約束の地で

   4)幸福





シンに触れてから1週間が過ぎた。
シンの影響のため、キーリカへの連絡船が来ない。
おかげでブラスカ一行はルカで足止めを食らっていた。
1週間もの滞在となると、例の一件でただでさえ旅費の少ない3人は滞在のための金稼ぎに
苦労していた。幸いな事にモンスターは倒すと金を落とすため、3人は昼間はモンスター退治、
夕方はホテルで住民に歓迎されながら時を過ごす。
「だけどよぉ、さすがにこう毎日モンスター退治だとこう・・・あきるな」
一人酒の飲めないジェクトは茶を啜りながらテーブルに上半身をだらしなく預けた。
ジェクトの意見に共に賛成な2人も、ジェクトに合わせて茶を啜る。
「それなら、明日は検索でもしようか?広い街だし、一日じゃ回りきれないかもしれないけど」
「ほお、いいね、それ」
「あまりハメを外すんじゃないぞ。わかったな」
「なぁに言ってんだ!せっかく大きな街に来たんだ。思いっきりやんなきゃおもしろくねぇだろうが」
なんとなく嫌な予感がアーロンによぎるが、きっとこの男は止められないだろう。
小さな溜息をついて、アーロンは残った茶を飲み干した。






「なんでぇ、でけえ街って聞いてたのによ、中身はベベルよりしけてんな」
失礼な発言をさっきから繰り返す。
そのたびにアーロンに青筋が出来るのを彼は知っているのだろうか?
「ジェクト・・・もうそのくらいにしておいた方がいいよ?」
そういってアーロンを指差すブラスカだったが、ジェクトは何もわかってない様子で。
「アーロン、なーに怒ってんだよ。意味わかんねぇな」
「お前は本当に、非常識にも程があるぞ!!」
ギャ―ギャ―と騒ぎ出した2人をほほえましく見つめるブラスカ達が角を曲がる。
途端に人がわんさか寄ってきた。
「ブラスカ様とガード様ですね?!」
その人の多さにアーロンもジェクトも驚いて顔を見合わせる。
「ルカをお守りしてくださり、本当にありがとうございました!!」
「さすがはバハムートを手に入れていらっしゃる召喚士様だわ」
「ガード様もものすごく腕が立つと聞いてるぜ?!」
「わぁ、召喚士様だ!!」
手を握られ、触られる。
「な・・・どうなってんだぁ・・・?」
人にもみくちゃにされながら、アーロンもあたふたとしている。
ブラスカは慣れているようで、優しい笑みを浮かべながら一人一人に話し掛けている。
ブラスカのおかげでなんとかその場を退けたが、あまり人に囲まれることに慣れてないアーロンは
ひどく疲れきっていた。
服もひっぱられ、いつも綺麗にまとめている後ろ髪も相当ひっぱられたらしい。
ボサボサになっている様にブラスカは苦笑して紙紐を解いてやる。
「大丈夫かいアーロン・・・」
「・・・なんとか・・・」
アーロンの弱点・・というか、苦手なものは、人込みと船。
だいたい、キーリカへ向かうためには船にのらなければいけないのだが・・・。
真っ青なアーロンにガハハと笑ってバシバシと遠慮なく背中を叩くジェクトであったが、
それさえにも反応できないアーロンに、ブラスカは少し心配になってしまう。
「宿で休んでるかい?」
「いえ・・・お気になさらず・・・」
そういうアーロンは今にも吐きそうな勢いだ。
さすがに心配になってきたジェクトはオロオロしながら先ほどバシバシ叩いた背中を今度は
擦ってやる。
「おめぇ・・・人込み嫌いなのか・・・さっきは悪かったよ・・・」
「・・・・・別に・・・・・」
その様子を見て、ブラスカはおや・・と思う。
そうしている間にも、撒いたはずの人々が再び3人をみつけ駆けてくる。
「おい、俺らは疲れてんだ!これ以上疲れさせんじゃねぇ」
「ジェクト・・・待ちなさい・・・すみませんが長旅で疲れているんです。道をあけてくれますか?」
ブラスカの言葉に波を切るように人が分かれて道をあげる。
顔色の悪いアーロンを支えながら歩く3人と反対方向から歩いてくる人影。
それはすれ違う瞬間にジェクトとブラスカの肩に触れる。
わざと。思い切り。
「ってえなッ!!」
「・・・・ああ?」
すれ違ったガタイの良い男がジェクトを睨み、ジェクトも機嫌の悪い瞳を男に向ける。
「召喚士様よぉ、ちゃんと前を見て歩いてくれないかな?」
「・・・わざとぶつかっておいてその言い草はないんじゃないかな」
ニヤニヤしながら言う男にブラスカも機嫌の悪い瞳を向ける。
「貴様・・・!ブラスカ様が召喚士だとわかっていての無礼か!」
アーロンは怒りでその男の胸倉を掴む。
「・・・なんだぁ?男のくせに女みたいな顔してるな、お前」
「ッ!何を・・・!!」
「おい・・・あれ・・・」
「ああ・・・・・ルカ・ゴワーズだよな・・・」
「召喚士様になんて失礼な事を・・・」
ざわざわと騒ぎ出す民衆にチッと舌打ちをするとゴワーズの連中は逆にアーロンの胸倉を
両手で掴む。
「人に肩ぶつけたら謝るのが筋じゃねぇのか?」
「なら謝ってもらおうか?うちの召喚士サマによ。俺様は今すごぶる機嫌が悪くてね」
アーロンを掴んでいた両手をひねりながらジェクトは最高潮に達した怒りのこもった
紅い瞳で男を睨みつけた。
「・・・・・ってぇな、お前等こそ、俺達がブリッツの王だって知っててそんな態度とってのか!」
「ブリッツの王・・・だと・・?」
ジェクトの目の色が変わる。
「俺らが頑張って試合してるからルカは平和なんだろうが」
再度胸倉を掴み、ジェクトは少し怯えている男に言ってのける。
「ブリッツの王は俺様だけで十分なんだよ!!」







