柊家では一同にみんなが集まって新年の挨拶をする。
今年は雛乃姉さんが巫女のアルバイトということもあり、夜に全員集合となる予定だ。
ねぇねぇと姉貴も初詣に店を出すとかで、朝早くに出かけてしまった。
今日はねぇねぇの誕生日だってのに…
「稼げる時に稼がないとねー」
とねぇねぇは言ってたけど。
残った俺とともねえ、海お姉ちゃんと要芽姉様、そして親父は一足先にお雑煮を食べていた。
「あったまるね〜」
「それにしても…なんでこいつが出ている番組を見なくてはいけないの?」
「まぁまぁいいじゃないか」
「お父様がそう言うなら…」
要芽姉様が不機嫌な理由は、ねぇやが出ているテレビ番組を親父が見ているから。
ねぇやはこの正月はメチャクチャ忙しいらしい。
おかげでねーたんは一人でお留守番、寂しいだろうから大晦日はこっちの家に泊まったのだ。
今は自分の家で準備中。あとでともねえと一緒に初詣に行くことになった。
ちなみに、これをチャンスと見て要芽姉様がねーたんを部屋に連れて行こうとしたのは言うまでもない。
結局は雛乃姉さんに止められて未遂に終わったんだけどね。
「それじゃ私はいるか達が待っているから行ってくるわ」
「あ、そうだ。私も雛乃姉さん達におべんとうを持っていかなくちゃ。
 空也、ぽえむちゃんに『駅の前で待ってる』って伝えておいてくれないか」
「わかったよ、行ってらっしゃい。俺達はねーたんと一緒に行くよ」
要芽姉様とともねえを見送った俺は、お姉ちゃんと出かける準備を始めることにした。
「うーむ、ワシも仕事をちょっと残してしまったから一緒に行けんなぁ…
 ピーナッツ、大事な娘達にもしものことがあったら許さんからな」
「俺はどうなってもいいのかよ」
「お前は自力で何とかしてくれる。ワシは信じているぞ」
それって要するに何もしないってことじゃないのか…


俺とお姉ちゃんはねーたんと一緒に初詣に行くことにした。
ともねえは駅前で待っているので、さっさと合流しないとな。
「ともえさん、大丈夫かな」
「大丈夫って何が?」
「みんなの今年の運勢を占ってみたの。みんなそれほど悪いことは出なかったんだけど…」
「もしかして巴お姉ちゃんがどうかしたの〜?」
「…わからないの。全く検討がつかないから、ちょっと心配で…」
うーん、ねーたんの占いは良く当たるからなぁ。
それとなく気を使ってあげるようにしとこう。
駅前に到着すると、すぐにともねえを発見した。
背が高いからものすごく見つけやすい。
しかし良く見てみると、どうやら男に声をかけられているようだ。
メガネをかけた猿顔の、このあたりでは見かけない変な奴だ。
ただ、女の子にしてみれば『生理的に嫌』とでも言わんばかりの顔をしている。
「珍しいな〜。巴お姉ちゃんがナンパされてる〜」
確かに珍しい光景ではあるが、ともねえも嫌がってることだし、ここは止めに入るとしよう。
しかし、俺が行く前にねーたんがずかずかと割り込んでいった。
「ともえさん、お待たせ。クー君と海さんもいるよ」
「あ、ぽえむちゃん」
「さ、行こう」
ねーたんはともねえの手を掴むと、俺達のところまで引っ張ってきた。
「ちょっと待ってくださいよー!…あーあ」
俺達はそのまま捕まらないようにさっさとその場を後にすることにした。
「だめだよ、ともえさん。あんなのに捕まったら」
「う、うん…ありがとう、ぽえむちゃん」
「ねーたんも勇気あるなぁ。それじゃ初詣に行きますか」
「れっつご〜」


「いらっしゃーい、くじ引きいかがですかー!あ、クーヤだ」
ねぇねぇはどうやらくじ引きで一山当てるつもりらしい。
姉貴は前にゲームで負けた罰として、ねぇねぇの商売を手伝わされている。
景品は家の物置とかで眠っていた昔のオモチャとか、安く手に入れた中古ゲームなどだ。
しかし、決定的な豪華景品は見当たらないようにも見えるが…
そのくせ1回1000円なんて高すぎるぞ。
「なぁ、ねぇねぇ。こんなのでお客さんが来るの?」
「ふっふーん、まだまだ詰めが甘いよクーヤ。ウチにはちゃんとした目玉商品があるのだ」
「私があげた『量産型メカ高嶺』?」
「ノンノンノン、特賞はこのタカとの一日デート権だー!」
「あぅ、瀬芦理姉さん…それじゃ高嶺がかわいそうだよ…」
「それに、その権利をもらった人もかわいそうだよ〜」
「どういう意味よ!」
「言葉どおりの意味だよ〜(・ε・)」
「ふざけんなー!」
ツインテールを逆立てて怒る姉貴だが、そんなもんでお姉ちゃんがからかうのをやめるはずがない。
「それより、そんなもん景品にして大丈夫なのかよ?」
「イカの分際で、このアタシを『そんなもん』ですって!?」
「問題ナッシーング。ガラガラには特賞なんて入ってないもーん」
「うわ、詐欺だ」
「人聞き悪いにゃー。単なる客寄せのイベントなんだって。
 タカにそんなことさせるわけないじゃん」
それでも色々と問題があるんじゃないか…
「んじゃ、アタシ達はまだまだ稼がないといけないからね」
「商売のジャマになるから行こう、ともえさん」
「う、うん…」
ということで、俺達はその場を後にすることにした。
二人が変な奴にからまれませんように…


