サク サク サク ……
砂浜を踏み鳴らす少年の足音が聞こえる。
背中に負われた美女の金髪が恐ろしいくらい夕暮れに映えていた。

「ん〜やっぱりこの格好恥ずかしいよう、クーヤ」
「駄目だよ。せめて今日だけは安静にしないと」
「…じゃあ代わりにサービスするニャ〜!」
「へいへい」

モミモミ さわさわ ……

「にゃん☆」

ジーパンに包まれたヒップとフトモモをいやらしく撫でられたのが
お気に召したらしく、瀬芦里は後ろから空也をギュッと抱きしめた。
背中を圧迫する豊満な感触がまたきわどかった。


「……みんな怒ってるかな」
「そりゃあね。いつもは冷静なお姉様まで血相変えてたもの」
「悪いこと、しちゃったね」
「ん? ねえねえも反省することあるんだ」
「こらっ、ヒトのことをムネとオシリがおっきいだけのただの美人みたいに言うな!」
「ちょっ、ねえねえ首極まってるよ! 首! 言ってること違うし!」

空也の口からエクトプラズムが顔を出したころ、ようやく瀬芦里はチョークスリーパーを解いた。

「ぜぇぜぇ……ったく、窒息技はねえやだけでたくさんだよ。でもちゃんと
反省してるんなら、もうこんなことはやめなよ、ねえねえ」
「……わかんない」

空也はちらりと肩越しに振り返り、瀬芦里の表情をうかがった。
悲しいような怒っているような、まるで拗ねた子供だ。

「まだ、許せない?」
「ううん、ショウのことはもういいよ。姉妹のみんなにも
不満なんて持ってない」


「じゃあどうして?」
「自分にムカツクの。私だけ……違うから」

これは重症かもしれない、と空也は思った。
感情を持て余すことは誰にでもある。しかしこんなのはよくない。
爆発させることもできずに悶々と自分を傷つけるなんて…。
少なくとも空也は、そんな姉の姿を見たくはなかった。

「だったらいいじゃん」
「え?」
「出てけばいいよ。柊家なんて」

瀬芦里の身体がサッと強張ったのがわかった。
自分がどんな泣き言をわめこうが、やさしくなだめてくれるとばかり
思っていた空也から拒絶されたと感じたからだ。

「クーヤ……それ本気で言ってるの?」
「もちろん」
「……! もういい! 降ろしてよ! 降〜ろ〜せ〜!」


背中でジタバタと暴れ回る瀬芦里を、しかし空也はしっかりと抱いて離さなかった。

「ちょっとねえねえ。危ないから暴れないでよ」
「いいの! ……そんな風に思ってるなら、やさしくされても惨めなだけだもん……」

いまだかつてない瀬芦里の気弱な声に、少年はハァとため息をついた。

「そんな風って、どんな風?」
「だから……私に出て行けばいいって……」
「ああ、そうだよ。ただし、そのときは俺も一緒だからね」
「え……?」

瀬芦里の眼が、それこそ無垢な童女のように丸く見開かれた。
空也は肩越しにニコリと笑みを返す。

「家族なんて無理して一緒にいるもんじゃないよ。嫌になったら
いつでも出て行けばいい。でも俺は付いてくよ? ねえねえのこと好きだから」
「クーヤ……ホントに? わたしのこと一番好き? ずっと、一緒にいてくれる!?」
「オーイエス。ザッツライト。だから、もう今日みたいにいきなり
飛び出したりせず、なにかあったらまずは俺に一声…ってうわわっ」

突如万力のような力で砂浜に押し倒された。
気づけば仰向けにされて、眼前には人間離れした美しさのヴィーナスが
こちらを覗き込むように覆い被さっていた。
金色に輝く絹糸のような長い髪。どこまでも見透かされそうな宝玉の瞳。
信じられないほど、綺麗だった。


「さっき言ったことは本当なのかな……わたし、信じちゃうよ?」
「信じてよ。クールな男は美女に嘘はつかない」
「でも、もしそれで裏切られたら……わたしきっと壊れる。そうなったら
クーヤだってきっと、壊しちゃう」

怯えのような恐れのような、複雑な感情が瞳のなかで揺らめいていた。
空也はそっと愛しい女性の頬に手を添えた。

「ありえないことについて考えるのはやめなよ。ねえねえらしくもない」
「だって空也は捨てられるの? ひなのんも要芽姉もモエもタカもうみゃも、
みんな居る家を捨ててわたしと一緒に来るなんて…」
「……男に二言は無い!」

空也は瀬芦里の肩をつかむと荒々しく上体を起こした。
ちょっと驚いたのか、瀬芦里はきょとんとしている。

「あ…」
「もちろんみんな俺の大事な家族さ。親父も含めてね。だけどねえねえは
特別なんだ。」
「クーヤ……」
「だから俺もねえねえにとって特別でありたい。ねえねえがこの先、自分の
人生からなにを足してなにを引いていくのかはわからないけど、俺だけは
勘定に入れておいてほしいんだ。ダメ?」

答えの代わりに、猛烈なキスが空也を襲った。
柔らかな唇の感触にうっとりと惑わされ、流れのままに舌を絡ませあい、
唾液をむさぼりあった。
それだけでたっぷり5分。しかし瀬芦里にはやめる気配すらなかった。
いくら互いに愛し合っていてもさすがにハズカシイ。

「んっ…ぷは、ねえねえ待って。もうそろそろ」
「あ…ごめんねクーヤ。もう我慢できないよね」


瀬芦里はさも当然のようにシャツを脱ぎ捨て、珠の肌をあらわにした。
波打ち際に降臨した美神の姿に一瞬目をくらますが、それでも空也には一片の理性が残っていた。

「ま、まさかここで!? ダメだよねえねえ! 今夜は花火見物しに砂浜に来る人もかなりいるだろうし」
「ダイジョウブ。終わったあとにギャラリーはちゃんと片付けておくから」
「うわわ別の意味で逃亡者になりそうな予感が……」

3秒で裸に剥かれた空也になすすべはなかった。

「フフフ…ホントは嬉しいくせに。ね、空太郎☆」
「あふん」

夜はふけていく。ただ二人のためだけに……。


(作者・SSD氏[2005/07/04])


※関連 姉しよSS「瀬芦里エンド後


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