太陽が少し沈みかけてきた時間に、ようやく朋也は起きた。

「ふぁ、すげえ寝たな」

だるそうな声とあくび。

そしてそのまま、朋也はこった首を回す。

「なあ、杏。今何時だ?」

涙を浮かべたままの顔で、あたしに訊いてきた。

「ええと、5時5分前」

「・・・・・・マジかよ」

朋也は顔を歪ませて、あたしの時計に覗き込んできた。

「ぐは・・・本当に5時だ・・・」

朋也はぐったりとうなだれる。

「・・・ところでおまえは、ずっと起きてたのか?」

顔を上げ、朋也はあたしに訊いてきた。

「そうよ、まったく女の子をがいるのに、寝るなんて、男として失格よねぇ」

「わりい」

やけに素直に今日は謝ってくる、朋也。

あたしはそっと、てのひらを朋也のおでこに当てる。

「おまえさ、なにやってんの?」

「んー、別に熱はないわねぇ」

「当たり前だあっ!」

まるで、ちゃぶ台でもひっくり返すような勢いで、朋也はあたしの手を振り払った。

「冗談よ」

「冗談でもな、第三者が今の光景を見てたら、俺がすげえ変な奴に見えるだろうが」

(いつも変な奴だとは思うけど)

それを言うと、また話がこじれそうなので、その言葉は引き出しにしまっておくことにする。

そんなあたしを尻目に、朋也は立ち上がり、大きく伸びをしていた。

「さてと、そろそろ公園からでるか」

朋也があたしの方を見て言った。

あたしは曖昧に頷き、立ち上り、お尻をさする。

ずっと座っていたためか、痛い。

「そうだ杏、夕飯一緒に食えるか?」

「なによ、いきなり」

「いや、まーその、あれだろ、な?」

「よくわからないけど、まあいいわ」

そこで、足下にいるボタンに気づく。

「って、ちょっと待ってよ朋也っ。この子はどうするのよ、お店に入れないでしょ!?」

「ああ、だから俺んちで食おうぜ」

「え・・・朋也のお家?」

「ああ」

ちょっと待ってよ・・・これって、さっきの妄想とそっくりじゃないっ!

『いや、まーその、あれだろ、な?』という言葉が曖昧だったのも、もしかして○○○なことや、×××なことを
するから察しろって、意味だったんじゃっ!

「・・・・・・っ」

「・・・杏、なに悶えているんだ?」

「悶えてないわよっ!」

動揺を隠せないあたしは、ついつい声を荒げてしまう。

「まあどうでもいいけどよ、早く行こうぜ」

朋也が歩みを始める。

一方あたしは、足を動かせないでいた。

「ぷひ?」

ボタンが、心配そうに見つめている。

「杏、どうしたんだよ、早く行こうぜ」

少し離れたところで、朋也が呼んでいる。

「う、うん。今行く」

「・・・・・・・・・ふう」

深く深呼吸。

あたしは意を決して、歩きだした。





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