『 蜜月 』


11 Ψ(`▼´)Ψ
「あ……熱い、王子……もう……のぼせそう…」
「うむ。少し湯から出してやろう…」
全身に朱をさしたように艶めかしいキャロルの裸身を湯からすくいあげて、湯船の淵に座らせる。

イズミルは細い足首の一方を捉えると、湯の滴る桜貝のような爪先を愛しげに口づけで覆ってゆく。
ほっそりとした足指の一本一本を唇に含み、指の間をねっとりとした舌で捏ね回す。
もう片足は湯船に浸かったままで、わずかに開いた白い腿の奥には愛らしい神秘の谷間が見え隠れする。
やがてキャロルの片足はイズミルの肩の上に高く抱え上げられ、彼の舌はすべらかなふくらはぎ、膝裏をくぐり太腿の内側へ……ゆっくりゆっくりと最奥をめざし滑ってゆく。

ぴっちりと閉じあわされた慎ましやかな谷間を左右に開いてやれば、ためらいがちに姿を見せる露に濡れた小さな花びら。
薄い花びらに指を伸ばし、イズミルはその2枚の花弁の縁を優美な指先でそっと解いた。
と、花弁の内側で溢れかえっていた蜜がぽとりと垂れて、湯船に落ちた。
(ふっ……待ちわびていたと言う訳か?)
イズミルを欲して反応する、その愛らしい身体の様子が男の胸と下腹を堪らぬほど熱く疼かせる。
(おお……愛してやろうぞ……私の姫よ)

ぷっくりと薔薇色に膨れた真珠の鞘を痛まぬように優しく剥いて、見るからに敏感そうなそれの先端を指先で撫でこする。
「ひっ………」
キャロルは鋭い快感に息を飲んだ。内腿がひとりでにわなわなと切なく震え始める。
イズミルの指がぬるぬると溢れる蜜を剥きだしの真珠にたっぷり塗りつけるて、指の腹で円を描くように擦りあげる。
そうされると、死んでしまいそうな程心地が良くて……。
あまりの心地よさに感涙が流れるほどだ。深い恍惚の中でキャロルの意識はかすれ始めていた。
唇から漏れ出でる他愛のないうわ言。男に甘える鼻にかかった悩ましい声。
「いっ…イヤ…やっ……あぁ……」
「何がイヤだ?……そんな貌では嘘にしか聞こえぬぞ…」
頭も体もすっかりのぼせたようで、指先にも爪先にも力が入らない。
彼のなすがままにされてしまう。


12 Ψ(`▼´)Ψ
イズミルはキャロルの花芯の縁に手を添えて、花びらをめいっぱいに開かせると、そこをしとどに濡らす蜜を一滴も漏らすまいと吸い立てた。
そしてイズミルの長い指は蜜壷に侵入し、柔らかに指を締め付ける肉襞を優しく蹂躙する。

自分の股間に埋められたイズミルの端整な美貌とチロチロと踊る彼の舌先をぼんやりと眺めながら、キャロルはあまりの恥かしさと快楽に声を上げる事もできない。
イズミルの巧みな舌使いと指先は、キャロルの幼い身体を確実に官能の高みへといざなう。
(あ……熱い……いや……)
自分の激しい鼓動と、引き攣ったように乱れる呼吸。
湯殿にやたらと反響する秘所を啜り上げる淫靡な音。
咽かえるような熱い湯気と、秘所から込みあげる妖しい快感。
イズミルの灼熱の舌の動きに煽り立てられて、背筋から脳天へと何かが突き抜けてゆく。
熱くて……息苦しくて……心地よくて……熱い…熱い……。

キャロルが達する瞬間に、イズミルは強く吸い立てながら真珠に歯を立てる。
「い、痛っ……やっ……!!」
快楽と痛みが同時に重なり合い、キャロルは一瞬のうちにかつてない程の高みに昇りつめる。
激しい快楽の中、キャロルの意識は白い熱気の中に溶けて消えていった。


