乳白色の液体






もしかして、これはとてもおいしい状況なのではないのだろうか?





好きな子と、密室で二人きり。
しかも全裸。





……。





いや、待て、待てジャスティス!俺はそういうつもりでマモル君をお風呂に誘ったわけではなく!
た、確かに男としてこれはおいしすぎる状況かもしれない、しかし、しかしだな、マモル君をそうい
う目で見るだなんてだな、いや、考えた事が無いわけではないけど、だけどマモル君はまだ小学生で
そういう性の対象で見るべき存在ではなくてだな、けど、確かに俺はマモル君が好きだから、成人男
性としてこういうシチュエーションにおいては正しい反応なのかもしれない、ってそういう問題じゃ
なくて!

「……ャスティスさん」

あああああ、もう去ってくれ煩悩!こんなことを考える思考なんてどっかに行ってしまえばいい!
そうだ、平常心、平常心……心頭滅却すれば火もまた涼しって言うじゃないか!そうさ、集中すれば
できないことなんて何もない!落ち着け、落ち着くんだ俺!羊が一匹、羊が二匹……ってこれは何か
違うな……。

「……あの、ジャスティスさん?」

マモル君の声に、俺の心臓がドキリと跳ね上がる。
ま、まさか俺、口に出してた?
「ん、どうかした?」
精一杯平常心を装ってマモル君にたずねる。
「ボク、頭がぼーっとしてきてしまいました……」
「のぼせてきちゃったのかな?先に上がってていいよ、俺はもう少し入ってるから」
「……はい」
……ほっ、どうやら口に出してたわけじゃなさそうだ。
赤くなったマモル君の顔を見つつ、俺は胸をなでおろし、同時にのぼせぎみのマモル君のことがちょっと
心配になる。
「脱衣所に俺の服を何枚か出しておいたから、マモル君の服が乾くまで好きな物を着ててくれるかな?」
「はい、わかりました」
「あと、冷蔵庫に牛乳が冷えてるからね、体が冷えないようにちゃんとバスタオルで拭くんだよー」
浴槽を抜け出して、脱衣所に向かうマモル君に声をかける。
脱衣所から元気な返事が聞こえたから、たぶん大丈夫だろう。
俺は、というとずるずると浴槽を這うように、顔の半分ほどまで浴槽につかる。
……もうちょっと一緒に入ってたらやばかったかもしれない……。
顔が赤く染まったマモル君の顔が頭をよぎる。
とりあえず、この浴槽のお湯が乳白色で、透けて見えなくって本当に良かった。
俺は小さく、ミルク風呂の素を選んだ数十分前の俺に賞賛を送った。
さて、これからどうしよう……。
マモル君にあんまり見られないうちに上がるしかないかな……。
そっと浴槽から体を上げようとした時、パタパタという足音が聞こえてきて思わずもう一度浴槽に体
を沈めてしまう。
その少し後、小さな手によって風呂場と脱衣所をつなぐ扉が開かれた。
「ジャスティスさん、ジャスティスさんはお風呂上りのお飲み物はアイスコーヒーでいいですか?」
「う、うん、そうだね、アイスコーヒーがいいかな」
「はい!それじゃあ、ボクが作りますね!」
「……ありがと」
小さな手が再び扉を閉め、やがて足音が遠ざかっていく。
俺はまるで懺悔をするかのごとく、頭を垂れる。
……いや、本当に懺悔しているのかもしれない。



ごめんなさい神様、俺は小さな男の子に欲情する変態犯罪者です。



……けれど、素肌にだぶだぶのYシャツは反則だと思います。



悶々とした空気の中、天井から雫が落ちる音だけが響き渡る。
『俺にそんなこと言われてもしらねーよ』という、MZDさんの声がどこからか聞こえたような気がした。


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