ジリリリリリリ・・・・
目覚ましが鳴り響き私は目が覚める。
ここ最近、体に疲れが溜まりやすく朝の目覚めが悪い。
新年を過ぎ、推薦を受けた大学の合格も決まり気が緩んでしまっているからだろうか。
鉄家の家訓で「平常にこそ戦の心を忘れるな」というのがある。
私は常日頃、それを実践しているつもりだ。私もまだまだ修行が足りないという事かな。

身支度を整え、台所に行き食事の支度をする。
「うっ…」
ご飯の炊けた匂いで胸がムカつく、何だろう?知らずの内に体調を崩しているのだろうか、
学園内でも風邪が流行っている。私も健康には気をつけよう。

レオが起きる時間になり、自分で一階に降りてくる。
レオも私と交際を始めてから、姉の私から見ても立派になってきていると思う。
そんな弟の顔をいつまでも眺めていたくなる。
「乙女さん、おはよう」
レオが目覚めのキスを求めてくる。私はレオの体を抱き寄せ熱いキスを交わす。
「ん…おはよう。もうすぐお前も3年生だ。後輩の見本となる心構えを忘れるなよ」
レオは照れたようなはにかんだ笑いを浮かべて、食卓に着く。
「今日は握り飯と目玉焼きだ」

レオの提案で簡単な料理から始める事にし、目玉焼きは綺麗に作れるようになった。
「スゲェよ乙女さん!今年中にに炭化していない料理を拝む事ができるなんて…
俺涙出てきたよ」
誉めているのか…?
しかし、レオの喜ぶ顔を見て私の胸にやわらかい暖かさがあふれてくる。
こんな顔を見れるのなら私はもっと料理の腕を磨く事ができるだろう。
でも、レオは半熟が好きだと言うが、半熟は私にはまだ難しい。鍛錬あるのみだ。


「…テストが終わったら、生徒会のメンバーでスキー旅行に行く計画があるんだけど、
受験終わったから乙女さんも参加するよね?」
「もちろんだとも、私はスキーは上手いんだぞ。こう見えても体育会系だからな」
朝食を取りながら朝の会話を交わしている。風紀委員の任務も後輩に継いで、
朝はゆっくりとレオと会話が出来るようになった。風紀の任務はやりがいがあったが、
こうやってレオと長く会話ができるのなら、この生活も悪くないと思う。

「…うぐぐっ」
握り飯を5個食べたところで、胃が不調を訴える。
この感覚はお父様との稽古中、腹に強烈な拳を受けた感覚と似ている。
ダメだ耐えられない。食事中だというのに口に手を当ててトイレに駆け込み、
今食べたものを戻してしまう。ああ、農家の方に申し訳ない事をしてしまった…
「乙女さん、大丈夫?!」
レオが驚きと不安を混ぜた顔でトイレに駆け込んでくる。
「…ん、大丈夫だ。すこし風邪をひいたのかもしれん、心配するな」
「風邪?乙女さんって無病息災を地でやる人じゃなかったの?!」
「お前、私を何だと思っているんだ!名前の通り、私は乙女なんだぞ」
レオの頭を掴み、くしゃくしゃと荒っぽくかきまわす。
「心配してくれてるんだな、大丈夫、トレーニングを控えて回復に努めることにするよ」


寝ぼけた蟹沢をひっぱるように歩き、レオと並んで登竜門をくぐる、
これも風紀の任務に就いている時は行えなかった。
風紀の任務を行えた事を誇りに思っているが、
レオと一緒に登校すればもっと一日に活力が出ていただろう。難しい問題だ。

3年生も新年を過ぎれば受験体制になり、毎日の授業もなくなり自習となる。
試験の為各地を飛び回る生徒もおり、登校する同級生も少なくなる。
ついつい風紀委員の任務が癖になり、校舎内の見回りを行い、生徒に注意を行ってしまう。
それでも生徒達は私の言葉に耳を傾けてくれる。
後輩達は私を風紀委員の鉄乙女ではなく、尊敬すべき先輩の鉄乙女として見てくれている。
こんな喜ばしいことは無い。


