R-18「僕はね、兼さんが生きていてくれるならなんだって出来るんだ」171018〜
・兼さんが死んでおかしくなって離れにぶちこまれた国広と二人で暮らす兼さんのお話


「あんまり触っちゃダメだよ」
首を上下に二等分する位置にぐるっと一周粗雑に縫い付けたような傷口を、知らぬ間に掻いていたらしいオレの手を相棒が静止する。
痒いなら冷やそうかと提案されるが、痛くも痒くも無いので断る。単なる無自覚な癖だ。
「雨が降ってるから疼くのかな?」
「お前は?」
ん?と小首を傾げるので、包帯に覆われた両目の調子だと指摘した。
「僕は全然痛く無いよ」
ホラと腕を上下し元気だと主張しているつもりだろうが、左腕の袖がダラリと肩から垂れて中身が無い事だけが強調される。
――両目、左腕、奥歯
国広に無いもの。
(足も引きずっているが本人は認めない)
何故そんな事になったのか。
遡る事ひと月前。オレは戦場で首を斬られて即死した。
目が覚めてここがあの世かと思ったら前述通りの満身創痍の相棒が泣いて縋って来て今に至る。
ようはよく分かっちゃいない。
死んだと思ったら生きていて、最後の記憶では無事だった国広は何故か多くを失っていた。
首に縫合したような傷跡があるので、オレが首を斬られた事は事実だったと思う。だが、首と胴が離れて真っ二つになった印象は未だに脳裏にあり、だからこそ死を覚悟したのだが、目覚めたらオレの首は繋がっているし代わりに国広は両目と片腕と奥歯を完全に失っていた。まるであべこべだ。
オレが意識を手放している間に何があったのか。
国広はただ瀕死から生還したのだと言うが、じゃあお前のこの姿は何なのだと問うとよく覚えていないと言葉を濁す。
疑問は体の損傷だけでは無い。
オレたちは今、本丸の敷地内にある離れに二人で暮らしている。
平屋建てに水回り完備で十六畳の和室。
二人で暮らすには十分な設備だが、任務も訓練も内番も免除で母屋に寄る理由は与えられない。つまり隔離状態だ。
足の悪い国広を残してまで出かける理由もないし、その国広が出たがらないから尚更この離れが全てとなっている。
四六時中顔を突き合わせているのは今更なので不満も違和感もないが、
たまには一人の時間も欲しくは無いのかと尋ねると僕は無いよと腕に腕を絡めて来たので、それ以来はオレも出歩く気を無くした。
週に一度、気にかけてくれてる連中が食材を運んで来る時に茶を振る舞う程度だが、外部との接触もあるので二人きりの閉塞感も無い。
ただ、主と会えない事は気になった。
もうオレたちは不要になったのだろうか。その割にこうやって役割も与えられず生かされているが、単なる刀と違い腹も減るし眠くもなる人型のオレらを海に捨てるわけにもいかない、殺すには後味が悪い、故に持て余している可能性はある。
主に振るわれず仕舞い込まれた刀。そう考えると特別ではないか。
「うちも大所帯だし、主さんも忙しいんだよ。放っておかれるのは僕らが信用されているからじゃないかな」
随分と聞こえの良い言葉を並べる国広に実質隔離されてる理由を尋ねる事は出来なかった。
体が不自由で恐らく刀剣としてはもう戦えない国広が主に自分を必要としてくれと迫れるわけがない。
どんな意向だろうが主が決めたこと。
――主にはお考えがあるのだろう
あれは誰の言葉だったか。
いずれにせよ、オレたちに抗う術は無い。家を与えられ飯が食えている内は生きる。ただそれだけだ。

「堀川ー迎えに来たよー」
国広の膝でうたた寝を決め込んでいたが、加州の声で目が覚めた。
お邪魔しますと玄関扉を開けた大和守とその後ろに山伏も居た。
いつの間にか雨も上がっていたようだ。
「迎え?」
家庭菜園で採れたトマトやきゅうり、茄子に大葉をどっさり受け渡されながら国広が首を傾げる。
「精密検査するから迎えに来た」
そんな予定は初耳だが、体の欠損状態からして特に疑問もなくへえと相槌を打った。しかし、当の国広は後退りし首を振って否定する。
「い、いいよ。検査なんてしなくても大丈夫だから」
不自由な足が縺れて後ろに転びそうになり腰のあたりを支える。怯えているようにも見える反応に、国広?と呼びかけたが返事はない。何か思う事があるのか。
「オレも一緒に行くか?」
「本当?」
だったらと国広が検討するも、駄目とあっさり却下される。何故だと食ってかかろうとしたが、たった一言に飲み込む。
「主が堀川一人でって言ってるから」
――主が
反論のしようがない。有無を言わせない、言う必要がない。命令だ。
「堀川、アレもう足りないでしょ」
アレ?と見当のつかないオレに反して、国広は数秒思案した後に、分かりましたと先程とは打って変わって素直に頷いた。
「和泉守じゃないけど文句言わないでよね」
玄関先で膝をついた山伏の大きな背中に導かれおぶさる形で離れを後にする国広は殊更小さく見えて、ちゃんと帰ってくるのか心配になる。
母屋に向かう細い道に消えて行く国広たちが見えなくなり、やっと部屋に上がり込み足を伸ばす加州と大和守に気づいた。
「お前らは帰らなくていいのか」
「ああ、俺らは和泉守に用があったから」
「オレに?」
卓袱台を挟んで対面に座り込むと、用心する様に辺りを見渡した加州が小声で囁く。
「本当はもっと早くに話したかったけど、堀川が居ない時にしか話せないから」
何に警戒しているのかと思いきや、まさか国広に対してか。どういう了見だ。
「まぁそう怒るなって。でも堀川はお前から離れないようにしてるだろ。警戒してんだよ、俺らを」
話が見えない。警戒しているのは国広の方だと?
「おかしいと思わない?」
大和守が表情を変えずに問いかけてくる。
「だって和泉守、首落ちて死んだじゃないか」
瞬間、場の空気が固まる。オレも言葉を失う。
そうか、やはりオレは死んでいたのか。
ならばこの体は、今はなんなのだろう。
「代わりに堀川はあの体だし。わけがわからないだろ?」
「そりゃあそうだが。お前ら何か知ってんのか」
「全部じゃないけど、知ってる事は話しておこうと思って。ただ、堀川には恨まれるだろうね」
「…そういう真実だけど。構わない?」
迷う事なく、ああと返事したら加州と大和守は顔を見合わせ、じゃあ俺から…と加州が口火を切った。

***

隔離されてる堀川を心配して見に来たら和泉守と一緒に暮らしてるもんだからそりゃ驚いたよ。安定が人形じゃないのなんて言うから、あんな精巧なもの作れるわけないだろって突っ込んじゃったけど、今考えたらあながち間違いでもなかったのかもね。

