バレンタインデー 【ツン】

ようやくカニの追撃を振り切り、レオは生徒会室へ入ってきた。
「今年のカニチョコはなんとか食える味だったけど、あの量は致死量だ。後はスバルとフカヒレにまかせよう」
「……あれ、センパイ」
一人で昼食を取る椰子なごみがレオを見て意外そうにそう言った。
「なんだ椰子はここでお昼にしてたのか。ちょうどいい俺も弁当にするか」
レオは乙女さん手作りのおむすびを取り出して食べ始めた。
「むぐぁ、まさかここにもチョコとは。乙女姉さん、やってくれるぜ。椰子見てみろおむすびにチョコが入っていた」
「うわっ、なんですかそれキモイです」
「バレンタインデーだからかな。嬉しくないわけではないが、毎年カニのせいで俺にはいい思い出がない日でもある」
「それはご愁傷様」
椰子はくすりと笑うとまた弁当に向き直った。
「おむすびにチョコは強烈だな。よし、口直しに椰子のチョコを食べてみよう。後輩よ、先輩に義理チョコをおくれ」
「ハァ? 馴れ馴れしいですよセンパイ。おとなしくカニのチョコを鼻血が出るまで食べてください」
「……あの料理オンチのチョコは手作りなんだぞ。あれを食べるならビックリマンチョコのほうがマシだ。だから口直しに椰子のおいしいチョコをおくれ」
「センパイ、キモイですよ。センパイに義理なんてありませんから。うるさいと潰しますよ」
「……椰子よ、竜鳴館ではバレンタインデーは後輩が先輩にチョコを送る日なんだぞ」
そこでふと何かを思い出し椰子はにやりと笑った。
「あまりにも情けないセンパイが可哀相なので、お情けチョコをあげます」
そう言って、ポケットから小さなチョコを取り出してレオに手渡した。
「おおっ!? 言ってみるものだな。ありがたくいただくぞ」
チョコを食べるレオをおもしろそうに見る椰子。
「ぐおっ、にっ、苦いぃ!! 苦くて前が見えないぃ!!」
もだえるレオを前に椰子は至極楽しそうだ。
「やっぱり、さっきカニが押し売りしてきたチョコなんで、何かあると思ってました」
「ううっ。カニめ覚えていろ……ガクリ」

姫「好感度が足りないわね、まだまだよ」
カニ「椰子にかまってねーで、おめーはおとなしくボクのチョコでも食べてればいーんだ」


バレンタインデー 【ンデ】

ようやくカニの追撃を振り切り、レオは生徒会室へ入ってきた。
「今年のカニチョコは死ぬほど辛かったぞ。人類は口から火を出せるんだな。後でコゲたフカヒレを見舞いに行こう」
「センパイ遅いですよ」
「すまんすまん、カニとデットヒートをしていてな。今日の弁当はサンドイッチか、珍しいな」
「今日は少し時間がなかったもので」
レオは綺麗に作られたサンドイッチを食べる。
「がつがつがつ」
「センパイ、慌てて食べすぎです。もっと落ちついて食べてレビューしてください」
そう言っている間にレオは食べ終わってしまう。
「美味かった」
「センパイ、そればっかりじゃないですか。もっと真面目に考えてください」
「超美味かった」
「……もういいです。それと今日はお菓子も作ってみましたので、こっちも感想お願いします」
さりげなくそう言うと、なごみはあらかじめ準備しておいた包みを取り出しレオに手渡した。
「椰子がお菓子ね……。たしかにお前のお菓子は初めてだな。おっ、チョコクッキーかこれ」
レオは包みを開けて、甘い香りを堪能し、さっそくチョコクッキーを口に運んだ。
「美味い!! マジで美味い!!」
「……そ、そうですか」
なごみはほのかに微笑んだ
「椰子の弁当だけじゃなくチョコクッキーも食べれるなんて幸せだなぁ」
「センパイ、勘違いしないでください! 今日お店で買ってくれたお客さんに配るために作ったやつの残りなんですからね」
「えっ、そうなの?」
「そうなんです!」
「まぁ、美味いから何でもいいよ。ホント食べるのがもったいないぐらいだ」
「……」
喜んで食べるレオに、なごみは紅潮した顔がバレないように弁当を再開した。

