あたしには、分かる。
センパイはあたしのことが好き。
でも、絶対にそうとは言ってくれない。
「つきあってくれ」
たったそれだけの七文字を口に出してはくれない。
たぶん、断られるのが怖いのだろう。
いかにも、あたしは断りそうに見えるのだろう。
それは、あたしにも責任がある。
今までさんざん、センパイにはつらくあたってきたのだから。
だけど、たったの七文字なのに。
いくら「椰子なごみは絶対に俺を拒絶する」と感じていたとしても、そんなの、言って
くちゃわからないのに。
センパイの意気地なし。
イライラする。
殺意すら感じる。
いつも遠くからあたしのことを見つめているくせに、あたしが目を合わそうとすると途
顔を赤らめて目を背けてしまう。
あたしが必死の勇気を振り絞ってデートに誘おうとしていると、必ずカニやお姫様や佐藤
輩の横槍が入って、気づいてみるとセンパイはみんなのおもちゃにされている。
そんなセンパイも可愛いけれど、やっぱりあたしは、センパイには毅然としていて欲しい。
「俺には椰子がいるから」
ときっぱり断って欲しい。
だけど、センパイはいつまでたってもお姫様の誘惑には勝てないらしい。
カニや佐藤先輩の露骨な好意には鈍感で、まるで気づいていないらしいので、その点は
だけれど、お姫様がたまに持ってくるベルギーチョコには犬のようにとびついている。
確かに、あのチョコはおいしいんだけど…チョコくらい、あたしがもっとおいしい
作ってあげるのに。
情けないセンパイ


最近、椰子の俺を見る目がいつになく激しい。
殺気すら感じる。
武道祭が終わって、椰子の手作り弁当を食うようになって、松笠開国祭のカレー修行が
って、二人で海に行って…
そのあたりまでは、比較的順調だったと思う。
なんとなく気になる椰子の面倒を見てやってるうちに、ふとした拍子に椰子が俺にキス
た。
まるでヘッドバッドみたいだったけど、確かにあれはキスだった。
正直、めちゃめちゃ嬉しかった。
あそこまで頑なに俺を拒否していた椰子が、どこかで俺を認めてくれていたんだと思えた。
しかし…
どうやらそれも思い過ごしだったかもしれない。
椰子の表情は読みやすい。
間違えっこない。
最近の椰子は、俺に明らかにイラ立っている。
二人っきりになると、思わず目をそらしてしまうほど物凄いガンをとばしてくるので、
べくカニや佐藤さんに間に入ってもらうようにしているが、それがまた、椰子をイラ立
るらしい。
どうにも対処のしようがない


「センパイ、ひとりで何してるんですか?」
「げ、椰子…(いかん、こいつのこと考えてでボーっとしてたら、いつの間にか目の前にいやがる)」
「ちょっと、何で逃げようとしてるんですか?」
「逃げようとなんて…そんなつもりは…」
「でも、何かあたしを避けてますよね、センパイ」
「いや、別に…その…」
「何ですか? はっきり言ってください。…そういえば乙女先輩は今日部活でしたよね」
「え?うん…」
「いろいろ聞きたいことがあるんです。センパイの家に行ってもいいですか?」
「 ( д ) ゚ ゚」
「いいんですね?じゃあ連れて行ってください」
「(もう決定かよ!!)本当に来るのか?」
「しつこいですよセンパイ」
「いや、その…」
「…はやくしろよ」
「う…」


「へ〜ここがセンパイの家ですか?」
「(うう、着いてしまった。何やってんだろ俺)」
「? センパイ何ボーっとしてるんですか?」
「(いったい俺が何をしたというんだろう)」
「センパイ?」
「(この間の松笠開国祭までは順調だったんだけどな〜)」
「セ・ン・パ・イ?」
「(せめてカニがいてくれないかな〜。それはそれでうるさいけど…)」
「センパイ!!」
「うわ!!」
「いつまでも固まってないで早く入れてください」


それから五分、俺たちは居間にいた。
「椰子はお茶でいいよな」
「……」
「ところで今日は突然どうしたの?」
「……」
「あの〜椰子さん?」
「……」
「はぁ(本当に何考えてるんだろ)」
「……」
「……」
「センパイ…」
「ん?(何だ?)」
「最近あたしのこと避けてますよね?」
「え…」
「何でですか?」
「いや、別に…」
「ごまかそうとしないで正直に言ってください」
「避けてるとか…そういうのは…(三点リーダ多いな)」
「……」
「……」