じゃあ話していくか。
ひと月前の出陣だけどさ。
堀川と和泉守、お前たち二人だけで江戸城への出陣って時点でおかしいと思わなかったか?
六振り編成出来るのにわざわざ戦力を抑えて送り込む必要なんか無いんだよ。案の定装備も吹っ飛ばされた和泉守?お前?は虚を衝かれて首落ちてギャーと相成ったわけ。
その他
普通は重傷の時点で強制送還されるのが常だけど、一切成されなかった。理由は後で分かる事になるが、まぁなんとも言えないものだね。
結局堀川はお前が死んだ後も戦って、たった一人で敵の大将含めた五十近くの遡行軍を殲滅させた。信じられないだろ、ありえないよ。
帰ろうにも帰れないんだから堀川だって生き残る為には遮二無二剣を振るうしか無かったんだよね。
ようやく戻って来た時の本丸は騒然としたよ。
血まみれの堀川が右手でお前の頭を、左手でお前の体を引きずって早く助けてくれと叫びながら審神者の部屋に向かってんだから。
誰の目に見ても和泉守はもう駄目だった。死んでた。
何せ首と胴体が完全に千切れてたからね。同田貫の髑髏みたいに堀川の胸に抱かれてるお前にみんなゾッとしたよ。助けるも何も、どうしようもないだろうって。
主も同感で、言ってたよ一言、無理だって。
それで引き下がるわけもなく頭擦り付けて頼み込んでたけどね。手入れの範疇なんか超えてたから。
主に命じられてそんな堀川を手入れ部屋に押し込んだんだけど、もうさ、ずっとお前の頭に向かって話しかけてるんだよ。今から治して貰えるから大丈夫だとか絶対助けるからとか。
目が据わるってああなんだろうな。誰の言葉も届かないし、誰も目に入りゃしない。心ここに在らずってやつだったよ。
そんな堀川を見て見ぬ振りが出来なかったんだろうね。山姥切が付き添ったんだけど、それがまずかった…と思う。
山姥切はその日近侍だったんだよ。
お前たちが出陣する時も指揮を執る主の隣で監視装置?モニター?を一緒に見ていたんだ。
そして、これは伏せるべきではないと判断して伝えた。
二人を江戸に転送した時に主が発した言葉を。

――あ、間違った

本来なら六振り揃っての出陣の予定が先にお前たち二人が集まった時点で誤って送り込んだことを。
山姥切はすぐさま戻すべきだと進言したが、主の答えは否。
理由は誤りを説明するのが面倒だから。
そうこうしてる内に和泉守が死んで堀川の一人部隊になって。
山姥切にとっちゃ弟だからね。頼むから戻してくれと頼んだけど、またもや主の答えは否。
理由は堀川が危機感を煽られたからか和泉守を喪った怒りや悲しみといった感情からか、実力をはるかに超えた鬼神の如き強さを見せ始めたから。主曰く覚醒していた、らしい。
――こんな霊力見たことがない

主はいたく興奮していたそうだ。
未知の現象の行く末を見守りたい。それだけの理由でお前たち二人は明らかに不利な状態で出陣し、救出もされなかった。

それを山姥切が馬鹿正直に打ち明けたらね、堀川笑ったんだよ。
「ま、間違ったって…」
そんなって言った瞬間に口元だけ笑みを浮かべて目を開いたまま、脱力して糸が切れたように背中から折れるように倒れたんだって。
それから一週間意識不明。
不思議な事に本来折れた刀剣は消滅するのに、和泉守の死体はずっと残ったままで、恐らく堀川が見せた爆発的な霊力が関係してるんじゃないかと研究機関に送致されることとなった。
そういえば腐敗も一切無かったし、血は堀川のものだったし傷一つなかったんだよ。首さえ繋がってりゃ死体なんて思わなかったろうけど、そここそ致命的だからなぁ。
さぁ送るかって時に堀川は目を覚ました。
起き上がっての第一声が兼さんは?だったから大したもんだよ。
和泉守はまだ治療中だよなんて小手先の嘘も通用しないしどうしたものかと悩んでる内に見張りを振り切って主の元に直接確かめに行っちゃって末恐ろしかったよ。
堀川が主に反旗を翻したら俺らは切り捨てなきゃならない。張り詰めた空気に頼むから大人しくしといてくれと願うしか無かったね。
堀川が間違いを起こさないように俺と安定が後ろに、主の横には近侍の三日月が着いて主と堀川の話し合いが始まった。
開口一番、主は堀川を褒め称えた。
たった一振りの脇差が大将含めた遡行軍五十余を斬って帰還した事を。
褒賞と武功として好きなものをやる、と提示した。嫌な予感してたけどさ。
「そんな事より」
おいおい止めてくれよって安定と目があったのを覚えてる。
「兼さんは?」
主に対する口の聞き方がなっちゃいないってのはそうなんだけど、真っ直ぐ伸びた背筋は意思の強さそのもので、誰も口なんか挟めなかった。
――あれは死んだ
脇息に肘をついた主は現実を口にする。
首が落ちて生きているわけがないだろう、お前も現実を受け入れろ、と畳み掛ける。
「そんな、そんな…」
頭を抱えて丸くうずくまる堀川の語気が弱々しくなってくると同時に三日月が膝をついて前のめりに警戒したが、それを制した主が言い放った言葉が転機だった。
――そんなに和泉守が大事か
ならば、
――代わりを用意しよう

名案だと微笑む主に顔をあげた堀川は唖然としていた。
「かわり…?」
もう一度確かめるように同音を口にして、その言葉の意味をやっと認識すると顔を歪ませて、かわりぃ?と叫んだ。呆れや怒りや悲しみや、信じ難いものへの抵抗の叫びだった。
「そんなもの無い!兼さんを返して!」
「おい、堀川落ち着け!」
帯刀してたら斬りかかったんじゃないかって位の殺気で主に?みかかる一歩手前で俺と安定が抑えたから良かったものの、あれ以上踏み込んでたら三日月が打ちのめしてたと思う。
でも主は恐るどころか上機嫌で。
――やはりお前は佳い
堀川が見せた桁外れた霊力への関心の強さを一頻り語る主の姿に堀川本人も困惑して動きが止まる。
――単なるそこら辺の脇差かと思っていたがお前はとてつもない霊力を秘めた特別な個体だったようだ。処分するには余りに惜しい。その力を捧げると誓うことで主に歯向かった事、不問にしよう。
「捧げるって…」
戦果を上げることか、はたまた。
主の求めるものが図れず戸惑う堀川だったけど、すぐに了承する事になる。
――条件を飲むなら和泉守を戻してやろう
俺たちはその場を凌ぐ為の気まぐれだと思っていた。堀川も半信半疑だったろうが、他に縋るものなんか無いからね。受け入れた。
「本当に…兼さんを…?」
さながら、悪魔の取引のようでね。
――なんでもするだろう?
しますと即答する堀川の妙にギラついた眼差しを俺たちは見てられなくて目を背けてしまった。