賽銭を入れて御参りを済ませた俺達は、今度はおみくじをすることにした。
そこには雛乃姉さんが参拝客の受け答えをしていた。
「おお、よく来たな」
「忙しそうだね、雛乃姉さん」
「うむ、さきほど変な奴がおってな。我のことをじーっと見て、鼻息を荒くしておったわ。
 我の魅力がいかほどのものか理解できておるようであったが、少し品性がなかったのう」
誰も雛乃姉さんが長女だなんて思わないだろうしなぁ。
もしかしてそいつはロリコンか…?
「くうやよ、今かなり失礼なことを考えなかったか?」
「え!?いやぁ、気のせいですよ」
「ふむ、それならよいが…」
あぶねぇあぶねぇ、なんて鋭い人だ。
「これからお前達はどうするのだ?」
「うん、色んな店を回っていこうかなって思ってるんだけど…」
「そうか、ならば気をつけてな」
雛乃姉さんと別れた俺達は、タイヤキを買って食べながら、この後の行動を話し合った。
ちなみに、タイヤキはねーたんのおごり。
「私はくーやと行くよ〜」
「わかった。そ、それじゃ、ぽえむちゃんは私と行こうね」
「うん…ともえさんとなら、安心」
「それじゃ後でね」
「くーや、お金のことは心配ないからね〜。お姉ちゃんに任せてよ〜」
後で雛乃姉さんのいたおみくじのところで待ち合わせるということで、俺達はそれぞれ行動することにした。


俺とお姉ちゃんはそれからというもの、とにかく沢山の店を回った。
射的、輪投げ、スーパーボールすくいなどなど…
待ち合わせの時間になるころには、荷物でいっぱいだった。
しかし、待ち合わせの時間になっても二人は来なかった。
雛乃姉さんも仕事が終わって一緒に待っていたけど、なかなか来ない。
ねぇねぇと姉貴もやってきたけど、それでも現れなかった。
「家には電話をしてみたのか?」
「うん、誰もいなかったよ。ともねえもねーたんも携帯を持ってないみたいだし…」
「ふむ、では手分けして探すとしよう。なに、神社にいるのなら時間はかかるまい」
ということで、俺はお姉ちゃんと一緒に探すことにした。
しかし、二人ともどこに行ったんだろう…
ねーたんがいれば占いでどこにいるかわかるのになぁ。
とか思っていると、『占い』と大きく書かれた看板が目に付いた。
しかも、占っているのは超美人で大人の色気丸出しの女性。
胸元がとてもまぶしいぜ。
ちょっと聞いてみるか。
「あの、すみません。背が高い女の人と黒いリボンをした女の人、見ませんでしたか?
 俺の姉なんですけど、はぐれちゃったみたいで」
「さぁ、私は…ならば占ってさしあげましょうか?」
「うーん…」
「自慢ではありませんが、私の占いは結果がどうであれ、はずしたことはありません」
「なら、よろしくお願いします(美人だし、別にいいか)」
女性が集中すると、途端に空気が変わったかのような感覚が全身を包んだ。
これはねーたんに通ずるものがあるぞ。
「…白い服の女性と一緒にいるのが見えます。何やら長身の女性が険しい顔になっておりますが…」
「いっ!?まさか…ど、どうもありがとうございました!お金、置いときます!」
「場所は神社の入り口近くでしたわ。ごきげんよう」
嫌な予感がしてきたぞ。これは急いだ方が良さそうだ。
「くーやぁ、血相を変えてどうしたの〜?」
「話はあとだ!急ごう!」