放課後、生徒会室で姫と佐藤が談笑していた。
「あ、鉄先輩。大学合格、おめでとうございます」
「流石は乙女センパイね、キッチリ推薦で入学するなんて普通じゃできませんわよ」
「ありがとう、これも皆が応援していてくれたからだ」
2人は作業の手を止めて、私との語らいに花を咲かせる。
「そういえば、最近体の調子が悪くてな、風邪をひいたのかもしれん」
「あれあれ、鋼の乙女センパイが風邪ですか?みたところ風邪の症状は見受けられませんが…」
「うん、最近こういう症状が出ていてな…」
私は2人に自覚している症状を話す。
「…よっぴー」
「うん、エリカ、私もちょっと思うところがあるよ」
2人は顔を見合わせて、頷いている。何か思うところがあるのだろうか?
「…ねえ、乙女センパイ。大変失礼な事を聞きますが…怒らないでくださいね」
???姫は何を言おうとしているんだ?
「乙女センパイは、その、レオ君と行為…セックスをしている時に、避妊を行っておりますよね?」
私は瞬間的に顔を真っ赤に染め上げてしまった。
「あ、えっ、姫!お前女性が何を恥ずかしい事を言っているんだ!」
「真面目に聞いているので、正直に答えてください!」
佐藤が少し強い口調で私に答えを促す。私は驚いて平静さを取り戻した。
「避妊か、レオは気にしていたが、私はレオに避妊を強制していない、
レオはその上で私と行為に及んでいる。子供が出来たとしてもそれは覚悟の上だ」
2人は驚いた顔をして目を見開いている。
「…流石は乙女センパイ、と言った所でしょうか…」
「鉄先輩の症状、それ妊娠の兆候かもしれませんよ」
私は後輩に指摘されてしまった。これが妊娠の兆候だったという事実を、


佐藤が妊娠検査薬なるものを用意してくれた。どこで用意したのかを聞いてみると、
いつもの笑顔で「女の子には秘密があるんです」と答えた。
まぁ深く追求するのはよそう。今は佐藤に感謝だ。
「中の説明書をよく読んで、正しく使用してくださいね」
「レオ君に報告したら、次は私たちに結果を教えてくださいよ」
姫と佐藤の2人は、少女らしい好奇心むき出しで私に詰め寄る。
「じゃあ乙女センパイ、また明日」
「さようなら、鉄先輩」
2人は私を心配して協力してくれている。私は良い後輩をもったものだ。


レオが帰宅するのを待ち、姫と佐藤との1件を話す。
「う…確かに俺も気付くべきだった…
乙女さんの受験が終わるまでセックスを控えていたけど、まさか新年のアレなのかなぁ」
レオは私の言葉に動揺したのか、視線を宙を彷徨わせている。昔からの悪い癖だ…
「乙女さん、妊娠していた時は俺、男として責任を取るからね」
私の視線に気付いたのか、レオは私の聞きたかった言葉を言ってくれた。
「ああ、私もいつも覚悟を決めている。お前、今良い顔しているぞ」
レオの体を引き寄せ、熱いキスを交わす。
レオの鼓動が胸を通じて聞こえる。
レオ、私の鼓動も聞こえるか?私もこの結果に緊張しているんだぞ。

「ふむふむ、検査スティックに尿をかけて色の変化で検査を行うのか、これなら私でも間違える事はないな」
「乙女さん、間違いがないように、俺が最後まで見届けるよ!乙女さん手先不器用だから、俺心配で…」
「…!?お前、最初から最後まで見届けるという事…か?」
レオが真剣な顔で私の目を見つめる。う…私はこの目に弱いんだ。