それからこの離れに主と堀川は三日三晩篭った。お前の体と共に。
四日後、主が母屋に帰って来て、離れに食事を持って行けと命令した。
血塗れの服に獣の匂いを纏って。

ずっと心配していた山姥切が申し出て、食事を運んだ先で驚愕する事となった。そこには左腕が千切れて、両眼を失って血溜まりの中で呻いてる堀川が居たから。
半狂乱で母屋に引きずろうとした山姥切を制したのは他ならぬ堀川だった。
「もう少しだから」
そう呟く堀川の奥歯は、強い負荷をかけて食いしばったせいで縦に折れて欠けていた。
「大丈夫。僕らのことは放っておいて」
山姥切の背中を押す力の入っていたない右手の拒絶は強くて。絶句したまま戻って来て主にどういうことかと尋ねたら一言、気にするなと返された。
……。
どういう意味か。
分かるよね、お前なら。
主が気にするなと言う以上、もう踏み込めないんだ。誰も。お前たちには。
主と堀川が何をどうしたかは知り得ないけど、それから数日後に死んだはずのお前がこの離れで堀川と暮らすようになった。
そして、堀川は自身の霊力を捧げている。今も。
精密検査。
堀川の内なる霊力を吸い上げて他の刀剣を強化すべく分け与えることをそう呼んでいる。
堀川は足が悪いわけじゃない。歩けないのは正気を吸い尽くされて立つのがやっとだからだ。日常生活だってよく送れてるもんだと不思議だよ俺たちは。
だが堀川は主の見立て通り本当に特別らしい。
通常なら折れるであろう数値の霊力を吸い上げても生き残っている。霊刀でもない堀川になんでこんな力があるか謎だけど、主はどんな因果があろうと構わないんだって。

――面白い。どこまで耐えるか。

……。
多分、死ぬまで吸い尽くされると思う。
うん?ああ、迎えに来た時に怯えていたのはそれを恐れてでは無いと思う。
多分、自分の目が届かないところにお前を置いておきたくないんだろう。理由は言わなくても分かるだろう?

ここまでの話を聞いて、お前がどんな感情を抱いたか俺らは詮索しない。
俺たちは堀川にもお前にも同情する部分はある。仲間だからね。
でもね。俺らは刀。
主の言うことが全てだし、主に愛されるためならなんでもする。俺たちは。

……。
堀川の霊力は日に日に枯渇してきている。無尽蔵とはいかないから当たり前なんだろうけど。
けれど、もし五十人斬りをした時の状況下に再び置かれれば。
未知なる霊力が再び呼び覚まされるんじゃないかって、主が。
……。
……これを言いに来たんだ。

和泉守兼定。
主から言付かった命を申し渡す。

堀川の霊力を引き出す為に、

――再び死んでくれ

以上。

***

さて、どうする。
腹を切るか首を吊るか、毒でも飲むか。
斬って殺すは得意だったが、自分で自分を殺すとなるとなかなか決まらないものだ。
首を吊ると筋が弛緩して糞尿を垂れ流したまま逝くなんて聞くから流石にオレの美学に反する。
美しい、格好の良い死に方なんてあるのだろうか。
その点、体に目立った傷もなく首だけ撥ねられて死んだオレはなかなか美しい死体だっただろう。(とは言っても敵に首を斬られている次点で“ダサい”んだが。)
戦場で死ぬ瞬間の呆気なさは前の主の既視感だろうか。未練を抱く暇もなかった。それなのに生き返ってるなんざ執念がないのかあるのか。
しかし、必要とされないどころか死ねと来るとは我が主ながら相変わらずぶっ飛んでるぜ。
加州たちは申し訳なさげだったが、主の考えをどうこうしたいなんて烏滸がましい事をオレは考えちゃいないし、オレが死んで国広の真価が発揮されるならそれがこの本丸で必要とされるオレたちの在り方なのだろう。
母屋では国広はオレが死んだショックでいかれちまって離れで療養している事になっているらしい。だから国広がオレの名を口に出しても皆は憐れみの目で見るらしい。癲狂院の患者かよ。
実際は他に類を見ない霊力を秘めているなんて誰も思いやしない。オレだって初耳だし未だ半信半疑だ。
「…怖くないの」
湯呑みを洗いながら加州が呟く。
「死ぬの。怖くないの?」
「それなんだが。オレはどうやら不完全なようでな」
不完全?と加州と大和守の声が調和する。
「五感が無いわけじゃねえが、極めて鈍い。ほとんど感じない上に欲求に至っては皆無だ」
「欲求って?」
「堀川とえっちしてないってこと?」
大和守は素面でこれだからよわる。
「……眠くも、腹が減りもしないってことだ。だから痛みもなく逝くだろうし、恐怖なんざねえな」
ふぅんと素っ気なく返事する加州にお前が聞いたんだろと癪に触るが、同時に喜怒哀楽の感情は生きているのを認識した。
短気は損気だよと国広の声が聞こえてきそうだ。

国広。オレの相棒。オレの死が受け入れられずに主に歯向かって、両眼と片腕を代償にオレを生き返らせた馬鹿な奴。
だって馬鹿だろう。オレの為にあれだけ失って、肝心のオレはこれからまた死ぬんだから。

――死ぬまで吸い尽くされる
今頃“精密検査”で霊力を吸い取られている相棒を思う。
主の見込み通りならオレが死ねば国広の命は多少永らえるだろう。
「……許せよ」
自然と口から出た言葉がしんとした部屋に留まる。
「許さないと思うな、堀川」
空気を読まない大和守が呟いた。
でも、そうだろうなとオレも思った。

***

行き同様兄弟に背負われて帰宅した国広は三和土を踏みしめるようにゆっくり着地すると、ただいまも言わずに上がり框に上半身から倒れこんだ。大丈夫かと駆け寄ると無言で右手の平を向けられた。
静止の構えのまま深呼吸を数回した後、ありがとうと言葉が出たのを聞き届け山伏は去った。
国広の脇の下に手を入れ半ば無理やり抱きかかえて布団の上に横たわらせた。ふく、ほこり、と抑揚のない単語を呟く。布団が汚れるのが嫌なのだろう。
はいはいと外出して砂埃がついた服を脱がせていく。
いつもなら自分でやると言い出すところだが、国広はままならない体を従順にオレに預けた。
靴下、ジャージのズボンと上着、ポロシャツ。
脱がせたそれらを気づいたら綺麗に畳んでいたから、自分は国広に無意識に躾けられていると感じた。
左腕で肩を抱き軽く上半身を起こしているのだが、七分丈の黒のインナーは肌に密着していて片手では脱がせ辛いので一旦胸の上まで捲り上げた。
国広には布団に背中をつけたまま万歳をさせ(と言っても左腕は無いんだが)頭の上から胸の上に溜まった裾を掴んでせーのと一気に引きずり上げると、スポンと抜けて下履きだけを身に纏った姿となった。
いつもより血色が悪く、透き通る瑞々しさの無い肌は青白く濁っているように見え、先程着いた膝と肘、肩だけが軽く鈍い赤で染まっている。すぐ引くだろうが、白に赤が浮き出て対照的に目立つ。そしてどちらも鮮明では無い。
注視していると視線に気づいた国広が体勢そのままにごめんと呟いた。
「謝る仲かよ」
万歳させた腕を体の側面に戻してやり髪を撫でてやった。
裸のまま転がしておくわけにはいかないので寝巻きに着替えさせようと箪笥の引き出しを開けて、ふと思い立つ。
早ければ今夜、少なくとも早いうちにオレは死ぬ。死ななければならない。
唐突に告げられた命令に対してさも平然を装っていたが、狼狽を隠す為の虚勢など加州たちも見抜いていただろう。
主の命だから。
国広の命を長引かせるため。
自分を納得させる理由を探してはみたが、どうもいけない。“らしくない”。
死んで終いなんて、オレの中ではあり得ない。強くてかっこいい、美しい死体などきっと無い。
大体、国広に命を長引かせるなどに至っては嘲笑すらおこる。理由にならねえ。
なんなんだ長引かせるって。なるべく遅延させようが結局こいつを死なせる事を止められないなんてオレはどうかしている。
――精密検査
国広の霊力を吸い尽くし、衰えさせる儀式を終わらせる。オレがやらなければならない事はこれなんだ。
その為に何をすべきか。
――再び死んでくれ
主の言付けが脳裏に再生されたその瞬間。オレが死ぬ理由が、場所が見つかった気がした。

