優しい風が吹く昼時、少女が子供達と楽しそうに遊ぶ声が、クレスタに響いた。
クレスタの町の一角の、小さな孤児院。物語は、ここから始まった。
「おーい、〜!」
呼ばれて振り返るその少女は、呼び主の顔を確認すると、ニッっと微笑んで返した。
「カイル!…どうしたの?」
「へっへっへ〜…驚かないでよ?」
「…?何が?」
疑問符を浮かべるを横目に、カイルは建物の裏のほうへ手招きの素振りを見せた。
「ロニ!出てきていいよ!」
「…え…ロニ!?」
「そうだよ、ホラ!」
カイルが指差す方向から出てきた人物―――
少し日焼けしたような元気な色の肌に、美しい銀髪。
少女はその姿を見た瞬間、駆け出していた。嬉しそうにロニの懐に飛び込む。
「ぅわっとっと!」
「なんで前もって知らせなかったの?言ってくれたら美味しいご馳走をルーティさんと用意したのに!」
「すまねえな、。ちょっと驚かせてみたくてよ」
の頭を優しく撫でながら、ロニはおどけてウィンクをした。
そして、"それに、仕事の途中で
ちぃっと寄ってみただけだしな"と、苦笑いしながら付け足した。
◇◇◇
「まったく!音信不通だと思ったら、いきなり帰ってきたりして」
「ゴメンってば、ルーティさん」
ルーティは少し怒ったような表情を見せながらも、
ロニが帰って来たことをとても喜んでいるようだった。
その後、カイル、ルーティ、ロニ、の4人で食事を楽しみ、
その後ルーティは"隣の家の奥さんに用があるから、留守番よろしくね"と言って家を出た。
◇◇◇
ルーティが家を出てからも、3人の会話は続いた。
久々に帰って来たロニは話したいことが山ほどあるらしく、
面白い話をたくさん2人に持ちかけた。
「アハハ!」
「それでよぉ、その上司がな…―――ん?」
ロニは腕の上に落ちてきた"冷たい何か"を見た。
服の上に滲んで、少しずつ消えていく...。
「…水……?」
ロニは不思議そうに天上を見つめた。
あちこち痛み込んだ屋根の木が、湿って黒ずんでいた。
「ハハ、雨漏りか」
ロニは懐かしそうに家の至る所を見つめると、
"相変わらずボロっちぃな"と笑いながら言った。
「相変わらずじゃないよ。雨漏りする所は増えたし、この前なんか床が抜けたし…」
「落ちたのはカイルだったしね」
が笑いながら付け足した。
「は〜ぁ…あの噂が本当なら、この家もチョチョイっと直せるのになぁ…」
ロニが深くため息をつきながら言った。
すかさずが聞き返した。
「あの噂?」
「…この近くに、ラグナ遺跡ってあるだろ?
あそこの最上部で、でっかいレンズが発見されたんだと。」
「へぇ…」
「神団の方にも情報が入っててよ。ダリルシェイドからお偉いサンが来てんだよ。俺はその護衛役...」
「でもさ、それと孤児院と何の関係があるの?」
カイルがまた不思議そうに訊ねると、ロニは"フフフ..."と不気味な笑いを洩らした。
「へへ...聞いて驚け…。そのレンズの価値は―――300万ガルドを軽く上回るんだと!」
「「さ、、、300万ガルド!?」」
カイルとは、驚いて椅子から立ち上がった。
300万ガルドといえば...何が買えるだろう。そんな考えが2人の頭を巡り巡っていた。
「…とにかく、それさえあれば、この孤児院も立て直せる。ルーティさんもラク出来るってワケだ。」
「……」
「…カイル?」
カイルは足元を見たまま俯いてしまった。
ロニとは心配そうにカイルの顔を覗き込む。
「よし、行こう!」
「…え!?」
「…おい、行くって...まさか、遺跡に行くつもりじゃないだろうな?」
ロニは呆れたような表情をしてカイルを見た。
「うん。行こう、2人とも!」
「…あのなぁ。これはあくまで噂なんだよ。ウ・ワ・サ!」
「でも...」
「それに、万が一 噂が本当だったとしても、アタモニ神団に目を付けられちゃうよ…」
は心配そうに言った。
「で...でも、ロニは探そうと思ってるんでしょ?だから、護衛役を引き受けたんだよね」
「うっ」
カイルが自信ありげに言うと、ロニは短く声上げた。
「…やれやれ。口は災いの元ってのはホントだな…。わかったよ、カイル。連れてってやるよ」
「本当!?そうこなくっちゃ!も来るよね!?」
「う…うん、まあ…行きたいけど…」
カイルは嬉々とした表情で両手の拳を握り締めながら言った。
「ただし!」
「?」
「ルーティさんの許可が出たら、だ」
ロニは悪戯っぽくウィンクをして見せた。
「もちろん!それじゃ、今日の夜 早速母さんに話そう!!」
◇◇◇
「―――ふぅん…それで旅に出たいって言うわけね……」
ルーティの怪訝そうな声が響いた。
それに構わずカイルは目を輝かせたままルーティを見つめる。
「ねえ、いいでしょ母さん!この孤児院もキレイにできるし、母さんだって楽できるんだよ!」
「…だめよ」
ルーティはきっぱりと言い放った。
「なんで!?俺なら大丈夫だよ、父さんの血が流れてるんだから!」
「それが一番心配なのよ…」
ルーティはため息をつきながら言った。
「とにかく、アンタには冒険なんてまだ早いの!…この話は終了!!わかったらさっさと寝る!」
「そんな!母さ…!!」
カイルが何か言おうとしたが、ルーティはたたんでいた洗濯物を乱暴につかむと
さっさと2階へ上がっていってしまった。
「…というわけだ。残念だがレンズは俺に任せてくれ。な?」
「そうだよカイル。ルーティさんの気持ち、わかるでしょ…」
「……俺は、あきらめない!絶対、レンズを取って来る!」
♥02.ラグナ遺跡
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