13
唇に注ぎ込まれる冷たい水の感触にキャロルが目覚めた時、そこはもう湯殿ではなく、寝室の続きの間である居間であった。
暖炉の前に敷かれた分厚い毛皮の上、イズミルは腰に薄手の布を巻きつけただけの姿で片膝を立てて座っている。そして、その膝に頭を預けるようにしてキャロルは横たわっていた。
キャロルはイズミルが着せたのであろう、柔らかな薄生地の夜着を纏っていた。

イズミルはキャロルを覗き込むようにして、冷水の入った杯を彼女の紅潮する頬に押し当てた。
「きゃっ…冷たい!………けど、気持ちいい…」
杯のひんやりとした感触が火照った頬に心地よくて、キャロルは目を閉じる。
イズミルの鍛えあげた脚を枕に、彼に髪を撫でられながら横たわれば、まるで楽園にいるような幸せなやすらぎに包まれる。
キャロルは何となく嬉しくなって、彼の膝に頬をすり寄せて甘えた。

「大丈夫か……?愛してやっている最中に気を失ったぞ。
湯にあたったか……それとも……?」
イズミルはククッと喉の奥を鳴らして笑いながら、妖艶な流し目をキャロルに当てた。

瞬間キャロルの頬が更にパァッと、赤く染まった。
クスクスと抑えきれぬ笑いを漏らしながら、イズミルは再びキャロルの熱い頬に冷たい杯を当てて冷してやったが、その動作と裏腹に、口をつく言葉はなおもキャロルを恥らわす。
「くくっ……それほどに心地良かったか?のぅ…姫よ?」
「……やっ!言わないでっ!」
「ふ……また後で、嫌というほど可愛がってやろうぞ。
しかし、今度は失神などしてはならぬ。
そなたはすぐに達してしまう……呆気ないほどにな。
少し快楽に耐えることを教えてやらねば……」
耳たぶまで真っ赤に染めて膝の上から逃げようとするキャロルを、愛しくて堪らぬ様子で抱きすくめる。


14
そっぽを向こうとするキャロルの顔を無理矢理自分に向き合わせ、涙の滲む瞳の渕を唇で拭ってやる。
「いやっ……王子なんて…き、嫌い……」
「わかった、わかった……あまり、そなたを苛めるのは良くないな……。
許せ…そなたが憎いのではないぞ……男は…愛しすぎると、つい苛めてみたくなるものだ。
可愛がるだけでは…物足りなく思うものなのだ。さあ、機嫌を直せ……」
「イヤ…」
イズミルの脚に両脇を阻まれて身動きできぬまま駄々をこねるキャロルを、彼は愉しそうに宥める。

その時、キャロルの腹部が空腹を訴える音を立てた。
「きゃっ…いやだ!」
「ちょうど良い。夕餉の支度も相整っておる」
床の上の台座には、数々の料理皿、果物、葡萄酒が並べられている。

イズミルは果物を唇に挟み、口移しで膝の中に座らせたキャロルに与える。
果肉をかじれば甘い果汁が滲み出て、キャロルの唇の端からトロリと流れ出す。
「おっと…」
イズミルの舌と唇が、それを優しく吸いとってキャロルの胸元に零れ落ちるのを防いだ。
そしてキャロルが果物を飲みこむと、彼は再び果実の甘さの残る唇を求める。
イズミルは同様にして、まるで幼子にするように膝の中に抱きこんでキャロルの口元に食事を運んでやる。
こんな風にされると、まるで何もできない子供のようで何とも面はゆい。
腕の中で、与えた食事を慎ましやかに食するキャロルの様子を目を、細め極めて愛しげに見つめるイズミル。
しかしキャロルは彼の視線や、彼の逞しい身体の感触で胸がつかえるようで、上手く料理を飲み込めない。