「服、引き出しに入ってないかな」
放置されたまま状況が分からない国広が心配して声をあげる。
裸のまま鳩尾を摩り内腿をすり寄せる姿に、悪いそのままじゃ寒いなと謝ると大丈夫と手を振られた。
手に取った寝巻きを枕元に置き、ひらひら揺れる国広の手を握ると、寄ってきた手の角度に違和感を覚えた国広が兼さん?と不思議そうに本来想定していた頭上を見渡すように首を伸ばす。平行に隣に横たわるオレが意外だったようで、肩が触れるまで気がつかなかった。
「国広、したい」
耳元で囁く。
オレと揃いの赤い証を刻んだ耳朶の端に寄せた唇を耳輪に吸い付くように滑らせて、もう一度、したいと小さく囁く。
言葉の意味を理解している国広が一度、はぁと吐いた息が熱く広がる。
「今は寒いだろうけど、ちょっとだけ我慢しな」
下履きに手を掛けると察した国広が腰を浮かせたので、そのまま膝までずり下げて、片足ずつ脱がせると完全に身一つとなった。
薄く生えた恥毛を隠すように太腿が擦り合わさり、本来なら恥ずかしさを取り払うように照れの言葉が出てくるところだが、国広はきゅっと唇を噛んだまま、微かに頭だけオレの方に寄せる。
敷き布を掴む右手の力から緊張が伺える。
初めての行為ではないのだが、まるでおぼこのような反応だ。
「もう、しないのかなって思ってた」
震える声で絞り出すように国広がポツリポツリと語り出す。
「僕の体、見苦しくて。兼さんとますます不釣り合いになっちゃったから」
だからと吐き出すと声が詰まり両眼を覆う包帯がジワリと滲む。
「だから、もう一生、抱いて貰えなくなったんだって言い聞かせてた」
布地が吸水する許容を超えて、?に伝っていく。どんどん、どんどん溢れていく。
「それが、僕の罰なんだって」
国広の涙が青白かった肌に色を戻していく。生まれ変わる瞬間のような光景を前に息をするのも忘れている事に気づく。
「抱くに決まってんだろ」
熱が籠もった鼻根を摘むと、スンと鳴った。
「何が不釣り合いだ。オレとお前以上に似合いの大小があるもんか。なあ」
そうだろ?と顔を寄せ、鼻の頭がちょんとくっ付くと、国広が微かに唇をすぼめたからそのまま重ねた。
一旦離れて今度は互いの凹凸が全て埋まるように丁寧に角度をつけて、唇の皺と皺すら埋まるように隙間ない口付けをした。
国広の柔らかな唇。
ずっと重ねていたくなる心地よさはお互いなのか、呼吸を挟んでは飽きもせず何度も何度も繰り返し唇だけで重なり合った。
すっかり鈍ったと思っていたが、行為は意識を裸にして感覚を鋭くするのか触れ合った部分の感触から、国広の息遣い、色を染めていく体やその鼓動、微かな変化や感情が全て直接頭に入ってきて一体となったと錯覚するほどだ。
自分は不完全な死体のなり損ないだと思っていたが、国広がその身を削って生き返らせてくれたこの体は、今漸く感覚を目覚めさせたのかもしれない。
涙で滲んだ包帯を外そうと後頭部側にたくしこんだ結び終わりに手をかけると国広が小さく嫌と首を振る。大丈夫という意味を込めてもう一度優しく口付けると胸を抑える仕草で大人しくなったので、ゆっくりと一周二周とほどいていくといつぶりか国広の素顔が現れた。
眩しい時のように閉じた目は長い睫毛はそのままだが、摘出された眼球の丸みがなく平らな皮膚にただ縫い付けた傷口は依然とかなり違う顔の印象だ。
「嫌いにならないで」
どんな気持ちで絞り出した言葉だろうか。
「国広、愛してる」
目尻に光る雫を唇で掬ってそのまま輪郭を伝ってまた唇同士で繋がった。
気恥ずかしく言えたものじゃなかった台詞がなるべくしてなるかのように自然と自分の口をついた事で、失せた欲とは違う情愛でなら国広を抱く事がまだ出来るのだと知る。
きっと初めて聞いたであろうその言葉に国広は返事もなくただボロボロと泣いて、熱くなった鼻の奥から喉でゴクンと息を飲んだ。
「…生きてて良かった」
オレになのか、自分になのか。誰に対してか分からない言葉を呟き、国広が自身の前髪を掻き上げると二人で分け合った証が赤く反射した。
仰向けで寝かせた国広の太ももを挟む形で馬乗りになり、体重をかけすぎないように気をつけながら肘をついて肩を抱えるように掴んだ。
顔前に晒された首筋から鎖骨にかけての線を舌でなぞる。くすぐったいのか、ううと小さく口籠るも国広は手を横につけて自分の太ももを掴みジワジワと迫る快感に耐えている。
鎖骨のすぐ下、大胸筋の上部に強めに吸い付き舌先だけを口内で動かす。ふっ、うっと跳ねる体を抑える太ももに力を入れる事で制する。
オレの唇と舌がつたう部分に集中せざるを得ない状態で、皮膚の下の筋や骨に直接触れられているかのように敏感になるのは仕方がない。普段は平らに小さな豆が乗ってるような乳首の輪の部分はぷっくり膨らみ皺を作り、中心には弾けそうな丸い粒が倍に膨らんで震えている。
平常時とは違う不自然で歪な突起が国広の幼めな容姿と不釣り合いで妖艶で。だからこそ包み隠していない国広の肉感的な面をそのまま映しているように見えた。
輪に沿って舌で皺の一つ一つをほぐすと中心の粒がより固く膨らむ。吐息と区別がつかない程の声でいやぁと悶えた国広自身も快楽が突起に集中してその形を怪奇なほど変えて淫らに主張しているのを自覚しているのだろう。
それでも輪と粒の付け根の輪郭だけを執拗に舐めほぐすが、破裂しそうなほど充血した乳首はもう拡がりようがなく、鮮やかではない茶褐色寄りの生々しい赤黒い色に内側から解放されたがっているのが見てとれた。
一旦唇を離し、国広と呼んで催促してみる。
どうすれば望み通りの愛撫が得られるか理解しているものの、羞恥心から躊躇し一歩が踏み出せない相棒にもう一度促す。
「国広ぉ、分かってんだろ?」
「だってぇ」
普段しっかり者と評される国広が甘ったれた声で愚図るのが可愛く思える。
そっちがそうならと、わざと胸から腋にかけて舌でつたって乳輪から遠ざかるようにすると、あっ!と切なそうに眉を寄せて焦った国広は観念してたどたどしくも訴えた。
「お願い、ちゃんと触って」
誤魔化さずに言うまで無視する。
「や…その……僕のおっぱい吸って」
お願い…と口籠るのがやはり可愛く思えたから、しょうがないなと左の乳首を歯が当たらないように口に含んだ。
待ち焦がれた刺激にううんっと体が跳ねた国広は唇を噛み締め、息継ぎを我慢した分?が紅潮する。
丸く膨れた粒を口の中で舌先だけで転がすと、空気に触れたままの右乳首が更に締まるように丸く張り詰める。
「もっと強くして、してぇ」
天井を見上げる形で首を伸ばして必死で呼吸する国広の右手が張り詰めた乳首に添えられ、人差し指と中指の付け根で挟んだ粒を押し出すようにギュッと力を込める。潰れてしまいそうな圧をも弾く膨らみがさらに充血して生々しい赤茶色が国広に似合わず余計淫靡だ。
国広が自身で弄る様を横目に同じ位の圧で歯の裏と舌で挟んだ粒を吸い上げると、ああああと堕ちていくような嬌声と共に背中がビクビクと痙攣して浮き上がる。左肩を無理やり押さえつけ、吸ったままの乳首を舌で上下にこすりあげ根元は甘噛みした。口に含んだものは見えはしないが、舌先で感じる粒の固さと国広が自分で擦り上げているもう片方の乳首のギュッと締まった根元から膨らんだ丸い粒の先端の張り詰め具合から敏感になり、快楽が集中しているのが分かる。
国広が根元を摘んだ乳首の先端に親指でぎゅっと潰れる位の圧をかけるも痛がるどころかもっととねだってくるので、膨張した粒も強すぎる位の刺激の方が気持ちが快いのかと理解して、指と舌の両方で乳首を強く吸いながらグリグリ擦り上げ、潰して、集中した皮膚をほぐしていく。
途中で位置を交代して右の乳首を口に含み舌先でコリコリになった先端を転がす頃には国広はあーともうーとも形がつかない低い唸り声を鳴らしながら胸板にある小さな豆粒に集中した快楽に身を任せ、全てをオレに委ねて脱力していた。
汗とオレの唾液でぐちゃぐちゃに濡れた乳首がぬらぬら照る様はそこが粘膜を丸見せにした性器になったようで下品だが、普段品行方正な国広が淫らに曝け出している現実に軽蔑どころか愛しさを感じる。
覆いかぶさっているオレの腹に当たっている、切なそうに膨れて先端を濡らす国広の自身もそろそろ可愛がってやろう。
おそらく弄り倒しても終わりが無いであろう乳首への愛撫を一旦やめて、舌をそのまま肋から臍、下腹部へ滑らせていく。時たま緩急をつけて強く吸いつけて濁った赤い痕をつけると国広の体にオレが辿った証として道導が残った。
ここも、ここも、ここも。
腋から横腹、肋骨の浮いた胸の下、臍の上。全部オレがつけた。
無くなった左腕だって両眼だって、上手く動かない両足だって全部オレのせいだ。国広の体が見苦しいってんなら、全部オレのせいだ。
「なぁ、快いか?」
両手で腰骨を掴んで下腹部に?をつけながら聞いてみる。
屹立した自身がオレの顔に当たらないように太ももを擦り合わせて抵抗を見せながらも、素直にうん…と頷く国広は本当は触れて欲しいのだろう。
腹から鼠蹊部に沿って唇で伝って降りて行く途中にも痕をつける。オレの道導だ。
内腿を掴んで股を開けようとしたが、太ももに繋がる尻の肉に軽く親指の力を入れた時に国広が一瞬あっと声を漏らしたので止めた。上手く足が広がらないのを察知したのだろう。