アーロンとブラスカは何回目かの溜息をついた。
なんでこんなことになっているのだろう。
ジェクトが王は俺だけだ・・・と言ったおかげで怒ったゴワーズの連中と試合をすることに
なってしまった。
もちろん2人はブリッツなんか出来ないので、自分達同様島への連絡船が来なくて
ルカに滞在していたキーリカ・ビーストのチームにお願いすることになった。
「・・・まぁ・・・ジェクトのプレイを見れるだけまだまし・・・ってとこかな」
実際、ジェクトが水の中で泳ぐ姿を見るのはアーロンもブラスカも初めてだった。
まぁ・・・いいか・・とアーロンも頬杖をついてスフィアプールをみつめる。
ジェクトがプールに入ってきた。
水の中を足だけ動かして気持ちよさそうに泳ぐ。
その光景に2人は目を見張った。
プールの上まで泳ぎ、そこから一気に飛び跳ねる。プールの外に出て再び水しぶき
ひとつたてずにプールに吸い込まれる。
その動きひとつでジェクトがどれだけの腕を持っているかが瞬時にわかる。
人魚のように体をくねらせてスピードに乗り、再び頂上まで一気に上り詰め、また飛び出す。
くるくるとまわりながら今度は水しぶきをあげて盛大に水の中に戻る。
「・・・・・・すごい・・・」
それしか言葉のない2人の方を向き、親指をたてる。そして紅いバンダナを無造作に取り、まるめて
握り締め、思い切り・・・・・・投げた。
それはアーロンの手の中に丁度おさまった。
「・・・・まさかこれほどとは・・・」


スタートラインへ並ぶ。ジェクトはセンターフォワード。身をかがめ、ボールが上がるのを待つ。
そしてその時は来る。
ブリッツ・オフ――――!
飛び上がるタイミングは互角。だが、到達地点までの速さは圧倒的にジェクトのほうが上だった。
「はやいッ!」
「・・・すご・・・」
思わず立ち上がる。
アルベドの練習を何度か見ていたがジェクトのはまるで違う。まるで・・・子供と大人ほどの差があった。
ボールをもった途端わき目も触れずゴールへと直進する。
目の前の敵はふっとばし、後ろからの敵は、まるで後ろに目がついているかのように華麗に交わす。
一気にゴール前に詰め寄ると、目の前に立ちふさがった2人の選手にむけてボールを蹴った。
それは1人にあたり、跳ね返り、さらにそれを手でうち、もう一人に当てる。
ボールは上へ飛び、ジェクトはアーロン達のほうを見てウインクをする。
よぉーく見てろよ。ジェクト様シュートをよ!!
そう言っているように、アーロンには思えた。
くるくると早い回転をしたあと、一気にボールを蹴る。
それはゴールキーパーをもふっ飛ばしゴールに吸い込まれた。
わずが、数秒の出来事だった。












