ビバ! 人魚 - プレゼント

【1.バースデー】

 その日は月曜日で、それから私の誕生日で、私はお父さんとお母さんが仕事から帰ってくるのを、楽しみに待ってたの。

 二人が帰ってきて、私は「おかえりなさい」を言いながら、玄関のドアを開けたんだけど。

 そしたら、二人の後ろに、知らない男の子がついてきてた。

 4歳か5歳くらいかなぁ? ちょっと下を向いて、なんだか怖がってるみたい。

「智(とも)、8歳のお誕生日、おめでとう」

 お父さんはそう言って私の頭をなでた。

「その子……は、だれ?」

「この子は海人(かいと)、まあ紹介は後でするから」

 そんなことを言われて、気になってしょうがない私を置いて、お父さんとお母さんはパーティーの準備を始めちゃって……。

 なんだかいやな予感。そして大抵、こういう予感は当たるって決まってる。

 パーティーが始まって、ローソクを吹き消して、私はプレゼントの包み(たぶん中身はCD)をもらった。

 それからお父さんは、なんかお母さんの方をちらっと見て、お母さんはうなずいて。

「智、実は、今年はもう一つプレゼントがあってね」

 そう言って、お父さんは、さっきから私の正面に座っていた海人って子を手まねきしたの。

「プレゼントその2。今日から智の弟になる、海人君だ」

 私がぼーっとしていると、

「今まで、智にはひとりで留守番させたり、寂しい思いをさせたな。けれど、今日からはひとりじゃないぞ」

 なんてことを言って、私とその海人の頭をなでた。

「仲良くするんだぞ」

 やっと、何が起こったかが分かってきて、あ、もうダメだ、と思った。

 海人は親戚の子で、両親を亡くして……みたいな話をお父さんはしてたけど、私はそれどころじゃなかった。

 だって、だって、分かっちゃったんだもの。

 お父さんとお母さんは、私ひとりじゃ物足りなくなったんだって。

 たぶん、私、悲しい顔してたんだと思う。

「どうしたの、智。嬉しくないの?」

 って、お母さんが聞いてきた。

「海人君、いい子だし、大人しいし、すぐ仲良くなれるわよ、きっと」

 私は、わんぱくだし、いい子じゃなかったから。

 あ、負けたんだ、って、そう思ったの。

 私は何も言わずに部屋に戻って、ベッドの中で声をあげないで泣いた。

(c)Kanata Tohno

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