腰から尻にかけてを体の右側面にぴたりとつけた腕の手首ごと掌で押さえて横倒しになるようにゆっくりと起こさせ体勢を変えると、左腹部を下にした国広と向き合う形にオレも横向きに体を寝そべらせた。
目の前に国広の股間がある状態で膝裏を引き寄せ、太ももごと抱きしめて膨れた幹の根元に唇を合わせると、やんっと鳴いた国広の腰が引いたので動かないように余計に力を入れる。上手く動かない足の代わりに爪先が居心地が悪そうにジタバタ動いている。
「じっとしてろよ、手前も楽になりたいだろ」
「かっ兼さんがするの?く、口で?」
慌てふためいた国広は体勢と体格的に完全に拒絶するのは難しいが、せめての抵抗でオレのつむじを弾く。
じっとしてろっつってんのに。唇を合わせた部分に軽く歯を当てて脅かす。勿論本気で噛み付く気は無いが、観念しろという意思は伝わっただろう。大人しくなった国広が背中を丸めて、嫌だったらすぐに離してねと言いオレの前髪を撫でる。
「いつも人のちんぽしゃぶってた癖に文句言うんじゃねえよ」
「ちっ…!い、言い方ぁ」
動揺で赤面した国広の太ももがまた羞恥でギュッと内側にすぼまったので、邪魔だなと片足を肩に乗せてしまう。肩から背中に国広の動き辛い脚が纏わり付いた状態で尻を掴み一気に引き寄せると、口内に国広の膨らんだ肉の熱が広がった。
「いやっいっ、いぃ!快いよぅ気持ち快いっだめっだめっ」
まだ口に含んだだけなのに悶絶して善がる国広の声ははしたなくて実に佳い。
無自覚なのだろうが、流石だと感心する。この様が見たかった、この声が聞きたかったんだ。
「いい反応だなぁ。オレが良いって言うまで達するなよ」
さらりと言いのけて再び根元の輪郭から啄ばむように唇の上下で挟むと、理解が追いつかない国広がはぁはぁ息継ぎする合間にえ?え?と困惑の声をあげる。
「い、いつまで?」
「さぁな?オレの気が済むまで。頑張れよぉ助手」
「意地悪しないでよ…分かってる癖にっ」
跳ねた語尾と同じくガクガク腰が震えて先端から透明の体液が滲み出てきた。堪忍しているのか勢いはなく漏れている様だ。
泣いているみたいに先端に浮き出す雫が可哀想で、窄めた唇でよしよしと慰めながら口付け啜った。
いやぁと首を振る国広の顔の輪郭にも涙と涎と、雫が垂れる。それも拭ってやりたいが体勢的に不可能なので代わりにこちらを愛してやろうと艶々に膨れた桃色の先端の括れに舌をつけると、喉まで一気にずるりと幹を呑み込んだ。
ヒッと怯んだ声をあげた国広の尻をしっかり掴み、舌を絡ませて吐き出すのと呑み込むのとの往復を繰り返す。抑え気味だった体液が粘りを増して、決壊したようにドパドパ溢れてきたから自然とじゅぱじゅぱ水音が立って、大人しくなった国広と重なって不条理な空間を作り上げる。
我慢の言いつけを従順に守ろうとする国広はなるべく刺激を感じ取らないように意識を集中し、深呼吸しているせいで嬌声はすっかり鳴りを潜めている。耐える姿はいじらしいが、つまらなくも思う。
どうすれば快い声をあげるだろう。
試すように裏筋に唾液をなすりつけ舌を強く押し付けて擦り上げたり、ふぐりを口に含んで転がしてみたり。角度を変えてみるがコロンと脱力して身を預ける国広の反応は先端から垂れ流している粘液からしか量れない。
国広と名を呼んでみる。掠れた声でんんーと相槌か判断が付かない寝言のような反応しかない。遠くにいってしまったか。
「……快くねぇか?」
「なんかね…よく、分からない…」
絶頂の寸前で制止された状態で我慢を強いられた国広は無自覚に体液を垂れ流すだけの人形に成り果てて、虚ろな口調の最中にも涎が顔を伝った。
これじゃあ許しを出したところで上手く達するかも危ぶまれる。やりすぎたか。
口の中で括れを舌先で弄びながら反省混じりにどうしようかと思案していると、酔っ払ったような呂律が回らない抑揚でかねさぁんと相棒がオレの名を呼ぶ。
「かねさんのぉ…おちんちんなめたい…」
唐突に包み隠さない要求をしてきて、可笑しくて、堪らない。愛しい。
「はやくしてよぉ」
理性が及ばないのか全裸で脱力して局部も丸出しにオレに全てを預けている癖に駄々っ子のように不機嫌に催促してくる。
しょうがないので折れてやりたいが、問題がある。
加州たちに告げたように、オレには既に欲がない。腹も減らないし、眠くもならないし、欲情もしない。
今こうして国広を抱けているのは、性欲とは別の情愛の延長だからだ。それも久々にこいつに触れることでやっと気付けた始末なのだが。
…つまり勃たない。不能だ。そんなブツで国広は納得するだろうか。
「いつからちんぽ欲しがる卑しい穴になっちまったのかね、オレの相棒は」
「…ちんぽなんていってないもん」
おお、本当に言いやがった。
オレがしゃぶってドロドロになった国広の膨らみから口を離し、肩にかけた脚を慎重に着地させて添い寝の状態から体をあげた。
改めて俯瞰で見る国広の肢体は顔から爪先までぐっしょり濡れ、身体中には点々と赤い証が刻まれて、まだ先端を尖らせた胸と股間はぬらぬら濡れて艶を増している。
まるで犯されたようだなんて他人事のような光景に映るが、だとしたら頭の先からつま先まで全部オレが犯したようなもんだ。
腹を横にして寝たままの国広の顔の横で膝をつき、ずり下げた股引から取り出した肉棒はやはり萎えていたが、先端を鼻先にチョンと当てると国広は小さくあっと声を弾ませた。
くんと嗅いで、ふふっと笑うと菓子でも摘み食いするようにパクッと先端を咥える。
体勢が辛いだろうと横向きの上になった方の腹から腰の少しだけある括れを外側に押すと、尻を緩衝材にして仰向けになり咥えた横顔だけがそのままになった。
先走りすら出ない縮んだ陰茎を口に含む国広は、愛撫をするというより、口寂しさから飴をしゃぶる子供のようで、含ませた唾液が垂れようが御構い無しに好きなように舌を這わせて吸って舐めて遊んでいる。
手持ち無沙汰になり、仰向けでツンと上を向いたまま未だに膨れてる胸の粒を親指でギュッと摘んでみた。予告のない刺激にうんんっと喉が開いた国広が逆流しそうになってゴホゴホと唾液を垂らして咳き込む。悪いことをしたと思ったが、一旦口を離して呼吸を整えると、再びのんびりと肉の括れに吸い付きちゅうちゅう音を立てて根元まで頬張ってきたから何一つ気にしてないようだ。
「なぁ、このコリコリまた吸わせろよ」
指の腹で粒の先端を左右に弾いて要求してみたが頬張らせたまま“らめ”と口ごもらせて否定された。今は自分が好きにする時間だと主張したいのだろう。
「乳首ビンビンに尖らせてんのに偉そうだなあ」
挑発してみるが無視されてピチャピチャと舌先で遊ぶ水音で返される。勃っちゃいないが局部を征服されているのを忘れていた。
歯なんて立てられたら流石に血塗れになるのだろうな、等と妙に悠長に考える。
そういう立場も含めて、今国広はオレと遊んでいるつもりなのだろう。
この体になってからひと月。こんな戯れ合いで国広が嬉々として全部晒して、甘えて、解放されるなら早くこうしてやれば良かった。
「美味いか?」
馬鹿馬鹿しく揶揄ったつもりだったが、国広はうんうんと二回頷いて、んなわけねえだろと歯を見せて笑ってしまった。
半ば気が済んだのかふやけた肉棒を吐き出し、笑わないでよぉと?を膨らませた国広の髪を撫でた。刺激を与えても萎えたままのオレを心配して、先端の丸みをよしよししながら唾液のぬめりを指で掬いごめんねと呟くものだから、お前のせいじゃないと上半身を抱え、ずるっと持ち上げて好き勝手していた唇に深く口付ける。
「ねぇ、もういい?」
「うん。声出せよ」
空いた方の手で国広の滑ついた膨らみの根元を掴み、潰れる既の圧で上下に擦り上げていく。
「兼さん、嬉しい。気持ちいい。体全部くすぐられてるみたいでね、ドキドキして。…好き」
考えつく単語を並べただけの稚拙な言葉だからこそ、飾らない国広の気持ちが伝わる。
溢れる粘液で滑りが良くなった上下する手の動きに合わせて呼吸も早くなり、国広の泣きそうな息継ぎに唇が震えていた。
ひんっひんっとしゃくり上げるような痙攣を繰り返して下腹部を右手でぎゅーと抑えるので、もう出そうか?と耳元で囁くとうんうん頷く。
「いいぜ、全部出しちまいな」
裏筋にかけた親指の腹を強めに上下に擦ると、あっあっと声が甘く色づいてきて爪先がピンと張ってくる。
愛しいと思った瞬間には唇を重ねていたし、こいつが漏らして垂れ流してる全部が欲しいと思った。喉の奥から突き出された舌をじゅるじゅる吸いながら、口付けというより口吸いだななんて呑気に考えていたらうううううーと唸って眉を寄せて悶えるので、プハッと口内を解放してやると腰から膝がガクガク震えて、あっあっあっと鳴いた後に、消え入る位微かにいくぅと漏らして国広はオレの手の中で達した。
精はあまり白くは濁っておらず、達する瞬間の体の反りと対照的に量も飛距離も細やかだったが、だらんと萎えた肉棒は全てを出し切って満足しているようだ。手の平に残るぬめりを舐めてみたら、やだぁと恥ずかしがられた。
また呂律が回らなくなっている国広は全身が甘く痺れて思うように動けないようで、かねさぁんと鼻にかかる声で呼んできたから何だ?と返事したらなんでもぉなんて笑ってやがる。存分に満ち足りたようで上機嫌だ。