姫「ん〜、もう一押しね」
カニ「レオはだれにでも優しいかんね! 勘違いすんなよココナッツ!」


バレンタインデー 【デレ】

ようやくカニの追撃を振り切り、レオは生徒会室へ入ってきた。
「今年のカニチョコは凶器だ。まさか食べると爆発するチョコが実在するとは……。フカヒレよ、お前は星になった」
「あっ、センパイ、待ってました」
待ち焦がれていたなごみが喜色満面でレオを向えた。
「センパイ、今日はたくさん作りましたので、いっぱい食べてくださいね」
生徒会室の机の上にはなごみお手製のスイーツが所狭しと並んでいた。
巨大なハート型チョコを筆頭に、チョコケーキ、ガトーショコラ、フォンダンショコラ、トリュフチョコ、生チョコレート、チョコチップクッキー、チョコレートアイスetc……。
「センパイに食べて欲しくてがんばりました」
「よしよしえらいぞ、なごみ」
両手を口元に持ってきて、上目づかいで見つめてくるなごみの頭をレオはなでてやる。
「えへっ」
「……ところで、肝心の昼飯はどこにあるんだ?」
「あっ! ……すいません、作ったんですけど家に忘れてきてしまいました」
とたんになごみはしゅんと肩を落とし、暗く沈んでしまう。まるで叱られた子犬のようだ。
「まあ、気にするな。今日はバレンタインだし、チョコがメインでいいよ。なごみの愛情たっぷりだからな、それだけで嬉しいよ」
「……センパイ」
なごみは感激の瞳で見上げて呟いた。
「じゃあ、いただきます」
レオがチョコに手を伸ばす。
「センパイ、ダメです。あたしが食べさせてあげます」
なごみはレオの手を押さえた。その目はいつになく本気だった。
「はいセンパイ、あーん」
「これは、照れるな……」
「センパイ、早くですぅ」
「ん、ぱく。もぐもぐ、……ん、美味しい」
「よかった、ゆっくり味わってくださいね。まだまだありますよセンパイ、はい、あーん」
頬を染めて潤んだ瞳でチョコを進めてくるなごみ。凶悪に可愛い奉仕はレオが鼻血を出すまで続いた。

姫「ラブラブね。ハイハイ、ゴチソウサマ」
カニ「なにココナッツといちゃついてんだゴルァ!」
スバル「はいはい、落ち着けって。お前のチョコは俺が食べてやるから」


ホワイトデー 【ツン】

「椰子ー。いるかー?」
レオはホワイトデーのお返しを携えて、昼の生徒会室を訪ねた。
「センパイ、何ですか」
「これバレンタインのお返し」
レオは持っていたケーキの箱を差し出した。
「お返しって、あたし何もあげてませんよ」
椰子は箱が危険物であるかのように、お弁当を抱えて遠ざかった。
「カニチョコとはいえもらったからな。まぁ、三倍返しだと思ってもらってくれ」
「うわ、センパイ、キモイ。あれは危険物を押し付けただけです。チョコをあげたなんて思い込まないでください」
椰子は嫌悪を隠しもせずにレオを睨み付ける。
「んー、おいしいと思うぞ」
レオは箱を開けて中を覗き込む。限定20個のケーキはとても美味に思えた。
「これって変質者の行動ですよ、センパイ。それにチョコ自体はカニのものだったんですから、カニにあげればいいじゃないですかそれ」
「そーか……。でも一口ぐらい」
「しつこいと潰しますよ」
「……わ、わかったよ」
そうしてレオは椰子の黒いオーラに押されて、生徒会室を後にした。

姫「んー、ツンツンしていて可愛いわね。まだまだアタックが足りないわ」
カニ「結局ヘタレだなレオは。さ、さっさとボクのところにケーキもってこい」


ホワイトデー 【ンデ】

「椰子ー。いるかー?」
レオはホワイトデーのお返しを携えて、昼の生徒会室にやってきた。
「こんにちは、センパイ」
「これバレンタインのお返し」
レオは持っていたケーキの箱を差し出した。代わりになごみの手作り弁当を受け取る。
「センパイ、これってあそこのお店の限定ケーキじゃないですか」
なごみは箱を開けて驚いた。話題のケーキは一日20個限定の品で、開店と同時に売り切れる名物である。
「午前中抜け出して買ってきた。この間話に出たろそのケーキ。お返しにちょうどいいかと思って」
「ありがたくうけとっておきます」
なごみはくすりと笑ってお弁当を広げた。レオをそれにならいお弁当を食べ始めた。