「いやぁー、あんたほどすごい選手は見たことねぇよ!」
「ほんとほんと!あんた、このまま俺達とプレイしないか?」
「あんたならすぐにスピラの英雄になれるぜ!!」
バシバシと背中を叩かれて笑うジェクトを、少し離れた席で2人は見つめていた。
試合はキーリカの圧勝で終わった。
攻防共にジェクトはこなし、それはビーストもゴワーズも追いつけないほどの強さ。
「さすがにゴットオブザブリッツと自分でいうだけの実力だったね」
「・・・はい・・・」
ブラスカははじめてみる完璧なプレイに興奮していて、アーロンもまたジェクトのプレイに心躍らせていた。
あのシュート・・・あんなの、はじめてみた。
あれほどまでに完璧だと、嫌味のひとつもいえない。口から出てくるのは素直な感想だけ。
「・・・見直した?ジェクトの事」
「はい・・・・」
ジェクトを見つめながらいうアーロンに、ブラスカは苦笑し、酒を飲み干す。
「あれはな、俺が20になった頃に編み出した技で、誰にもまねできねぇんだ!そんでよ・・・」
今日だけ許された酒を嬉しそうに飲みながらジェクトは両チームに囲まれて意気揚揚と喋る。
「ふふ・・・嬉しそうだね、ジェクトは」
「そうですね。久しぶりにブリッツが出来たから」
「・・・微妙に違うと思うけど」
「・・・はい?」
きっと、君に格好良い所を見せれたのが嬉しいんじゃないのかな・・・
ブラスカは喉に出かかった言葉を飲み込む。
本人がそう思わなければ意味ないのだから。
「あんな男に惚れられて、悪くはないだろう?」
「な、なにを言うんですか、ブラスカ様!」
微笑むブラスカに真っ赤になって抗議するアーロン。
いい加減自分の気持ちに素直になればいいのに。
自分で自覚しているかい?
ジェクトを見つめる君のそれは、恋する者の目だよ。
仕方ない。私がきっかけを作ってあげよう・・・・。
「ジェクトはここに残った方が幸せなのかもしれないね・・・」
「え・・・?」
「いつ死ぬかもわからない危険な旅にこのまま彼を連れて行くよりも、ここでブリッツをしながら暮らした方
が彼のためだろう?彼のザナルカンドに帰れる保証もないし・・・ブリッツをしている彼の姿は今まで
見た事もない程嬉しそうだったよ」
「・・・そうですね」
俯く彼に、さらに追い討ちをかけるかのようにブラスカは次の言葉を口にする。
「私は先に戻るから、あとで君からジェクトに打診してみてくれるかい??」
「・・・俺が・・・ですか・・・」
「そうだよ。君が、だ。じゃあ、先に失礼するよ」
困惑の瞳を浮かべるアーロンを置いて、席をたつ。
「ジェクト。私は先に失礼するよ!」
「おう!」
部屋へと繋がる階段を上る前に、ちらりとアーロンを見遣る。
眉をよせ、複雑な瞳をジェクトに向けている。
・・・・・・今夜はさっさと寝てしまわないと明日起きれなくなってしまうな・・・。
スリプルでもかけようかな。
クスッと笑って、ブラスカは階段を踏み出した。












両チームのメンバー達のお誘いを丁重にお断りしたジェクトはアーロンと共に部屋へ移動していた。
ちらり、とアーロンを見る。
俯いて、なにやら考え事をしているように思えた。
時折何かを言いたそうにジェクトを見遣り、目があう。
「なあ、さっきから何考えてんだ?」
「べ、べつに・・・・」
「ふーん」
アーロンは再び目線を床にうつす。
何考えてんだか・・・どーせまたマイナス思考の塊みたいなこと考えてやがるんだろうけど。
ドアを開けて、ドサッとベッドに座る。
ブラスカは杖を持ったまま眠っていた。
おずおずと遅い動きでドアを閉めるアーロンにはあ、と溜息をついてジェクトは立ち上がった。
「俺、風呂はいるわ」
適当にタオルを羽織って、備え付けの風呂へ行こうとする。
「ジェクト」
「なんだ」
「・・・・・あとで話がある」
「・・・・・おう」
風呂場へ消えたジェクトを確認してからブラスカの方を見る。
なんで杖を持ってねているのだろう。
ふと思い、ブラスカの顔を見ると。
「・・・・・・自分にスリプルをかけたんですか・・・」
額の上に小さいZの文字の刻まれた魔方陣。
がっかりと肩を落としたアーロンだった。




