執行部の仕事が終わって、ようやく帰れるぜ。
今度から竜鳴祭の用意とかもしなくちゃいけねーんだよなー。
めんどくせー。
姫が書いた脚本の劇、どうなるか楽しみにしとくか。
「おーい、カニっちやんか」
「なんだ、マナかよ」
「なんや、今日は一人かいな」
「そーなんだよ、スバルは部活だし、フカヒレは作曲するからって先に帰っちまったしさー」
「そういや、今度の竜鳴祭で演奏するんやってな。 対馬はどうしたん?」
「レオはレオで、あのA組のツインテールとイチャイチャしてやがるしよー。
 ケッ、腹立つったらありゃしねぇ」
「ふーん。 ほな、ウチと帰ろや。 もう結構遅いし、どっかで食べていかへん?」
「いいぜー。 確か今日はオアシス休みなんだよな。 あ、そんじゃ豆花のとこにいかね?」
「おっしゃ、そうしよ」
豆花のやつ、屋台を任されたんだよな。 すげーなぁ。
ま、確かに豆花の作る料理ってうめーもんな。
ボク達はいつものように賢い話(注:カニがそう思ってるだけ)をしながら屋台へと向かった。
「いらしゃいネー。 あいや、カニちとマナカ」
「うーっす。 ボク、カニラーメンね」
「ウチ、タコヤキラーメンお願いするわ」
「タコヤキラーメンなんてあんのかよ!?」
「もちろんネ。 中国4000年、なめたらいけないヨ」
あんのか…本当に大丈夫か、この店?
しばらくしてから豆花がラーメンをボク達の前に出してくれた。
「さ、どんどん召し上がるネ」
「いっただっきマルチーズ!」
「ほな、いただきまーす!」


ボク達が食べてる様子を、豆花はずっと見ていた。
やっぱ気になるのかな?
「味はどうネ?」
「うめーよ! すげぇうめー!」
「さっすが豆花やな!」
豆花はすっごく嬉しそうに笑ってくれた。
どうしよ、作るコツとか教えてもらおっかなー。
「ところで二人とも、この夏はどうだたカ?」
「ふふふ…」
あん? マナがなんか笑ってやがるぞ?
「部活三昧のこの浦賀真名、そんな出会いなんぞあらへんわ! うははははは! はは……」
「マナ…涙ぐんでねぇか?」
「な、泣いてへん! 泣いてへんからな!」
いや、泣いてるって。
ん? なんかさっきのセリフ、どっかで聞いたことがあるような…
「そ、そう言う豆花はどうやねん!」
すると、豆花はえへんと胸をはった。
「私、こないだの夏休みに故郷に帰た時、恋人できたネ」
「くそーッ! ウチらは負け組みか…」
「ボクも入ってんのかよ!」
「そうネ。 カニちは入れなくてもいいネ」
「へ? なんで? カニっちに彼氏なんておったか?」
「いや、いねぇけど?」
「あいや、気づいてなかたカ」
「え? え?」
「カニち、気づいていないだけネ。 カニちのすぐそこに、カニちのこと大切にしてくれてる人、いるネ」
「だ、誰なんだよー! 教えろよー!」
「それ、私が言たら意味ないネ。 カニちが自分で気づかないといけないことネ」


メシが終わって屋台を出ると、マナは何か考えているようだった。
うーん、それにしても、ボクのことが好きな奴?
誰だ? フカヒレ? もしそうだったら絶対イヤだけどなー。
むしろすぐに死を選ぶね。
スバル? いやいや、ありえねー。
レオ? んなわけねーだろーが!
あいつはツインテールにゾッコンだしよー! ちくしょー!

カニっちのことが好きな奴って誰?
豆花は『すぐそこにいる』って言っとったやんな。
あの時一番すぐそこにおったのは…まさかウチのこと言っとるんか!?
ちょっと待ってや、ウチにはそんな趣味あらへんって。
うん、そんなわけあらへんがな。
…なぁ?
「はっ!?」
「んぁ?」
やば、目が合ってもうたやんか。
「どーした、マナ?」
「へへへへへ……あ、カニっち! アレって対馬と例のツインやないか?」
「お、そーいやそうだな」
「なぁなぁ、ちょっと後をつけへん? 面白そうやん」
「んー…まぁいいけどさ……」


ボク達はレオ達の後をつけ、松笠公園までやってきた。
もう外も暗いし、こんなところで何をするつもりなんだろうね、あいつらは。
「お、立ち止まったで。 海見とるわ」
それを見て、ボク達も近くの茂みに隠れた。
しばらくしてから、レオがツインの肩を引き寄せて…
「あー! チューした! チューしたで!」
「静かにしろっての! 聞こえちまうだろ!」
コイツ、すげーハイテンションになってやがる…
あ、レオの奴、顔を離したかと思ったらまたキスしやがった!
「うわ、対馬って結構やりよるなぁ…」
マナはずっとその様子を見てやがる。
ボクは胸クソワリィったらありゃしないのに。
あーくそ、あんなもん見てたらドキドキしてきたじゃねーか!
もういいかげんやめろよな!
「な、なぁカニっち…」
「んだよ、どーかしたんか?」
「ウチのこと、どう思う?」
「は?」
「ウチな、今すっごいドキドキしてんねん。 まさかとは思うけどウチな…
 あ、あの…その……キ、キスしてええかな?」
「ま、待てよ! ボク達女同士だぞ!?」
「そ、そうやけど…で、でもそれが悪いってわけでもあらへんやん?」
「だーかーら! 待てっつってんだろ!」
「大丈夫、大丈夫やって」
「待てー! 何が大丈夫だってんだー!」
誰か助けてくりー! このままじゃボク、レズの道に入っちまうよー!
犯されるー! ギャー!