昼食後、レオが紅茶を二人分入れて席に着いた。なごみはお皿にケーキを移し、興味深げに観察している。
「シンプルですけど面白いですね」
ケーキはホワイトデーにぴったりの白いチーズケーキで、何層も積み重なった層が美しいコントラストを作っている。
「最後の一個だったんだよな」
「そうなんですか。……はむ、んむ。……これおいしい!」
なごみはフォークでケーキを口に運び、おいしさに笑みをもらした。
「甘すぎず酸味もほどよくて、コクがあるなかにも風味のコントラストが……」
ケーキの世界に突入するなごみをレオは嬉しそうに見ていた。
「ホントおいしいですよ、センパイ。センパイも一口どうぞ」
そう言ってなごみフォークを差し出した。
「んっ、ありがと。……おおっ美味いな」
何気なく出されたケーキを反射的に食べたレオは、これが間接キスだと気づき一人赤くなった。
「お〜い〜し〜い〜」
一方、なごみは頬を押さえて身もだえしながら、ケーキのおいしさに溶けていた。

姫「なごみんのために走る対馬! やるわね。でも後もう一歩かな」
カニ「ああんっ、ボクの分はどこだよ! ココナッツにはもったいねー、ボクに食わせろーーーー!」


ホワイトデー 【デレ】

「なごみー。いるかー?」
レオはホワイトデーのお返しを携えて、昼の生徒会室を訪ねた。
「あっ、センパイ」
「これバレンタインのお返し」
レオは持っていたケーキの箱を差し出した。
「ありがとうございます。センパイ、これってあそこのお店の限定ケーキじゃないですか」
なごみは箱を開けて驚いた。話題のケーキは一日20個限定の品で、開店と同時に売り切れる名物である。
「午前中抜け出して買ってきた。この間なごみが、ものすごく食べたそうに話してたから」
「センパイっ! 嬉しいです」
うるうるキラキラな瞳でなごみはレオを見つめる。
「さっ、とりあえず飯にしようぜ」
「ハイッ、今日は自信作なんですよ」
昼食後、レオが紅茶を二人分入れて席に着いた。なごみはお皿にケーキを移し、興味深げに観察している。
ケーキはホワイトデーにぴったりの白いチーズケーキで、何層も積み重なった層が美しいコントラストを作っている。
「……はむ、んむ。……これおいしい!」
なごみはフォークでケーキを口に運び、おいしさに笑みをもらした。
「ホントおいしいですよ、センパイ。センパイも一口どうぞ」
そう言ってなごみフォークを差し出した。
「んっ、ありがと。……おおっ美味いな」
レオにケーキを食べさせたなごみはもじもじして、切り出しにくそうに言った。
「センパイ、……あたしも食べさせてほしいな」
そう言ってレオに向き直りフォークを渡したなごみは、上目づかいで恥らいながら目を閉じた。
「はいセンパイ、あーん」
「しょうがないな、なごみは。はい、あーん」
レオはツバメの雛に餌をあげるように、なごみの口にケーキを運んであげる。
「んっ、とってもおいしいです。センパイ」
嬉しそうに返すなごみは耳まで赤くなっていた。

姫「お熱いことで、羨ましいわね〜。私もよっぴーに癒してもらおう」
カニ「それじゃココナッツもろとも私刑ってことで逝きましょう」


バレンタインデー 【デレデレ】

ようやくカニの追撃を振り切り、レオは生徒会室へ入ってきた。
「今年のカニチョコは大量破壊兵器か……? 臭いだけでクラスが壊滅したぞ」
待ち焦がれていたなごみが喜色満面でレオを向える。
「あっ、センパイ、待ってました。今日はたくさん作りましたので、いっぱい食べてくださいね」
生徒会室の机の上にはなごみお手製のチョコが所狭しと並んでいた。
「センパイに食べて欲しくてがんばりました」
「よしよしえらいぞ、なごみ」
両手を口元に持ってきて、上目づかいで見つめてくるなごみの頭をレオはなでてやった。
「えへっ」
「じゃあ、いただきます」
レオがチョコに手を伸ばす。
「センパイ、ダメです。あたしが食べさせてあげます」
なごみはレオの手を押さえ、食べようとしていたチョコを取るとレオに差し出した。
「はいセンパイ、あーん」
「あーん。ん、美味しいよなごみ」
「えへっ、嬉しいですセンパイ」
なごみはとけるような笑顔で喜んで、もう一つチョコを取った。
「……もっともっと美味しく食べてください、センパイ」
そう言ってなごみは舌を伸ばし、チョコを舌の上に載せて自分ごと差し出した。
「な、なごみ」
「ひぇんはい、はやひゅひないと、とひぇひゃいまひゅよ」
なごみはもごもごとおねだりして、レオに顔を寄せる。
「あむっ、むぐっ、んっ……ちゅっ、ちゅっ……んむ、んっ」
二人の舌の間でチョコが溶け、唾液と交じり合ってくらくらするほどの甘さを醸し出す。チョコが溶けきってもキスは続き、終わった時は二人とも酔っ払ったみたいに真っ赤になっていた。
「はぁ……はぁ……。センパイ、もう一度……」
「……なごみ」

