あたしたちは並んで歩道を歩く。
時々肩が触れたり、手の甲が当たったりする度に、あたしは少し恥ずかしくなった。
そしてそのたびに朋也がこちらを向いて、軽く微笑む。
あたしも同じように笑い返すが、普段そんなことには縁がないためか、どうしてもぎこちなくなってしまう。
やっぱりあたしは、いつも通りこいつや陽平をからかっている自分の方が、性に合ってる気がする。
「はぁ・・・」
今日何度目だかわからないため息。
そしてガードレールの向こうからは、大量の排気ガスが流れてくる。
「どうした、杏?」
「別に、なんでもないわよ」
言って、あたしはほんの少しだけ朋也から距離を置いた。
朋也もそれを気にする様子もない。
「実はな」
「え?」
いきなり、朋也が話を切り出してきた。
「さっきから本当に行きたかった場所はな、俺んちなんだ」
「・・・・・・・・・」
「恥ずかしくてな、なかなか言い出せなかった」
立ち止まる。
胸の動悸が速まっていくのが、手に取るようにわかる。
「・・・・・・・・・」
ねえ、朋也。
それってつまり・・・。
・・・し、Cまでいっちゃうってことなんじゃないのっ!?
どうしよう。
どうしようどうしよう・・・。
心の中で、何度も呟く。
けど、今さら断るわけにもいかないし・・・
「・・・って、痛っ」
前にいた朋也が、急に立ち止まる。
そのおかげで、後ろにいたあたしは、朋也の背中にぶつかるという形になった。
「ちょっと朋也っ!なに急に止まってんのよっ!!」
あたしは額を撫でながら、声を荒げる。
「なにって、俺ん家着いたから」
「え?」
目線を上げると、そこには朋也の家。
「・・・・・・・・・」
目をこすり、もう一度見てみる。
「ええーーーーーーーっっ!」
それは、まぎれもなく朋也の家。
「・・・今度はどうした」
あきれ顔で訊いてくる朋也。
「はぁ・・・もうなんでもいいわよ」
今までのそれよりも、深い深いため息。
もはや、匙を投げるしかなかった。