01 :: クレスタ
優しい風が吹く昼時、少女が子供達と楽しそうに遊ぶ声が、クレスタに響いた。
クレスタの町の一角の、小さな孤児院。物語は、ここから始まった。

「おーい、〜!」

呼ばれて振り返るその少女は、呼び主の顔を確認すると、ニッっと微笑んで返した。

「カイル!…どうしたの?」
「へっへっへ〜…驚かないでよ?」
「…?何が?」

疑問符を浮かべるを横目に、カイルは建物の裏のほうへ手招きの素振りを見せた。

「ロニ!出てきていいよ!」
「…え…ロニ!?」
「そうだよ、ホラ!」

カイルが指差す方向から出てきた人物
―――
少し日焼けしたような元気な色の肌に、美しい銀髪。
少女はその姿を見た瞬間、駆け出していた。嬉しそうにロニの懐に飛び込む。

「ぅわっとっと!」
「なんで前もって知らせなかったの?言ってくれたら美味しいご馳走をルーティさんと用意したのに!」
「すまねえな、。ちょっと驚かせてみたくてよ」

の頭を優しく撫でながら、ロニはおどけてウィンクをした。
そして、"それに、仕事の途中で ちぃっと寄ってみただけだしな"と、苦笑いしながら付け足した。

◇◇◇

「まったく!音信不通だと思ったら、いきなり帰ってきたりして」
「ゴメンってば、ルーティさん」

ルーティは少し怒ったような表情を見せながらも、
ロニが帰って来たことをとても喜んでいるようだった。
その後、カイル、ルーティ、ロニ、の4人で食事を楽しみ、
その後ルーティは"隣の家の奥さんに用があるから、留守番よろしくね"と言って家を出た。

◇◇◇

ルーティが家を出てからも、3人の会話は続いた。
久々に帰って来たロニは話したいことが山ほどあるらしく、
面白い話をたくさん2人に持ちかけた。

「アハハ!」
「それでよぉ、その上司がな…
―――ん?」

ロニは腕の上に落ちてきた"冷たい何か"を見た。
服の上に滲んで、少しずつ消えていく...。

「…水……?」

ロニは不思議そうに天上を見つめた。
あちこち痛み込んだ屋根の木が、湿って黒ずんでいた。

「ハハ、雨漏りか」

ロニは懐かしそうに家の至る所を見つめると、
"相変わらずボロっちぃな"と笑いながら言った。

「相変わらずじゃないよ。雨漏りする所は増えたし、この前なんか床が抜けたし…」
「落ちたのはカイルだったしね」

が笑いながら付け足した。

「は〜ぁ…あの噂が本当なら、この家もチョチョイっと直せるのになぁ…」

ロニが深くため息をつきながら言った。
すかさずが聞き返した。

「あの噂?」
「…この近くに、ラグナ遺跡ってあるだろ? あそこの最上部で、でっかいレンズが発見されたんだと。」
「へぇ…」
「神団の方にも情報が入っててよ。ダリルシェイドからお偉いサンが来てんだよ。俺はその護衛役...」
「でもさ、それと孤児院と何の関係があるの?」

カイルがまた不思議そうに訊ねると、ロニは"フフフ..."と不気味な笑いを洩らした。

「へへ...聞いて驚け…。そのレンズの価値は
―――300万ガルドを軽く上回るんだと!」
「「さ、、、300万ガルド!?」」

カイルとは、驚いて椅子から立ち上がった。
300万ガルドといえば...何が買えるだろう。そんな考えが2人の頭を巡り巡っていた。

「…とにかく、それさえあれば、この孤児院も立て直せる。ルーティさんもラク出来るってワケだ。」
「……」
「…カイル?」

カイルは足元を見たまま俯いてしまった。
ロニとは心配そうにカイルの顔を覗き込む。

「よし、行こう!」
「…え!?」
「…おい、行くって...まさか、遺跡に行くつもりじゃないだろうな?」

ロニは呆れたような表情をしてカイルを見た。

「うん。行こう、2人とも!」
「…あのなぁ。これはあくまで噂なんだよ。ウ・ワ・サ!」
「でも...」
「それに、万が一 噂が本当だったとしても、アタモニ神団に目を付けられちゃうよ…」

は心配そうに言った。

「で...でも、ロニは探そうと思ってるんでしょ?だから、護衛役を引き受けたんだよね」
「うっ」

カイルが自信ありげに言うと、ロニは短く声上げた。

「…やれやれ。口は災いの元ってのはホントだな…。わかったよ、カイル。連れてってやるよ」
「本当!?そうこなくっちゃ!も来るよね!?」
「う…うん、まあ…行きたいけど…」

カイルは嬉々とした表情で両手の拳を握り締めながら言った。

「ただし!」
「?」
「ルーティさんの許可が出たら、だ」

ロニは悪戯っぽくウィンクをして見せた。

「もちろん!それじゃ、今日の夜 早速母さんに話そう!!」

◇◇◇


―――ふぅん…それで旅に出たいって言うわけね……」

ルーティの怪訝そうな声が響いた。
それに構わずカイルは目を輝かせたままルーティを見つめる。

「ねえ、いいでしょ母さん!この孤児院もキレイにできるし、母さんだって楽できるんだよ!」
「…だめよ」

ルーティはきっぱりと言い放った。

「なんで!?俺なら大丈夫だよ、父さんの血が流れてるんだから!」
「それが一番心配なのよ…」

ルーティはため息をつきながら言った。

「とにかく、アンタには冒険なんてまだ早いの!…この話は終了!!わかったらさっさと寝る!」
「そんな!母さ…!!」

カイルが何か言おうとしたが、ルーティはたたんでいた洗濯物を乱暴につかむと
さっさと2階へ上がっていってしまった。

「…というわけだ。残念だがレンズは俺に任せてくれ。な?」
「そうだよカイル。ルーティさんの気持ち、わかるでしょ…」
「……俺は、あきらめない!絶対、レンズを取って来る!」





02.ラグナ遺跡

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