「話ってなんだ」
上がったジェクトは腰にタオルを巻いただけの姿でアーロンの横に座る。
一人で深く考えることの出来たおかげで、アーロンは先程よりは明るい顔つきになっていた。
が。やはりジェクトの方を向くと再び難しそうな顔を浮かべる。
「・・・・・あんたは、ブリッツ楽しかったか?」
「え?ああ・・・。まあな。どだった?俺様のシュートは」
「ああ・・・素直に言おう。凄かった。文句のつけようがない」
「へへッ!やっぱなぁ〜」
アーロンに素直に言われて嬉しそうにジェクトは笑う。
はじめはからかうつもりだった。
初々しい反応を見せるアーロンが面白かったから。
だけど、いつからか本気になっていた。
ブラスカにアーロンの話を聞いた頃から。
遊びでなら手を出すな。
そう言われて初めて自分の気持ちを自覚した、とも言っても良い。
時々、遠くを見ながら思いつめた顔をしている時がある。
ジェクトには何故だかわからなかった。
そしてその目は、たまにブラスカを見つめる。
ジェクトにはそれが愛しい者を見つめる目にしか見えなかった。
それがさらに自分の気持ちに拍車をかけた気がする。
彼を自分に振り向かせたい。
そして今、アーロンの瞳は間違いなく自分を見ている。
ジェクトは長年の勘で自覚した。
彼の、自分を見つめる瞳は恋する者の瞳。
自覚こそなかれ、ジェクトにはそれで十分だった。
「俺様の事見直したかよ?」
そういい首に腕を回しても嫌がらない。
「ああ・・・・」
だか、そういう瞳はどこか暗くて・・・。
「・・・・・んで、オメェの話はなんだよ」
「・・・・・・・」
なかなか言い出さないアーロンを、ジェクトは辛抱強く待った。
やがて・・・耐え切れない・・・ように口を開く。
「・・・・あんた・・・ここに残らないか?」
「あ?」
「その・・・ブリッツしてるあんたは・・・楽しそうで・・・幸せそうだったから・・・ここに残った方がいいかと・・・」
ボソボソと下を向いて喋るアーロンに呆然としながらジェクトは聞いていた。
「この先、復路になれば強い敵も出てくる。あんたを・・・危険な旅に連れ出しておいて難だが・・・あんたさえ
よければここで・・・暮らしたらどうだ?」
「・・・・それはお前の本心か・・・?」
低い声を出し、アーロンも見つめる。
「・・・ブラスカ様の案だ・・・。俺の意思も・・・少し」
ジェクトには幸せになってほしい。
それは確かにアーロンの意思だった。
「いやだね」
「ジェクト!」
「俺がプレイするのはエイブスだけだ。他のチームじゃやらねぇ。それに、俺はザナルへ帰るんだ」
チクリ、とアーロンの胸が痛む。
彼の口からザナルカンドの話が出るというもそうだ。
不安になってしまう。
ジェクトはザナルへ帰れる術を見つけたら帰ってしまう。
それが・・・・嫌だった。
「でも・・・帰れる保証はない・・・。ならば安全な所で暮らしてほしいんだ・・・!!」
「・・・なんでそう思うんだ?」
「え・・・?」
言われた言葉に思わず顔を上げる。
「どうして俺に安全な所で暮らして欲しいんだ?なんで俺は旅に付いて行っちゃいけないんだ?」
「なんでって・・・帰れる保証もないし・・・・死ぬかもしれない旅なんだぞ・・・それにブラスカ様は・・・ッ」
ブラスカ様は最期には死んでしまうんだ・・・
出かかった言葉を必死で飲み込む。
「ブラスカがなんだよ・・・」
ジェクトはあきれたような表情を浮かべ、アーロンの肩を掴む。
「・・・・おめぇはブラスカが好きなのか?」
「なんで・・・そう思うんだ・・・」
「おめぇ、いつでもブラスカ様ブラスカ様って・・・それだけじゃねぇか」
「そんな事、ない!俺は・・・俺は・・・!」
瞳に涙を浮かべたアーロンを、耐え切れずに抱き締めた。
「アーロン・・・・おめぇが好きだ・・・」
「ジェクト・・・」
「好きだ、アーロン」
「ジェクト・・・ッ」
震える体を抱き締めて、搾り出すような掠れた声でアーロンの耳元で精一杯に囁く。
「ジェクト・・・離してくれ・・・」
「いやだ」
「ジェクトッ!!」
「俺は残らない。おめぇ達と旅を続ける!今更・・・今更投げ出せるかよッ!!言っただろうが!
俺はどこにもいかねぇッ!!シンを倒すまではな!」
力いっぱい押してジェクトを引き剥がしたアーロンは、今度は唇を塞がれる。
「んっ・・・ッ」
今までされた中で、一番深いキスだった。
「なぁ・・・」
何分かの口付けのあと、息のあがっているアーロンを抱き締めながら言う。
「なんでさっき、俺に安全な所で暮らしてほしいっていったんだ?」
「ハァ・・・それは・・・あんたに・・・・・・」
「・・・・・死なれたくないからか?」
口篭ったアーロンの言葉の続きをいったジェクトに思わず顔を上げる。
「いい加減認めろよ。俺が好きだって」
「ッ!」
燃える様な紅い瞳に射抜られる。
それだけで、涙が止まらなくなる。
いつもいつも、ジェクトがザナルカンドのことを話す時、心が痛んだ。
いつもいつも、彼の破天荒な行動を咎めつつ、見つめていた。
自覚なんて、いくらでもあった。
ただ・・・怖くて言えなかった。
きつく当たる事でそれを押さえ込んでいた。
この男は帰る方法がみつかれば妻と子供の待つザナルカンドへ帰ってしまう。
自分の想いを告げたあと、それを見届けられるだけの自信はない。
それほどまでに、この男に心奪われてしまった。
「言えよ。俺が好きだって」
ベッドに倒され唇に触れるだけのキスを降らせながら告げる男に涙が溢れる。
言えない。
残されるのは嫌だ。
「お前は・・・いつかザナルカンドへ帰るんだッ!そんな事・・・言えるか・・・ッ!!」
「・・・・帰らねぇよ・・・」
抱き締められたままいった言葉に、アーロンは顔をジェクトへ向ける。
「おめぇの言う通りだ。きっと俺は・・・もう帰れねぇよ」
悲しげな声に思わず身を起こす。
「俺はそんなつもりでいったんじゃ・・・・」
「それに、今更お前等のこと置いていくと思ったか?」
「ジェクト・・・だが、あんたを待ってる奥方や子供はどうするんだ!」
「あれでも俺の女房だ。ティーダ一人くらいちゃんと育てられるさ」
「ブリッツはどうするんだ!あんた、エイブスのスターなんだろ?!」
「てっぺんからの眺めってのはもう嫌って程見たさ。それに、俺の後は、ガキが継ぐだろ」
「でも・・・ッ」
「うるせぇよ」
キスで口を塞ぐ。
でも、もうキスをしなくてもアーロンは喋れなかっただろう。
瞳から次から次へと溢れる涙を指で拭い、優しく。深く。口付けた。
「ジェクト・・・ッ、ジェクト・・・ッ」
「言えよ・・・」
涙で濡れた顔を愛しげに見遣る。
涙を拭い、舐め取り、彼の告白を待つ。
「ジェクト・・・」
「ああ」
「好きだ・・・っあんたが・・・」
「・・・ああ」
嗚咽で震える唇に再び優しく触れる。
「お前の気持ち・・・はっきり聞いたからな・・・。もう・・・後戻りは出来ねぇぜ・・・?」
紅い着物をはだけさせながらジェクトは唇を舐め告げる。
「・・・元から後戻りなどする気はない・・・!」
次にくる行為を素直に受け止めてやる。
そうとも捕らえられる発言にジェクトは笑みを零してその体に崩れ落ちていった。













