イチゴミルク



ある晴れた休日、ジャスティスとマモルはジャスティスの部屋にいた。
リビングにあるソファーに二人でよりそって座っている。
二人で本を読んでいるとジャスティスが何かを思い出したように言った。
「あ、そうだ、マモルくん何か欲しいものとかない?」
マモルが読んでいた本から顔を上げて、首をかしげながらジャスティスの方を見る。
「欲しいもの……ですか?」
「うん、ちょっと臨時収入があってね」
ぴらり、とジャスティスはポケットから茶封筒を取り出した。
「今度一緒に買い物行こうよ」
「でも、何か買ってもらうのなんて悪いですよ」
「だって、マモルくんにはいつもお世話になってるし……ね?」
ジャスティスがマモルに向かってにっこりと笑いかける。
マモルはそんなジャスティスを見て、ちょっぴり顔を赤くする。
「え、あ、でも……」
「ふふ、そんなに難しく考えなくてもいいんだよ」
ジャスティスがマモルの頭をなでる。
「俺がマモルくんに何かしてあげたいだけだからさ、いつものお礼だよ」
「そんな、ボクの方こそいつもジャスティスさんに迷惑かけてばかりで……」
「こらこら、そんな泣きそうな顔しないの、何でもいいんだよお菓子でも本でも」
ふと、ジャスティスが何かを思い出したような顔をする。
「あ、そうだこの前差し入れにケーキもらったんだった、一緒に食べよっか」
「え、あ、はい、いただきます!」
「じゃあコーヒーでも入れようかな」
ジャスティスは立ち上がってキッチンのほうへ足を向けた。
「マモルくんはホットミルクでいい?」
キッチンから声がする。
……返事がない。
「マモルくーん?」
「あ、はい、ごめんなさい!」
マモルはさっきのジャスティスの言葉について考えていた。


……欲しいもの、かぁ。
う〜ん……何でしょう?
本?お菓子?う〜ん……
そもそも、ボクが何かもらっちゃってもいいのでしょうか?
ボク、ジャスティスさんに何もできてないのに……
むしろ、ボクがジャスティスさんにお礼をしなきゃいけないのに。
ボクが子供だからジャスティスさんに迷惑かけてばかりなんですよね……
お家に早く帰らなきゃいけないし、ジャスティスさんがせっかく誘ってくれても学校があったりし
ますし……
早く大人になりたいなぁ。
早くジャスティスさんみたいなかっこいい大人になりたい……。


マモルが座っているソファーからはキッチンのジャスティスがケーキの準備をしているのが見える。
コーヒーのいい香りがあたりに漂ってくる。


……はぁ、ジャスティスさんはかっこいいなぁ……。
背が高くて、目も鋭くて、声が綺麗で……。
それに比べて、ボクはちっちゃいし、子供ですし……。
ジャスティスさんは女の人にもてるんでしょうねぇ……。
ジャスティスさんはボクの何処が好きなんでしょう?
……そういえば、ボク、ジャスティスさんのことほとんど知らない?!
え、えーと、えーとジャスティスさんはミュージシャンで、ボクより大人で……。
……ジャスティスさんの好きな物とかほとんどわからないや……。
なんだろう?コーヒーは好きみたいですけど……。
あ、あとは黒い服!タンスの中見せてもらったら黒い服ばっかりでした!
あとは、あとは、えーと……はぁ。
……ジャスティスさんはどんな人が好きなんだろう……。
ジャスティスさんのこと、もっと知りたいなぁ……。
ジャスティスさんの好きなこと、嫌いなこと、好きな物、嫌いな物……。
そして、ジャスティスさんにもっともっと好きになってもらえるようにがんばらなきゃ!
うん、がんばろう!
ボク、もっとジャスティスさんのことを知りたい!


(人肌ってどれぐらいかな……)
ジャスティスがコンロでミルクを温めはじめた。
「ジャスティスさん!」
リビングからマモルの声がする。
「んー、何?欲しいもの決まった?」





「はい!ボク、ジャスティスさんが欲しいです!!」





ぼたぼたぼた。
ジャスティスの温めていたミルクがイチゴミルクへと変化した。


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