「まあ、俺が悪かったような気がしないでもない」

「・・・全然反省してないわねぇ」

辞書を力強く握りしめる。

「わかったわかった、俺が悪かった。どうだ、これでいいだろ?」

(・・・・・・やっぱり、投げつけてやろうかしら)

ぐっ、と投げる体勢を取った瞬間。

ぐるるるるーーーっ。

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「ぷひ」

腹が鳴った。

「・・・・・・・・・」

「俺じゃないぞ」

「ぷひー・・・」

ボタンも違うと主張している。

それからふたりは、顔をこちらに向けた。

「・・・・・・あたしだって、いいたいの?」

「俺も違う、ボタンも違うときたら、おまえしかいないだろ」

「・・・・・・・・・っ」

顔から火がでそうになる。

「・・・・・・とにかくっ、何か、ご飯買うわよっ!」

苦し紛れに言って、あたしは逃げるように先頭を切った。



公園の片隅にあるベンチで、コンビニのおにぎりを食べるあたしたち。

「はあ・・・・・・」

「なにため息ついてんだ?」

「なにって、わからないの?」

わざとらしくあたしは、おにぎりを朋也にちらつかせる。

「わりい、まったくわかんねえ」

「・・・相変わらず鈍いのねぇ」

呆れてまたため息。

それからあたしは最後の一口を口に詰め込み、言った。

「・・・なんでせっかくの休日のデートなのに、恋人同士の食事がコンビニのおにぎりなのよ」

「だって仕方ねえだろ、ボタンは店に入れないんだし」

「でも他にもっとやりようがあるでしょっ!」

「たとえば?」

「・・・えっと、それは・・・」




・・・・・・・・・。

・・・・・・。

・・・。

朋也が家にあたしを連れ込む。

「えっと、いいの?」

「ああ、今日は親父もいねえからな」

「なら・・・お邪魔します」

靴を脱ぎ、敷地をまたぐ。

「早速で悪いんだが、杏。おまえのご自慢の手料理が食いたい」

「あんまり期待しないでよ」

あたしは少し照れ気味に答える。

そしてそのまま台所へ入り、お店で買った材料をテーブルの上に広げる。





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