トイレは狭いので、浴室に移動する。
「よし…今から出すからな、お前は横を向いて耳を塞いでいてくれ」」
「ちょっと待った乙女さん。俺がコップを支えるから、
乙女さんは立ったままスカートを持ち上げていてよ」
「なっ!見守らせるとは言ったが、その、私が…私が用をいたす所まで見せるつもりはないぞ!」
「知らないのかい乙女さん、検査を行うときは必ず介助が必要だって、
愛している者同士、協力して行う事なんだよ」
「む…それなら仕方ないな…」
うう、こんな恥ずかしい事まで行わなければいけないのか、私はこう見えても乙女だぞ!
子供が出来るという事は、なんと大変な試練だろうか。
下着を下ろし、スカートをめくり上げて少し両足を広げる。
レオはしゃがみこんで私の股間を見上げて採尿コップを股間にあてがっている。
くうう、恥ずかしさで倒れてしまいそうだ。これなら片手逆立ち腕立ての方が何倍も楽な事だ!
「乙女さん、用意できましたから、いつでもよろしいですよ」


「…っ…」
「乙女さん?そんなに緊張してちゃ出る物もでないでしょ、何時ものように、リラックスしてください」
「お前が見ている前で、リラックスなんて出来ないだろう!」
「乙女さんはこういう時に世話がかかるなぁ、俺が手伝ってあげますよ」
え?レオ、お前何をするつもりだ?
「ひゃうっ!…あっ、はうっ!レ、レオ、お前何をっ…やって、るんだっ…」
レオが私の股間の一番感じやすい部分を指で刺激している。
私は下半身から全身を振るわせる快感と羞恥心で頭がふわふわになってくる。
ちょろっ……じょぼぼぼ…
「あ、ああっ…は、はああうう…」
私は弟に、レオに股間を刺激されておもらしをしてしまう。
羞恥と開放感が入り混じった初めて味わう快感に、私は絶頂を向かえて頭が真っ白になってしまった。
「わ、ちょっと乙女さん、オッケー、OKです。もういっぱいっぱいです!」
何も聞こえない………じょろろろ………
後日姫と佐藤に報告した時知ったがレオは私に嘘を付いていた。
その日はレオを本気で蹴り飛ばしてしまった。
アバラにヒビが入ったそうだが私は知らん振りをしてやった。良い薬になっただろう。
今思い返しても恥ずかしさで頬が赤く染まる。
でも、レオが望むならもう一度行っても良いと思う自分も居る……


結論を先に言ってしまえば、私は妊娠していた。
今まで覚悟していた事が実際に起こると、喜びで胸いっぱいになる。
レオと私の愛の結晶。私が母親になる。レオの妻になるという事だ。
私が心の片隅にしまっていた未来、それが実現したのだ。
こんなに幸せな事はない。

そして、その後に襲い掛かる現実問題。
私もレオもまだ学生の身分だ。子供が生まれたとして学業はどうする?
子供を育てる養育費は?そもそもどうやって子供を育てれば良いのだ?
子供が出来る事は覚悟していた事だ。しかし、出来た後の事をまるで考えてなかった。
ふいに訪れた不安に悩まされる。人として今まで一生懸命己を鍛えてきたが、
女としての私はこんなにも弱い存在だったのだ。
「乙女さん、何でも自分で抱え込むのは乙女さんの悪い癖だよ」
レオが後ろから私を優しく抱きしめてくれる。ああ、なんて安心できる温もりだろう。
「レオ……お前は弟であるが、男でもあるんだな…頼もしく感じるぞ」
皆に正直に話そう。
私とレオは愛し合って子供を作った。それは胸を張って主張できる。
私達の周りには両親という偉大な先人達が居る。
きっと私達を正しい道に導いてくれるだろう。


