自覚:決別



俺の世界は兄貴だった。

−自覚:決別−

物心ついたときから俺の一番近くにいたのは兄貴だった。
忙しい両親の代わりに小さかった俺の面倒を見てくれていた。
俺の存在は兄貴なしでは考えられなくて、俺の世界は兄貴一色だった。
俺は、兄貴のことが「大好き」だった。

その『好き』のベクトルが違ってしまったのはいつごろからだろう?
兄貴はいつでも俺のそばにいてくれて、俺のわがままをいつでも聞いてくれた。
だから、俺は兄貴が俺だけのものなんだと錯覚してしまったのかもしれない。
気づけば俺の心は兄貴でいっぱいだった。

俺が年を重ねて、いろんな奴とつるむようになっても俺の心の大半は兄貴で占められてた。
それだけ、兄貴の存在は俺にとってでかかった。
俺は、兄貴が『好き』だった。

けれど、全ては俺の思い込みだった。
俺の『好き』と兄貴の「好き」は似ているようで違っていた。
相変わらず俺の心は兄貴で一杯だったけど、兄貴の目は他の奴に向けられていた。
俺の心は突然からっぽになった。

考えて、考えて、俺は兄貴への思いを打ち消そうとした。
俺の好きな兄貴が幸せになれるならそれでいいと思った。
そう考えたら少しは楽になれた。
けれどやっぱり俺の心はからっぽだった。

ある日、ポップンパーティで変な奴を見つけた。
そいつはどこかうつろな目である人物を見ていた。
ときたま眉をひそめたりしながらそれでもまっすぐに見つめてた。
そいつが、ちょっと前の俺の姿とダブって見えた。
だから、声をかけた。

変な奴だけど気はあった。
俺のからっぽな心はほんのちょっとだけ埋まったような気がした。

奴と会うたびにからっぽの心は少しずつ埋まっていった。
そして、おそらく奴の心も少しずつだけど埋まっているように見えた。
もう、俺の心はからっぽじゃない。


ある日、俺がリビングに降りていくと兄貴がソファーでくつろいでいた。
「なー、兄貴〜」
俺はくつろいでる兄貴に後ろからのしかかった。
「うわっ?!いきなり後ろからのしかかるなよ、驚くだろ……」
「兄貴〜、お腹すいた〜」
「……しょうがない奴だなぁ、何か作ってやるよ」
兄貴がやれやれとでもいいたそうな顔で重い腰をあげた。
相変わらず優しい兄貴。
「よっしゃ、兄貴大好き!」
……『大好き』だったよ、兄貴。
俺は心の中でそっとつぶやいた。



『大好き』だったよ、兄貴。
そしてこれからも「大好き」だよ、兄貴。
やっと、過去と決別できたような気がした。


……さて、これからは残りの心を満たしていきたいと思う。
きっと、今度こそできる気がするんだ。
なにでかって?
聞かなくてもわかるだろ!


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