「…兼さん、まだ首痛い?」
抱き寄せた腕の中で唐突な問いかけが来て固まる。
痛くは、無い。
だが、国広が求めているものがそれでは無いと知っている。
「まだって…痛がった事があったか?」
「たまに首を摩るから、そうなのかなって思っただけ。痛くない?」
「おお。痛みはないぜ」
嘘は言っていない。
「……兼さんが痛い思いをするのは嫌だからね」
よかったと呟くとオレの手を引き寄せて、甲に柔らかな唇を押し付ける。
「首もね、いつかまた綺麗にしてあげる。この間はちょっと勇気が出なくて失敗しちゃったから」
唐突に何の事だか分からない話を淡々とするなと指摘したかったが、それは茶化すにも率直にも言葉を挟めない独特の宣言だった。
「兼さん…」
顔を上げない国広はまるで独り言を繰り返しているようで。
「僕はね、兼さんが生きていてくれるならなんだって出来るんだ」
腕の中の国広が物凄く遠く感じる。
「だから、僕より先に死なないでね。瞬き一回分でいいから僕より永く生きてね」
お願いだよとまた唇を押し当てられて言葉が詰まる。
兆候を感じ取っていて牽制しているのだろうか。
オレが死にに行くことを。
まさかとは思うも、最も近しい相棒が、深く愛し合った今敏感に何かを察知していてもおかしくはない。
「オレはお前の死を見届けなきゃなんないのかよ」
動揺を隠す為に軽口を叩いてみたが後悔した。
「うん。だから、生きてね」
糞真面目に嘘偽り無く飾ることを知らない真っ直ぐな言葉がオレを刺す。
両眼と片腕を失って歩けない程に生気を吸われて、なおまだ残りさえ差出せるなんて言わせて、それでも願うことを叶えてやれないのか。
鈍る。決心がどんどん、どんどん鈍る。
刀のオレが主の命を守りつつ、国広を救う為に出来る事は討ち死にすることだと思った。
国広の霊力を吸い上げ、命を脅かす儀式を止めない主を討ちに行き死ぬ。それがオレが見つけた死ぬ理由と死に場所だと思った。
それが鈍る。
何の為に、誰の為にオレの命があるのか考えが鈍る。
最後に抱いておこうなんて思わなければ良かった。
腕の中で不自由な足を投げ出して体を丸めしなだれかかってるこの存在が自分にとってどれだけ大きいか考えれば、触れたら最後、潔く逝けるなんて運びになるわけがなかった。
今更体が震えてくる。
どうすればいい。オレに何が出来る。
「兼さん、僕冷えちゃったみたい」
裸のまま放ったらかしていた国広が口を開きハッとする。
「お湯沸かして来て貰っていいかな」
「お、おう。悪かったな気づかなくて」
「ううん。手汚しちゃったし、洗って来なよ」
一先ず布団に寝かせて体を軽く拭き、オレの夜着を掛けて浴槽のある外に出る。
缶体で覆われた風呂釜で薪を焚き、風呂桶に張った湯を沸かしながら一人で思索する。
国広の精で濡れた手を洗う時にあいつはなんだかんだでちゃんと勃つんだなと妙に感心した。雄は生命の危機を感じると種の保存の為に本能的に勃起するなんて話を聞いた事がある(迷信らしいが)本能が逝ってて勃つどころか先走りも出ないオレはやはり生き物としてあやふやだ。
「僕より先に死なないで、ねえ…」
死んでいないなら状態は問わない、と言う事だろうか。
いや、違う。オレが痛い思いをするのも嫌だと言っていた。我儘な相棒だ。
「……いっそ連れて逃げちまうか」
主と、国広と、オレの三者三様の願いを叶える方法等無いのだろう。思わず空想に逃げてしまう。
死ねと言われて、相棒をあんな風にされて、それでも主の命をどこかで遵守しようとするなんざ我ながらまるで犬だが、加州の言葉を回想する。
――俺らは刀
誰かの為に死ぬのなら、それはやはり。そう考えもする。
その点国広は、オレの片割れは一貫して全てがオレ?和泉守兼定?の為だ。
愛してるなんて言ってはみたが、オレはああは成れない。