柴又の実家に2人で赴き、正直に報告した。
母様は喜んで私達を祝福してくれて、今後のアドバイスをしてくれる。
父様は静かに私達の話を聞いて、報告が終わると父様はレオを道場に連れて行った。
「レオ君、乙女と夫婦になるという覚悟を私に見せてくれ」
「叔父さん…いや、お義父さん。俺、本気で乙女さんを愛しているんです!」
レオは父様に道場で散々しごかれていた。レオの体はボロボロだったが、
父様の片頬も真っ赤になっていた。父様に拳を入れるとは…レオも逞しくなったものだ。
レオを手当てしてやる。レオの顔はボロボロに腫れあがっていたが、男の顔をしていた。
赤く腫れあがった部分、全てにキスをしてやる。私からの気持ちだ。
「親父って、強いなぁ、俺も親父達を見習って肩を並べるように強くならなきゃな」
かわいい奴め、私は気持ちのままにレオと熱く、熱く唇を交わした。


レオの両親には国際電話で報告を行った。
週末には急遽レオの両親が帰国し、私達を祝福してくれた。
「乙女ちゃん、レオはほんっとにだらしない子でこれからも迷惑をかけるかもしれないけれど、この子を見捨てないであげてね」
「レオはこれからも私が鍛えます。立派な男にしてみせますから安心してください」
「こう見えても、俺が乙女さんの役立つ事も一杯あるんだぜ
正直、乙女さんの不器用さは傍から見ていて不安になってしまう」
「バカ!私も日々鍛錬して克服しようとしているんだ。お前の助けなどいらない!」
レオの両親はそんな私達を見て、幸せそうに微笑んでいる。

夜は料亭でレオと私、お互いの両親が集まってささやかな宴会を開いてくれた。
両親が許可を出しレオもお酒を飲む事を許され男達で話をしている。
レオは正座を組まされ二人の父親に説教を受けていた。あれもレオの試練だろう。
「乙女ちゃんは、多分、年下を好きになると思っていたけど、
よもや家のレオを好きになっちゃうなんて私おどろいちゃったのよ」
「なんでも10年以上も前に約束していたんですって、レオ君も義理堅い子ね」
「レオが就職するまで養育費は私達で出すから乙女ちゃん達は、安心してお腹の子を育ててね、
この歳になると孫の顔を見るのが楽しみになっているから」
「そういう訳にもいきません、レオは学校を退学して働くと行ってます。
私も子供を育てながらレオを助けようと思います」
「乙女ちゃん!」
私の母様が厳しい顔をして私に一喝する。
母様はめったに怒る事は無いが、有無を言わさぬ迫力は父様以上だ。
「学生を途中で放棄して働くという事は、とても、とても大変な事なのよ、
レオ君が既に就職しているならともかく、就職するまでは私達が面倒を見ます。
私達から見れは貴方達はまだまだ子供なんです。
こういう時こそ親を頼りなさい、いいですわね」
「…はい、ありがとうございます。本当にありがとうございます」
私は深々とお辞儀をし、ぼろぼろと涙をこぼしてしまった。
2人の母様は、私をやさしく抱きしめてくれ、にこやかに私の幸せを祈ってくれた。


新学期を迎える事になった。
私は大学を休学にしてお腹の子供を育てる事に専念する事に決めた。
レオは学長に直訴し竜鳴館を卒業できるように頼みこんだ。
姫たち生徒会の面々は学校中をまきこんでレオの退学反対運動を行い、
見事、レオの退学を免れる事が出来た。

「乙女さん、ただいま。お腹の子もただいま」
レオが学校から帰宅して、私に帰宅挨拶を投げてくれる。
「姫からの宿題がアホみたいに多くてさ、それが片付いたらトレーニングに行くね」
レオは姫からスカウトを受けて、学園の卒業と共に姫の側近として働く事になる。
就職の条件は一つ、姫から出される様々な資格を取得する事。
能力があれば学歴なんて関係ない、姫らしい条件だ。
レオも私とお腹の子の為に使える時間の全てをもって勉強に励んでいる。
この1年で社会人としての能力を身に付ける為に、レオが熱く燃えている。

「なあ、まだ見ぬ私の子よ、レオは、お前の父はこんなに素敵な男なんだぞ」
私もお前の為に、素晴らしい母親になってみせる。
生まれてくる子供の為に、幸せな家庭の為に。


(作者・名無しさん[2005/11/22])


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