#兼堀版夜の真剣創作60分一本勝負 お題『羽織』20180422

霞んだ視界に入り込む浅葱色に着いた厭な染みがどんどん拡がるのに眉を顰める。
いやだな、なんで僕らの大事な色を邪魔するの。
率直に嫌だと、やめて欲しいと、口にしてみたら馬鹿野郎と一喝された。その色の持つ誇りを誰よりも知り、身に纏っているのに馬鹿呼ばわりだなんて酷いと思う。
「汚れちゃうから、やめて」
振り払おうと伸ばしたはずの手が想像通りの線を描かず、だらんと肩から垂れたままなのに気づいて初めてあれ?と疑問を抱いた。
「兼さん、もしかして僕」
「喋るな」
兼さんの浅葱色を汚す厭な色の正体が脱力した僕の腹部から溢れている血液だと理解した時、喉から同じ厭な色が噴き出した。
僕を抱きかかえる兼さんの顔にかかったその汚れを拭いたいけど、手はやはり垂れたままで。体を包む羽織はどんどん、どんどん血が滲んで、もう視界には本来の色がほんの少ししか映らない。
いやだ。すごく。すごくいやだ。
僕の大事なものを汚さないで。
「お願い。これを取って」
錆びた鉄の味が広がる口内が気持ちが悪い。
いやな事ばかりで気持ちが悪い。
ねぇ兼さん、どうして言う事を聞いてくれないの。
だってこの色は、この羽織は。
「兼さんの大事なものでしょう?」
「うるせえ!いいんだよ、そんなもん」
ひどい、ひどいよ。
「お願い。これを取って」
錆びた鉄の味が広がる口内が気持ちが悪い。
いやな事ばかりで気持ちが悪い。
ねぇ兼さん、どうして言う事を聞いてくれないの。
だってこの色は、この羽織は。
「兼さんの大事なものでしょう?」
「うるせえ!いいんだよ、そんなもん」
ひどい、ひどいよ。
どうにかしてあげたくて、塞がった喉をこじ開けるように発した。
「大丈夫だよ。あとで僕が綺麗にしてあげるから」
ね、と笑ってみせた。
頬を、頭を撫でて安心させてあげたかったけれど、腕はやはり動かなかった。
頷く兼さんの滲んだ瞳は少し幼く見えて。いやなもの全部から守ってあげたいと思った。


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