輪だ。聡明な姫とて私と同じ考えであろうと思っていた。
指輪はミラの手に渡った。愚かな女は滑稽なまでに喜んでいた。

だが姫は。私が指輪を取り上げたといってひどく怒った。泣き叫んで。感情を露わにして。私を罵って、大嫌いとまで言い切った。この私を!
私は怒りに我を忘れた。小さな躰を怒りに震わせて泣く姫、小生意気な子猫!
私は苛立っていたのかもしれぬ。
私は乱暴に姫を押し倒し、幾度も罰した。何故、我が心が分からぬかと。たかが指輪などで何故、我が心を測ろうとするかと。
姫を思いのままにする冥い歓びが私の理性を曇らせた。

8 ムーラ
姫君は床から起き上がって来られなかった。
冬の大祭の宴の翌日のこと。
王子は常の通り、お起きになって政務のために表宮殿にお出ましになった。
王子は感情の全く伺えぬ深い光を宿した瞳で私をご覧になった。あるいは私はひどく取り乱した様で王子を見ていたのかも。
だって、昨夜のことは全く王宮中で姦しく噂されていたから。
・・・王子のご寵愛を誇るミラ様が、姫君から王子妃の証の指輪を取り上げられた、と。いえ、王子が姫君に指輪を渡すようお命じになったのだと。

この私がいつの間にか、あの子供のような姫君贔屓になっているとは我ながら笑止なこと。
でも畏れ多いことながら、実の御母君以上に親しく王子のお側にお仕えしてきた私が、いつの間にか王子の心と一体になって、あの方の好まれるものを好むようになるのはある意味、当然かもしれませぬ。
私は姫君をお気の毒に、とお思い申し上げたのですよ。そして初めて育ての君のなさりように腹立ちを覚えたのです。

そう、宴でのなさりよう。そしてご寝所にお戻りになってからのなさりよう。
ええ、宿直の侍女達は皆知っていること。閨の中で王子が怒りにまかせて姫君になさったことを。

いつもより余計に小さく儚げに見える姫君をお湯にお入れして、私は・・・私は・・・未だ持ったことがなく、これからも持つことはないであろう自分の娘にするように、あの方の小さいお躰を抱きしめて泣いておりました。

女は哀れなものでございます・・・・・。

9 ミラ
私の指に誇らしげに輝く指輪。金色と碧色が冬の朝日に冴えた光で煌めく。
美しい品。またとない一品物。宝石(いし)は水のように透明。水底には王家の紋章が透けて見える。

私の心は晴れない。いえ、どんどん深く暗い淵に沈み込んでいくよう。
侍女達が指輪を褒めて見え透いたお追従を繰り返す。
今まで物の数にも入れていなかった女達が、指輪を手に入れた私の運の良さを褒めそやす。
―ほんとうに見事な指輪でございますこと!王子はミラ様のお望みなら何でも叶えて下さるのですねぇ!お羨ましいこと!

嘘。そんなことは嘘。嘘ばっかり。
皆、知っているくせに。私だって知っているのに。
この指輪は・・・この指輪は王子の冷たい怒りそのもの。私への絶縁状。
あの方はナイルの姫を選ばれた。私に指輪を下さったときの冷たい声音。
―呉れてやる。だからもうこれ以上、私を、姫を煩わせるな。
王子のお声は、お目はそう告げていた・・・・。

あの方は私を愛された。夜毎、私を抱きに見え、私を夢中にして下さった。目を閉じて恍惚境を彷徨う私を、満たして下さった。
いいえ。違う。
あの方は私を愛でられただけだったのだ。目を開けてあの方の醒めた琥珀の瞳を一度、見たことがあったっけ。一度だけ・・・・ただ一度だけ。
それがあの方のまことのお心だったのだと・・・今になって気付くなんて!
私はあの方のお心を、我がものにできなかったのだ!

金髪の姫が憎い。碧い瞳の姫が憎い。憎い、憎い、憎い・・・・・。
愛され、美しく磨き上げられ、傅かれ・・・・。
王子は美しいものがお好き。姫が美しいから、珍しいから、愛されるのかしら?
そうに決まっている。そうですとも。そうでなければおかしい!

私は自分の為すべき事を悟った。

10 警備隊長
いやはや、王宮に奉職して20年になりますがあれほど驚かされたことはなかったですな。
長いお勤めの間には色々なことがあり、まぁ、少々のことでは驚かなくなるほど図太くなったのが警備隊長たる私の自慢でした。
国王様と側室の君の修羅場を収めたこともありました。
暗殺者を膾斬りにしたこともありました。
輝かしく誇らしく思えること、凄惨なこと、哀れを誘うこと、・・・色々とありましたぞ、本当に。

しかしですなぁ。昨日のあれは本当に・・・・。

夕暮れのことでした。王宮中が何となく慌ただしく、後宮も賑やかな火灯し頃を迎えておりましたな。
いつも通りの夕暮れだ、と私は配下の間を油断なく巡回しながら考えておりました。
ところが。後宮のテラスで何やら人が争う気配がしたのです。気配を消して近づいてみれば、そこにおわしたのはミラ様と、最近
後宮に上がられた金髪のお方でした。
私はこう見えても後宮の女人方の人間模様には通じているほうでして。宴でのもめ事も耳に入っておりましたゆえ、すぐに動けた
わけです。こういう時は騒ぎを表沙汰にはせぬよう、女人方に恥をかかせぬよう、王子のメンツを第一に事を処理するわけですな。

だが今回は間に合いませんでした。ミラ様は私が驚くほどのすばしっこさでナイルの姫君の金髪をじゃきじゃきと切り落として
しまわれたのです。姫君も必死に抵抗しておいででしたが、女人というのはあれですかな、一度危害を受けてしまうと茫然自失
になるのか、もうあとは黙って為されるがままで。

姫君は私がミラ様を取り押さえている間に、どこかに走っていっておいでになりました。後に残ったのは残照に輝く金の髪・・・。

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