「う・・・ッあ・・・っ」
十分慣らしたと思っていたそこはジェクトを拒むようにきつく締まりジェクトに少しばかりの苦痛を与える。
アーロンも久しぶりの強い快感に歯を食いしばって懸命に耐えていた。
だが慣れというものはあまりに残酷で、ジェクトを銜えたそこはいやらしく収縮を始める。
「あう・・・、あ・・・、ふ・・・ッ」
しばらくアーロンの熱さを味わおうと思っていたジェクトの腰がわずかに揺れてしまうほどに。
これじゃ、男が群がっちまうわけだな・・・
目の前の男はすでに自分の知るアーロンではなく、艶美な姿でジェクトを煽る。
「ああッ・・・、ジェクト・・・っ!」
シーツに生理的に零してしまった涙を撒き散らしながら己の名を呼ぶアーロンに、
ジェクトは今度は少し早く腰を振った。
先ほど知った、彼のいいポイントをこするように。
「はぁ・・・ッやぁ・・・ッ」
アーロンの体が跳ね、ジェクトをくわえ込んだソコを激しく締め付ける。
「っ・・・、力抜け・・・アーロン・・・」
勃ち上がって快楽の雫を垂らすそこの先端に指をからませつつく。
少し緩んだ蕾に、ジェクトは今度は遠慮なく腰を進めた。
「んっ・・・ああッ・・・やッ・・・ああ!」
激しい突きに、喉を晒して喘ぐアーロンの声はすでに嬌声となり、ジェクトを耳から犯す。
だがアーロンは耳に入る自分の声が、かつて聞いた嬌声とは違う事に気付いた。
扱かれ、突かれ、アーロンは確かに快感を感じていた。
チカチカと目眩のような快感に、ジェクトの背中に両手をまわし、爪をたて耐えようとする。
「アーロン・・・アーロン・・・ッ」
限界が近いのか、さらに激しく腰を打ち付けるジェクトが幾度となくアーロンの名を呼ぶ。
うっすらと閉じた瞳を開けると、欲情に燃える紅い瞳と視線が絡まる。
「ふ・・・、ん、ああ・・・ッ、ジェクト・・・ッ」
好きだ。
狂うくらい、この男が好きだ。
自覚した想いは快感へとすり変わり、アーロンを絶頂へと追いやっていく。
今まで体を重ねてきた度に感じる快感は、今の快感とは比べ物にならなかった。
こんなに人を愛しいと思った事などなかった。
この行為を、こんなにも嬉しいと思った事などなかった。
愛されている。自分はこの男に愛されてるんだという自覚が、アーロンに涙を流させる。
「ジェクト・・・ッ好きだ・・・ッジェクトぉ・・・!!」
「アーロン・・・・ッ」
ひときわ強く突かれ、アーロンはジェクトの手の中に己の快楽を解き放った後、
静かに瞳を閉じ、意識を失った。










