新しい世界



光り輝くステージ!
湧き上がる歓声!!
そして、注がれる視線!!!
「すばらしい、すばらしいな神よ!」
「そうか〜?」
「ああ、最初は何事かと思ったがすばらしいものだな、ポップンパーティというものは」
「そりゃあ俺様が手がける最高のステージだからな」
自分のことを神と名乗る男が、自慢げに胸をはる。
「それに、お前の才能を自分の世界だけに閉じ込めておくのはもったいなかったからな」
ふ……この俺の才能は神にも認められたということか。
ま、当然だけどね!
「かーみー!」
「おっと呼ばれちまったから行ってくるな、まぁせいぜい楽しんでいってくれや、ナルヒコ」
「もちろん、言われなくともそうさせてもらうさ」
自称神は苦笑いを浮かべながら、人ごみの中へと消えていった。
会場の熱気で乱れてしまった前髪を整えながら、あたりを見回す。
さまざまな人間が集まるこのポップンパーティ、すべての人間が俺に注目する最高のステージ
だったと思う。
俺の美しさを世界に広げ、このナルヒコの名を皆、心に刻み付けたことだろう。
……しかし、この会場内において一人だけ俺の姿を見ようともしない人間がいる。
いや、この俺を見ているのはわかる、けれどもその姿を確認しようとするとすかさず逃げる人間
がいる。
気にいらない。
俺の目は自然とその存在を追っていた。
あたりを見回すと、その男が食事をしている姿が目に入る。
しかし、俺の視線に気がつくと不自然に目をそらし、人ごみの中へと消えた。
……気にいらない。
この会場に浮いた雰囲気の、作業着を着て、青い髪を横に流した眼鏡の男。
だいたいその髪型、俺とかぶってるんだよっ!
俺はさっきまでその男がいた場所をじっとにらみつけた。



「ああ、あの人はツクバさんだね」
「ひっ?!」
俺が油断していたのか、いつの間にか後ろには青い帽子をかぶった男が立っていた。
「あの人はいい人だよね〜、僕もこの望遠鏡直してもらってさ、あ、僕はソラって言うんだけど」
自分のことをソラと名乗ったその男は、何がうれしいのか手に持った望遠鏡にほお擦りしながら
しゃべり続ける。
別にあんたのことなんか興味ないんだけど。
「でもあの人そんなに人見知りもしなさそうだしすっごいやさしい人だし誰かを避けるなんて
ありえないと思うんだけどね、君何かしたんじゃないの?」
「しゃべってもないのに何かできるかよ」
はき捨てるように、ソラに向かって言う。
この男に言ってもしょうがないことはわかっている、けどこの苦々しい思いをどこに吐き出していい
のか今の俺にはわからなかった。
ソラに背を向けて、通路へと向かって歩き出す。
「あれ、どこ行くの?」
「別にどこだって関係ないだろ」
「そっかーそうだよねー、それじゃあまた!」
ソラと名乗った男は何かに気がついたように手を叩くと、にこにこと笑いながら走りさっていった。
「……なんだったんだあいつは、調子が狂うな……」
髪をかきあげてため息をつくと、人の少ない通路へと向かった。
頭にあの作業着の男が浮かぶ。
「何かしただなんて……できるわけが」
『…めまし……と申し……』
ん?
頭の中に、何かの記憶がフラッシュバックを起こす。
「……何だ今の」
確かに、あの男の姿が頭をよぎったような気がする。
しかしよぎったのはその一瞬だけで、手を伸ばしてもその記憶をつかむことはできなかった。
「……くそっ」
壁をこぶしで軽く叩く。
何であんな地味なやつのことがこんなに気になってしかたないんだ!
ああ、むかむかする!
これもすべてあの男のせいだ!
騒がしいパーティ会場を離れ、静かな通路に出ると、同じく騒がしさに疲れた人影がぽつりぽつりと
休憩をとっている姿があった。
落ち着ける場所を探して通路を歩いていくと、あの男の姿があった。
作業着を着た男は通路にしゃがみこみながら何かわけのわからない機械をいじくっているようだ。
俺は物音を立てないようにそっと、あの男のもとへと近づいた。





「こんな大事なときに壊れちゃうなんて……まいったなー」
その作業着を着た、青い髪の地味な男は俺の接近に気がついた様子もなく、工具をいじくっている。
その姿を背後から見下ろしながら、俺は声を発した。
この距離なら逃げられることもない。
「ねぇ」
「はい?」
初めて俺に向けられたその顔をまじまじと見つめる。
四角い眼鏡に、青い瞳。
その瞳がどんどんと困惑の色にそまっていく様子が手に取るように伺えた。
「え、あ、どうもこんにちは……」
引きつったような顔で笑うその顔に、忘れていたはずの記憶が思い出された。


『初めまして、ツクバと申します』


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