「もう、いらない…お腹いっぱい……」
「存分に食せねば持たぬぞ……今宵は長い」
またもや淫靡な含みを持たせた彼の言葉と微笑みに、キャロルは恥らった。


15
夕餉をとり終わると、イズミルは片肘ついて床に敷かれた毛皮の上に寝そべりながら、おもむろに遊戯盤と駒を取り出してキャロルの前に広げた。
盤の桝目にそって駒を進めて陣を取り合うゲームのようなもので、二人は王宮の居室でも時折熱中して興じることがままあった。

「久しぶりに私の相手をいたせ。
……とは言っても、ただ打つだけでは面白みに欠ける。
そうだな…もし私が負ければ、そなたの望みを何でも聞いてやろう」
「……何でも?」
イズミルは長い指先で駒を並べながら、愉快そうにキャロルの顔を見やった。
「おお、宝玉でも絹の衣装でも……何なりと私にねだれ。
しかしそなたが負ければ、同様に私の望みを満たしてもらうぞ」
琥珀色の瞳が、何かを期待して煌めいている。
「そんな……私不利だわ!王子ったら、とても強いんだもの……」
「何を。そなたも近頃腕を上げたぞ、侮っておれば私とて負けてしまう。
案ずるな。可愛いそなたを困らすような無理難題は押し付けぬ。
さあ、そなたが先手を取れ」

キャロルの白い指先が駒を動かせば、イズミルは余裕綽々といった様子で彼女の策をいとも簡単に封じてしまう。
勝っても負けてもこの上なく愉しい勝負ではないか。
イズミルは引き締まった口端を上げて、ニヤリと笑った。
(ふっ…悪いな、姫。まずは私が勝たせてもらおうぞ)
手にした駒を握りしめて真剣に考え込むキャロルの姿は愛らしかったが、イズミルは涼しい顔を崩さずに最後の駒を打った。


16

「私の勝ちだ。姫、約束は覚えておるな?……こちらへ参れ」
「不公平よ……ずるいわ、王子!私じゃ王子に勝てっこないもの……あんっ…」
イズミルはクスクスと笑いながらキャロルの腕を引き寄せる。
不服そうに頬を膨らませる彼女を膝の上に載せて座らせた。
(次は勝たせてやるではないか!)
そして、彼女の腕を取り自分の首に巻きつけるようにさせると、色気を帯びた眼差しでじっと見つめた。
「さて……と」
キャロルの頬を指で優しく愛撫しながら、何を言いつけてやろうかと楽しげに思いを巡らせる。
「そうだな……そなたから口づけいたせ。まだ、たったの一度もそなたからの口づけを貰っておらぬ」
「…私から…?」
「ああ、そうだ。子供にするようなものでは許してやれぬぞ。さあ、早く」
「も…もう!意地が悪いんだから……」
キャロルは困惑と陶酔の色の混じりあった表情で、おずおずと唇を重ね合わせる。
いつもと勝手の違いに戸惑いながら、チュッと音を立てて彼の唇を軽く吸ってみたが、イズミルがその程度で満足するはずもなく、催促するようにキャロルの細腰をグッと抱き寄せられる。
舌先をツッと伸ばして、彼の唇にそっと触れる。
すると彼の唇はおのずと開いてその先を促すように、キャロルを内部へ誘い込むのだ。
胸の鼓動が痛いほど高まるのを感じながら、彼の口腔に舌を差し伸ばし、たどたどしく舌を絡めあわせる。
「ん…っ……」
甘い吐息を漏らしながら、稚拙な接吻を施すキャロルにイズミルは燃え上がる。
息苦しい接吻を続けるうちに舌根が疲れてしまい、キャロルは恨めしそうに上目遣いで彼を見上げた。
「……王子……もう…いい?」
イズミルはクスリと笑うとキャロルの頭を引き寄せ、最後に熱烈な口付けを与えてから唇を解放してやった。


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