姫「センパイにィーっ! 気安く触るにゃーっ!! ってね、カ〜ワイイ」
カニ「うがぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


ホワイトデー 【デレデレ】

「なごみー。いるかー?」
レオはホワイトデーのお返しを携えて、昼の生徒会室を訪ねた。
「あっ、センパイ」
「これバレンタインのお返し」
レオは持っていたケーキの箱を差し出した。
「ありがとうございます。センパイ、これってあそこのお店の限定ケーキじゃないですか」
「午前中抜け出して買ってきた。この間なごみが、ものすごく食べたそうに話してたから」
「センパイ、実はあたしも……」
なごみはそう切り出すと、ケーキやチョコなどのお手製スイーツを並べだした。
「バレンタインの時にセンパイが凄く喜んでくれたから……作ってきちゃいました」
「作ってきちゃいましたって……。今日はホワイトデーなんだから、俺がなごみに贈る番だろ」
「大丈夫です、センパイ。センパイのケーキは後できちんといただきますから。今はあたしのケーキをたべてください」
なごみは手作りのスイーツを食べてもらうことが、楽しみでしょうがないといった様子である。
その喜びように押し切られる形で、なごみのスイーツを食べることになった。
「はい、センパイ、あーん」
「あーん、むぐむぐ。ん、美味いよ」
「そうですか、よかった。コレは初めてだったんで少し心配でした。センパイ、次はアップルパイをどうぞ」
なごみは次々にフォークでスイーツを食べさせ、レオが感想を言うたび、幸せそうに微笑んでいた。
一方のレオはどこか釈然としない表情である。
「……なんか俺ばっかりが嬉しいような気がする」
「そんなことないですよ、センパイ。センパイに食べてもらえることが、あたしへの贈り物なんですから。はい、あーん」
なごみはにっこりと笑った。
「あーん、むぐ。……でもそれじゃ俺が納得できない。なごみ、なんでもいいから俺にして欲しいことはないか?」
「あたしはこれで十分なんですけどね……。はい、あーん」
「んむっ。……なんでもいいんだぞ。あまりお金のかからない範囲でな……」
なごみは手を止め少し考える仕草をして、それからまたにっこりと微笑んだ。
「じゃ、センパイの好意に甘えることにします。後で、ちょっとしてもらいたいことがあるんですけど」
「わかった。で、何をすればいいんだ?」
「それは内緒です」

放課後 なごみの部屋
「で、して欲しいことって……」
「はい、耳かきです。センパイ」
耳かきを手渡されたレオは床に正座した。
レオの膝の上になごみが顔を外に向けて、ぽふっと頭を載せてきた。
「はい、センパイ、お願いします」
「他人の耳掻きなんてしたことないよ」
そう言いながらレオはなごみの耳かきを始めた。
改めて横から見るなごみの顔は綺麗で、耳の後ろの後れ毛とか顎から首へつながるラインのやわらかさとか、あまりにも女の子らしい部分が強烈過ぎた。
「……なごみのいい匂いもするし」
耳掃除していると、レオの膝の上でなごみが妙にもぞもぞと動く。
「あんっ、……センパイ。耳かき上手です。ああぁ、そこそこぉ」
女の子の心地よい重さとなごみの悶える声とピンクになっていくなごみの耳やうなじを見て、レオは自分の顔まで火照っていくのを感じていた。
「センパイ、とっても気持ちいいですよ」
「……。はい、次は反対の耳」
なごみが頭を回して顔を内側に向けてくる。レオは息子がおっきしないかドキドキしているようだ。
こっちはこっちで首から鎖骨へのラインが艶かしい。
「……とても一年生とは思えない。20歳こえたらどうなっちまうんだ」
「センパイ、あたし子供のころこうやってお父さんに耳かきしてもらっていたんですよ。お父さんの膝の上ってあたしの大好きな場所でした。センパイの膝の上ってお父さんの膝とは少し違うんですけど、凄く落ち着きます。……ああぁ、センパイの匂いだ」
なごみはレオに擦り寄ってきて、顔を服に埋めて呟いた。
「あたし、幸せだなぁ……」
「なごみ? ……寝ちゃったか」
なごみは陽だまりの猫のように穏やかな眠りに落ちていた。

二時間後
「あれ……? あたし、寝ちゃってた……。センパイ、どうしたんですか!?」
「あ、あし、……足がし……しびれ、しびれひゃふぅぅぅぅ」
レオは正座に真っ白に燃え尽きていた。


(作者・つばめ返す氏[2005/10/30])


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