『んん…』
ありゃ? どっかから声が聞こえてくるぞ?
『あ……ン…』
や、やっぱりどっかから聞こえてくるって! ま、まさかお化け…!?
「なななななぁ、まままマナ、だだだだ誰かいねぇか!?」
「は? 誰もおれへんよ? あそこに対馬達しかおれへんで?」
「ででででもよ!? ななななななななんか聞こえるんだって!」
「なんや、そんなこと言うて……もしかして怖いんか?」
「ここここ怖くない、怖くないもんね…」
『うあ……はぁ…』
ほら、また聞こえた! 今度はコイツの耳にも入ったろ!?
「!!!? な、なんやねん今の声…」
「ほほほほほら、きき聞こえたろ!? な!?」
「に…」
「に?」
「逃げろー!」
「わぁぁぁぁぁー!!!」
ボク達はその場から一目散に逃げていった。
もしかしたらレオ達にバレたかもしれねーけど、そんなもん関係ねぇ!
今すぐにこの場から逃げないと!

「ん? なんか今叫び声聞こえなかったか?」
「そうかしら? アタシは聞こえなかったけど」
「ふーん。 気のせいか」
「ねぇ…もう少しこうしていてもいい?」
「ああ、いいよ」


「ぜぇ、ぜぇ…」
「はぁ、はぁ…」
ぜ、全力で走っちまった…疲れたぜ……
「な、なぁカニっち…」
「なんだよ、ボ、ボクにはそんな趣味ねーぞ」
「ゴメン、ウチがどうかしてたわ。 よう考えたら、ウチもそんな趣味あらへん」
「あたりめーだ! 多分、あのレオ達を見たからドキドキしちまったんだろ」
「うん、ウチもそう思う」
「まったく、マナは空気読めねーけど、まさか自分の空気も読めねーとはな」
「スマン…」
あーあ、結局何やってたんだろな、ボク達。
「けどな、ちょっとカニっちもええかなって思ったり…」
「頼むからそういう冗談はよしてくれよ」
「そらそうやん。 冗談やって、冗談」
スバルのボケに付き合うレオの気持ちがちょっとわかる気がするぜ…
「ほな、また明日な、カニっち」
「おう、じゃーなー」
さーて、ボクも帰るか。
ボクを間接的にひどい目にあわせたレオには、後で天井裏のエロ本を机の上に置くという鬼畜極まりない仕返しをしてやるぜ。
そういえばあの変な声って、結局何だったんだろ?
ま、あんまり思い出したくないからいいや。
寝たら忘れちまうだろーし。 帰って寝よーっと。

「エリー…や、やっぱり恥ずかしいよう……」
「そんなこと言っても、ココがこんなんになってるんじゃ、説得力ないわよ?」
「うぅー…いじわる……」
「ほらほら、嫌よ嫌よも好きのうち…」
「だ、だからって公園でなんて……んふうっ!」
「そんな大きな声出しちゃ、誰かに聞かれるかもよ〜? ぬふふふふ〜」


マナと別れてからの帰り道、フラフラと歩いているスバルを見つけた。
あ、なんかちょっと顔が腫れてやがるぞ。
「おーい、スバルー」
「ん? なんだ、子蟹ちゃんか。 どうしたんだ、こんな時間まで」
「別に。 ちょっとマナとメシ食ってただけだよ。
 それより、オメーこそどうしたんだよ。 そんなに顔腫らしやがって」
「ちょっとバイト先でいざこざがあってな…久しぶりに骨のある相手だったぜ。
 あいつつつ…」
そういや、コイツって何のバイトしてるんだっけ…
レオ達は知ってるみてーだけど、殴られるようなことしてるってのか?
まったく、世話のやける野郎だぜ。
「ほら、ウチに来なよ。 手当てしてやっから」
「いいって。 それに、お前にやってもらったら、また包帯ぐるぐる巻きになるだろうが」
「気にすんじゃねーよ。 この天使みてーな可憐な少女に手当てしてもらうんだ。
 ありがたく受け取っとけやタコ」
「…やれやれ。 そんじゃ、お言葉に甘えるとしますか」
そう言うとスバルは、ボクと一緒に家まで向かった。
豆花も言ってたけど……豆花の言ってんのって、やっぱスバルのことなのかなぁ。
…ま、まさかね!
「な、なぁスバル…」
「どうした?」
「あ、あんまり世話焼かせんじゃねーよ」
「ハッ。 それはこっちのセリフだぜ、子蟹ちゃん」


(作者・シンイチ氏[2006/06/20])


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