適当に体を清め、後孔から溢れる自分の精液を綺麗にふき取ったあと、ジェクトは静かに
寝入るアーロンの横に潜り込んだ。
髪は乱れ、顔には疲労の色が見え隠れする。
だが形の整った綺麗な寝顔に、思わず魅入ってしまう。
・・・今までの男達とは違うように抱けたかな・・・?
そんな不安も、寒さからか擦り寄ってきたアーロンに吹き飛ばされる。
「なぁアーロン・・・俺達幸せだよな・・・?」
額に口付け、首の下に腕を入れてさらに引き寄せ、ジェクトもまた眠りに落ちていった。




次日。
「・・・幸せそうな顔して眠っているねぇ・・・」
頭を合わせながら眠る2人を、いつもより早く起きてしまったブラスカが覗き込んでいた。
二人とも裸で寝ているから、きっと昨日はやっと体を繋げたのだろう。
「・・・ちょっと悲しいけど・・・アーロンが幸せなら・・・いいかな・・・」
アーロンを見遣り、ブラスカはその頬をそっと撫でる。
「幸せになるんだよ・・・アーロン・・・」
今までの分まで、ジェクトから愛情を受けて欲しいと心から思う。
スリプルかけておいてよかった・・・と自分の行動を褒めながら、ブラスカはジェクトに視線を送らす。
「でもやっぱりちょっと腹が立つなぁ・・・」
幸せそうに眠るジェクトが、この日はブラスカにこき使われたのは・・・言うまでもない。









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