俺達は大急ぎで向かった。
おそらく相手はあの透子さん、何をしでかすのかわかったもんじゃない。
「あ、いたよ〜。あの占いの人、ホントにすごいね〜」
相変わらずの余裕を持った顔をしている透子さん、透子さんを威嚇するかのように睨みつけるともねえ、
そしてともねえの影でビクビクしているねーたん。
何があったのかはわからないが、お姉ちゃんを置いて俺はすぐにその間に割って入った。
「ともねえ!」
「空也…」
「クー君…来てくれたんだ…」
「あら、明けましておめでとう。元気そうね、クールボーイ」
「ともねえに何か用ですか?危害を加える気なら、俺が黙っちゃいないぜ!」
「若いわね…何もしてないわよ。
 その怖がっている子にしつこく声をかける男がいたから、それを追い払ってあげただけのことよ」
「そうなの、ねーたん?」
「う、うん…」
それでもねーたんの脅えっぷりはおかしいぞ。
多分ねーたんは透子さんの恐ろしさをなんとなく感じ取っているのかもしれないな。
「くーやぁ、待ってよ〜」
「あ、いたいた。おーい」
ここでようやくお姉ちゃんが追いついてきて、ねぇねぇ達も後から続いてきた。
「フフッ…空也君にトモちゃん、またね」
うっすらと笑みを浮かべた後、透子さんはその場を後にした。
「くーや、今のって月白先生だよね〜?なんで巴お姉ちゃんと一緒にいたの〜?」
「え?えっと…まぁいいじゃない」
「ふ〜ん」
「やっと見つけたわよ、巴姉さん」
「あはは…みんな、ごめんね」
何はともあれ、二人が無事でよかったよ。
そして俺達は、そのまま我が家へと向かった。


すでに家には要芽姉様と親父が帰っていた。
しかも、家にはねぇやがこれでもかというぐらいくつろいでいるから、姉様はメチャクチャ機嫌が悪い。
「空也ちゃん、おかえりっ。そして明けましておめでとう☆」
「挨拶したんだから、さっさと帰ってくれないかしら?」
「アン、要芽ちゃんのいじわる」
今年もこの二人の確執はおさまりそうにない…
「よしよし、みんな揃ったところで、ちょっと座りなさい。改めて新年の挨拶だ」
「うむ、皆の者、言われた通りに座るのだ。ほなみとぽえむもだぞ」
雛乃姉さんがみんなを仕切り、きちっと正座を促した。
「親父殿、新年明けましておめでとうございます」
「「おめでとうございます」」
姉さんの挨拶の後、全員で声を合わせ、深々と頭を下げる。
親父はそれをニコニコしながら見ていた。
「うんうん、明けましておめでとう。それでは、ワシからお年玉だ」
親父がみんなを並べてお年玉を渡していくのは、もはや柊家ではお約束。
もらうのには恥ずかしい歳であろうとも、親父がそれを聞くことはないのもわかっている。
「えっと…その、なんだ。瀬芦理は今日が誕生日だったな。誕生日おめでとう」
「な…や、やだねぇ、ショウ。あは、あはははは…」
ねぇねぇも嬉しいだろうに、素直じゃないなぁ…
「二人にもお年玉だ。沖縄ではピーナッツが世話になったからな」
「あら、オジサマったら太っ腹☆」
「ありがとうございます…」
「さて、最後はピーナッツだ。受け取りなさい」
お、俺にもあるのか?このオッサンのことだから、俺の分なんて用意してないと思ってたけど。
「ほれ」
親父は何を考えているのか、ピンポン玉をぽとりと俺の手の上に落とした。
「これぞ『落とし玉』!なんちゃって」
…当たり前の事だが、この瞬間に柊家では超大寒波が到来した。
それから数日間、親父は誰からも相手にされなかったとさ。


後はいつもの大宴会だった。
おせちを食べて酒を飲んで…今日が誕生日のねぇねぇは、いつも以上に騒いでいた。
俺とともねえは料理を運んだりで大忙し。
結局俺は上機嫌のねぇねぇに酒で潰されてしまい、部屋までフラフラと歩いていった。
部屋に入ると、置きっぱなしにしてあった布団の上にどさりと倒れこみ、そのまま寝ようとしたんだけど…
「クーヤ!まだ寝るなー!寝たら死ぬぞー!」
「そーよ、空也ちゃん!まだ仕上げが終わってないわっ」
「まだアナタには休む事など許されないのよ…」
大人の女性3人が俺の部屋にどかどかと入ってきた。
しかも、戸を閉めた後、つっかえ棒で開かないようにしている。
これってもしかして…
「あのー…」
「ふっふっふ、『姫初め』って言葉ぐらい知ってるよねー?
 アタシへの誕生日プレゼントは、クーヤ自身!もう決定しちゃいましたー」
「…」
「今日は寝かせないわよ、空也…一応瀬芦理がメインということだけど」
「えっと…」
「今晩はワタシの体でメロメロよっ☆」
戦略的撤退は不可能らしい。それでなくても、俺の体は酒と疲労でボロボロだ。
そんなことはおかまいなしに、3人は服を脱いでいく。
「頼むから休ませて…」
「「「いっただっきまーす!」」」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ…」

…今年一年も、俺は沢山の姉に振り回されそうだ。
ちなみに、次の日になって俺はともねえに発見されることになった…
カラカラの状態で…


(作者・シンイチ氏[2006/01/02])


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