何度目かの決意が鈍り、迷い迷って、自分が誰の為に何の為に死ぬか相変わらず答えが出ないが、思わぬ光景がそれを一瞬にして塗り替えた。
釜の湯が沸けた事を告げに外に造設された風呂場から国広を呼びに近づいた時、聞こえてきた異様な音。

「ボリボリボリボリボリボリボリボリ」

一心不乱に休みなく何かを齧る…いや、砕き食う?そんな音がひたすら部屋に響いている。
錠菓でも盗み食いしている。
そう思いたかった。そうあって欲しかった。
「……国広?」
オレの呼びかけに気づきもしない背中はひたすら何かを貪っている。
「ボリボリボリボリボリボリ」
元々横たわっていた布団から腕の力だけで手繰って行ったであろう跡が敷き布の皺の入り方から伺える。
水を汲む余裕も意識も無いのか、本来なら砕いて食べるものではないものをそうするしか仕方がないように口にしている。

本当は知っていた。気づいていた。
夜、オレが国広の調子に合わせて寝たふりをした後に、こっそりと布団を抜け出して今手にしている乳白色の丸い粒を幾つも飲み込んでいたことを。
見て見ぬ振りをしたかったわけじゃなかった。それでも信じ難かった。
――堀川、アレもう足りないでしょ

アレは菓子なんかじゃない。
薬だ。
きっと、痛み止めだろう。

「ボリボリボリボリボリボリ」

ずっと聞いていると気が狂いそうになる音を鳴らす国広は、一瞬うっと痙攣して意識を手放した。
気絶して物言わぬその体を抱いて、風呂に連れて行った。
どうしても綺麗にしたかった。
髪から耳の裏、腋の下、下腹部から陰部、尻から膝裏、爪先の指の間。
意識のない国広の微かな呼吸を確認しながら、全てを丁寧に洗った。
先を失った左肩、眼球の丸みがない顔を拭く時に目の奥が熱くなった。
身体中のオレがつけた痕と耳朶の証だけが赤く主張して真っさらな国広に二人で愛し合った時間を映し出す。

下着と寝巻きを着せて、掛け布団の上に夜着をかけて。
くぅくぅ寝息を立てる国広はとても安らかで、このまま寝ていれば幸せなのだろうかと思う。
「今日は疲れたよな。……悪ぃな」
睫毛に引っかかった前髪を掬って耳横に流す。
何も知らない無垢な子供のような寝顔になぁと語りかけるが、耳には届かないと良いなどと身勝手な気持ちが背反する。
「国広、オレは本来もう死んでるんだ」
また無自覚に首を摩っている。
「だから、お前が自分の体を痛めてまで生かす必要なんかないんだ」
痛くも痒くもないこの傷痕の為に国広はまだ何かを捧げるのだと言った。
「先に逝っちまった事が受け入れ難いんだろ。許せないんだろ。でもな、それでも…」
許してくれ、と告げて。
今度はその愛しい体には触れず去るよ。