あれからさらに二十分、俺たちはとてつもなく重たい雰囲気のままお互いに無言で食卓に向かい合って座っていた。
お茶はだいぶぬるくなっていた。
「……」
「……」
「…椰子…」
「……」
「正直に言っていいかな」
「…ハイ」
「俺さ…何か悪い事したかな」
「……」
「最近、俺に対してすごくいらだってるでしょ」
「……」
「正直言って椰子のことわかんないよ」
「……」
「……」
「…ック…グ…ヒック…」
「(んんん?椰子、まさか泣いて…?)」
「う…うぇーーーん…」


あたしは馬鹿だった。
センパイは言ってた。「最近、俺に対してすごくいらだってるでしょ」と。

武道祭が終わって、センパイと手作り弁当を食べるようになって、松笠開国祭のカレー修行があって、二人で海に行って…
そのあたりまでは、比較的順調だったと思う。
なんとなく気になるセンパイと一緒に行動するうちに、ふとした拍子にセンパイとキスした。
まるでヘッドバッドみたいだったけど、確かにあれはキスだった。
正直、すごく嬉しかった。

でも、それを私が壊した。
センパイには私がイラついているように見えた。

ちょっとお姫様にセンパイがちょっかい出されたからって、その苛立ちを先輩に向けていた。
こんなんじゃ嫌われるのも当然だ。

私がセンパイとの関係を壊してしまった。


あれからさらに三十分、重くならないと思っていた空気は予想に反してもっと重くなった。
椰子もだいぶ落ち着いてはきたようだ。
なんか椰子にすごく悪いことを言った気がしていた。
「…椰子、大丈夫か?」
「…ック…ック」
「落ち着いたか?」
「…ック…センパイ…優しすぎます…」
「椰子…」
「私…センパイのこと……好きでした…」
「…(…って、おいっ)」
「でも…あきらめます…」
「…(…って、おいおいっ)」
「センパイに…自分の苛立ちをぶつけてしまって…
 武道歳が終わって…お弁当食べて…
 センパイが私のこと好きだって…勘違いしていたんです…」
「(勘違いじゃないよ…)」
「本当…何やってたんでしょうね…一人で勘違いして…舞い上がって…
 その上…先輩には迷惑をかけちゃって…
 こんな女…本当にいたい女ですよね…本当に…」
「……」
「…ホント…今日はごめんなさい…失礼しました…」
そういって椰子はふらふらと玄関に向かった。
まだ、少し泣いているようだった。


椰子は俺のことが好きだといっていた。
俺も椰子のことは好きだ。
その椰子はいま、俺のことをあきらめるとも言っていた。
そして、今玄関へと歩いていくところだ。
俺は椰子のことが好きだ。
今するべきことは、椰子を見送ることなんかじゃない。
俺は、立ち上がった。


「椰子!ちょっと待て!!」
センパイが、叫んだ。

「好きだ」
「!!」
俺は、椰子を抱きしめた。

「ずっと、避けててごめんな」
センパイは、私に言った。

「セ…ンパ…イ…センパイ!!」
椰子は、俺を抱き返した。

センパイと私はお互いに強く抱き合った。
椰子と俺はキスをした。ヘッドバットのようなキスではなく、熱い、熱いキスだった。
センパイとキスをした。私の顔は涙でぐしゃぐしゃだった。

そして、俺は椰子を抱いた。


私は街をさまよっていた。
私の初恋は終わった…




私が初恋の相手に出会ったのはまだ私も彼も幼かったときだ。
私の家 鉄家と対馬家は親戚同士であり、私が対馬家に遊びに行ったとき彼に出会った。

「レオ…」

つぶやいてみても何も変わりはしない。
もう手遅れなのだ。

今日部活から帰ってみたらレオが居間で椰子とキスをしていた。
そして私は知った。
私の初恋が実ることは無いと…

私はレオのために何もしてこなかった。

いや、修行はさせた。それがレオのためになると信じて。
でも、椰子のように女の子らしいことはレオに対して何もしてこなかった。

「レオ…」

私の、初恋は、今日、終わった。
つづく?


(作者・名無しさん[2005/11/07])


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