大人と子供の境界線



「うわ、なんだこの人の数……すげぇなぁ」
と、感想をこぼしたのは最上さん。
ボクはあまりの人の多さと会場の広さに声も出なくなっていました。


一週間後、最上さんとガイさんに連れられてジャスティスさんのライブ会場に来ていました。
会場は、コンクリートの広場に大きなステージが設置されていて、客席の後方には大きな大きなクレーン
がそびえ立っていました。
ボクたちが会場に着いたときにはすでに会場内はたくさんの人であふれており、ボクたちは人を掻き分けなが
ら会場の中ほどまで進みました。
会場の真ん中の辺りは特に人でいっぱいで、ボクの身長では周りの人が壁になってしまって全然ステージが
見えません……。
どうしようと考えていると、突然体が宙に浮きました。
「う、うわぁ!?」
「よっと、これでマモルちゃんも見えんだろ」
「OH!グッドアイデアデスネ、最上サーン!」
気がつくと、ボクの体は最上さんに抱きかかえられるようになっていました。
ちょ、ちょっと恥ずかしいですけど……。
ガイさんがボクのカバンを持ち、ボクの体は最上さんの腕にがっちりと支えられていました。
あらためて会場の中を見回すと、どんどんと人が増えていく様子が見えました。
この会場の人、全員がジャスティスさんのライブを見に来ているんですね……。
すごいなぁ、と思ってひとつ感嘆の息を漏らすと最上さんがボクの頭をくしゃくしゃとなでました。
「すげぇよな、ジャスティスは」
「はい……」
辺りを見回すと、雑誌を読んでいる人やジャスティスさんのことを話してる人、手作りのうちわを持って
いる人など色々な人がいます。
でも、そのほとんどは女の人で改めてジャスティスさんは女の人に好かれているんだなぁと思いました。


ちくり、ちくり。


あ、まただ……。
最近のボクは、少し変なのです。
前はジャスティスさんをテレビで見るだけでもドキドキしてしょうがなかったのに、最近はジャスティス
さんをテレビや雑誌で見ると胸の辺りが針でつつかれたように痛むのです。
「お、始まるみたいだぞ」
最上さんの言葉に顔を上げると、ステージの上に楽器を持った人がぞくぞくと現れてきました。
でも、ジャスティスさんの姿は見えません。
どこにいるのでしょう……?
「上だ!」
誰かの声が会場に響きました。
その声に驚いて上を見上げると……。
「俺のステージにようこそ!」
いつもの、黒いコートに身を包んだジャスティスさんがクレーンの上にいました。
周りから大歓声が上がります。
そのまま、演奏が始まりジャスティスさんはクレーンの上で歌を歌い始めました。
「あ……」
Looking for …。
流れ始めた歌は、ボクが初めてジャスティスさんの歌を聞いた時と同じ曲、Looking for でした。
ボクの頭に初めてジャスティスさんと会った時のことが思い浮かびます。
あの時も、ジャスティスさんはクレーンの上で歌を歌っていて、ボクはその姿をとてもかっこいいと思いま
した。
今日も、ジャスティスさんはクレーンの上で歌を歌っていて、ボクはその姿に胸を高鳴らせています。
でも、あの時と違うのは……。
『キャー、ジャスティスさーん!』
『かっこいいー!』
ジャスティスさんに投げかけられる黄色い声。
ちくり、とまた音を立てて胸が痛みました。
ボクは……。
その時、ジャスティスさんが宙を舞いました。
ワイヤーがはりめぐらせれているのでしょうか、ジャスティスさんはふわりとゆっくり宙を舞い、やがて
ステージの上に降り立ちました。
ジャスティスさんがにこりと笑いました。
「みんな、今日は俺のライブにきてくれてどうもありがとう!」
会場から黄色い声が沸きあがります。
「それじゃあ、次の曲は……」
ボクは、ステージの上にいるジャスティスさんをじっと見つめました。
ジャスティスさんの視線はサングラスにさえぎられてわかりません。
ボクの目には、ジャスティスさんが映っています。
皆の目にも、ジャスティスさんが映っています。
ジャスティスさんの目には誰が映っていますか?
ジャスティスさんの目に、ボクは……。
ボクはステージで歌うジャスティスさんを見ながら、抱きかかえてくれている最上さんの腕をぎゅっとつか
みました。
胸の痛みは……ジャスティスさんと会えたはずなのに、まだ治まりませんでした。



「このスタッフカードとやらがあれば控え室に入れるそうだ、ジャスティスに会いに行こうぜー」
ライブが終わった後、最上さんがあらかじめジャスティスさんに預けられていたスタッフカードを使って
ジャスティスさんに会いに行くことにしました。
ライブは大成功に終わり、アンコールを繰り返したおかげでライブが終わる頃にはあたりはだいぶ暗く
なってしまいました。
ジャスティスさんが歌う姿は、とてもかっこよくて自信に満ち溢れていました。
けれでも、ボクの胸の痛みはまだ治まりませんでした。
ボクは、この胸の痛みの正体に不確かではあるけれども、気がつき始めていました。
きっとこれは……。
舞台裏を歩いていると、前を歩いていた最上さんが急に足を止めました。
ボクは急に足を止められず、最上さんにぶつかってしまいました。
「……マモルちゃん、見ないほうがいい」
最上さんの顔が険しくゆがんでいます。
ボクは、不思議に思い最上さんの影から様子を伺いました。
そこに見えたのは、ジャスティスさん。
ジャスティスさんと、女の人がいっぱい。
ジャスティスさんは嬉しそうに笑っていました。


ちくちくちくちく。
針で胸をつつくような痛み、きっと心に穴があけられているのでしょう。
そしてその穴からは黒くて、どろりとしたものが流れ出しているのです。
ボクが気がついた、この胸の痛みの正体は……嫉妬。
嫉妬。独占欲。その他、ずっと心の中に閉まっていたどろりとした黒い感情が心にあけられた穴からあふ
れ出してきました。


ボクは、その場から走り出していました。



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