離れで目が覚めてから飾りっぱなしだった着物に久々に腕を通して、羽織りを纏う。
出陣をするんだ。
美しさ、自分らしさ、誰の為に、何の為に。
色んな所を廻り廻って出した答えは、これ以上相棒が傷ついて苦しまないようにオレの存在を消すこと。
それは悲しむことでも怖いことでも無いのだと、オレも、国広も理解らなきゃいけない。

あの日、オレが逝った時と同じように首を刎ねれば。
時間が、歴史がまた動き出すだろう。

自分一人で首なんざ千切れはしないだろうが、この縫合された傷口に刃を沿っていけば失血で上手く死ねるだろう。
久方ぶりに握る刀としてのオレ?和泉守兼定?は我ながら強くて美しくて頼もしい。
「斬って殺すはお手の物」
決まり文句と共に柄に手をかけた瞬間。

「兼さん」

それは鋭く、冷えた声だった。
真っ直ぐだ。いつだってこいつの声は飾ることなんか知らない、真っ直ぐだ。
鞘を握って急いで玄関先に駆けた。
日常生活はともかく戦場では話にならない歩武だった。やはりオレは不完全だ。
それでも国広の不自由な足では追いつけやしない。
待って、お願い、待って。
滲んで掠れ、追い縋る声を振り切って駆けて行く。
かと言って母屋には近寄れない。オレは死んだことになっている。
この離れ周辺で追いつかれる前に死ぬしか時機はない。
――今だ!
その決意の刹那、生い茂る離れの周りの木々が騒めく程の絶叫がこだました。
ああああああああっ!

辿って来た道を振り返ると、最愛が咆哮を放ちながら頭を抱えて蟲の様に丸まり悶え苦しみ転がっていた。
「国広…」
綺麗にしたはずの体が木の枝や葉で裂かれて傷になり、転んで擦りむいた足からは血が吹き出している。

痛い、痛い、痛い!

剥き出しの神経を無造作に撫でられて、苦しみ狂うような声は時が止まるに十分な状景で。
気づけばその肩を抱いていた。
「国広!どこが、どこが痛い!」
口端から涎を垂らしながら脱力し、痙攣した指先が唯一ピクピク動くだけの国広は振り絞るように喉から音を鳴らす。
――もうどこがいたいかなんて
分からないやと笑う。
押し通して来て弾き返された枝や葉で切れた血を流しながら。ここに来て、まだ、笑ってみせる。
「国広、オレはお前が…」
虚飾なく、怖いと口をついた。
月の光さえ差し込まない暗い森の中で痛みしかない国広の体に触れている、それすら怖い。
死ぬ事なんかより余程。
「兼さん…」
爪の隙間に砂利が詰まって埃と土で汚れた手の平がオレの輪郭を包むように触れる。
「キスして」
苦しみから涎を垂らした唇は妙に艶めいている。
「なるべく、なるべく優しくがいい」
催眠術にでもかかったように導かれて、望み通りに出来る限りの優しい口づけをした。
糸を引くような愛撫ではなく、誰かに何かに祈るような弱々しく辿々しい口づけだった。
名残惜しそうにぴとっと吸い付いた柔らかな唇が離れると、綻んだ国広は明瞭な声で言いのける。
「…全然痛くない」
相棒の錠剤を貪る後ろ姿、咆哮し悶え苦しむ姿に怯んだ情けなくて脆弱なオレに言いのける。
「兼さんがキスしてくれたから、全然痛くない!」
照れ臭そうに笑って、抱きついてきて。切り傷を作ってボロボロの足で精一杯爪先立ちして、残った片腕をオレの首に絡めて顔を引き寄せて。
「兼さんが怖くなくなるまでキスしてあげる!」
勢い余って歯と歯がぶつかるような口づけをした。
「僕じゃ駄目かな。僕じゃ理由にならないかな」
唇は震えていたし、一言一句に力を入れないと言葉として発することすら出来ないけれど、それでも精一杯笑って。
「痛いとか怖いとか、全部僕が守るから、だから」
最後は涙で滲んで上手くないけど、言い切った。
「生きてよ、兼さん!」
自分より一回り小さい、擦り傷と切り傷が血で滲んで立つのもやっとの、もうどこが痛いのかすら分からないボロボロの体が、光の届かない沈黙した森の中で煌々と主張している。
自分がまだ生きていることを。
痛くても痛くても、痛くても。
それでも生きていると。
「オレは死んだ…」
最期の光景を思い出す。
「お前を一人にして、お前を守れずに、オレは死んだ」
異形の者に囲まれ、ぶつかり合う刃と刃の火花が散る戦場で飛んだ自分の首を、理解が追いつかずにただただ追う国広の大きく丸い青い電気石(トルマリン)。
そういえば最期に目と目は合ったのか。
「もう、痛みすらない。オレは生きちゃいない。もう、お前を」
守れない、と口にした途端下腹部を撫でられた。
場違いな動作だったが、国広は愛しそうに触れて撫でて、微笑んだ。
「生きてるよ」
ほらと膨らんだ熱を包むように手が添う。
「ちゃんと、生きたがってる。兼さんだって」
自分の舌で転がして味わってしゃぶって、愛を刻んだ肉に熱が宿った事に嬉しそうに、幸福そうに。
「生きよう、兼さん。まだ僕ら死んじゃいないんだから。また…」
膝をつき、下腹部の熱に?を寄せて脚を抱く国広が悦ぶように囁く。
「僕を抱いて」
無くなった命も、感覚も、本能も。
全部、お前が守って、呼び覚ましてくれるんだな。
不思議なほど忘れていた。抜け落ちていた。オレはどうして死に方ばかり考えていたのか。

「……抱くよ。でもな」
「うん」
「瞬き一回でも離れんじゃねえぞ」
脚に縋り付くように頭をつけた国広の頭を撫でると、素直にうんと頷いた。
審神者が気まぐれで点滅器ひとつ押せば命を落とすこの本丸で。
こんなに力強い命がオレの隣で輝いていた事に気づけなかったなんて馬鹿だと思う。

背中と太ももに手をかけて横向きに抱きかかえると国広はヘヘッとはにかんでオレの胸に匂いを移す猫のように額を押し付けた。
灯りひとつない夜の森は足元すらろくに見えなくて。
恐る恐る足を運んでいたら不意に胸元から怖い?と尋ねられた。
「……少し」
抱えた体を落とさないようにぎゅっと引き寄せると、応えるように国広の右腕もオレの着物の襟をぎゅっと掴む。
「ほんとだ、暗いね」
本来なら不可解な言葉に引き寄せられてその顔を見る。
大きく丸い青い電気石。
今はもう無い。
それでも深い洞窟の更に奥底にある暗闇は怖くなんかなくて。
こんなに怖くない闇があるなんて知らなかったオレは涙が止まらなくて。
ボロボロ、ボロボロ溢れる雫がそのまま落ちた国広の?は一緒に泣いているようだったけれど。
「兼さん、怖くないよ」
大丈夫だから、と微笑む国広に早く口付けたかった。

暗闇の中、今突き進んでいるこの道が正しいかなんてオレたちにはもう分かりはしないけれど。
きっともう、痛くもなくて、怖くもない。

オレたちは死に方じゃなく、生き方を選べたのだから。

【了】


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